ハーレム・ノクターン Harlem Nocturne

Vol. 1-Lost Instrumentals (Harlem Nocturne)(ASIN: B000A1JQ5O) – Amazon.com
The Viscounts - Harlem Nocturne
The Viscounts – Harlem Nocturne – YouTube

Earle Hagen: the composer of Harlem Nocturne
“ハーレム・ノクターン”はテナー・サックス演奏をフィーチャーした有名なジャズのスタンダード曲で、テレビの私立探偵ドラマのテーマ音楽で有名になったEarle Hagen(アール・ヘイゲン)が作曲した曲です。 ”Harlem Nocturne”といえば日本ではなんといってもSam The Man Taylor(サム・テイラー)の演奏で知られていますが、米国ではGeorgie Auld(ジョージー・オールド)でヒットしました。アール・ヘイゲンはラジオ番組のために”ハーレム・ノクターン”を1940年に作曲しましたが、1941年にビッグバンドのRandy Brooks(ランディ・ブルックス)がバンドのテーマ曲として取り上げたものの、1953年にHerbie Fields(ハービー・フィールズ)がテナーサックスでこの曲をヒットさせるまでには13年待つことになるのでした。
Randy Brooks – Harlem Nocturne (Decca 1946) – YouTube
ハービー・フィールズが演奏するアール・ヘイゲン作曲の”ハーレム・ノクターン”は「Herbie Fields Septet Live at the Flame Club, St. Paul, 1949」(ASIN: B00004TJ9V)などに収録されているそうです。 ハービー・フィールズはテナーサックスだけでなくクラリネット奏者でもある多才なミュージシャンでバンドリーダーでしたが、スウィングジャズ時代にはちょっと出遅れて1947年には解散しています。 ビルボードヒットにはなりませんでしたが1920年代の”Dardanella”はもっとも人気があった曲だそうで、他にはYears And Years AgoやConnecticutなどのヒットで知られるそうです。(Herbie Fields “His Orchestra and Quintet” (1946-1947)
♪ Herbie Fieldsの”Harlem Nocturne”が聞ける42 Versions of Harlem Nocturne – Herbie Fields and His Orchestra – Harlem Nocturne – wfmuでHerbie Fieldsで検索して三角の再生ボタンをクリック。(ハーレムノクターンの集大成のようなこのページではRandy Brooks、ohnny Otis、Ray Anthony、Les Brown、Quincy Jonesといったビッグバンド、 Earl Bostic、Illinois Jacquet、Sam Taylor、Willis Jackson、Boots Randolphといったテナーサックス演奏、Herbie MannやEsquivel、The Viscounts、The VenturesやChakachasやEsquivelといったロックバンド、Mike Hammer Themeなど盛りだくさん!)
Harlem Nocturne – Herbie Fields
試聴ができるCDで日本のAmazon.co.jpでハービー・フィールズのハーレム・ノクターンが収録されている「Jazz Gold(ジャズゴールドのディスク:2-6)」
ハービー・フィールズは1944年にHelen Humes(ヘレン・ヒュームズ)が、1945年にWynonie Harris(ワイノニー・ハリス)が録音した時にバックをつとめた他、ピアニストのRoy Eldridge(ロイ・エルドリッジ)、Bill Evans(ビル・エヴァンス)、Thelonious Monk(セロニアス・モンク)などと共演していて、1952年から1958年のセッションがあり34曲がリリースされました。

ワイノニー・ハリスが参加したことがある白人(ギリシャ系)R & BのJohnny Otis(ジョニー・オーティス 2012年1月死亡)楽団のスイング(スウィングジャズ)時代の人気曲が1945年の”Harlem Nocturne”だったそうです。(アルトはRene Blochなど) 演奏はApollo Theaterでの実演が録音されていますが、ヘビーなテナーサックス演奏の”Harlem Nocturne”はジャズのHerbie Mann(ハービー・マン)からラテンのTito Puente(ティト・プエンテ)など多くのジャンルのミュージシャンたちが各自のバージョンでハーレム・ノクターンを演奏したのです。 ハンサムなトランペッターのRay Anthony(レイ・アンソニー)の演奏も素敵。  ちなみに私の手持ちのGeorgie Auld(ジョージー・オールド)はというと残念ながら1953年の「ハーレム・ノクターン」ではなくて、Coral DC 1023の “Manhattan“(←1952年)と”Body and Soul 1955“ 日本で販売されたジョージ・オールドの45回転ドーナツ盤(UA-35)はハーレムノクターンとマンハッタンの組み合わせでした。

Nocturne
ノクターンとは夜想曲という意味の情緒的な美しい曲で、主にはFrédéric Chopin(ショパン)に代表されるクラシックのゆったりしたピアノ曲ですが、最初はアイルランドの作曲家のJohn Field(ジョン・フィールド)がピアノ・ソロの小品を書きノクターンの形式を生み出しそれをショパンが取り上げたそうです。
Nocturne for Piano No 9 – YouTube
Nocturne in C# minor – YouTube

