悲しみよこんにちは Bonjour tristesse (1958)

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Bonjour tristesse VHS
Cécile a 17 ans et elle vit avec son veuf de père, Raymond.
悲しみよこんにちは(1958年)

パパとは恋人同士のような17歳のセシル
Jean Seberg当時のフランスの若手作家「Francoise Sagan(フランソワーズ・サガン)」のヒット小説をOtto Preminger(オットー・プレミンジャー)監督が映画化しました。 1955年の「The Man with the Golden Arm(黄金の腕)」や1954年の「River of No Return(帰らざる河)」などで知られた40年代から60年代に活躍したハリウッドの映画監督です。 オットー・プレミンジャーというとタイトルデザインをソウル・バスが手がけた1965年のミステリー「Bunny Lake Is Missing(バニー・レークは行方不明)」が印象的で、Keir Dullea(ケア・デュリア)が演じたヒロインの兄が怖いです。

「悲しみよこんにちは」の英語のタイトルは”Hello Sadness”で、出演者は、ヒロインの髪型「セシル・カット」で有名になった「勝手にしやがれ」のJean Seberg(ジーン・セバーグ)、David Niven(デヴィッド・ニーヴン)、そしてパパのフィアンセとなる服飾デザイナーのAnne Larson(アンヌ・ラルセン)役はイギリス女優のDeborah Kerr(デボラ・カー)です。 南仏コート・ダジュール(リビエラ)でのヴァカンスを少女の回想を織り交ぜて描き、思い出部分はカラー、現在がモノクロ映像になっています。
「悲しみよこんにちは」の写真が見られるBonjour tristesse! – FILM.TV.IT

David Niven and Deborah Kerr
1958年にデボラ・カーと共演しアンガス少佐を演じたデヴィッド・ニーヴンは「Separate Tables(旅路)」でデボラ・カーと共にアカデミー他多数の賞を受賞しています。 「旅路」では海辺のホテルの常連客同士でしたが、Errol Le Cain(エロール・ル・カイン)の軽妙なアニメーションのオープニングが楽しい1968年のセックス喜劇「Prudence and the Pill(天使のいたずら)」では倦怠夫婦を演じました。 1961年には「The Guns of Navarone(ナバロンの要塞)」で爆薬の天才と呼ばれたミラー伍長役だったデヴィッド・ニーヴンが演じたレイモン・パパの悲劇のフィアンセを演じたデボラ・カーは1956年にWalter Lang(ウォルター・ラング)が監督した「The King and I(王様と私)」でYul Brynner(ユル・ブリンナー)が演じたタイ国王の家庭教師アンナを演じてアカデミー賞主演女優賞ノミネートされ、1957年にケイリー・グラントと泣ける大人のラヴコメ「An Affair to Remember(めぐり逢い)」で共演しHarry Warren(ハリー・ウォーレンもしくはハリー・ワーレン)が作曲しVic Damone(ヴィック・ダモン)が甘い声で歌ったテーマ曲の”An Affair to Remember (Our Love Affair) “がオープニングで流れました。(劇中ではケイリーの祖母が弾くピアノでデボラカーが仏語で歌うシーンの吹き替えはMarni Nixon)要ハンカチ!

デヴィッド・ニーヴンの気の置けない(ちょっとぬけてる)若い愛人のエルザを演じたのは当時フランスの売れっ子女優だったMylene Demongeot(ミレーヌ・ドモンジョ)です。 セシルのなせる悪戯か、日光浴のし過ぎで肌が水ぶくれになるほどひどい火傷をおった可哀相な役どころです。 それと1957年に「死刑台のエレベーター」で無軌道な若者に射殺されるドイツ人旅行者の妻Frieda Bencker(フリーダ・ベンカー)を演じたElga Andersen(エルガ・アンデルセン又はエルガ・アンダーソン)が映画の最初の方でパパがパーティに同伴する新ガールフレンドで女優のデニーズ役で出演しています。

