
Susan Hayward as Barbara Graham in Black Nightgown
I Want To Live! Barbara Graham's Last Scream From Gas Chamber
私は死にたくない(1958年)
Bloody Babs: Bab's guilty? or Bab's innocent?
「私は死にたくない」はSan Quentin Penitentiary(サン・クエンティン刑務所)でガスで処刑されるまで無罪を主張した女性死刑囚"Barbara Graham(バーバラ)"の実話を元に作られたRobert Wise(ロバート・ワイズ)監督のサスペンス・ドラマで、主人公である享楽的な売春婦のバーバラ役のSusan Hayward(スーザン・ヘイワード)がアカデミー主演女優賞受賞他、各主演賞を受賞した社会派映画です。
白黒画面のオープニングクレジットでジャズのテーマ曲が流れるところは、1957年に初めてジャズを映画に取り入れたというLouis Malle(ルイ・マル)監督のAscenseur pour L'echafaud(死刑台のエレベーター)に匹敵します。 「死刑台のエレベーター」ではMiles Davis(マイルス・デイヴィス)のトランペットでしたが、「私は死にたくない!」ではJohnny Mandel(ジョニー・マンデル)の音楽でGerry Mulligan(ジェリー・マリガン)が演奏するバリトン・サックスです。
♪ Gerry Mulligan - I Want to Live - YouTube
映画のオープニングではマリガンの演奏シーンにクレジットが流れますが、冒頭では獄中のバーバラの回想シーンがあり、当時としては珍しいボンゴのリズムに乗って楽しげに踊る場面もあります。(Stakeoutはこのページトップにリンクしているサントラの5番で試聴) 1950年代にはラテン・パーカッションのボンゴはビートニクの象徴でもあり大変ヒップな楽器だったようで、同じく1958年のBell, Book and Candle(媚薬)など色々な映画に登場しています。
Susan Hayward in "I Want To Live!" - YouTube
(scenes included "Barbara dances to bongo at the crazy party" and "Barbara dances to Mulligan in sexy black nightgown"from "I Want to Live!")
下のクラブからジャズの演奏が聞えてくるホテルの"H"の文字が窓に見える部屋でバーバラは客を取っているところに刑事が踏み込んで来ます。 バーバラ生まれつき不幸なヒロインのBarbara Graham(バーバラ)は麻薬中毒の夫との不幸な結婚によりさらに不幸になりますが、バーバラの不運は家賃の支払いに使用した偽小切手から始まります。 家主にバレて警察に届けると脅されて救いを求めた元の仲間が老女殺害事件の容疑者だったことからそのアジトが警察の包囲に合います。 大勢の野次馬が見守るバーバラの投降場面でもジェリー・マリガンのバリトンサックスが流れますが、その前に髪を梳り赤ちゃんの縫いぐるみを握り締める女心が悲壮感を煽ります、と思いきや、やけのやんぱちで報道陣のカメラに向かって縫いぐるみを振りかざしておちょくったのですから新聞の見出しが"The Tigar Woman!"
Tiger Lady Mobbed By Angry Crowd in "I Want To Live" - YouTube
前科もあるバーバラは取調べでのハスッパな態度も災いし、バーバラの無実を証明するアリバイを証言できる放蕩夫は行方不明、こともあろうにその殺人事件の首謀者ということで投獄されてしまうのです。 法廷では過去の偽証罪での服役歴も引き出され益々不利になり、挙句の果てはアリバイ工作の助け人と思い込んだのが警察のおとり捜査で、自ら罪を告白したことになり死刑を宣告されてしまうのでした。 いくら美人で若くても死刑になります。 元仲間(実の犯人たち)の誤算、読みが甘かったのです。 刑務所の独房でバーバラがジェリー・マリガンの"Black Nightgown(ブラック・ナイトガウン)"のレコードをかけて黒いシミーズ姿になって踊ります。(ナイトガウンとは部屋着ですが、シーンでは下着の黒いスリップです。) バーバラの無罪をほのめかすこととなったRorschach(ロールシャッハ)テストとは精神鑑定のために行われる心理テストの一つで性格を判断します。 殺人を犯すような凶暴性があるかどうか。 嘘つきですが暴力は嫌いなバーバラはしかも左ききなのです。