可愛い顔のジョン・フィールドの肖像画がCDジャケットカバーになっているアルバムは「John Field “The Complete Nocturnes“」、試聴は「Field: Nocturnes (Complete) – Mícéal O’Rourke」 美しいノクターンの数々を聴いてみて下さい。
ハーレム・ノクターンならHarlem(黒人街)の夜想曲ですね。 さあ、目をつぶってこの曲を聴きましょう。 きっと真夜中に煙の蔓延した事務所に座っている私立探偵が見えてくるでしょう。

“A nocturne for the blues played on a broken heart string…”と1963年にMel Torme(メル・トーメ)が歌ったHarlem Nocturneの歌詞はHarlem Nocturne Lyrics – The Guitarguy’s Golden Classics

Harlem Nocturne: The theme of Mickey Spillane’s Mike Hammer
アール・ヘイゲンが作曲したハーレム・ノクターンは1958年から放映されたCBSテレビ・シリーズ「Mickey Spillane’s Mike Hammer(私立探偵マイク・ハマー)」のテーマ曲に使用されて、その後このハードボイルドな曲はジャズのスタンダードとなりました。
☆テレビシリーズの私立探偵マイク・ハマーについてはAudio-Visual Triviaの「私立探偵マイク・ハマー
Listen小説やテレビショーを観て”Mickey Spillane(私立探偵マイク・ハマー)”を検証したJohn Zorn(ジョン・ゾーン)はアルバムの「Spillane」(ASIN: B000005IYR)でアール・ヘイゲン作曲のハーレム・ノクターンを演奏しています。
試聴はJohn Zorn – Spillane Soundtrack – Recochoku.jp

アール・ヘイゲンは1965年のテレビシリーズ「I Spy(アイ・スパイ)」やThe Andy Griffith Show(アンディ・グリフィス・ショー)のテーマ曲”The Fishin’ Hole”も手がけました。
アール・ヘイゲンが1968年に”I Spy”(アイ・スパイ)でエミー賞を受賞した時の写真が見られるPhoto of Earle Hagen receives an Emmy for the “Laya” episode of I Spy

「ハーレム・ノクターン」の演奏スタイルはいくつかあります。
Duke Ellington(デューク・エリントン)、Woody Herman(ウッディ・ハーマン)、Ray Anthony(レイ・アンソニー)、Les Brown(レス・ブラウン)、Stan Kenton(スタン・ケントン)や、1960年にDragnetやPeter Gunnなどと一緒に「Per-cus-sive Jazz Doctored for Super Stereo」というLP盤に録音したヴィヴラフォンとパーカッションで知られたPeter Appleyard(ピーター・アップルヤード)のようなビッグバンド・タイプの演奏。
アルトサックス奏者のEarl Bostic(アール・ボスティック)やSonny Stitt(ソニー・スティット)、そしてテキサステナーのIllinois Jacquet(イリノイ・ジャケー)のようなジャズテナー演奏。 ハーレム・ノクターンを吹き込んだMGMレコードでのアルバム「Blue Mist」が有名なSam The Man Taylor(サム・テイラー)やWillis “Gator” Jackson(ウィリス・ジャクソン)とか、Sil Austin(シル・オースティン)やGeorgie Auld(ジョージ・オールド)のようなムードテナーやイタリアの白人アルトサックス奏者のFausto Papetti(ファウスト・パペッティ)などなど。
そしてR & BソウルのKing Curtis(キング・カーティス)からロック系のThe Viscounts(ザ・ヴィスカウンツ)や1960年のThe Ventures(ザ・ベンチャーズ)や、”Jungle Fever”で有名なラテンソウルのThe Chakachas(チャカチャス)などです。 最近ではファルセット歌手でもあるChris Isaak(クリス・アイザック)と組んでいたJohnny Reno(ジョニー・レノ)なんか。

Duke Ellington – Harlem Nocturne (1950) – YouTube
Ray Anthony – Harlem Nocturne – YouTube
Fausto Papetti – Harlem Nocturne – YouTube
The Ventures – Harlem Nocturne – YouTube
The Chakachas – Harlem Nocturne – YouTube

