スペード・クーリー Spade Cooley
ウエスタン・スウィングのキング
スウィング・カントリーといっても、このスウィングとはあの1930年代から1950年代にかけて人気のあったビッグバンドのスイングではありません。 早いリズムの軽快な音楽のダンスバンドには違いありませんが、アメリカ西部(ウエスタン)地方のカントリー・スイングはバンジョーやマンドリン、ギターやベース、フィドル(バイオリン)やドブロ(ハワイアン・スティール・ギター)などの楽器で構成されており、主に地域の顔見知りの集まる酒場、地方の祭りや田舎のダンスホールで演奏されました。 又は安上がりなお楽しみとしてのホームパーテイなどに呼ばれたりと、全くのダンスのための伴奏で、そのダンスも簡単なフォークダンスのようなものだったそうです。 ですから、カントリー・スウィングのバンドは何千とありましたが、ラジオやテレビで有名になるのはほんの一握りだったようです。 殆どのバンドではバンドリーダーがヴォーカルを担当していたので人気が出るのもリーダー次第といえたようです。
※アパラチアの山岳音楽のマウンテイン・ミュージックといえばカーターファミリー、フィドルならミュージカルの「Fiddler on the Roof(屋根の上のヴァイオリン弾き)」、オールドタイム・バンジョーならFoggy Mountain Break Downが映画テーマ曲となっている「Bonnie and Clyde(俺たちに明日はない)」を思い浮かべますがウエスタン・スウィングはどうですか? ウエスタンとかカントリーといってもジョニー・キャッシュ以前のことです。
※Old-Timey Country(オールドタイム)の雰囲気は、Earl Scruggsのクリップが聞けるブルーグラスについてのNPRラジオ放送(Foggyで検索)
ウエスタン・スイングのキングを名乗ったフィドラーのスペード・クーリー
ヒルビリーだとかテキサス・スイングと呼ばれていた南部アパラチアの山岳地帯のオールドタイム音楽にスイングとカントリーの融合であるWestern Swing(ウエスタン・スイング)と名づけたとされているスペード・クーリーはカントリー音楽史上でも珍なる変り種の人物です。 1940年代〜1950年代に名声を極め、西海岸のウエスタン・スイングのキングを名乗ったのですが、1961年をもってその名声は永遠に過去のものとなってしまったのです。
☆「ヒルビリー」は南部の山岳地帯で生活してきたスコットランドやアイルランドからの元祖移民(土着の白人)を指します。 1920年頃から南部でもアフリカンからジャズやブルースが発生したのに対して、白人山岳音楽をヒルビリーと呼ぶようになったそうで、そのオールドタイムの草分けがカーター・ファミリーなのです。 ヒルビリーは後にウェスタンとかカントリーと呼ばれるようになります。
オールドタイムとはアパラチアの山岳地帯から誕生したマウンテンミュージックと呼ばれる音楽でブルーグラスのオリジンです。 山岳地帯とはケンタッキー州、ヴァージニア州、ウエストヴァージニア州、テネシー州、ノースキャロライナ州、サウスキャロライナ州などの地域です。
南部アパラチアの略図が見られるJNCI
父と祖父が有名なフィドラーだった環境下で幼少よりバイオリンを弾いていたというスペード・クーリーは、ストリングバンドを結成しダンスホールで演奏するようになり、1941年にレコードの吹き込みを始めました。 ストリングバンドというと古くは「ブルーグラスの父」と呼ばれるBill Monroe(ビルモンロー)が1939年に結成したBill Monroe & his Bluegrass Boysなどがありますが、逸話によると1943年に ウエスタン・スウイング(テキサス・スィング)の創始者で「King of Western Swing」と呼ばれていた「Bob Wills & his Texas Playboys(ボブ・ウィルズ・アンド・ヒズ・テキサス・プレイボーイズ)」にバンド合戦で勝ち、スペード・クーリーが「King of Western Swing」を名乗るようになったそうです。
英語ですがBob Wills Texas Playboysの写真が見られるGolden Graham On-Line
英語ですがボブ・ウィルスのバイオはOldies.comのBob Wills Biography(アルバムジャケ画像あり)
スペード・クーリーは1945年にOKeh Recordsと契約し、その最初のレコーディングが「Shame On You」でした。 この「Shame On You」はチャートで9週連続1位に輝き、その後も32週持続チャートインしました。
