サム・テイラー Sam The Man Taylor

Mood In Golden Hit Numbers by Sam The Man Taylor – DECCA SK-402
Mood In Golden Hit Numbers 2 - Sam The Man Taylor DECCA SK-402
The Tenor Saxophone for R & B, Rock’n’Roll, and Ballads
Sam ‘The Man’ Taylor – Harlem Nocturne – YouTube


One of the Best Mood Tenor Sax Players: Sam “The Man” Taylor (1916 – 1990)
Sam The Man Taylor as the Session Musician

テネシー出身のテナーサックス奏者のサム”ザ・マン”テイラーは1940年代から1960年代にかけてスウィングジャズ、ブルース(ブルーズ)、R & B、ロックンロール、ムード歌謡と幅広く活躍したジャズミュージシャンです。 どでかい音でダイナミックにブローするもドラマティックな淀みないテナーサックスを演奏するサム・テイラーは1930年代後期から演奏活動を始めました。 スイングジャズ(スウィング・ジャズ)時代の1940年代にはジャングル・トランペッターのCootie Williams(クーティー・ウイリアムス)やジャンプブルースのLucky Millinder(ラッキー・ミリンダー)楽団などと演奏し、スイングバンドのCab Calloway(キャブ・キャロウェイ)とは一緒に南米やカリブで公演しています。 なんと、Perez Prado(ペレス・プラード)が1950年代中頃に発表した「Voodoo Suite/Exotic Suite of the Americas」というアフロ・キューバン・ジャズの稀有なアルバムにも参加しています。
Sam Taylor with Cootie Williams – YouTube

テナーマンとして録音にはヒッパリダコだったサム・テイラーは1940年代後期から1950年代中頃までRay Charles(レイ・チャールス)、Buddy Holly(バディ・ホリー)、LaVern Baker(ラバーン・ベイカー)、Ella Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)、Solomon Burke(ソロモン・バーク)など数え切れないほどのレコードにクレジットされていて、R & B歌手のRuth Brown(ルース・ブラウン)の録音にもその当時パートナーだったWillis “Gator” Jackson(ウィリス・ゲイター・ジャクソン)やPeanuts Hucko(ピーナッツ・ハッコー)と共に共演しています。 James Brown(ジェームス・ブラウン)のアルバム「Star Time」にもクレジットされている他、Brenda Lee(ブレンダ・リー)の吹き込みでも伴奏し、ビバップ時代の偉大なジャズピアニストの一人であるBud Powell(バド・パウエル)の1940年代後期の吹き込みに若きDexter Gordon(デクスター・ゴードン)やSonny Rollins(ソニー・ロリンズ)等と共に参加したそうです。 1950年代中期にはテナーサックスが必須のR & B時代やAlan Freed(アラン・フリード)がプロデュースしたロックンロール時代の主力セッションプレーヤーとしてR & B歌手のRay Charles(レイ・チャールズ)、Louis Jordan(ルイ・ジョーダン)やBig Joe Turner(ビッグ・ジョー・ターナー)、ピアノのBuddy Johnson(バディー・ジョンソン)などの録音に呼ばれるほど人気のテナーマンの一人でした。 このセッション時代には40年代からセッション・ギタリストだったケンタッキー出身のMickey “Guitar” Baker(ミッキー・ベイカー)やドラムのConnie Kay(コニー・ケイ)等ともたくさんの録音に参加したそうです。 驚いたのは”I put a spell on you”の奇異なパーフォーマンスで名高いScreamin Jay Hawkins(スクリーミン・ジェイ・ホーキンス)の1956年の録音でとしてギターのMickey “Guitar” Baker (ミッキー・ベイカー)と共にセッションバンドに参加していたことです。

