オール・ザ・キングスメン All The King's Men (1949)

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All the King's Men
John Irelanda as Jack Burden, Broderick Crawford as Willie Stark, and Mercedes McCambridge as Sadie Burke
オール・ザ・キングスメン(1949年)

実在のアメリカ南部のルイジアナ州知事だったHuey Long(ヒューイ・ロング)をモデルにした、南部文学のピュリッツアー賞作家のRobert Penn Warren(ロバート・ペン・ウォーレン)原作の小説「The life of populist Southerner Willie Stark(すべての王の臣)」を元に政治腐敗のからくりを暴露する政治ミステリ・ドラマ(モノクロ)です。 「オール・ザ・キングス・メン」は政治がらみの問題作のために当時は日本では公開は1979年だったそうです。
※独裁的州知事のHuey Long(ヒューイ・ロング)は別名をThe Kingfishといい、1934年に"Every Man a King"というスローガンを掲げたそうです。 ヒューイ・ロングについては肖像画も見られるSocial Security Online(英語のサイト)
すべて王の臣」

後に赤狩りの犠牲になり転向を強いられたRobert Rossen(ロバート・ロッセン)が監督及び製作・脚本を手がけました。 出演は無学から州知事に成り上がったWillie Stark(ウイリー・スターク)をBroderick Crawford(ブロデリック・クロフォード)が熱演しています。 スターク夫人にはAnne Seymour(アン・セイモア)で息子のトム・スタークをJohn Derek(ジョン・デレク)が演じています。 このジョン・デレクはこの後1960年まで俳優として活躍しましたが、既婚のJean-Paul Belmondo(ジャン=ポール・ベルモンド)と長年パートナー関係にあったスイス系のUrsula Andress(ウルスラ・アンドレス)と1957年から再婚した後に、Bo Derek(前Kathleen Collinsのボー・デレク)と4度目の結婚をしているほどの男前ですが、そのうち3人の妻をプレイボーイ誌のグラビアに送り込みました。 ボー・デレクと結婚してからは妻を主役にして1974年の「Fantasies(ファンタジー」を手始めに、撮影も手掛けた1981年の「Tarzan, the Ape Man(類猿人ターザン」と1984年の「Bolero(ボレロ/愛欲の日々)」そして最後が1990年の「Ghosts Can't Do It(ゴースト・ラブ)」の監督をしました。
ロバート・ロッセン監督というと翌年の1954年にSilvana Mangano(シルヴァーナ・マンガーノ)が主演した「Mambo(マンボ)」、そして1947年にCarol Reed(キャロル・リード)監督の「Odd Man Out(邪魔者は殺せ)」に出演したJames Mason(ジェームズ・メイソン)が1957年にStephen Boyd(スティーヴン・ボイド)と共演した「Island in the Sun(日のあたる島)」がありますが、最も有名なのが1961年にPaul Newman(ポール・ニューマン)が主演した「The Hustler(ハスラー)」です。
John IrelandLaurence Harvey(ローレンス・ハーヴェイ)似ではないけどちょっと田宮二郎似で西部劇の悪役が多いJohn Ireland(ジョン・アイアランド)が名門子息の新聞記者のJack Burden(ジャック)としてナレーター的な役目もしています。  が、優柔不断なのか、いったいどうしたいのか・・・目的が不明の男といった役どころです。 これが自分の恋人を含む一族の不幸を助長してしまいます。
そして知事の秘書にはこの映画がデビューの女傑、Mercedes McCambridge(マーセデス・マッケンブリッジ)、ジョンの恋人のアンにJoanne Dru(ジョアン・ドルー又はジョーン・ドルー)などが出演します。 ジョン・ドルーは「オール・ザ・キングスメン」と同じ年にShe Wore a Yellow Ribbon(幸せの黄色いリボン)という主題歌が大ヒットしたJohn Ford(ジョン・フォード)監督の「She Wore a Yellow Ribbon(黄色いリボン)」に出演しています。 イェロリー、イェロリー!

この映画で、監督のロバート・ロッセンは1949年ゴールデン・グローブ 監督賞を受賞、主役のブロデリック・クロフォードは1949年アカデミー賞主演男優賞と第7回1950年ゴールデン・グローブ主演男優賞、秘書役のマーセデス・マッケンブリッジは第7回1950年ゴールデン・グローブ助演女優賞をそれぞれ受賞しました。


