ペレス・プラードの組曲 Perez Prado's Voodoo Suite (1954)


Voodoo Suite VICTOR HP 529(LP)
Voodoo Suite

El Rey del Mambo: Dámaso Pérez Prado
マンボの王様として一世を風靡したペレス・プラードはキューバ出身の音楽家です。 そのペレス・プラードが生み出したマンボというリズムは奴隷たちが持ち込んだ西アフリカ(ガーナ)や中央(コンゴ)などの音楽が基になっているそうです。 そして、キューバを出てメキシコからアメリカに渡ったペレス・プラードは当時大流行していたアメリカン・ビッグバンド(スイング)の大ファンでもありました。

Voodoo Suite and Exotic Suite of the Americas
マンボ王のペレス・プラードは1954年と1962年に二つの壮大な組曲を作曲しています。 Voodoo Suite(ブードゥー組曲又はヴードゥー組曲)とExotic Suite of the Americas(エキゾチック・アメリカ組曲)の発表当時はマンボに浮かれた人々は見向きもしませんでしたが、後年ペレス・プラードが再評価された作品です。

Voodoo Suite LPs (Vinyl)
☆上記のLP画像は私が所有している1961年に日本でリリースされた25センチ(10 inch)LPレコード「Voodoo Suite(ブードゥー組曲)」VICTOR HP 529 です。(クリックで拡大可) オリジナルではA面が"Voodoo Suite"でB面には6曲のSix All-Time Greats(マンボにアレンジしたジャズのスタンダード6曲)を収録してありますが、私の手持ちのレコードはそのうち2曲だけが収録されています。 日本でリリースされた25cmLPレコードの「ブードゥー組曲」としては1956年のモノラルLP盤Victor LS-523が一番最初で、その次の私が持っている再リリース盤VICTOR HP 529です。 その他は1955年の30センチLP盤(12inch)としてアメリカでリリースされたRCA LPM-1101は前述のオリジナルRCA EPB-1101を収録してあります。 日本では1965年にGolden AlbumというタイトルでVictor SRA-5004がリリースされたそうです。 同じく30センチLP盤のFesta Cubana(フィエスタ・クバーナ)というアルバムもリリースされたそうですがこの盤はペレス・プラードのディスコグラフィには見当たりません。

Voodoo Suite Plus Six All-Time Greats
RCA Victor LPM-1101 (LP)

Voodoo Suite Plus Six All-Time Greats

About Voodoo Suite
ペレス・プラード楽団が演奏するラテンジャズの大作を収録したレアなオリジナルレコードはペレス・プラードが最初にマンボを持ち込んだスタン・ケントン楽団で作曲及び編曲を担当していたShorty Rogers(ショーティー・ロジャーズ)と共同名義のアルバムです。 ラテンのマンボとアメリカのビッグバンド・ジャズとアフリカ原始リズムの融合と呼ばれたペレス・プラード楽団のエキサイティングなブードゥー組曲のオリジナルLPではゆうに演奏時間が20分余という長いVoodoo Suite(ブー・ドゥー組曲)がA面で、B面はSix All-Time Greats(マンボにアレンジしたジャズのスタンダード6曲)としてペレス・プラードの憧れだったビッグバンドのリーダー達へのオマージュとして、マンボに編曲したCab Calloway(キャブ・キャロウェイ)でお馴染みのSt. James Infirmary、Glenn Miller(グレン・ミラー)のIn The Mood、Bunny Berigan And His Orchestra(バニー・ベリガン楽団)のI Can't Get Started、Count Basie(カウント・ベイシー)のJumping at the Woodside、Benny Goodman(ベニー・グッドマン)のStomping at the Savoy、Harry James(ハリー・ジェームス)のMusic Makersといった6曲が収録されています。 このオリジナルの"Voodoo Suite"の誕生は1954年のこと、RCAビクターのプロデューサーとペレス・プラードと、ウエストコースト派のジャズ・ミュージシャンであったShorty Rogers(ショーティー・ロジャース)の参加により、22人の楽団を急編成してたった一日で録音に及んだというスタジオ盤です。 メンバーは指揮者のペレス・プラードの他に、ピアノがDick Hyman(ディック・ハイマン)、トランペットがShorty Rogers(ショーティー・ロジャース)とPete Candoli(ピート・カンドリ)、テナーサックスがSam "The Man" Taylor(サム・テイラー)といった豪華メンバーです。