英語ですがOKeh レコードの歴史はThe Origins Of Okeh (1918-1920)
英語ですがOKeh Recordsについてはska2soul.net
当時のスペード・クーリーのレパートリーは、Johnny WeisのギターやJoaquin Murphey(ホアキン・マーフィー)のスチール・ギターをバックにTex Williams(テックス・ウィリアム)のヴォーカルをフィーチャーして陽気なバラードから強烈なインストまで20曲余をカバーしました。(バイオリン、ハープやアコーディオンも加わります) その後RCAと契約しますが、1940年代のレコーディングはヒットの連続となり、スペード・クーリーは輝けるキャリアを築きあげます。 人気者となったスペード・クーリーとそのストリングバンドは南カルフォルニア辺りのダンスホールで演奏したり、ラジオ、テレビ、そして映画にも出演するようになります。
☆Western Swing(ウエスタン・スイング)のストリングバンドにはSpade Cooley and His Orch.を始め、Bob Wills and The Texas Playboys、Tex Williams (1917-1985) and the Western Caravan、それにロック・アラウンド・ザ・クロックのBill Haley and his Comets(1925-1981)もこの仲間に入るそうです。
※ビル・ヘイリーについてはAudio-Visual Trivia内のアメリカン・グラフィティ
Joaquin Murphey
作曲もしたホアキン・マーフィーの写真や1940年代のラジオショーの音声クリップが聴けるホアキン・マーフィーのトリビュート・サイトTribute to Joaquin Murphey
その頃にスペード・クーリーは、クーリーのストリングバンドでバイオリン(クラリネット説あり)を弾いていた21歳の小柄なブロンド美人「Ella Mae Evans(エラ・メイ)」と2度目の結婚をします。(11歳の息子と妻と別れて) スペード・クーリーが二人の名前をつけたSpadellaという曲を贈るほど可愛がっていたエラ・メイはバンドで歌も歌うようになりましたがすぐに子育てのため断念することになります。 スペード・クーリーは子供のためにと田舎に別荘を持ちましたが次第に家庭から足が遠のき、都心のマンションはスペード・クーリーの享楽の巣と成り果てました。 テレビでヒルビリーのガールズバンドのロングラン番組を持ち「どんな娘でも俺の力でフリンジ付きの白い革スーツを着せてテレビに出してやれるんだ!」と豪語したほどでした。
ウエスタン・スイングは40年代がピークで、その後はスペード・クーリーの映画やテレビ出演も次第に底をつき、おまけにスペード・クーリーが原点のヒルビリーから反れたとしてバンドメンバーは歌手のテックス・ウィリアムをリーダーに選び、新たに「Tex Williams and the Western Caravan」が結成されました。
※そのいきさつについてはPOWS Inductees 1994/ Sol 'Tex' Williams(英語)
Shame on me, Shame on you, Shame on them, Shame on us
偉大なる才能を持つ小男「スペード・クーリー」の蛮行
1961年の4月3日にそれは起こりました。 酒乱気味だったスペード・クーリーは、新事業に関わる経済的な問題も抱えるようになり、既に離婚訴訟を起こしていて別居状態だったエラ・メイに殴る蹴るの暴行を加えて死亡させてしまいます。 当時10代の娘のメロディが見ている前で。 皮肉にも、見たことをしゃべると殺すと脅されて逃げ出したメロディの証言により、スペード・クーリーは第一級殺人罪で終身刑を宣告されたのです。 しかし、調停の最中に心臓発作を起こしたことや精神的な面を考慮して、San Quentin Penitentiary(サン・クエンティン刑務所)ではなく医療刑務所に送られたそうです。 そこでは当然「禁酒」ですからスペード・クーリーはまともになり、仲間の囚人に音楽を教えたりして模範囚と認められます。 刑期が早まり1970年の仮釈放が決定しましたが、 それより前の1969年11月のこと、72時間(三日間)の一時帰宅の許可を得て、地方裁判所判事主催のカリフォルニアでのチャリティ・コンサートで演奏し、3000人もの聴衆に暖かくを迎えられたのです。 ところが、楽屋で今回は致命的な心臓発作を起こし、遂に帰らぬ人となりました。
※サン・クエンティン刑務所についてふれているAudio-Visual Triviaの記事は映画「私は死にたくない」