「悲しみよこんにちは」のあらすじ
憂鬱な日々を無為に過ごす17歳のセシルとガールフレンドが次々と変わるレイモン・パパのパーティ三昧の生活で出かけたクラブで黒い徳利のセーター姿のジュリエット・グレゴが静かにセシルの心境のように歌います。「私は憂鬱と暮らしている 私の友はほのかな苦しみ 毎朝目覚めては言うの 悲しみよ こんにちは」 そして、セシルはあのリビエラの夏を思い起こす。(ここからはカラー画面)
セシルとお揃いなのかレイモンの鮮やかな忘れな草のような青いシャツが美しい二人は別荘の中でまだ茹で海老のように日焼けしてまだ寝ているパパのガールフレンドのエルザを起こしに行く。 一足お先に海辺に降りて行ったセシルは海に飛び込んで法科の学生の手助けをして知り合いになる。 セシルは自分たちと同様にパリから来て隣の海辺の別荘に来ているというフィリップをパパに紹介する。 このシーンでは赤いワンピース水着のセシルだが、アンヌが到着する時、次のフィリップとの海辺のシーンでは鮮やかなブルーの水着でアンヌの結婚話の後では黄色です。 亡き母親の親友だったというバツイチのアンヌ・ラルセンが来るとセシルとエルザに知らせるパパは最近ひんぱんにアンヌを招待しているらしいことを知ってちょっと納得できないセシルだった。 しかし、この後にあのような惨劇が起きるとは思いもしなかった。 アンヌも別荘にエルザが泊まっていると知って気分を害するが、気を取り直して留まることに。気位の高いアンヌの心を掴んだレイモンパパを誇りに思う一方、日焼けで皮むけが始まった若いエルザを捨てたと同情するセシル。 エルザが友達のパブロとホテルに移った後、セシルはレイモンとアンヌから結婚の話を切り出される。 パパが結婚(再婚)するなんて!とセシルは戸惑うが幸せだと信じようと努力する。 アンヌに憧れを抱くセシルの感情が高まってフィリップと抱き合った瞬間、アンヌが現れて激怒し以後は合わないようにと忠告される。 ここから反発するセシルとパパを味方に付けたアンヌとの間に隔たりが生じる。

パパも楽しんでいないと察知したセシルはアンヌを追い出す方法を考えているとまだレイモンが忘れられないエルザが訪ねてくる。 レイモンとアンヌの婚約を聞いたエルザはセシルの申し出通りにパブロとカンヌに行かずにフィリップの家に泊まってセシルの計画を実行することに。 セシルと結婚したいフィリップにもアンヌが邪魔者と吹き込んで協力させる。 フィリップとエルザは婚約カップルの前でクラブでお熱くダンスをしたり、セシルの誘導で散歩する林の中で二人で寝転んでいたりと若い男に対抗意識を燃やさせ、とうとうレイモンはエルザに謝罪の電話をかけるのです。 仕事の仲間と会うとレイモンは出て行くがアンヌはデザインをすると部屋に残った。 この時ふと罪悪感を抱いたセシルはアンヌに事実を話そうとしたがアンヌは仕事が手につかずにレイモンを追って外に出て行く。 パパがエルザを会っていると知っているセシルも後を追う。 アンヌは途中の林の中でレイモンとエルザの会話を聞いてします。 「若い女の肌は最高、結婚をエザにアンヌを落とした」となんとも不謹慎なレイモンの会話。 血相を変えたアンヌは踵を返すと車に乗り込む。 追いついたセシルは自分が全部悪いと説明しようとするが車は急発進。 戻ったレイモンとセシルがアンヌにお詫びの手紙を書こうとしているところに電話のベルが鳴る。 車に飛び乗った二人は現場に急行する。 急カーブが危険な崖っぷちの道路、車は海に突っ込んでいた。 父も言葉に出さなかったがセシルは自殺だと思った。 ちなみに使用された自動車はフランスの超高級車で1954年型Facel Vega FVS(ファセル・ヴェガ)オープンカーかも知れません。

場面は現在、モノクロの映像でアンヌを失った後の顛末記を語る。 フィリップとは連絡していなく、エルザはパブロと南アメリカへ、レイモンとセシルは相変わらずの生活、でも今年の夏はリビエラではなく気分を変えようとイタリアにする予定。 レイモンは夏の事件を思い出さないといいと思い涙に暮れて苦しみのセシルにグレコの歌声が流れる。 「笑いを失った私のほほえみ 私が愛するのはほろ苦い私の悲しみだけ」

ソウル・バスのタイトルデザイン
Bonjour tristesse by Saul Bass「悲しみよこんにちは」のオープニング・クレジットはGeorges Auric(ジョルジュ・オーリック)によるテーマ曲の”Bonjour Tristesse”が流れて、フランク・シナトラの麻薬映画「黄金の腕」でもお馴染みのSaul Bass(ソウル・バス)による「悲しみよこんにちは」のタイトルデザインがが印象的です。 この後イヴリン・パイパーのパルプ・フィクション(ミステリー)をオットー・ブレミンジャーが監督した1965年の「Bunny Lake Is Missing(バニー・レークは行方不明)」でもソウル・バスのタイトルが使用されました。(ビリっと紙を引きちぎる様なオープニング・クレジット)
そのソウル・バスのお洒落なタイトルデザインが見られるBonjour tristesse by Saul Bass – notcoming.com(映画では青赤黄色がより鮮やかなんですが最後は青い花びらが涙のように落ちていきます。 サイトのサムネイル画像を矢継ぎ早にクリックすると動いているように見えます)