最後にバーバラが送られたのが死刑囚を収容するサンクエンティン刑務所ですが、神父が独房を訪れた後にもジェリー・マリガンの音楽が流れます。 映画のラスト4分の1からは処刑を目前にした緊迫した空気が漂います。 重い鉄の扉の閉まる重い音やけたたましく電話のベルが鳴る度に観ている方もギクっとします。 処刑が近づくことを示す時計のアップ。 8時には終始無言でたんたんと処刑の準備を整える死刑執行官が不気味です。 死刑の前の祈祷のために神父が訪れ、10時45分。 バーバラが歩む独房からGas Chamber(ガスチャンバー/ガス室)まで靴を脱がねばならないので絨毯が敷かれます。 でも美しく装ったバーバラは裸足になりません。
"Babs gets stay at death door" そこへ一旦は控訴が認められた知らせが入りましたが、希望は数分で消え去り11時30分に再び処刑決行。 バーバラは衣服の下に聴診器の管を接続するベルトを装着させられます。 Bob Hope(ボブ・ホープ)とDorothy Lamour(ドロシー・ラムーア)の"珍道中"コンビが出演した1947年の私立探偵パロディ映画「My Favorite Brunette(私の愛したブルネット)」ではこの段階で新証拠が出て処刑は免れるのですが「私は死にたくない!」では逆転はありません。 ガス室を取り巻いている公開処刑立会人達や報道陣を見たくないと女看守から安眠マスクを借りて監房を出ます。 殺人の罪を犯したとしてバーバラはガス室という殺人マシンで殺されます。 冤罪で処刑されるバーバラの心残りは幼い我が子。。。
Last scene in I Want to Live! - YouTube
Gas chamber
アメリカでは最も高価な処刑法とされるガス室では卵状のシアン化物(青酸ナトリウム)が調合した硫酸と混ざると化学変化を起こし有毒な青酸ガスが発生する仕組みなのです。
担当官がバーバラに耳打ちします、「ガスがガス室に噴出し始めたら10数えて深呼吸すると楽ですよ。」 How did you know! 多くの受刑者は当然のことながら毒ガスを吸うまいと逆に息を止めてしまうのだそうです。
第二次世界大戦中にナチスがホロコーストでZyklon B(チクロンB)を使用したガス室大量殺人を犯したとされたこともあり、アメリカではガスの処刑は1920年代から殺人犯にのみ執行されていた。 とはいえ多くの州はこの方法を適用していないのだそうです。 1930年代の大恐慌を背景にのジョージア州のCold Mountain Penitentiary(コールド・マウンテン刑務所)を舞台にした1999年のThe Green Mile(グリーンマイル)ではTom Hanks(トム・ハンクス)が死刑囚舎房の看守役で主演しましたが処刑は恐ろしい電気椅子でした。 処刑室まで敷かれた絨毯が緑だったことからグリーンマイルと呼ばれたこの映画では担当官の故意の不手際により処刑が失敗します。 こんな残酷な映像を含む「グリーンマイル」はとんだファンタジーです。
2004年に致死量の薬物注射により処刑された実際の死刑囚がいました。 オクラホマのCameron Todd Willingham(キャメロン・トッ・ウィリンガム)という男性で、1991年に妻の留守中に幼女虐待を隠すために家に放火して幼い女児3人の命を奪ったという罪で12年の苦しみの死刑囚官房暮らしの末、薬殺刑に処されたのですが最後まで無実を訴えていたそうです。 2009年になってこの事件の専門的な再検証により無実の線が浮上したそうです。
いづれにせよ「私は死にたくない」も「グリーンマイル」もこういった処刑シーンをリアルに描写することによって"人が人を裁くこと"の難しさを問うものなのでしょう。
サンクエンティンとはthe California State Prison at San Quentinのことで、1850年代に建てられたカルフォルニア最古の凶悪犯用刑務所です。 2010年の「Machete(マチェーテ)」などの監督であるRobert Rodriguez(ロバート・ロドリゲス)の映画の常連でいとこ同士のメキシコ系アメリカ人のDanny Trejo(ダニー・トレホ)が40歳で性格俳優になる以前に収監されていたことがあったそうです。(トレホは復帰して麻薬中毒者更生のカウンセラーにも参加しているとか。)
1969年にJohnny Cash(ジョニー・キャッシュ)が、1990年にはB.B. King(BBキング)が刑務所ライヴをしたことでも知られています。
「私は死にたくない」のトレーラーはI Want to Live Trailer - Turner Classic Movies(I Want to Live! - (Original Trailer)をクリック)
バーバラが警官隊に縫いぐるみをかざすシーンやマリガンの演奏シーンもちょっと観られる!
