リー・ワイリー Lee Wiley

Lee Wiley (1908 -1975)
オクラホマ出身のリー・ワイリーはスウィング時代の1930年代からに活躍していた初期の白人女性ジャズシンガーの一人です。 エレガントで時には官能的で燃ゆる炎を内に秘めたようなリー・ワイリーの洗練された歌声は今聴いても色褪せることなく心地よく響き、聴く人々の胸を打ちます。 押さえた歌唱法と巧みなアドリブで当時のジャズ・ミュージシャンたちに愛されたジャズ歌手でした。 リー・ワイリーがまだティーンエイジャーの時から参加したLeo Reisman(レオ・ライスマン)の楽団で”Take It From Me”と”Time On My Hands”と自作の”Got The South In My Soul”の3曲を録音した他にも、Paul Whiteman(ポール・ホワイトマン)楽団やCasa Loma Orchestra(カサ・ロマ・オーケストラ)とも共演したそうです。 作曲家のVictor Young(ヴィクター・ヤング)とのコラボでは”Got The South In My Soul”や1950年代のヒットだった”Anytime, Anyday, Anywhere”があります。

Lee Wiley with Eddie Condon and Bobby Hackett
リー・ワイリーは初期のレコーディングでバンジョー演奏で有名なシカゴ・スタイルのホットジャズのバンドリーダーだったEddie Condon(エディ・コンドン)と共演しました。 この時期、エディ・コンドンは白人ピアニストのJoe Bushkin(ジョー・ブーシュキン)も参加していたBunny Berigan Boys(バニー・ベリガンの楽団)でギターを担当していたこともありましたが、1940年代中頃から1960年代には酒と女好きで情熱的なコルネット奏者の’Wild’ Bill Davison(ワイルド ・ ビル ・デヴィソン)とも録音していました。
1930年代からエディ・コンドンとも共演していたトランペットやコルネットとギターを演奏したBobby Hackett(ボビー・ハケット)とリー・ワイリーは1950年に評判をとった10インチ(30cm)LPレコードの「Night in Manhattan」をレコーディングしていますが、1954年に開かれた最初のNewport Jazz Festival(ニューポート・ジャズ・フィスティバル)ではリー・ワイリーがボビー・ハケット・セクステットとエディ・コンドン楽団をバックで出演したそうです。
Lee Wiley with Eddie Condon’s Orch. – The Man I Love (1944) – YouTube
Lee Wiley with Bobby Hackett – Suger – YouTube

Lee Wiley sings Manhattan
リー・ワイリーの曲ではメローな”The Man I Love(私の彼氏)”も良いですが、私が一番好きなのはやはり”Manhattan(マンハッタン)”です。 Harlem Nocturne(ハーレム・ノクターン)のテナー・サックスを聴くと妖しいハーレムの夜を想像しますが、このリー・ワイリーが歌う”マンハッタン”も同様でマンハッタンの未だ見ぬ情景を想像してゴージャスな気分に浸っています。 ”Manhattan”という曲は1920年以来コンビを組んでいるマンハッタン出身のLorenz Hart & Richard Rodgers(ロレンツ・ハートとリチャード・ロジャーズ)の初ヒット曲で、リー・ワイリー以外にはHelen O’Connell(ヘレン・オコーネル)、Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)、Dinah Washington(ダイナ・ワシントン)、Blossom Dearie(ブロッサム・ディアリー)、Rosemary Clooney(ローズマリー・クルーニー)、男性歌手でもBing Crosby(ビング・クロスビー)やMel Tormé(メル・トーメ)などが歌いました。 昔、私が購入した「マンハッタン」というとトロント出身のGeorgie Auld(ジョージー・オールド)が1951年に録音したテナーサックス・バージョンでした。
リー・ワイリーのステージは1972年のCarnegie Hall(カーネギー・ホール)が最後で、その3年後に67歳で亡くなりました。
Lee Wiley – Manhattan (1951) – MetaCafe
Lee Wiley – Manhattan (1951) – YouTube
Lee Wiley – Manhattan (LIVE 1951 and 1952) – YouTube