ちなみにロックン・ロール誕生の地とされるクリーブランドで1950年代にラジオDJをしていたアラン・フリードが黒人音楽のR & Bをロックンロールと呼び替えて白人の若者たちに流行らせたと言われています。
1960年代になってサム・テイラー自身の五人編成のクインテット・バンド”The Blues Chasers”を結成しました。 トランペッターで歌手のSy Oliver(サイ・オリヴァー)は同じくボーカルも素晴らしいトランペッターのCharlie Shavers(チャーリー・シェイバース)と共にビッグバンドのLarry Clinton(ラリー・クリントン)とのセッションや、Jimmie Lunceford(ジミー・ランスフォード)楽団やGlenn Miller(グレン・ミラー)楽団やTommy Dorsey(トミー・ドーシー)楽団などに在籍していました。 1954年にクラリネット奏者でバンドリーダーのWoody Herman(ウッディ・ハーマン)等とのセッション盤「Marakeesh(or Marrakech)」がヴァーヴから出たそうですが 、”Mist of the Orient”や”Airmail special” を演奏した白人テナーマンのGeorgie Auld(ジョージー・オールド)とサム・テイラーがテナーサックス・バトルを演じた隠れた名セッション盤「Jazz For Commuters And Salute To The Saxes」などと多くの50年代セッション盤はLPレコード時代の録音で、現在CDではリリースされていません。(私が持っているジョージー・オールドはコーラス入りの”Manhattan“)
サム・テイラーの50年代初期の代表的なアルバムの一つといわれる「Jazz For Commuters」シリーズや1955年に録音した”Harlem Nocturne(ハーレム・ノクターン)”を収録した1955年や1961年リリースなどの人気の「Blue Mist」シリーズもLP盤です。 「Blue Mist – Delicado」で見られた「Blue Mist – Sam (the man) Taylor – 1963」のLPカバー画像は削除されてしまいました。
※PolyGramの1957年LP盤「Blue Mist Sam (The Man) Taylor」に収録されたハーレム・ノクターンはDenys Arcand(ドゥニ・アルカン)監督の1996年の映画「Joyeux Calvaire(”陽気な殉教”の意味で英語タイトルはPoverty and Other Delights)」のサウンドトラックで使用されました。
※名前がSam The Man Taylor(サム・ザ・マン・テイラー)となっているのは、Sam Taylorがよくある名前なので混同しないようにでしょうか。 ちなみに”The Man”とは隠された実力者を意味することもあるそうです。
サム・テイラーが参加したセッション盤の「Jazz For Commuters And Salute To The Saxes」について書かれた”67camper’s Blog”のムードテナー(歌謡曲)だけではないのです!(貴重なLP画像あり)

Sam “The Man” Taylor in Japan
Sidney Bechet(シドニー・ベシェ)が作曲したPetite Fleur(小さな花)が日本ではクラリネット奏者のピーナッツ・ハッコーで人気があったように、Earle Hagen(アール・ヘイゲン)が作曲したHarlem Nocturne(ハーレム・ノクターン)は日本では1955年頃にリリースされたSam Taylor(サム・テイラー)のテナーサックス演奏で有名になったのです。 Georgie Auld(ジョージー・オールド)やSil Austin(シル・オースティン)ではなくて、サム・テイラーの「ハーレム・ノクターン」を聴いてジャズマニアではない多くの日本人が身近にジャズを感じたのではないでしょうか。 私はハーレムノクターン好きのジャズファンなのでIllinois Jacquet(イリノイ・ジャケー)の「ハーレム・ノクターン」なども所有しています。
50年代後期から来日して録音していたサム・テイラーの活躍は目覚しく民謡から古賀メロディーまで吹きまくり、日本ではムード歌謡には欠かせないテナーサックス演奏者となりました。 60年代に若者だった方ならきっとサム・テイラーが演奏するスタンダードジャズの1曲や2曲は思い出せるでしょう。 当時は珍しかったサム・テイラー魅惑のテナーサウンドは家庭でリラックスして聞くこともあったかもしれませんが、大概は喫茶店やバーなどの雰囲気を演出するBGMとして人気がありました。 ひょっとしてサム・テイラーが日本で浦島太郎になっていなければ、R & Bのホンカーに留まらず、Miles Davis(マイルス・デイヴィス)並みの評価を受けていたかもしれませんね。 ¿ いっ?、なんでコールマン・ホーキンスと比べていないんじゃ ?
※ちなみにハンサムなジョージー・オールドはカナダ出身の白人サキソフォン奏者で、コールマン・ホーキンスを聴いて1935年からはテナーマンになったそうです。 短期間ですがラテン好きな白人クラリネット奏者のArtie Shaw(アーティ・ショー)がメキシコに飛んだ後には楽団を引き継いだこともあったり、Benny Goodman(ベニー・グッドマン又はベニイ・グッドマン)楽団やCount Basie(カウント・ベイシー)などと演奏し、40年代中頃から演奏法をバップスタイル(アヴァンギャルド)に換えてBilly Eckstine(ビリー・エクスタイン)と共演したり、50年代後期には7人編成のバンドを組んで”Air Mail Special”などを録音したそうですが肺結核のため十分には活動出来なかったようです。 私の所有しているジョージー・オールドのレコードはハーレムノクターンではなく、A面が”Manhattan”でB面が”Body and Soul”のCoral DC 1023で、昔々新宿西口の浄水場近くの古レコード屋で裸で転がっていたのを掘って来たので解説がないですが多分1952年頃でしょうか。 その頃は裸のレコードにイメージでジャケットを制作するのが楽しみでした。 ニューヨークの夕暮れを思わせる名曲のManhattan(マンハッタン)もカクテルのマンハッタンも美しくそして美味しいです。
中古レコード店でなければCDでジョージー・オールドの「Double Image」(試聴はDouble Image – AllMusic.com(11番のManhattanと24番のHarlem Nocturne)
Sam Taylor – Harlem Nocturne (original 1955) – Veoh
Sam Taylor – Harlem Nocturne – Dailymotion