I Want To Live Trailer- YouTube
☆映画「私は死にたくない!」のビンテージ・ポスターが見られるI Want to Live Poster - Hollywood Movie Posters Online
スーザン・ヘイワードの映画スチール写真はSusan Hayward - meredy.com
美しい赤毛のスーザン・ヘイワードの写真が見られるSkylighters - Susan Hayward
「私は死にたくない!」の輸入版DVD(英語)で"リージョン1"す。(PCのDVDプレーヤーでは4回までリージョンコード変更可) カバー画像はカラーでも映画は白黒です。
I Want to Live! (DVD)
私は死にたくない!」の日本語字幕版VHSビデオには1990年版と1997年版があります。
I Want to Live!(私は死にたくない)の音楽はJohnny Mandel(ジョニー・マンデルの作曲)でBlack Nightgownが評判となりました。 女性死刑囚のバーバラが「マリガンが好き」だと言っているGerry Mulligan(ジェリー・マリガン)は映画の冒頭にミュージシャンとしての映像が観られます。 とはいえ、サウンドトラックには収録されていないので、ジェリー・マリガンの「 I Want To Live!」はマリガンのアルバムLPに収録されていたそうです。 私は当時EP盤のサントラを購入しました。
私はバリトン・サックス奏者のジェリー・マリガンのコンボ「The Gerry Mulligan Jazz Combo」が演奏したTheme From I Want To Live! ("私は死にたくない"のテーマ)、Barbara's Theme(バーバラのテーマ)やBlack Nightgown(ブラック・ナイトガウン)などが大好きです。
そのオリジナルを演奏したコンボのメンバーはジェリーマリガンの他、Art Farmer(アート・ファーマー/trumpet)、Bud Shank(バド・シャンク/alto sax and flute)、Red Mitchell (レッド・ミッチェル/bass)、Shelly Manne(シェリー・マン/drums)などです。
Johnny Mandel (Gerry Mulligan) - I want to Live Theme - YouTube
"Black Nightgown"が入っているジェリー・マリガンのCD
日本では映画公開当時の1958年に「ジェリー・マリガン/私は死にたくない」というサウンドトラックのLP盤がリリースされたようですが当然中古レコード店でしか見つかりません。 当時私が購入したのはEP盤でした。
ページトップの画像は1999年にCD化された拡張版サウンドトラックで、1958年リリース盤はもう見つかりません。
♪ 試聴はI Want To Live: Original MGM Motion Picture Soundtrack [Enhanced CD] - Amazon.com(メインテーマが1番、Black Nightgownが17番、Theme From I Want To Live!が18番です。)
※私がiTunes Music Storeで購入したのは"Black Nightgown"が収録されているマリガンのアルバムの「At the Village Vanguard」です。
下の画像は私が当時購入したEP盤のサウンドトラックです。
I Want to Live! UAT -1002![]()
Gerry Mulligan & Andre Previn -- Jazz Soundtracks (Subterraneans/I Want To Live)
50年代のウエストコースト派の代表であるジェリー・マリガンが担当した映画音楽の「私は死にたくない」からBlack Nightgown、Theme from "I Want to Live! "、Barbara's Themeなどを収録、同じくジェリー・マリガンが出演したAndre Previn(アンドレ・プレヴィン)の音楽のThe Subterraneans(地下街の住人)とのレアな組み合わのOST(オリジナルサウンドトラック)アルバム"Jazz Soundtracks" (Subterraneans/I Want To Live)が2006年に再リリースされています。
Mickey Spillane(私立探偵マイク・ハマー)を検証して作曲したアルバムの「Spillane」をリリースしたユダヤ系の前衛的アルトサックス奏者であるJohn Zorn(ジョン・ゾーン)も「私は死にたくない」を演奏していますが、アルバムNaked City Live, Vol. 1: Knitting Factory 1989の8番で試聴出来ます。(他にBatmanやShot in the Darkを収録)



今、気が付いたのですが邦題が原題と逆なんですね。これは配給会社の功績、邦題の方が良いような。最近は邦題の映画が少なくカタカナ文字ばかりでつまりません。
現在公開処刑は中国、イラン、北朝鮮、サウジアラビアだけだそうです。法的とはいえ結局人が人の命を奪うのは恐ろしいことです。ただし被害者にしてみれば犯人が死刑になってもなんら報われないのです。要は人を害する犯罪を行わないというモラルが徹底していればよいことなのですが、聖書に記述のあるカインのアベル殺害のように大昔からの問題なのですから・・・なくならないのでしょう。被害者にも加害者にもならずにこの歳まで生きてこれたことに感謝いたします。
ちなみにブラッドピットが主演したのはテレビ放映のみでしたが1990年の「Too Young to Die?(トゥルー・ブルース)」でした。犯罪者役のピットは衝撃的でした。
アメリカでは死刑囚の最期を外から見せる。
んまー、何と残酷な。
今もそうなのでしょうか?。
我が国では近年、被害者の立場に立っての・・・・風潮が芽生えて来たからいずれそうなる?。まさか。
ピッドが助演の「トルー・ラブ」でしたかね、似ているところありですが、二度と観る気力、精神力なし。でも観たい、大矛盾。