「ブードゥー組曲」ではアフリカの太鼓(タムタム)が轟くイントロの後はアフルカ現地語の掛け合い、それからジャズ演奏、再び打楽器、そしてマンボへと続きトランペットやテナーサックスのソロも入る壮大な組曲なのです。 このアルバム「Voodoo Suite」は他のプラードの踊り出したくなるラテン風ジャズのマンボ曲とはちょっと異なっています。 特にタムタムの効いたイントロ部分はまさにアフリカ人(奴隷)が陶酔したような男の掛け声に続き、呻き嘆いているような祈りが入り混じり、まるでブードゥーの儀式にでも参加しているような怪しげな雰囲気が漂います。

RCA Records BVGJ 37205 (CD)
Voodoo Suite Plus Six All-Time Greats RCA
ヴードゥー組曲
画像もアメリカでリリースされたLP盤と同じにオリジナルをCD化したアルバムが日本で「ヴードゥー組曲」として2001年にリリースされていますが現在は取り扱っていないようです。

Voodoo Suite in Cha-Cha-Cha Boom!
「ブードゥー組曲」はペレス・プラードが自身の役で出演した1956年の白黒のミュージカル映画「Cha-Cha-Cha Boom!」で使用されたそうです。 新人発掘をしないとクビだと宣告されたレコード会社のタレントスカウトが会社を辞めて自己レーベルを立ち上げようとキューバに飛び、そこでPerez Prado and his Cha-Cha-Cha Orchestra(ペレス・プラード楽団)演奏でマンボを踊る素晴らしいダンスグループを発見するというストーリーは問題ではなく、たくさんのラテン音楽とダンスが堪能できる映画です。(Benny Moreは見つからなかったみたい。) 「Cha-Cha-Cha Boom!」では「ブードゥー組曲」の他にもペレス・プラード作曲のCrazy Crazy、Mambo No. 8、La Nina Popof、Cuban Rock and Rollなどがサントラに使用されています。
1956年にBill Haley(ビル・ヘイリー)が主演したRock Around the Clock!(狂熱のジャズ)と同じSam Katzman(サム・カッツマン)がプロデュースした「Cha-Cha-Cha Boom!」は私がレコードを聴いて受けたイメージのブー・ドゥー教の呪術を連想させる「ブードゥー組曲」とは全く違い、映画ではダンサーのニナ役を演じた女優のSylvia Lewis(シルヴィア・ルイス)が中途半端に過激なセクシーダンスをジャングル・フィーヴァー風踊ります。 私はちょっと納得できませんが、作曲者本人のペレス・プラードが出演しているのですからこれで正解なんでしょうかね。
Perez Prado - "Voodoo Suite"in Cha Cha Boom - YouTube
Perez Prado - In The Mood from "Voodoo Suite" - YouTube
Perez Prado - St. James Infirmary from "Voodoo Suite" - YouTube

「ブードゥー組曲」ならこれ!
Voodoo Suite Plus Six All-Time Greats
Voodoo Suite Plus Six All-Time Greats「Voodoo Suite」のオリジナルのアルバムはアメリカで1954年にモノラルの45回転EPレコードとしてリリースされたという情報をみたのですが、EP盤の片面に20分余の「ブードゥー組曲」が収録できたのでしょうか。
オリジナルの"Voodoo Suite"(RCA EPB-1101)LPのCD化で、B面に6曲のマンボにアレンジしたスタンダード曲を収録してあり、その後何度も再リリースされています。


Voodoo Suite (Afro Cuban Jazz Suite)のB面の"Six All-Time Greats"はオリジナルLPレコードの「ブードゥー組曲」のB面にはマンボにアレンジしたスウィングの名曲のSt. James Infirmary(聖ジェームズ病院)、In The Mood、I Can't Get Started、Jumping at the Woodside、Stomping at the Savoy、Music Makersの6曲が収録されています。
(このCDにはExotic Suite of the Americasは収録されていません。)