政治家「ウイリー・スターク」は救世主か? それとも独裁者か?
高潔の貧しい無学の農民であったWillie Stark(ウイリー・スターク)が教師の妻に学問を受け政界浄化を唱え田舎町の出納官に立候補したが落選、めげずに弁護士となり貧しい人々の見方となります。 州立小学校の老朽校舎の惨事から政治家の汚職が認識されると今まで腐敗政治を説いてきたウイリー・スタークが見直されます。 ウイリー・スタークは現職州議員の票割れ作戦に利用され州知事選に出馬、又も落選しましたがウイリー・スタークがその選挙から学んだことは"金の力で勝つこと"でした。
選挙戦の密着取材から共感した地方名士の子息でルイジアナ州の地方紙の新聞記者であるJohn Ireland(ジョン・アイアランド)はウイリー・スタークの再出馬の片腕となり故郷の名門の家族も巻き込んでいきます。 そして、貧しい者の見方というふれこみで当選したウイリー・スタークは伝統を次々と踏みにじり悪の化身となっていきます。 他の大勢の人達同様に、記者のジャック自身も、故郷の家族、従兄弟で医師のアダム、その妹でジョンの恋人のアンまでもがストークの毒牙にかかってしまいます。 そして、みんな、スタークの部下となった。 みんなが(All The King's Men(王様の家来たち))に成り下がったのです。 ジャックの伯父の判事は自殺に追い込まれ、怒りに燃えたアダムの正義の銃弾がウイリー・スタークの息の根を止めるまで収賄に次ぐ収賄の汚職政治が続いたのでした。


※この映画のタイトル「All The King's Men」は英国の伝承童謡集「Mother Goose(マザーグース)」の中の「王様の家来たち」からの引用だそうです。

Mother Goose
Humpty Dumpty sat on a wall,
Humpty Durnpty had a great fall;
Not all the king's horses,
Nor all the king's men
Could set Humpty Dumpty together again.
ハンプティダンプティ塀の上
ハンプティダンプティ落っこちた
王様の家来や馬達も
誰もハンプティダンプティを元通りにはできなかった

☆マザーグースのハンプティダンプティやBaa, Baa, Black Sheep(めぇ、めぇ、みにくいひつじさん)やHush-A-Bye Baby(ハッシャバイ、おやすみ赤ちゃん木のこずえ )などマザーグースについてはMother Goose Club(英語のサイト)
Humpty Dumpty Cartoons (1935) - YouTube


Broderick Crawford
1946年にCornell Woolrich(コーネル・ウーリッチ)の小説を映画化したフィルムノワールの「Black Angel」で警官役を演じてPeter Lorre(ピーター・ローレ)と共演したブロデリック・クロフォードは「オール・ザ・キングスメン」の後、1955年から1959年までテレビ・シリーズの「Highway Patrol(ハイウエイ・パトロール)」にChief Dan Mathews(ダン隊長)役で出演していました。 この「オール・ザ・キングスメン」で恋人だったジョアン・ドルーと二度目の結婚をして10年間の結婚生活では二人の息子を持ったジョン・アイアランドは、この後Anthony Mann(アンソニー・マン)が監督した1948年のフィルム・ノワール「Raw Deal(ひどい仕打ち)」や1963年にNicholas Ray(ニコラス・レイ)が監督した「55 Days at Peking(北京の55日)」など70歳代まで多くの映画に出演しています。


「オール・ザ・キングスメン」日本語字幕版DVD
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「 オール・ザ・キングスメン」の英語版ペーパーバック
All The King's Men (Book)All the King's Men (paperback)


All The King's Men (2006)
ウィリー・スタークをショーン・ペンが、ジャック・バーデンをジュード・ロウが演ずるリメイクの「オール・ザ・キングスメン」は脚本家のSteven Zaillian(スティーヴン・ザイリアン)が監督する「All the King's Men( オール・ザ・キングスメン)」のリメイク作品です。 2005年の「The Interpreter(ザ・インタープリター)」でヒロインの警護に当ったシークレット・サービスや2008年の「Milk(ミルク)」でゲイの活動家だったハーヴィー・ミルクを演じたSean Penn(ショーン・ペン)が主役のウイリー・スタークを怪演します。 が、オリジナルに比べると動機があいまいな記者のジャックには「アルフィー」のJude Law(ジュード・ロウ)、「グッバイ・モロッコ」のKate Winslet(ケイト・ウインスレット)が魅力を出し切れなかったジョンの恋人のアン・スタントンを演じる他、「恋人はゴースト」のMark Ruffalo(マーク・ラファロ)が純粋だが最後に知事暗殺を企てるアダム・スタントン役で出演します。 アーウィン判事(Judge Irwin)を演じるのは重鎮Anthony Hopkins(アンソニー・ホプキンス)です。 アンソニー・ホプキンスは強烈な役柄が多く1990年に「The Silence of the Lambs(羊たちの沈黙)」でハンニバル・レクター教授(Dr. Hannibal Lecter)、1998年の「Meet Joe Black(ジョー・ブラックをよろしく)」でヒロインの父のビル(William Parrish)を演じていますが、1996年の「Surviving Picasso(サバイビング・ピカソ)」で79歳で30歳以上も年下のJacqueline Roque(ジャクリーヌ・ロック)と結婚した画家のPablo Picasso(パブロ・ピカソ)をそっくりに演じました。
オスカー候補にあがりそうなほど美しい「オール・ザ・キングスメン」のテーマ曲は1970年代から映画音楽を手掛けているJames Horner(ジェームス・ホーマー)の音楽です。 ホーマーはJames Cameron(ジェームズ・キャメロン)監督の作品では1997年に「Titanic(タイタニック)」や2009年には「Avatar(アバター)」の音楽も担当しています。
2007年の「オール・ザ・キングスメン」サウンドトラックの試聴が出来るサントラは「All the King's Men [Original Motion Picture Soundtrack]
☆2007年発売の「オール・ザ・キングスメン コレクターズ・エディショ」ン [DVD]はASIN: B000T6VJTG、「オール・ザ・キングスメン」 [Blu-ray]はASIN: B000T6VJSW

