セクシーの夜 Sexy al neon (1962) Documentary

The sexy documentary: Girls, Night, and Sexy
一世を風靡した「夜」のルポ・シリーズ映画は1959年の「Europa di notte(ヨーロッパの夜)」を皮切りに1960年の「Il Mondo di notte(世界の夜)」と「Il Mondo di notte II、又はIl mondo di notte numero 2(続・世界の夜)」などの「夜」シリーズの映画が1960年代にイタリアで流行りました。1961年には北米と南米のナイトクラブをドキュメントしたAmerica di Notte(アメリカの夜)まであり、Marcello Giombini(マルチェロ・ジョンビーニ)が音楽を担当してLionel Hampton(ライオネル・ハンプトン)が出演しました。

Mondo Film
はい、寄ってらっしゃい!見てらっしゃい!
モンド映画という映画のジャンルがありますが人々の好奇心を満足させるためのドキュメンタリーのことで、モンド映画は主にイタリアやフランスで1959年から1970年まで100本ほど制作された夜のシリーズものだそうです。 映画の御代は見る前に払わねばなりませんが、いわば縁日や祭りの見世物的な映画ともいえるでしょうか。
1955年に”Aube A Papeete(Sunrise At Papeete/パペーテの夜明け)”という口笛のテーマ曲が日本で人気があった「Il Paradiso Del Sud-mare(南海の楽園)」とか1962年にはテーマ曲の”More”がヒットパレードにも登場したGualtiero Jacopetti(ヤコペッティ)監督の子豚に授乳する原住民の女などの衝撃的なやらせ映像集「Mondo cane(世界残酷物語)」とか、日本が整形美容で紹介されギョッとしましたが退屈な「La donna nel mondo(世界女族物語)」なんていうイタリア映画がありましたが砂漠演習の薬莢拾いは1957年のジラード事件を思い起こしました。
猟奇趣味の私はかなりの数のモンド映画を観ました。 その中に「世界の夜」に類似した1962年の「セクシーの夜(Sexy al neon)」があったのです。イタリア語のタイトルを直訳するとネオン街の魅惑でしょうか。 この映画は多分殆どの人が知らないでしょうがマニアには人気があるそうです。 ちなみに最低最悪で血生臭いモンド映画というと1981年に公開されたイタリア映画「Cannibal Holocaust(食人族)」という反吐が出そうな内容の最たるヤラセ作品で世界では上映禁止などになりましたが日本では入りが良かったとか。 1977年の「Ultimo mondo cannibale(カニバル/世界最後の人喰い族)」、1985年の「Inferno in diretta(サバイバル・ショット/恐怖からの脱出)」と三部作の作品で監督は全てRuggero Deodato(ルッジェロ・デオダート)でした。
☆Alessandro Blasetti(アレッサンドロ・ブラゼッティ)が監督した1959年の「Europa di notte(ヨーロッパの夜)からGianni Proia(ジャンニ・プロイア)が1976年に監督した「Mondo di notte oggi(ワールド・バイ・ナイトTODAY)」までの映画ポスターが見られるSexy al neon – Jahsonic.com(”Sexy al neon”は3番目の画像)
Europa di notte Photos with The Platters’ Sincerely – YouTube

Europa di notte (1959)
モンドご本家の「ヨーロッパの夜」でThe Platters(ザ・プラターズ)が歌った”You’ll never know”はとても素晴らしかったことを覚えています。 その他、プラターズの”My dream”などをはじめ、イギリスのロックバンドから手品師やフレンチカンカンやフラメンコダンサーなど一流の芸人が出演して魅了されます。
クレイジー・ホースのマリリン・モンローことDolly Bellのパーフォーマンスもいいですが、一番ショッキングだったのはラストの方でセクシーなストリッパーがブラジャーを剥ぎ取ったらブルーボーイ(男性)だと分った時! セクシーで綺麗な女性だとばかり思ったのに。 これも初体験でしたが、以前観た1959年の映画「La dolce vita(甘い生活)」の中でジャーナリスト(マルチェロ)のパパがパリに遊びに行った時のこの話をして「驚いた!」と言うセリフがありました。 この女装ダンサーが1963年から3度ほど来日して大好評だったパリのキャバレー「Carrousel de Paris(カルーゼル)」の悲劇の踊り子かどうかは不明です。 「ヨーロッパの夜」では”サ・セ・パリ”を歌った完璧なボディのカルーセルのMadam Coccinelle(コクシネル)が有名でした。 ”パリのメリーゴーランド”という意味のショー・クラブの踊り子一行は4度目だかの来日の帰国時に乗った飛行機事故で全員死亡したとか。 この女装ダンサーご一行にあやかってか、大阪にジョーパブ「カルーゼル」が開店しましたがそこのダンサーが1967年頃ニューハーフ(性転換)としてデビューした時にカルーセル麻紀を名乗ったそうです。 性転換も流行したのか、1964年には売春防止法下の男娼たちに産婦人科医が性転換手術を行ったブルーボーイ事件まで発生しました。
* Europa di notte FILM COMPLETO – YouTube
Carrousel de Paris Site Officiel
カンツォーネのDomenico Modugno(ドメニコ・モドゥーニョ)がギター片手に歌いながらイタリア案内をし、イギリスのロカビリーバンドのColin Hicks & The Cabin Boysが”Giddy Up A Ding Dong”を歌い、手品やピエロのショーやフラメンコ・ダンスやストリップなども含め盛りだくさんのお楽しみですが、そのなかで、David Lynch(デヴィッド・リンチ)がThe Platters(ザ・プラターズ)として出演している?と思ったら、当然デヴィッド・リンチ監督ではなくドゥーワップのボーカリストで初期のプラターズのテナーを担当した歌手でした。(*^.^*) ですがそのプラターズのバス担当でしたが2012年に亡くなったHerb Reed(ハーブ・リード)が出演しています。
Carrousel de Paris on “Europa di notte” – YouTube
Mata-Hari like Lady Phu-qui-cho at Crazy Horse Saloon – YouTube
Lily Niagara at Crazy Horse Saloon – YouTube
Belly Dancer The Princess Badia – YouTube
Dolly Bell at Crazy Horse Saloon – YouTube