☆ビッグバンド・スイングの歴史上のカントリーについて書かれたWESTERN SWING BANDS(英語)とスペード・クーリーの死について書かれたSpade Cooley Died On This Date In 1969(英語)
☆妻のエラ・メイやバンドメンバーと一緒のスペード・クーリーの写真が見られる"SHAME ON YOU"(関連)とThe-20-2-40-Style-Syndicate
スペード・クーリーの映画出演
スペード・クーリーは歌うカウボーイとして人気だった西部劇俳優でカントリー歌手のRoy Rogers(ロイ・ロジャース)のスタンドインとして、又は歌手やバンドリーダーとして端役で映画に出演する他、プロデューサーや作曲家としても1939年から1950年まで映画界でも活躍したスペード・クーリーについては
スペード・クーリーが主演した1945年の「Spade Cooley: King of Western Swing」はJack Scholl監督のカントリー&スイング音楽の短編映画です。 映画の中でスペード・クーリーはWho Killed the Goose That Laid the Golden EggやThe Trouble With Meを歌っています。
King of Western Swing - YouTube
スペード・クーリーのアルバム
懐かしいカントリーの音色
スイングのレジェンド「スペード・クーリー」のレパートリーの一曲でデニス・クエイドが製作する予定の映画のタイトルになった「Shame on You」が収録されているアルバムではスペード・クーリーのソフトな歌声と共にバイオリンの演奏も聴けます。
Shame On You
(24番がShame on You)
スペード・クーリーの大ヒット曲「Shame on You」は同期のBob WillsやTex Williamsを始め、「火の玉ロックの」ジェリー・リー・ルイスも歌っています。
妻のエラ・メイに捧げた曲のSpadellaが収録されているアルバム
Spadella: The Essential
(7番がShame on You)
1945年から1946年の曲を収録したLive At The Santa Monica Pier & Riverside Rancho
1945-1946
スペード・クーリーの音楽を聴いて下さい。
①1946年のSteel Guitar Rag、You Can't Break My Heart、Doin' What Comes Naturallyが聴けるSpade Cooley - Jazz On Line.com(Spade Cooleyで検索、曲名をクリック)
②Spade Cooley & his OrchestraのTroubled Over You、Crazy 'Cause I Love You、Steel Guitar Rag (Instrumental)、Three Way Boogie (instrumental)、Oklahoma Stomp(Instrumental)が聴けるDaniel Ferguson: Rock Virtual Tape(Spadella!で検索)
③スペード・クーリーの1940年代のThe Rhumba Boogieが聴けるThe-20-2-40-Style-Syndicate(Rhumbで検索)
④Spade Cooley and the Western Swing Dance Gang(スペード・クーリー)のアルバム「Shame on You」から Steel Guitar Ragが聴けるWFMUラジオのプレイリストはPlaylist for Inner Ear Detour with David - September 18, 2003(Listen to this show (RealAudio)をクリックしてクリップ・ポジション(再生バー)を2:03:28に移動)
同じくBoggs Boogieが聴けるPlaylist for Michael Shelley - April 29, 2005 (Listen to this show (RealAudio)をクリックしてクリップ・ポジション(再生バー)を2:09:00に移動)
Audio-Visual Trivia内の関連記事
ビッグバンドのスイングについてはスイング・ジャズ
カントリー歌手のジョニー・キャッシュについてはJohnny Cash
デニス・クエイド監督が製作中のスペード・クーリー伝記「Shame on You」(制作中止かも)
投稿者 koukinobaaba : April 28, 2006 10:17 PM
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