大脱走 The Great Escape (1963)

The Great Escape (DVD)
The Great Escape - Steve McQueen
Steve McQueen as Hilts “The Cooler King”
大脱走(1963年)
The Great Escape March (opening) – YouTube

Steve McQueen as The Cooler King
John Sturges(ジョン・スタージェス)が監督した第2次大戦時の実話を元にした戦争映画で、警備の厳重なドイツの捕虜収容所から連合軍の兵士たちが集団脱走し、その逃走と追跡のエピソードを描いた傑作です。
もしも、収容所の床が古代中国の紫禁城のようにレンガ25mだったらトンネル掘って脱走なんてありえないですね。
州立刑務所の脱獄を扱った映画に1994年の「The Shawshank Redemption(ショーシャンクの空に)」があります。 こちらは元銀行員のエリートがたった一人でちっちゃなハンマーを使用して20年間かけてコツコツと壁に穴を掘り500ヤード先の堀の外に出たのです。 しかも刑務所の所長の不正な金をそっくり頂いてメキシコに飛んだという御伽噺です。
昭和30年代の終わり頃1963年か、「大脱走」が劇場公開された当時は大好評で大入り満員、有楽町でのロードショー(高額)だというのに私はドア側の通路に立って背伸びして観ました。

I haven’t seen Berlin yet, from the ground or from the air, and I plan on doing both before the war is over.

Steve McQueenTVシリーズの「Wanted: Dead or Alive(拳銃無宿)」(1958年)のジョッシュ・ランダル役で人気者だったSteve McQueen(スティーブ・マックィーン又はスティーヴ・マックィーン)が反抗的な捕虜役を演じ、バイクで国境突破を試みます。(これ以下はネタバレ)が、あえなく独房に逆戻り。 自転車で悠々脱走成功の便利屋ことオーストラリア人のセジウィックはJames Coburn(ジェームズ・コバーン)、手漕ぎボートで脱走成功のトンネル・キングの異名を持つCharles Bronson(チャールズ・ブロンソン)などなど大物俳優が出演します。

videoMGMオフィシャルサイトではもう「大脱走」のトレーラーが観らないので現在はThe Great Escape Trailer – VideoDetectivet
The Great Escape Trailer – Turner Classic Movies(画像右のmediaやtrailerをクリック)

主役級の出演者の一人であるスティーヴ・マックィーンは、Paul Newman(ポール・ニューマン)が主演し、Perry Como(ペリー・コモ)の主題歌”傷だらけの栄光の試聴はアルバム「Platinum & Gold Collection」の”Somebody Up There Likes Me”(10番)がヒットした1956年の「傷だらけの栄光」で映画デビューした後、1958年からテレビシリーズの西部劇「拳銃無宿」で賞金稼ぎのJosh Randall(ジョッシュ・ランダル)を演じ人気スターとなりました。 硬派(?)のスティーヴ・マックィーンとしては1961年の「The Honeymoon Machine(ガールハント)」や、「大脱走」の前の1963年にNatalie Wood(ナタリー・ウッド)と共演した1963年の「Love with the Proper Stranger(マンハッタン物語)」はスティーヴ・マックィーンには珍しいラブコメですが後は殆どはアクション映画です。