The Viscounts plays Harlem Nocturne
ページトップの画像はオリジナルが1965年というVulture RecordsからリリースされたThe Viscounts(ザ・ヴィスカウンツ)のアルバム「Harlem Nocturne」のCD(Amazon.com ASIN: B000A1JQ5O)です。 ボーナストラック3曲を追加して全30曲を収録していますが入手困難なため、リンク先は2012年発売のAmazon.co.jpにあるVultureレーベルの「Vol. 1-Lost Instrumentals」に変更します。(こちらのCDのAmazon.comでのタイトルはLost Instrumentals 1) アルバムの”Harlem Nocturne”は最初のリリースが1960年で再リリースが1965年(1966年?)といわれています。
Larry Vecchio(ラリー・ベッキオ)のオルガンがエロティックでHarry Haller(ハリー・ハラー)がテナーを吹くザ・ヴィスカウンツの”ハーレムノクターン”が収録されて1998年にリリースされたジャズとロックンロールのアルバムは「The Golden Age Of American Rock & Roll, Vol. 7」(ASIN: B00000DMGA)です。
試聴はThe Golden Age Of American Rock & Roll, Vol. 7 – CD Universe
♪ The Viscounts – Harlem Nocturne (The Rock ‘N’ roll Era)
New Jersey(ニュージャージー州)のロックバンドである”The Viscounts(ザ・ヴィスカウンツ)”が演奏した”ハーレム・ノクターン”が1960年にチャート入りしたのはAmy Recordsからのリリースだそうですが、最初はMadison Recordsで吹き込まれたとか。(それはCD化されていないそうです) レーベルAmyはBell Records所有のMala (Ronnie & the Daytonas)の姉妹会社なんだそうです。
ザ・ヴィスカウンツのメンバーはイントロが忘れられないエコーを効かせたメインギターのBobby Spievak(ボビー・スピヴァク)とベースがJoe Spievak、オルガンがLarry Vecchio(ラリー・ベッキオ)でドラムがClark Smith(クラーク・スミス)、ハーレムノクターンでは重要なテナーサックスがHarry Haller(ハリー・ハラー)です。
ジャズロックのバンドであるザ・ヴィスカウンツのハーレム・ノクターンが試聴出来るフィフティーズのロックンロールを収録したアルバムの「Loud, Fast & Out Of Control: The Wild Sounds of ’50s Rock [Box Set] – CD Universe

ヴィスカウンツのHarlem Nocturneはアルバムのカバー画像がハードボイルド、1950年代にトリップする犯罪ドラマのテーマを収録したノワール・テーマのコンピレーション・アルバムの「Swing for a Crime」(ASIN: B000K8FSIG)にも収録されています。(LPもあり) このCDはR&BやRock&Rollからラテンやジャズまでを取り合わせたフランスのイージーリスニング・アルバムでSy Oliver(サイ・オリヴァー)のStu’s Blues、Les Baxter(レス・バクスター)のBoomada、Barney Kessel(バーニー・ケッセル)のHoney Rock、1965年のSandy Nelson(サンディ・ネルソン)をカバーしたThe Hollywood Persuaders(ハリウッド・パーシュエーダーズ)のDrums A-Go-Go、Patsy Raye & the BeatnicksのBeatnick’s Wish、”tacos and t-shirts, bongos and burgers”と掛け声が入るRic GrayのPimples and Braces、Art Van Damme(アート・ヴァン・ダム)のVoodoo Dollなど全18曲を収録しています。

☆オリジナルのアルバムは見つかりませんがAmazonco.jpの「The Singing Detective」(ASIN: B0000C23I8)のサウンドトラックにもヴィスカウンツのHarlem Nocturneは収録されています。 ロバート・ダウニー・Jrが主演した2003年の映画「The Singing Detective(歌う大捜査線)」では冒頭とフィルムノワールの場面で流れました。 ザ・ヴィスカウンツの演奏するハーレム・ノクターンはサントラにも収録されていますが、この前にスティーヴン・キング原作のSF・ホラーをJohn Carpenter(ジョン・カーペンター)が監督した1983年の「Christine(クリスティーン)」でも主人公が所有する4灯とテールフィンが特徴の赤い58年型プリムス・フューリー(1958 Plymouth Fury)が呪いのポンコツから蘇った時や実行した恐怖の復讐シーンで使用されました。 クリスティーンという優雅な名前ながら自動車版ドラキュラのような魔性の女は怪しく輝き、ガソリンをかけたって燃えたりしません。
OK, Show me!
The Viscounts’ Harlem Nocturne in Christine – YouTube

Harlem Nocturne in the films
扇情的なサム・テイラーの”ハーレム・ノクターン”がストリップの伴奏に使用されることがよくありますが、映画のサウンドトラックでもたくさん使用されています。 演奏はサム・テイラーではありませんでしたが50年代のシカゴを舞台にした1987年の「The Big Town(ビッグタウン)」ではストリッパーを演じたDiane Lane(ダイアン・レイン)がダチョウの羽を巧みにふるわせてセクシーに踊っています。(キャッハ!)
Diane Lane Dancing to Harlem Nocturne in The Big Town – YouTube