日本に活動の場を移したので、当然サムテーラーのCDアルバムは本国のアメリカより日本の方が多くリリースされています。 演歌テナーと名づけられたように、下記のアルバム同様その殆どに日本の歌謡曲及び演歌が収録されています。

Mood In Golden Hit Numbers by Sam The Man Taylor
ゴールデン・ヒットナンバー集 2 サム・テイラーページトップの画像は私の手持ちのサム・テイラーの1969年(昭和44年)のLPレコード「ゴールデン・ヒットナンバー集 II」でサム・テイラーが吹き込んだ日本のレーベル(デッカ)のなかでは良い方だと云われ、サブタイトルが「Mood In Golden Hit Numbers」と書かれた「サム・テイラー 恍惚のテナー・サックス」DECCA SK-402(33&1/2)です。 サム・テイラーのジャズセッション盤ではなく、ストリングスやビッグバンドをバックにリラックスムードで演奏しているので持っていても自慢にもなりませんが、もし音楽ジャンルに”ムード・テナー”があったらサム・テイラーはムードテナーサックス奏者の第一人者かもしれません。
収録曲目はサム・テイラーの定番曲の”ハーレムノクターン”や”ダニー・ボーイ”に加えて、”コーヒールンバ“の西田佐知子の1962年のヒットで”アカシアの雨がやむとき”」や、ラテンやドドンパのアイ・ジョージの1961年のヒットで”硝子のジョニー”、昭和39年(1954年)に岸洋子日本レコード大賞の歌唱賞を受賞した”夜明けの歌”など1960年代の日本の歌謡曲も織り交ぜたアルバムです。
A面: ハーレムノクターン
夕日に赤い帆
サマータイム
クライ・ミー・ア・リヴァー
枯葉
ダニー・ボーイ
B面: 夜霧のブルース
硝子のジョニー
アカシアの雨がやむとき
影を慕いて
雨に咲く花
夜明けの歌
他にはLPで「サム・テイラー / ハーレム・ノクターン/サム・テイラー・デラックス」現在購入可能なCDでムード歌謡を収録したアルバムには試聴できる「サム・テイラー ゴールデン☆ベスト~ムード歌謡編~」(ASIN: B004N3AZYQ)もあります。
※一説にはに”Londonderry Air(ロンドンデリーの歌)”とも呼ばれる”Danny Boy(ダニーボーイ)”はセルティック民謡(スコットランド)に1910年に英国人が作詞した歌ですが、アイルランド移民の多いカナダや北アメリカでは葬儀に使用されることもあるそうです。 いづれにせよ、この”ダニーボーイ”は1945年にシル・オースティンがフロリダでのアマチュア・コンテストで吹いて以来シルの定番曲となっています。 優勝後、ジュリアード音楽学院に通ったシル・オースティンは1950年代初期にRoy Eldridge(ロイ・エルドリッジ)やTiny Bradshaw(タイニー・ブラッドショウ)と演奏していて、サム・テイラーと同様にジャズからそれたポップス調の曲をカバーしたアルバムをたくさんリリースしています。
Sam The Man Taylor – Golden Hits of Sam Taylor – YouTube
Sil Austin – Danny Boy (1959) – YouTube