Sexy al neon
「セクシーの夜」はパリ、ローマ、ハンブルグ、ロスアンゼルスと世界の町に花開くナイトクラブのショーを楽しませてくれるEttore Fecchi(エットレ・フェッキ)監督ドキュメンタリーで世界のナイトショーを収めた「夜シリーズ」ですから出演者は全て無名です。 ただし撮影はCatherine Spaak(カトリーヌ・スパーク)が主演した1962年の「La Voglia Matta(狂ったバカンス)」を手掛けたErico Menczer(エリコ・メンツェル)でした。
それに主にヨーロッパの夜を紹介していますから、先ずはフレンチカンカン、そしてエスメラルダの官能ショーから、黒人娘ネドラ・デュヴァルの貞操帯ストリップ、女を猛獣のように扱いムチをふるうサディスティックなヌードショー、南米のサンバ、日本からは女性のアクロバットなどなど盛りだくさんの内容だそうです。 多様なショーからストリップ主流になっていったこれらの夜シリーズ映画はポルノ映画の台頭により消えていきました。
“怪しくゆれる女体の乱舞”をお楽しみ下さい。(レコードの解説から引用)

Ettore Fecchi
この後は脚本も手掛けたエットレ・フェッキ監督は1962年の「セクシーの夜」の続編として1963年に同じくエリコ・メンツェルが撮影を担当した「Sexy al neon bis」も監督していますが、3本目の作品が同年の「Notti nude」となるとかなりの裸好きらしいです。 とはいえアメリカを基盤とした映画のデータベース「IMDb」以外には本国イタリアやフランスの映画データベースのサイトには情報が全くありません。

Sexy al neon – Soundtrack – Victor SS-1366
Sexy Trumpet / Sexy Twist
Sexy al neon Soundtrack
Marcello Giombini – “Sexy Twist” from Sexy al neon Soundtrack – YouTube

上記の画像はどうにもジャケットカバーに使用されている写真が気に入りませんが私が所有している45回転EP盤レコードで日本でヴィクターから発売されたサントラです。
イタリア映画「セクシーの夜(Sexy al neon)」のMarcello Giombini(マルチェロ・ジョンビーニ)が指揮したオーケストラが演奏したサウンドトラックですが、日本ではこの他にもVictor SS-1346やRCA Records SS-2023などが発売されたそうです。
幻のサウンドトラックと呼ばれる「セクシーの夜」のA面に”セクシー・トランペット”、B面に”セクシー・ツイスト”を収録していますが、セクシーというタイトルのわりにはさしてセクシーでもない曲で、”セクシー・トランペット”の方はセクシーというよりはもの悲しい単調なトランペットのイントロがやや間延びしてその後にオーケストラが入ってきます。
“Sexy Trumpet”と”Sexy Twist”が収録された「Sexy al neon」サントラのイタリア盤オリジナル「GIOMBINI MARCELLO – SEXY AL NEON」 という45回転レコード(or 7inch (SP))が1962年にRCA Victorから発売されたそうですが、そのジャケットの表紙ではセクシーな女性ダンサーの写真で、中袋は黒人のダンサーの写真が使用されています。 現在の価格は50.00 €(5000円強)だとか。

Marcello Giombini
「アメリカの夜」と「セクシーの夜」の音楽を担当したマルチェロ・ジョンビーニはこの後の1967年の「Ballata per un pistolero(拳銃のバラード)」などのマカロニ・ウエスタン映画の音楽で「夜」シリーズの監督よりは有名です。 1975年の黒人奴隷映画の”Mandingo(マンディンゴ)”の1976年のイタリア版で南部農園主(男女)が奴隷(男女)に劣情を催す超過激なポルノ「Mandinga」(cattivo gusto e esplicito)をはじめ、エロティックなイタリアのホラーや猟奇映画の音楽をたくさん手掛けています。(映画「マンディンゴ」についてはダニエル・ダリュー Danielle Darrieux