About Exotic Suite of the Americas
1962年、ペレス・プラードが44歳の時にこの超大作のアルバムをニューヨークのスタジオで録音しました。 この組曲はTheme of the Two Worlds (opening movement)、Amoha、Criollo、Theme of the two Worlds (transition movement)、Uamanna Africana、Blues in C Major、The Theme of the Two World (closing movement)の7曲の構成となっています。 この難解なアルバムが市場に出ても従来のマンボ好きペレス・プラードファンは当然見向きもしませんでした。 The Theme of the Two Worldの示す二つの世界とは資本主義と社会主義の国、あるいはミサイルをめぐる西と東(アメリカとロシアもしくはキューバ)の調和を指しているらしいです。 ペレス・プラードは陽気にウー!アー!と掛け声をかけて世界中を駆け回りマンボの普及に力を注ぎましたが、やはり心は故国キューバにあったのです。

アメリカの大統領であったJohn F. Kennedy(ケネディ)がペレス・プラードのファンであると公言したことと、ピッグズ湾事件は不成功でしたがFidel Castro(フィデル・カストロ)を制裁したことを評価して反カストロ派のペレス・プラードはこの組曲をケネディに捧げたそうです。 もちろんジャズ好きのペレス・プラードにとっては音楽の世界に大いに貢献してきたアフリカ系キューバ人をはじめ、あらゆる黒人にも捧げています。 Theme Of Two Worldsは1950年代にマフィアによってもたらされた享楽のキューバ時代の後に来たカストロの恐怖の政治体制から逃れて故郷を去ったペレス・プラードの望郷の念を込めて作曲したもので、キューバではメキシコに亡命し、音楽活動の場を敵国のアメリカに置いたペレス・プラードの曲を使用することに関して賛否両論がありましたが、結局このが曲がキューバ革命の立役者であったChe Guevara(チェ・ゲバラ)の国葬で流れたそうです。 チェ・ゲバラは1967年にボリビアで処刑(殺害?)されましたが行方不明だった遺体は発掘されて1997年にキューバに空輸されたそうです。 キューバの国家元首Fidel Castro(フィデル・カストロ)が指揮を執り葬儀が執り行われました。 厳かな弔辞や詩の朗読に続いて予定にはなかったのにスピーカーから流れたのがペレス・プラードのTheme Of Two Worldsです。 理由としては、この葬送行進曲のようなTheme Of Two Worldsはチェ・ゲバラを見送るにはもっともふさわしい曲であるということでした。 音楽には国境はない!
Esa es la Sinfonia del Che Guevara

「エキゾチック・アメリカ組曲」ならこれ!
Exotic Suite of the Americas
Exotic Suite of the Americas by Perez Pradoオリジナルのリリースが1962年というアルバムの「Exotic Suite of the Americas(エキゾチック・アメリカ組曲)」がありますが、「ブードゥー組曲」は収録されていません。 このCDは2003年にフランスやスペインあたりでリリースされたようですが現在は取り扱っていない店が多いようです。 このC「]Exotic Suite of the Americas」にはペレス・プラードの陽気なマンボとはおよそかけ離れて憂いを含んだエレジー「Theme Of Two Worlds(二つの世界)」などが収録されているのですが試聴が見つかりません。 上記の「Voodoo Suite/Exotic Suite of the Americas」にもTheme Of Two Worldsがメドレーとして収録されています。


Voodoo Suite/Exotic Suite of the Americas
Voodoo Suite(ブードゥー組曲)のLP盤とExotic Suite of the Americas(エキゾチック・アメリカ組曲)オリジナルLP晩との二つのレコードがCDにまとめられたりしているので大変ややこしくなっています。
私が購入したオリジナル・リリースが1955年というLP盤「Voodoo Suite」は現在はそのLP盤と別のLP盤のExotic Suite of the Americasを一緒にCD化した「Voodoo Suite/Exotic Suite of the Americas」になっています。 opening movementとtransition movementとclosing movement三部作からなる"Theme of Two Worlds"を含む組曲となっている「Exotic Suite of the Americas」はアメリカで1962年にリリースされた30cmLP盤のRCA LPM/LSP-2571がオリジナルらしいですが、日本では同年にVictor RA-5126/SHP-5097としてリリースされています。 CDとしては「Voodoo Suite」のみのアルバムは存在せず、「Exotic Suite of the Americas」と一緒になっていますが、「Exotic Suite of the Americas」は単独でCDとなっています。 1967年にボリビアで処刑された革命家のチェ・ゲバラの1997年のハバナでの葬儀で流れたのでopening movementとtransition movementとclosing movementからなるTheme of Two Worldsを含む「Exotic Suite of the Americas」を探している方が多いようですが、"Theme Of Two Worlds"三部作はCDによってはメドレーとして組み込まれていることがあります。