Sam Taylor Plays Japanese Enka
不滅の昭和歌謡ベスト24
Sam Taylor Plays Japanese Enkaサム・テイラーの日本での活動が油が乗った頃の録音でしょうか、収録されている曲は、美川憲一の1966年の”柳ヶ瀬ブルース”、前川清の1969年の”長崎は今日も雨だった”、石川さゆりの1977年の”津軽海峡冬景色”などと24曲全部が1960年代や1970年代にヒットした懐かしい日本の歌謡曲です。 ♪ 試聴は不滅の昭和歌謡ベスト24 レコチョク
1970年頃には有線ヒット曲集のLP盤「25時のサム・テイラー」もリリースされたそうですがAmazon.co.jpなどには置いてないので海賊盤なんでしょうか。(ポークパイ・ハットにサングラスのサム・テイラーが考え込んでいるようなジャケット画像です)
☆ちなみにちあきなおみの”そっとおやすみ”や青江三奈の”恍惚のブルース”などムード歌謡40曲を収録した二枚組みCDは「決定盤!!「サム・テイラー ムード歌謡」ベスト」(ASIN: B001D8NG36)
♪「 ベスト・オブ・サム・テイラー」の試聴はタワーレコード

Best of Sam Taylor
ベスト・オブ・サム・テイラー
ベスト・オブ・サム・テイラー - Sam The Man Taylorスタンダードジャズ20曲が収録されたイージーリスニングに最適の日本でリリースされた超売れ筋の「Sam Taylor Standard」アルバムです。 曲の英語タイトルはHarlem Nocturne、Danny Boy、Misty、Red Sails In The Sunset、Lover Back To Me、Cry Me A River、’round Midnight、Star Dust、Johnny Guitar、Summertime 、Autumn Leaves、Moonglow、All Night Long、Midnight Sun、Easy Living、Little Girl Blue、Lonely Ville、Stormy Weather、When I Fall In Love、La Playa(夜霧のしのび逢い)
は現在入手困難となり上記のリンクを削除しましたが「ベスト・オブ・サム・テイラー」の試聴は可能です。 (ASIN: B00005L92H)
“夜霧のしのび逢い”といえばサム(ザ・マン)テイラーの「決定盤」シリーズで試聴ができる国内盤の「決定盤!!「サム・テイラー 映画音楽」ベスト」(ASIN: B001D8NFU0)があります。

The Best of Sam Taylor VOL.2 (Standard Best Collection Vol. 2)
The Best of Sam Taylor vol.2 - Standard Best Collection日本でリリースされた幻のベスト盤、Standard Best Collection「The Best of Sam Taylor vol.2(サム・テイラー/スタンダード・ベスト・コレクション VOL.2)」には”シバの女王”や”ガラスの部屋”から、”青い影”から”雪が降る”までとヒット曲全16曲を収録したLPレコードは見つかりませんが、”わが心のジョージア”や”煙が目にしみる”から”オンリーユー”や”虹の彼方に”などを収録した「Sam Taylor vol.1 Standard Best Collection」はCD化されているらしいです。
レコードが海賊版だろうが何だろうが、このジャケット画像を見て!見て!サムが手にするテナーサックスがピンク!

Sam Taylor Best Selection
☆ハーレム・ノクターン~サム・テイラー・ベスト・セレクション
※収録曲のなかでサム・テイラーが演奏している”黒い傷あとのブルース(Broken Promises)”はJohn S. Schachtel(ジョン・S・シャハテル)が作曲したそうですが、1961年ごろビクターからEP盤でHenri De Pari(アンリ・ド・パリ)楽団の演奏がリリースされたという情報を見ました。
(私は聴いたことがありません) もしかすると当時流行った外国名の日本人楽団かもしれませんが、別に日本人のジャズトランペッターの日野皓正を含むモダン・プレイボーイズも演奏しています。 ”黒い傷あとのブルース”は日本では1961年のイタリアの白人アルト・サックス奏者のFausto Papetti(ファウスト・パペッティ楽団)の演奏が有名ですが、アメリカではテナーのSil Austin(シル・オースティン)だそうです。