Harlem Nocturne Various
上記の他には一風変わったバージョンで”The King of Space Age Pop”と呼ばれるメキシコのEsquivel(エスキヴァル)が演奏するコーラス入りの”Harlem Nocturne”が1995年の「Four Rooms(フォー・ルームス)」(Room 309 The Misbehavers)で花火の夜にシャンパンをラッパ飲みして留守番をしていた子供たちがベッドを移動させたら売春婦の死体があったシーン(Four Rooms The Misbehavers Dead Whore)の冒頭で流れます。(キャッハ!) エスキヴァルのハーレムノクターンが流れる両親が出かけた後の花火のシーン(セリフはスペイン語、02:08 開始から3分の1辺り)
他にもまだある! 1985年の「Tango & Cash(デッドフォール)」ではKurt Russell(カート・ラッセル)が演じる「ごっついオカマの登場シーン」(キャッハ! 映画音楽はHarold Faltermeyer、演奏はDarktown Strutters、ビデオの台詞はロシア語だが、女装で逃げようとするキャッシュに絡む警官にタンゴの妹(クレオパトラのキャサリン)がアタシの女に手を出すな!すると警官が3Pどうだ?で、二人にタバコを投げられるシーン) 類似した女装と警官シーンのある1975年のおバカ映画「Darktown Strutters(ファンキー・モンキー・ベイビー)」で演奏したドイツ出身のHarold Faltermeyer(ハロルド・フォルターメイヤー)で”Harlem Nocturne”(ドラムのイントロ・バージョン)が流れます。 その他、1989年の「Last Exit to Brooklyn(ブルックリン最終出口)」では中盤に自動車に撥ねられて死ぬジョージエット(ゲイ)が開いたパーティのシーンでジョニー・オーティスのバージョンが流れました。

ハーレム・ノクターン色々
Casa Loma Orchestra(ザ・カサ・ロマ・オーケストラ)のサックス奏者だったGlen Gray(グレン・グレイ)が演奏する”Harlem Nocturne”もあります。
Harlem Nocturne – Glen Gray and The Time Life Orchestra (1939年に演奏して一躍”ハーレム・ノクターン”が有名になったというイギリスのミュージシャンであるRay Noble(レイ・ノーブル)のバージョンもあります。
♪ Ted Heath and His Orchestra – Harlem Nocturne
Earl Bostic(コルトレーンが学んだというアルト・サックス奏者のBostic(アール・ボスティック)のハーレム・ノクターンはEarl Bostic – Harlem Nocturne – YouTube
1945年のJohnny Otis(ジョニー・オーティス楽団)とRandy Brooks楽団(サックスはEddie Caine)のハーレム・ノクターンが聴けるHarlem Nocturne – A Jazz Anthology(Harlem Nocturneで検索、曲名をクリック)

ハーレム・ノクターンを収録したKing Curtis(キング・カーティス)のCD3枚組み「Blow Man Blow 1962」
King CurtisBlow Man, Blow!
試聴はKing Curtis – Blow Man, Blow! – CD Universe

King Curtis – Harlem Nocturne – YouTube

Lounge Lizards(ラウンジ・リザーズ)のCD
Lounge LizardsLounge Lizards
The Lounge Lizards – Harlem Nocturne – YouTube

David Sanborn(デビッド・サンボーン)のハーレム・ノクターンはいかが?
David Sanborn - TimeagainTime Again(試聴はe-onkyo music.com


Sam Taylor
日本では大人気のSam Taylor(サム・テイラー)のハーレム・ノクターンが収録されているのは日本でリリースされた「ハーレム・ノクターン~サム・テイラー・ベスト・セレクション(Sam Taylor Best Selection)」とか「ベスト・オブ・サム・テイラー(Best of Sam Taylor)」です。(試聴はTower.jp
Sam “The Man” Taylor – Harlem Nocturne (1955) – YouTube

イリノイ・ジャケーに影響を受けたWillis Gator Jackson(ウィリス・ゲイター・ジャクソン)のハーレム・ノクターンが収録されているアルバムは「1950-1954」と「The Remaining Willis Jackson 1951-1959」(ASIN: B0009YA3WW)です。

Harlem Nocturne – Illinois Jacquet (trumpet by Roy Eldridge) – YouTube

ハーレム・ノクターン Harlem Nocturne」への2件のフィードバック

  1. シゲル より:

    キングカーチスから検索して辿り着きました。
    初めて訪ねさせていただきましたのですがこのサイトは素晴らしいですね。
    貴殿の知識に感服し、サービス精神に感謝いたします。

  2. koukinobaaba より:

    「シゲル」さん、キング・カーティスのハーレムノクターンもいいでしょう。大好きです。
    このブログは自分の興味本位だけでメモしている程度なので私自身は知識もサービス精神もありませんが、少しでもお役に立てたなら大変嬉しいことです。

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