The Cincinnati Kid
それにアクションなしの映画というと「大脱走」の後の1965年に負け知らずのポーカー賭博師を演じた「The Cincinnati Kid(シンシナティ・キッド)」がありました。 負け知らずの賭博師シンシナティ・キッドを演じたのはスティーヴ・マックィーンで、当時人気の若い女優が二人出演しています。 キッドの親友の妻メルバを演じた「Bye Bye Birdie(バイ・バイ・バーディー)」で有名になったAnn-Margret(アン=マーグレット)とキッドのガールフレンドのクリスチャンを演じたTuesday Weld(チューズデイ・ウェルド)です。 大勝負の賭博に参加した仲間のイェーラーを演じたのはこの後「The Blues Brothers(ブルース・ブラザース)」に出演したCab Calloway(キャブ・キャロウェイ)でした。 負けを知らなかったキッドは老練のランシー・ハワード(エドワード・G・ロビンソン)に完敗して惨めさを味わったものの、いつもは手加減せずに負かして「修行して出直せ」と言ってやった靴磨きの黒人少年に今回は負けてやったのです。(なので今度は少年が「修行してきな」)
同年に「Send Me No Flowers(花は贈らないで!)」や「The Art of Love(恋するパリジェンヌ)」などの軽いコメディを監督していたNorman Jewison(ノーマン・ジュイソン)でしたが会社側の意向で「シンシナティ・キッド」のラストシーンをメロドラマにされてしまったそうです。 ちなみに「シンシナティ・キッド」の音楽を担当したのはジャージーな「Les Félins(危険がいっぱい)」のサントラを手がけたLalo Schifrin(ラロ・シフリン)で、エンディング・ロールで流れたテーマソングノ”The Cincinnati Kid”をRay Charles(レイ・チャールス)が歌っています。 劇中でクリスチャンに去られたキッドがメルバの誘惑を蹴っての帰り路に窓の外から聞き入ったのはニューオリンズジャズの殿堂The Preservation Hall Jazz Bandと共にピアノで歌っていたのはニューオーリンズ出身のSweet Emma Barrett(スウィート・エマ・バレット)(赤いガーターの鈴が鳴ったかどうかは見逃した)
この他にラロ・シフリンのテーマ曲に銃声が鳴り響くオープニングがクールな1968年の「Bullitt(ブリット)」や「The Thomas Crown Affair(華麗なる賭け)」、1969年には「The Reivers(華麗なる週末)」など毎年のように映画を撮っていましたが愛煙家で愛飲家で愛ヤク家だったマクィーンは1980年に転移腫瘍(胸膜中皮腫)摘出中に50歳で亡くなりました。(アスベスト被害か)
ちなみに、昨今はSteve McQueenというと1969年生まれのイギリスの映画監督の黒いスティーヴ・マックィーンが話題になっています。 1990年代から短編を監督していましたが2011年の過激な性描写が物議をかもしたという「Shame(シェイム)」に続く2013年の「12 Years a Slave(それでも夜は明ける)」はアメリカ合衆国の19世紀前半に実在した黒人Solomon Northup(ソロモン・ノーサップ)の自伝を映画化した映画でアカデミーの作品賞を受賞しています。 黒人といえども一般市民だったソロモンが騙されて南部ルイジアナの農場に奴隷として売られてしまった12年間の奴隷生活(1841年 – 1853年)を生き延びたサバイバルストーリーです。 この話しはHarriet Beecher Stowe(ストウ夫人)が書いた1852年の「Uncle Tom’s Cabin(アンクル・トムの小屋)」でも奴隷の事実の裏付けとして使用されたそうです。
元祖スティーブ・マックイーンを連続テレビドラマ「拳銃無宿」で初めて見た時は何だかカメレオンみたいな顔だと思いましたが、だんだん格好良く見えてきてランダル銃(M92ウィンチェスター・ カービンの銃身を詰めた改造銃)を手にしたジョッシュ・ランダルが一番好きです。 スティーブ・マックイーンは小顔のせいか175センチという実際の身長よりも大きくは見えますがやはり華奢な感じではあります。
☆ コレクターの間ではClint Eastwood(クリント・イーストウッド)と並び大人気のスティーブ・マックイーンの出演映画チラシやポスターが見られるスティーヴ・マックィーン特集

ページトップの画像は”The Great Escape”の輸入版DVD(英語)です。
こちらの画像は2007年発売の「大脱走」特別編DVDですが現在は入手困難なためリンクは2008年版です。
The Great Escape DVD with Steve McQueen大脱走 DVD


2004年に亡くなった映画音楽の巨匠であるElmer Bernstein(エルマー・バーンスタイン)が手がけた「大脱走」のサウンドトラックには大脱走のテーマ曲として知られる”Main Title”の他、ストーリーにそった曲が収録されています。
The Great Escape SoundtrackThe Great Escape [Original Motion Picture Score]
こちらは2004年に発売になったOSTのリマスター盤で13曲を収録していますが、1998年に発売された輸入盤「The Great Escape: Original MGM Motion Picture Soundtrack(ASIN: B000005Z5V)」には”Give Up”、”Big X”、”Meanwhile, We Dig”を含め全16曲が収録されています。
♪ Elmer Bernstain – The Great Escape Main Theme
懐かしい1962年と1963年の洋楽ポップス「続 僕たちの洋楽ヒット VOL.4 ’62~’63」にRosemary Clooney(ローズマリー・クルーニー)をプロデュースしたMitch Miller(ミッチ・ミラー)率いる合唱団の「The Great Escape March(大脱走のマーチ)」の他に1956年の映画「Giant(ジャイアンツ)」でもメキシコ人差別をしたドライブインでの殴り合いシーンで流れた代表曲のアメリカ民謡「The Yellow Rose of Texas(テキサスの黄色いバラ)」や「She wore a yellow ribbon(黄色いリボン)」、1962年の「The Longest Day(史上最大の作戦のテーマ」などが収録されています。 映画ではMax Showalter(マックス・ショウォルター)が”The Yellow Rose of Texas”を歌いましたが、キング・オブ・カウボーイと呼ばれたRoy Rogers(ロイ・ロジャース)が1944年の同名映画で歌っています。
Listen「大脱走」のサウンドトラックのミッチ・ミラー合唱団の男性コーラスが試聴出来る珈琲と音楽クレシェンド – オールディズのお部屋 – 大脱走マーチ(♪をクリック)
The Great Escape March with The Great Escape clips – YouTube