Sam Taylor Plays Famous Pop Numbers
魅惑のスタンダードベスト24
魅惑のスタンダードベスト24 - Sam The Man Taylorサム・テイラーと彼のオーケストラによる映画のテーマ音楽からAdamo(アダモ)のシャンソンまで幅広いヒット曲をカバーした人気CDです。
“オンリー・ユー(Only You)”や”煙が目にしみる(Smoke Gets in Your Eyes)”などはThe Platters(プラターズ)の50年代のヒット曲、1953年に作詞者のCarl Sigman(カール・シグマン)とアメリカのハープ奏者であるRobert Maxwell(ロバート・マクスウェル)が作曲した”ひき潮”(Ebb Tide)は英国のBGM音楽家であるFrank Chacksfield(フランク・チャックス フィールド)の演奏でヒットしましたが、多くはヴォーカルバージョンで1960年にプラターズや”Unchained Melody“が大ヒットしたThe Righteous Brothers(ライチャス・ブラザーズ)が1965年に歌いました。 これらのヒット・バージョンは1937年にJames P. Hogan(ジェームズ・P・ホーガン)が監督、Frances Farmer(フランシス・ファーマー)やOskar Homolka(オスカー・ホモルカ)、そして1954年の「Dial M for Murder(ダイヤルMを廻せ!)」のRay Milland(レイ・ミランド)が出演しVictor Young(ヴィクター・ヤング)が音楽を担当した1937年の映画「Ebb Tide(干潮/ひき潮 )」でRalph Rainger(ラルフ・レインジャー)が作曲した映画のテーマ曲の”Ebb Tide”を編曲したものだそうです。

“ミスティ(Misty)”はジャズピアニストのErroll Garner(エロール・ガーナー)の大ヒット曲です。 驚いたことには”Summertime(サマータイム)”ではイントロがCharlie Parker(チャーリー・パーカー)そっくりです。 60年代ポップスとして1967年のGlen Campbell(グレン・キャンベル)の”By The Time I Get To Phoenix(恋はフェニックス)”と、”The End of the World(この世の果てまで)”はSkeeter Davis(スキータ・デイビス)の1962年のヒット曲、映画「Butch Cassidy and the Sundance Kid(明日に向かって撃て)」の主題歌の”雨にぬれても(Raindrops Keep fallin’ On My Head)”はBurt Bacharach(バート・バカラック)作曲でB.J.トーマス(B.J.Thomas)が歌いアカデミー作曲賞受賞曲となりました。(B.J.はウガ・チャカの原曲”Hooked on a Feeling/ 心の中まで”がヒット)
「ハーレム・ノクターン~サム・テイラー・ベスト・セレクション」にも収録されているサムテイラーの”Broken Promises(黒い傷あとのブルース)”が入っているCDは少ないですが、2008年にリリースされた44曲収録2枚組CDの「サム・テイラー全集~魅惑のテナー・サックス タワーレコード」でも試聴できます。

Swingstation
Swingsation - Sam The Man Taylor“Real Gone”をはじめ、黒人と白人が共に享受したロックンロール時代のアメリカでサムテイラーの人気代表曲とされる”Cloudburst”が収録されているサム・テイラーのノリノリのセッションアルバムです。(試聴だけでもすべし!http://www.allmusic.com/album/swingstation-mw0000253661) R & B界で演奏されたテナーサックスのブローは1950年代の不協和音の響きが斬新なOrnette Coleman(オーネット・コールマン)やJohn Coletrane(ジョン・コルトレーン)などのアヴァンギャルド奏法から来ているとも言われるそうです。
♪ “Cloudburst”などの試聴はCloudburst by Sam “The Man” Taylor – レコチョク

Swingin’: Golden Classics
Swingin': Golden Classics - Big Jay McNeely with Sam The Man Taylor1940年代後期にR & Bのブローマンとして活躍したジャンプブルースのBig Jay McNeely (ビッグ・ジェイ・マクニーリー)が1958年から1960年に録音した1958年の音源だそうで、”Hucklebuck”のヒット曲で有名になったテナーサックス奏者のPaul Williams(ポール・ウィリアムス)やソウルテナーのHal Singer(ハル・シンガー)と共にサムテイラーも参加したそうです。
♪ 1958年から1960年の演奏を集めた「Big Jay McNeely – Golden Classics」の全曲試聴はSwingin’: Golden Classics – Muziekweb.nl
Big Jay McNeely plays 1949 hit “Deacon’s Hop”- YouTube