Songbooks by Lee Wiley
作曲や作詞も手掛けたというリー・ワイリーでしたが、画期的なアイデアといえるのは当時のアルバムでは珍しかったソングブック形式を取ったことです。 それぞれのアルバムが一人の作曲家の作品集になっていましたが、リー・ワイリーはポップス曲を収録するのは良しとしなかったそうです。 例として1939年に78回転レコードで8曲のGershwin(ジョージ・ガーシュウィン)ナンバーを録音し、1940年にはCole Porter(コール・ポーター)、Richard Rodgers & Lorenz Hart(ロジャース&ハート)のナンバーは1940年と1954年、1943年にはHarold Arlen(ハロルド・アーレン)、Vincent Youmans(ヴィンセント・ユーマンス)とIrving Berlin(アーヴィング・バーリン)は1951年にアルバム制作しています。 レコーディングの演奏メンバーにはBunny Berigan(バニー・ベリガン)、Bud Freeman(バド・フリーマン)、Fats Waller(ファッツ・ウォーラー)、Billy Butterfield(ビリー・バターフィールド)、Bobby Hackett(ボビー・ハケット)、Eddie Condon(エディ・コンドン)などいました。 なかでもスウィング時代に有名だったピアニストでバンドリーダーのJess Stacy(ジェス・ステイシー)とは数年間でしたが40年代の中頃に結婚したそうです。 永遠ともみえたカリスマ性を持ち備えていたリー・ワイリーでしたが、時代の波には逆らえず、1950年代後期のロックンロールの台頭に伴いスウィングジャズと共にリー・ワイリーも消えていきましたが、1957年のアルバム「A Touch of the Blues」を最後になったそうです。

Songbooks & Quiet Sensuality: 1933-1951
ページトップの画像はリー・ワイリーの懐かしい”Manhattan”をはじめ”More Than You Know”など過去の甘いラヴソング21曲を集めてリマスターした初のアルバムですが日本ではもう販売していないようです。 試聴はSongbooks & Quiet Sensuality: 1933-1951 – CD Universe

Night in Manhattan
ナイト・イン・マンハッタン
Night in Manhattanオリジナル盤が1950年録音というリー・ワイリーの名を不動にしたten-inch albumの国内盤で演奏はBobby Hackett and Joe Bushkin(ボビー・ハケットとジョー・ブーシュキン)の演奏です。 リンク先ではManhattan(マンハッタン)をはじめStreet of Dreams(ストリート・オブ・ドリームス)やSugar(シュガー)など全12曲が試聴できます。
☆ちなみにオリジナルは1998年リリースの「Music of Manhattan」(ASIN: B00000AFAN)でも1950年から1952年に録音されたStreet of DreamsやManhattanやSugarなど全23曲が試聴できます。

West of the Moon
ウエスト・オブ・ザ・ムーン
wiley3.jpgオリジナル録音が1956年のアルバムにはLimehouse Blues(ライムハウス・ブルース)やAs Time Goes By(時のたつまま)など全12曲が収録されています。 リンク先で試聴できます。 輸入盤では上記の14曲の他にStars Fell on AlabamaとDo You Know What It Means to Miss New Orleans?が追加されています。
Lee Wiley – Do You Know What It Means To Miss New Orleans? – YouTube

Night in Manhattan/Sings Vincent Youmans/Sings Irving Berlin by Lee Wiley
Night in Manhattan/Sings Vincent Youmans/Sings Irving Berlin (Audio CD – 2001)
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Columbia時代の10インチLP盤3枚を合わせてCD化したリマスター盤で、ManhattanからMore Than You KnowやStan Freeman(スタン・フリーマン)とのデュオのHow Deep Is the Ocean?(海は愛よりも) など全24曲を収録しています。 3枚のLPとは1951年の「Night in Manhattan」と1952年の「Sings Vincent Youmans」、そして1952年の「Sings Irving Berlin」で、演奏メンバーはコルネットのBobby Hackett(ボビー・ハケット)、Joe Bushkin & His Swing Strings(ジョー・ブーシュキンとスウィング・ストリングス)、ピアノにCy Walter(サイ・ウォルター)などで、Rosemary Clooney(ローズマリー・クルーニー)の大ヒット曲”Come on-a My House”の録音でチェンバロ(harpsichord)を演奏したスタジオミュージシャンのStan Freeman(スタン・フリーマン)も参加しています。 リー・ワイリーのソングブックのタイトルとなっている二人の作曲家のうち、Irving Berlin(アーヴィング・バーリン)は1911年に作曲した”Alexander’s Ragtime Band(アレキサンダーズ・ラグタイム・バンド)”や1942年にBing Crosby(ビング・クロスビー)が主演した映画”White Christmas(ホワイト・クリスマス)”などで有名ですが、Vincent Youmans(ヴィンセント・ユーマンス)も1920年のミュージカルで歌われた”Tea for Two”の作曲者として知られています。”Tea for Two(二人でお茶を)”は1950年の同名映画で使用され、1958年にはTommy Dorsey(トミー・ドシー)のチャチャチャ・バージョンがチャートでトップテン入りしました) 私が知っているなかでも”Carioca”、”Sometimes I’m Happy (Sometimes I’m Blue)”、”More Than You Know”など素晴らしい曲があります。
試聴はNight in Manhattan – CD Universe