Voodoo Suite/Exotic Suite of the Americas
Voodoo Suite/Exotic Suite of the Americas 「ブードゥー組曲」と「エキゾチック・アメリカ組曲」を一緒に収録したCDです。 私が所有している日本でリリースされたLPレコードではVoodoo SuiteのB面は2曲ですが、このCDはアメリカでリリースされたオリジナルの盤と同じにちょっとTaboo風にアレンジしたブルースのスタンダード曲の"St. James Infirmary"など全6曲が収録されています。 1番から7番までが「ブードゥー組曲」の収録曲で、8番から14番が「エキゾチック・アメリカ組曲」です。 最初の「ブードゥー組曲」よりもっとドラミングとサックスを取り入れて完成したという「Exotic Suite of the Americas」も三部作のTheme Of Two Worldsからなる組曲となっています。

♪ "Afro Cuban Jazz Suite"とも呼ばれる"Voodoo Suite"や"Exotic Suite of the Americans "の試聴はVoodoo Suite/Exotic Suite of the Americas - Amazon.com

Voodoo
ペレス・プラードの組曲のタイトルとなっているVoodoo(ブードゥー)とは、カリブのハイチやアメリカ南部のニューオーリンズなどで信じられている迷信や呪術ですが、もとは18世紀頃からガーナやコンゴなどの奥地から集められアフリカ西海岸から西洋やカリブの島々にプランテーションで強制労働に従事させるために輸出(品物なのです)された黒人奴隷たちの祖国で信仰の厚い民族的な宗教(呪術)だそうです。 伝統的西アフリカの信仰にキリスト教やその他の宗教が混ざった複合的な信仰がブードゥー教ともいえるそうです。 もともとはVodun(ヴォドゥン)と呼ばれるそうですが、その儀式は太鼓に合わせた踊りや歌、動物の生贄(血)やゾンビ、黒魔術や恍惚としたトランス状態を思い浮かべます。 以前ニューオリンズに行かれたブロガーさんにお土産としてブードゥー人形を頂戴しましたが「今現在は呪う人がいない。」と言ったら、「呪っちゃいけません、お願いごとをするのです。」と笑われました。
フランス植民地時代のカリブのハイチやアメリカ南部のルイジアナでのブードゥーについてはAudio-Visual Trivia内のSoul to Soul(ソウル・トゥ・ソウル)や映画のThe Skeleton Key(スケルトン・キー)もご覧下さい。
南部ニューオリンズにあるブードゥー・グッズの店はVoodoo Authentica

Diarios de motocicleta
2003年に制作されたチェ・ゲバラの伝記映画「The Motorcycle Diaries(モーターサイクル・ダイアリーズ)」はチェ・ゲバラの命日に封切りされたそうですがそのサウンドトラックにもペレス・プラードの曲が使用されています。

Before Night Falls
キューバの恐怖政治についてはJulian Schnabel(ジュリアン・シュナーベル)監督の2000年の映画「Before Night Falls(夜になるまえに)」で知ることが出来ます。 この映画「夜になるまえに」はキューバの亡命作家"Reynaldo Arenas(レイナルド・アレナス)"の自伝を元にしていています。 カストロ政権の体制維持のために国民を堕落させる分子であるとされた芸術家や作家、そしてホモセクシュアルの人々がいかに虐待を受けたかを描写した暗く重たいテーマの映画です。 数々の賞を総なめした主役のスペイン俳優のJavier Bardem(ハビエル・バルデム)はさて置き、客寄せとしては美貌のフランス人俳優のOlivier Martinez(オリヴィエ・マルティネス)とJohnny Depp(ジョニー・デップ)が出演しています。 特にキリっとしたヴィクター中尉とのニ役を演じ分けたジョニー・デップのオカマ"Bon Bon(ボンボン)"のヘ~!ビー・メイクと経験豊かなお尻は必見!(いや、そういう映画じゃないですが) もう一人の有名俳優であるSean Penn(ショーン・ペン)も映画の始めのワンシーンで主人公がヒッチハイクした車のCuco Sanchez(クコ・サンチェス)役で出演しているのですが気を付けて見ないと見過ごしてしまいます。 なので3回も観ました。

☆マンボの王様のペレス・プラードについてもっと詳しくはAudio-Visual Trivia 内のPerez Prado
日本で人気のペレス・プラードのタブーについてもAudio-Visual Trivia内のTaboo

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