Jazz with Prestige 4-cd Set
Jazz with Prestige with Sam The Man TaylorMiles DavisDuke EllingtonGene AmmonsClifford Brown、Stan Getzという蒼々たるメンバーのセッションアルバムにサムテイラーも参加しているそうです。 このコンピレーション・アルバムはアメリカのAmazon.comにありますが、アルバムレビューも試聴もありませんから現在は入手出来ないのかもしれません。 まずはアルバムカバーの写真のみ掲載。
Prestigeといえば、サムテイラーが1962年にプレスティージからリリースしたアルバム・タイトル曲を含む8曲収録の「The Bad And The Beautiful」は(7 inch(17.78cm)45 回転)は廃盤となりましたが中古で2000円くらいで入手できそうです。 演奏メンバーはサム・テイラーの他、ピアノがLloyd Mayers(ロイド・メイヤーズ)、ギターがWally Richardson(ウォーリー・リチャードソン)、ベースがArt Davis(アート・デイヴィス)、ドラムがEd Shaughnessy(エド・ショーネシー)です。 タイトルの”The Bad and the Beautiful”ですが、音楽をDavid Raksin(デヴィッド・ラクシン)が手掛けLana Turner(ラナ・ターナー)とKirk Douglas(カーク・ダグラス)が出演したVincente Minnelli(ヴィンセント・ミネリ)監督の「The Bad And The Beautiful(悪人と美女)」の美しいテーマ曲のようです。

Sexy Tenor Saxophone Player : Sam The Man Taylor
☆ところで、日本ではストリップショーの伴奏音楽というとドリフターズの「8時だよ!全員集合」ストリップ・コントの影響で「タブー」を連想します。(一説によるとSantana(サンタナ)の”Black Magic Woman”もそうだとか) 本来はラテンの名曲である”Taboo(タブー)”は扇情的なテナーサックスをフィチャーしたペレス・プラードなどの演奏で有名になりました。 お茶の間ではタブー、そして咽び泣くサム・テイラーのセクシーなハーレムノクターンは劇場で流れたのでした。
さて、アメリカでのストリップ音楽の特徴はどでかい音の音楽が使用され、踊り子のBump-N-Grind(グラインドやバンプ)に合わせてドン、ドンとバスドラムのキックが入ります。 1962年にヒットチャートに入ったDavid Rose(デヴィッド・ローズ)楽団の”The Stripper(悲しきストリッパー)”なんて、ドンッ、ドンッとサーカス楽団の演奏かと思いましたが、1973年のアメリカン・ニューシネマの傑作「The Scarecrow(スケアクロウ)」でアル・パチーノが酒場のジュークボックスで流したこの曲でジーン・ハックマンがストリップをしたシーンが笑えます。
だからテナーサックスでもサム・テイラーのムードたっぷりの曲だけではなく”Real Gone(素晴らしい!とかいかしてる!という意味)”のようなアップテンポの曲も適しているのでしょう。
Sam The Man Taylor – Real Gone – YouTube

Sam Taylor & His All Star Jazzが演奏する”Real Gone”は「Cars(カーズ)」で使用された Sheryl Crow(シェリル・クロウ)とは全く別の曲です。 サム・テイラーの”Real Gone”が聴けるwfmuラジオのプレイリストはPlaylist for Airborn Event with Dan Bodah – June 26, 2005(sam “the man” taylorのreal goneの最後1:54:33 (Real)をクリック!前の曲がちょっとかぶっています)