Listen to The Chronicle of the Great Jazz Singer: Lee Wiley
Lee Wiley – Body and Soul (1945) – YouTube
Lee Wiley – Baby Won’t You Please Come Home (1951)- YouTube
Lee Wiley – My Melancholy Baby (1957) – YouTube

レトロなリー・ワイリーを聴こう!
リー・ワイリーが1931年にLeo Reisman & His Orchと録音した”Take It From Me “や1933年にVictor Young Orchと録音した”I Gotta Right To Sing The Blues、1934年にデッカで録音した”I’ll Follow My Secret Heart”が聴けるLee Wiley – A JazzAnthology(検索窓にLee Wileyと入力してSubmitボタンをクリック)
このページトップの画像「Songbooks & Quiet Sensuality: 1933-1951」と類似したジャケットで1985年にTono labelからリリースされたLP「Legendary Lee Wiley」にレアな16曲を追加した全25曲を収録してCD化(Stars Fell on Alabamaを除く15曲)されたアルバムの「Legendary Lee Wiley: Collector’s Item 1931-1955」や「What Is Love?」に収録されているリー・ワイリーの”Careless Love”が聴けるwfmuラジオのプレイリストはDoug Schulkind’s Give the Drummer Some July 6, 2001(Hear this showをクリック、ファイルを開く、クリップポジションを34:26に移動 RealPlayer又はVLCで開く)

リー・ワイリー Lee Wiley」への8件のフィードバック

  1. 冒頭の生没年と、途中の「76歳で亡くなった」が矛盾してますが、、、(^_^)    この人、確かインディアンの血が入っていると記憶しています。 Manhattan は本当にいい曲です。ミッキールーニー主演のロレンツハートの伝記映画(名前失念)にも、この歌を二人で作詞作曲するシーンがありましたね。歌詞の韻が実にトリッキーでうない。

  2. ヒロヤスさん、重大なご指摘を有難うございます。早速訂正致します。リー・ワイリーの歌声に魅された私が少しでも長生きして欲しかったからサバ読んだ、などとは言い訳しませんが。

  3. koukinobaaba さん
    リー・ワイリーの「アラバマに星落ちて」ですが、私はこの歌を学生時代(半世紀以上前です)に、当時ルイ・アームストロング・オールスターズにいたジャック・ティーガーデンのトロンボーンと歌で聞いて完全に痺れました。ワイリーの歌を聞いたのはずっと後になってからですが、大変繊細で情感たっぷりの歌い方でこれも実に良かった。この歌は他に沢山の人が歌っておりますが、この二人には到底かなわないでしょう。ところでワイリーとティーガーデンは年も近いし活躍時期もほぼ同じだと思いますが、共演したことはあるのでしょうか? もしあるのなら是非聞きたいと思っております。

  4. 「マーベル」さん、先だってのDVDの件では失礼をしました。
    ところで日本に1958年と1959年に来日したJack Teagardenの歌は本当にはしびれます。Lee Wiley とは「Father Of Jazz Trombone」というアルバムでEddie Condon & His Orchestraと共に演奏しているそうです。
    ジャック・ティーガーデンの”Stars Fell On Alabama”はhttp://www.youtube.com/watch?v=AVObfmOSNGg で聴けます。

  5. koukinobaaba さん
    ご教示感謝します。早速YoutubeでTeagarden,Wileyの”Stars Fell On Alabama”を聞きました。ついでにFrankie Laine,Doris Day,Ricky Nelsonのも聞いてみました。便利なものですね。”Father Of Jazz Trombone” はAmazonで中古品を見つけて注文しました。何しろ共演者が超一級揃いでしたので。先ずは御礼まで。

  6. 「マーベル」さん、こちらこそ私ごときの情報に対応していただいてとても嬉しいです。こうしてみると私のブログの記事も充分に調査済みとはいえないことが分ります。コメントを頂いて大変勉強になりました。有難うございます。

  7. ティーガーデンとワイリーの共演を聞きました。曲はガーシュインの ” Someone to watch over me ” で、ワイリーが情感たっぷりにワン・コーラス歌い、サビのところでティーガーデンがソロを取って最後はワイリーが締めるという、最初のコルネット(多分ボビー・ハケット)の短いイントロを除いては御両人の「二人舞台」みたいな演奏でした。
    それのしてもこの ” Father Of Jazz Trombone ” というアルバムは、1928年から47年までの72曲が入っているんですが、シカゴスタイルのビッグネームは全員顔を揃えているという眼の玉の飛び出るようなラインナップですね。ルイ・アームストロングまで(レコーディング・コンボですが)入ってます。良いものをお教え頂き感謝します。

  8. 「マーベル」さんが「Father Of Jazz Trombone」をそれほど気に入って下さるとは思いもよりませんでした。聴く耳をお持ちである証拠でしょう。当方も嬉しいです。

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