第十七捕虜収容所
「大脱走」は、Billy Wilder(ビリー・ワイルダー)監督、William Holden(ウィリアム・ホールデン)が主演したクリスマスの脱走劇である「Stalag 17(第十七捕虜収容所)」(1953年)とよく比較されますが「大脱走」の方が娯楽性の高い作品で、収容所長のシェルバッハ大佐を1955年に「The Man with the Golden Arm(黄金の腕)」を監督したOtto Preminger(オットー・プレミンジャー)が演じています。 惜しくも2002年に亡くなりましたが、サスペンスからコメディと幅広いジャンルで映画を撮り続けたビリー・ワイルダー監督はウィーンの出身でユダヤ人ということからか戦争映画も多く、ワイルダー監督は米陸軍省と共同制作で1945年に第二次世界大戦の終了とともに暴かれたナチスの収容所における大量虐殺のプロパガンダ・ドキュメンタリー「Death Mills」をドイツ民衆に向けて発表しました。(強制収容所の地獄図はとても正視できるものではありません)
Listen「第十七捕虜収容所」のテーマ曲は1964年にStanley Kubrick(スタンリー・キューブリック)が監督した「Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb(博士の異常な愛情)」と同じく、クレジットはされていませんがLouis Lambert(Patrick Gilmore)作曲の”When Johnny Comes Marching Home(ジョニーの凱旋、又はジョニーが凱旋するとき)”です。(「風と共に去りぬ」や「奇兵隊」の他「ドビーの青春」など沢山の映画で使用されています) 味方に紛れていたドイツ人スパイを放り出してホールデンが演じるセフトン軍曹が貯水槽に潜んだダンパー中尉を助け出した後、何事もなかったように全員がベッドに入ったラストシーンでナレーターもつとめたGil Stratton(ギル・ストラットン)が演じるClarence Harvey “Cookie” Cook(クッキー)の吹く口笛で”ジョニーの凱旋”が流れます。
When Johnny Comes Marching Home Theme – YouTube
video「Stalag 17(第十七捕虜収容所)」のトレーラーはStalag 17 Trailer – VideoDetective

Stalag 17 DVD第十七捕虜収容所 Stalag 17 パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
※ 2008年発売の「第十七捕虜収容所」(ASIN: B0015U3N6C)もあり。

大脱走 The Great Escape (1963)」への4件のフィードバック

  1. 田園調布のプレスリー より:

    ジョン・スタージェスの決闘3部作、ゴーストタウン、ガンヒル、OK牧場を観てます。「荒野の7人」、そして「大脱走」。
    娯楽性で言うと何と言っても大脱走。キャストも気に入っています。3部作の中ではゴーストタウン。理由の一つにR・ウイドマークが断然良い。主演のR・テーラーは喰われていました。
    ただ社会人になって観た「猿の惑星」の3か4かは忘却の彼方ですがガッカリ。車はマイナー・チェンジすると概して駄目になる、映画も2、3になると駄作が多いような。どんな場合でも1には作り手のエネルギッシュな思い入れがあるから2以降は辛いところ。だから夏に公開予定の「用心棒」、ただでも行かない積りです。巨匠・黒澤にも不作がないと言えばウソになりますが「用心棒」に付いてはリメイクする企画者の神経を疑い、先人の偉業に対する冒涜と考えるのは私だけでしょうか。

  2. koukinobaaba より:

    今お返事を書いてリンクタグを入れたらページが壊れてしまいました。
    今やり直しています。ア~驚いた!上に書いてある「書式を変更するような一部のHTMLタグを使うことができます」っていったいどういう意味なんですかね。
    さて、「用心棒に付いてはリメイクする・・・云々」といったことは、私が交流して頂いている「トムさん」の「時代の情景」というアカデミックな映画ブログでよく論議されているみたいですよ。

  3. 田園調布のプレスリー より:

    「書式を変更するような・・・・・」はkoukinobaabaが書かれたんではないのですか。始めてエントリーした時、専門的なことばっかあってヤバイナーと思ったのですが。
    私こそミーハーの典型ですよ。何しろ女優さんは美しければ良いんですから。昼間は別のサイトでジョアンナ・シミカス(ごめんシスカスだった)、ジャクニーン・ビセットが好きだったを書きました。
    4時間もウタタネし、未だぼーっとしてます。
    お許しを。

  4. koukinobaaba より:

    「書式を変更するような・・・・・」はMovableTypeに最初からついていたので文字を消しただけでは有効ではないようです。設定で変更出来るようになっているでしょうが、色々失敗しているので怖くてうっかりやれません。後でまた検討してみます。前回の失敗の時は自分がスパムになっていました。あはは

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