Sam Taylor: Sexy Tenor Sax
Tease!: The Beat of Burlesque
Tease!:The Beat of Burlesque by Sam The Man Taylorサム・テイラーのテナーサックスを聴いたことがない方はこのCDで試聴してみて下さい!
定番のHarlem Nocturueはもちろんのこと、ストリップのBGMになったサム・テイラーのReal Goneや出だしがミュートのSam’s Bluesが聴けます。(Sam’s BluesはSam Taylor & His All Star Jazz演奏の上記に類似したアルバム「Burlesque」(ASIN: B004GZGFE0)にも収録)
同じくムードテナーサックス奏者のSil Austin(シル・オースティン)のSlow Walk、その名もズバリ!David Rose(デヴィッド・ローズ)の”The Stripper(ストリッパー)”、驚きの選曲でCharlie Parker(チャーリー・パーカー)の”Funky Blues”、Barney Kessel(バーニー・ケッセル)の”Honey Rock”、Roland Kirk(ローランド・カーク)の”You Did It, You Did It”やElmer Bernstein(エルマー・バーンスタイン)の”Toots Shor’s Blues”などの名曲を収録した隠れた名盤です。
ちなみに1960年代中期にはピアニストのLonnie Liston Smith(ロニー・リストン・スミス)とも演奏したローランド・カークですが1961年の”You Did It, You Did It”でのピアノはHank Jones(ハンク・ジョーンズ)です。 ちなみにローランド・カークは1974年にGeorge Adams(ジョージ・アダムス)と共にCharles Mingus(チャールス・ミンガス)のカーネギー・ホールライブに参加しています。
試聴はTease!: The Beat of Burlesque – Allmusic.com

Burlesque
アルバムの題名「Burlesque(バーレスク)」とは今を遡ること19世紀、1800年代の中頃に中流階級以下の人々の娯楽を満たすシアターとして始まりました。 出し物は喜劇や音楽など多岐に渡り上流階級が親しんでいた喜劇劇場で、オペラや芝居の卑猥で下品なパロディが多かったそうですが、酒場などではまさに露出度の高い踊り子のショーを見て楽しんでいたそうです。(フレンチカンカン!) 1920年代や1930年代にはまさにコント入りストリップショーを指しましたが、現在このバーレスクの復興の声があるそうです。 これに一役買っているのがネオ・スウィングのRoyal Crown Revue(ロイヤル・クラウン・レビュー)のヒット曲である”Zip Gun Bop(ジップ・ガン・ボップ)”のミュージック・ビデオ(PV)に出演したDita Von Teese(ディタ・フォン・ティース)です。 日本でも戦後すぐの額縁ショーから昭和20年代後期にストリップのバーレスクが始まりその後のヌードショーの日劇ミュージックホール(当初は丸尾長顕がプロデューサー)へと発展したそうです。

☆サム・テイラーとは関係ありませんが、上記のアルバムTease!: The Beat of Burlesqueの収録曲の中に映画音楽作曲家のElmer Bernstein(エルマー・バーンスタイン)のToots Shor’s Bluesがあります。 これはブロードウエイのショービジネスをテーマにした1957年のSweet Smell of Success(成功の甘き香り)のテーマ曲です。
Sweet Smell of Success
Sweet Smell of Success VHSSweet Smell of Success
画像は輸入版VHSですが2007年に国内版DVD「成功の甘き香り」(ASIN: B000QTEBQE)が発売されています。
「成功の甘き香り」は脚本家のErnest Lehman(アーネスト・レーマン)の原作をAlexander Mackendrick(アレクサンダー・マッケンドリック)監督が映画化したフィルム・ノワールです。 1956年に「Trapeze(空中ブランコ)」でGina Lollobrigida(ジーナ・ロロブリジーダ)と共にBurt Lancaster(バート・ランカスター)とTony Curtis(トニー・カーティス)のコンビが出演しています。 バート・ランカスターは大物劇評論家を、そしてトニー・カーティスは小者ゴマスリ男を演じていますが、ジャズファンには嬉しいことにドラマーChico Hamilton(チコ・ハミルトン)がChico Hamilton Quintetとしてナイトクラブのシーンに出演してます。(私の好きなチコ・ハミルトンの演奏はThe Chico Hamilton Quintet – Blue Sands (Jazz on a Hot Summer’s Day)- YouTube
日本語字幕VHSビデオは「成功の甘き香り」(ASIN: B0000650V5)

Audio-Visual Trivia 内にあるエルマー・バーンスタイン関連の記事
The Man with the Golden Arm(黄金の腕)
The Great Escape(大脱走)
Devil In A Blue Dress(青いドレスの女)