リメイクの「オール・ザ・キングスメン」 2006年
冒頭のシーンはスタークとジャックが乗る車の中、今すぐに決着をつけたい知事が判事を脅せるかどうかと議論の最中。この後の回想劇では、5年前にメーソン市で汚職を追及したスタークは掃除用品を売り歩く出納係でしたが教師の妻ともども追放の憂き目にあっていました。汚職校舎は欠陥校舎、たった一人で汚職に立ち向かったスタークは選挙なしでも市長になれそうな勢いでハリソン候補の手下である州の役人タイニーは知事に捺す。実はスタークは選挙の票割工作のための生贄、知事になりたいが、なれないと悟ったスタークは利用されたことに気づかなかった自分を笑う。演説には原稿をダフィー氏に渡して政治の腐敗により壊れた校舎の話しをするスターク。貧しき民衆を扇動しハリソンを叩き潰すと宣言し地滑り的勝利を納める。ダフィーを副知事とし非力な民の代理人として裕福層に宣戦布告をしたスタークは邪魔物となったが、初めて会った時に握手の後にウィンクしたスタークの記事ばかり書いて新聞社を辞めた記者のジャックが仲間となる。(果たしてジャックとスタークには共通点があるのか)

そうこうするうち、アーウィン判事が寝返った。そして冒頭のシーン、スタークとジャックがボディガードのシュガーボーイが運転する車で夜道を走る。スタークは新聞の記事「判事がマクマーフィーが掲げる知事の部下の不正の弾劾に賛同」を示して本気なのかを問い、追及させるなと脅すが意に介さない判事。そこでスタークは弾劾の中心的人物である判事の知られざる裏側、決定的な弱みを探るようにジャックに命じる。そのためジャックは親友アダムの妹で幼少時代の思い出の少女アン・スタントンに会うことに。(このシーンでは蓄音機で"If It Ain't Love"が流れる)まさか、この後、ジャックが傾倒するスタークに取られるとは予想だにせず。まさか、ジャックの母親の知人でジャックの名付親として目をかけてくれた判事は、ジャックが入手した25年前に地位を手にするため判事が欺いた男が妹に宛てた手紙により過去が暴かれると分かり自害する。(これは判事の言うごとくまさしくジャックを悲しませることに、まさか判事がジャックの実の父親だったなんて!全て終わった)
スタークがクラブで扇情的なアイスダンスを見る時に流れるタンゴ曲はGotan Projectの"Por una cabeza"。スタークが気に入ったスケートの女ルーシー。(元スケーターのNicole Bobek)
弾劾に対するスタークの鬼気迫る弾劾、貧民のためのウィリー・スターク病院建設(資金の隠れ蓑)、院長にスタントン知事の息子であるアダム医師を起用しルイジアナの上流階級の名を利用する。知事は悪でも病院は善だと言うスタークはアダムの妹のアンを奪いそのアンの進言でアダムが院長に就任することに。これが汚職嫌いの高潔なアダムの州知事射殺(暗殺)へとエスカレートする。(妹の情夫のヒモつきにはならん!)知事弾劾が否決されるもスタークもアダムもこの世から消える。
ルーシーは別として、スタークに裏切られた秘書で広報官で愛人でもあったセイディ・バーク(Patricia Clarkson)もスタークに汚されるアンも哀しき女たち。(ジャックが過去にアンとの人生を決める選択を仕損じたからか、選択には代償が伴うのだ)

All the King's Men (2006) Soundtrack
映画の音楽は2012年にEmma Stone(エマ・ストーン)も出演した「The Amazing Spider-Man(アメイジング・スパイダーマン)」を手がけたJames Horner(ジェームズ・ホーナー)です。スターク(ショーン・ペン)が歌った実在の州知事ヒューイ・ロングのスローガンの"Every Man a King"を含む魅力のサウンドトラックには、Howlin' WolfのSmokestack Lightnin'やJimmy Reedの"High and Lonesome"やLightning Hopkinsの"Trouble in Mind"やKeb' Mo'(ケブ・モ)の"Dangerous Mood"などのブルースの他、Hank Williamsの"Long Gone Lonesome Blues"やThe Boswell Sistersの"If It Ain't Love"、Sonny Lester & His Orchestraのストリップ曲"Seduction of the Virgin Princess"、Sidney Bechetの"Si tu vois ma mère(もし貴方が私の母に会ったなら)"、クラシック曲ではベートーベンの"Für Elise(エリーゼのために)"やモーツァルトの歌劇「The Marriage of Figaro(フィガロの結婚)」から"Porgi, Amor(神の愛よ)"や「Così fan tutte(女はみなこうしたもの...)」から"Una donna a quindici anni(女も15歳になったら)"にケイジャンやスワンプなどジャンルに事欠きません。