テナーサックスも正統派からテキサステナー、R & Bテナー、ビバップテナー、ソウルテナーなどと色々です。
Audio-Visual Trivia内にも「Roy Eldridge(ロイ・エルドリッジ)」、「Coleman Hawkins(コールマン・ホーキンス)」、「Illinois Jacquet(イリノイ・ジャケー)」、「Sonny Stitt(ソニー・スティット)」、「King Curtis(キング・カーティス)」、「Gene Ammons(ジーン・アモンズ)」などに関する記事があります。
Audio-Visual Trivia の記事内に名前が書かれているテナーマンだけでもABC順で羅列してみると、Albert Ayler(アルバート・アイラー)、Barney Wilen(バルネ・ウィラン)、Benny Golson(ベニー・ゴルソン)、Ben Webster(ベン・ウェブスター)、Chu Berry(チュー・ベリー)、Dexter Gordon(デクスター・ゴードン)、Georgie Auld(ジョージー・オールド)、Hal Singer(ハル・シンガー)、Hank Mobley(ハンク・モブレー)、Herbie Fields(ハービー・フィールズ)、Herschel “Tex” Evans(ハーシェル・ エヴァンス)、James Moody(ジェームス・ムーディ)、John Coltrane(ジョン・コルトレーン)、Julian Dash(ジュリアン・ダッシュ)、Lee Konitz(リー・コニッツ)、Lester Young(レスター・ヤング)、Ornette Coleman(オーネット・コールマン)、Sonny Rollins(ソニー・ロリンズ)、Wayne Shorter(ウェイン・ショーター)、Wild Bill Moore(ワイルド・ビル・ムーア)の他、Ira Sullivan(アイラ・サリヴァン)、Bill Holman、Tony Zimmersなどの名が出てきます。 貴方は誰のテナーサックス演奏が好きですか?

☆上記で紹介したアルバム「The Beat of Burlesque」が聴けるwfmuラジオのプレイリストはPlaylist for 25 May 2005 | Finding My Voice(Listen to this show: RealAudioをクリック)
Sil AustinのSlow Walkが聴けるPlaylist for 18 May 2005 | My Subconscious DJ(Sil Austin Slow Walkの最後にある2:22:48 (Real)をクリックですが前の曲がちょっとかぶります)

☆上記以外でSam (The Man) Taylor(サム・テイラー)のテナーが聴けるwfmuラジオのプレイリストの中でMGM時代の”Man That’s Choice”が聴けるのは「Playlist for Monica – April 8, 2005」(Listen to this show: RealAudioをクリックしてクリップ・ポジション(再生バー)を1:56:42に移動)

Voodoo Suite
サム・テイラーは1954年にPérez Prado(ペレス・プラード)とShorty Rogers(ショーティー・ロジャーズ)との共同名義のアルバム「Voodoo Suite」の録音にも参加しているそうです。
詳しくはAudio-Visual Trivia内のVoodoo Suite

サム・テイラー Sam The Man Taylor」への3件のフィードバック

  1. ヒロヤス より:

    すみません。こちらにもお邪魔します。
    一時、Sam TaylorやKing Curtisに代表されるセッションマン系、ホンク系テナーのレコードを血眼で集めました。前者では、Plas Johnsn (あのPinkpanther のテーマでのソロが有名)や、Clifford Scott ,Sil Austin,David Bubba Williams, Noble Watts, Red Prysock,,,, 後者は、、、きりがありませんが、Big J McNeely 以外にも Joe Houston, Maxwell Davis,
    Hal Singer, ,,,, 1950年代初期に何十人というが出ているので結構奥が深いです。

  2. ヒロヤス より:

    管理人さま
    すみません。こちらにもお邪魔します。
    一時、Sam TaylorやKing Curtisに代表されるセッションマン系、ホンク系テナーのレコードを血眼で集めました。前者では、Plas Johnsn (あのPinkpanther のテーマでのソロが有名)や、Clifford Scott ,Sil Austin,David Bubba Williams, Noble Watts, Red Prysock,,,, 後者は、、、きりがありませんが、Big J McNeely 以外にも Joe Houston, Maxwell Davis,
    Hal Singer, ,,,, 1950年代初期に何十人というが出ているので結構奥が深いです。

  3. koukinobaaba より:

    ピンクの豹のテナーソロがPlas Johnsonなんですか。要チェックです。
    私はやっとBig J McNeelyなるテナー奏者を知った程度なので、記述にある他のアーティストをチェックしてみるつもりです。

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