Bonjour tristesse per Juliette Greco
greco.jpg「悲しみよこんにちは」の映画音楽はジョルジュ・オ-リックですが、ナイトクラブのシーンでは当時は新人のシャンソン歌手だったJuliette Gréco(ジュリエット・グレコ)が登場して、”Bonjour Tristesse(悲しみよこんにちは)”を英語の歌詞で歌いました。
ジュリエット・グレコは1967年のドキュメンタリー映画「Le Desordre a Vingt Ans(想い出のサンジェルマン)」に出演しています。 1940年代サンジェルマン・デ・プレに集う芸術家としてJean-Paul Sartre(サルトル)、Jean Cocteau(コクトー)、Simone De Beauvoir(ボーヴォワール又はボーヴォアール)などに混じってジュリエット・グレコも描かれています。
「悲しみよこんにちは」の撮影当時、ジュリエット・グレコは「Ascenseur pour l’echafaud(死刑台のエレベーター)」の音楽収録で1957年からパリにいたMiles Davis(マイルス・デイヴィス)と恋愛関係にあったと噂されていました。 1927年生まれのグレコは現在も尚コンサート活動を続けているそうです。

La Belle Vie – Juliette Greco

メインタイトル曲のBonjour TristesseやLa Belle Vie他、Amours Perdues、Romance、L’ Amour Est Parti、La Chanson de Catherine、Comme un Enfant Puni、Les Roulottes、Je Mens、Le Coeur Casse 、L’ Ombre、Les Croixの11曲を収録していますが現在は入手困難となりました。
Bonjour tristesse Soundtrack
上記のアルバムと類似したカバー画像のMP3アルバム「Bonjour tristesse」(ASIN: B006X9H2E4)で「悲しみよこんにちは」のテーマ曲が試聴できます。 当然のことソウルバスの「涙」のイラストがLPジャケットに使用され当時発売された悲しみよこんにちはのサントラ「Bonjour Tristesse; 1958 Soundtrack LP」というレコードは入手困難(不可)で、現在はiTunesで「Bonjour Tristesse (Original Motion Picture Soundtrack)」(英語の曲名)や「Bonjour Tristesse – OST」があります。 セバーグなど登場人物のイラストがカバー画像で2011年に発売され「悲しみよこんにちは」の他に「恋ひとすじに」と「居酒屋」というジョルジュ・オ-リックの映画音楽を収録した「Bonjour Tristesse / Christine / Gervaise」(ASIN: B003658904)というCDも発売されていました。
Juliette Greco in Bonjour tristesse (1958) – YouTube

La morte de Françoise Sagan
2004年9月24日金曜日にフランソワーズ・サガンが69歳で亡くなりました。(心臓疾患)
Bibliothèque Delirium – Françoise Sagan

Bonjour Tristesse DVD
2010年に発売の日本語字幕版の「悲しみよこんにちは」DVDです。 映画の公開当時に私を魅了したソウル・バスによるデザインのDVDのカバー画像が復活しました。が、すぐに入手困難となりました。
Bonjour tristesse DVD悲しみよこんにちは DVD (ASIN: B002YZB198) – Amazon.co.jp
ちょっとカバー画像が異なる2007年版の「悲しみよこんにちは」DVD (ASIN: B000MTOPYG)もあり。

ページトップの画像はアメリカのAmazon.comで見つけた「Bonjour tristesse」(ASIN: 5555291744)のVHSビデオです。 下記は国内版の「フランソワーズ・サガンの悲しみよこんにちは」の日本語字幕版VHSですが共に入手困難となりました。
Bonjour Tristesseフランソワーズ・サガンの悲しみよこんにちは (ASIN: B00005GB99) – Amazon.co.jp
海外版VHSビデオの「Bonjour Tristesse / Movie / Columbia/Tristar Studios」(ASIN: 0767808460)もあり。

こちらは2003年に発売の「Bonjour Tristesse」のDVD画像ですが言語は英語で字幕には日本語もあるそうです。
DVDBonjour Tristesse


悲しみよこんにちは 書籍
学生時代に私が初めて仏語で読んだ小説がサガンのデビュー小説の「悲しみよこんにちは」でしたが、セシルが食後の夕闇で聞いた虫の鳴き声を「脚を擦り合わせて音を出す」と日本語字幕にありましたが、書籍の英語訳では虫はCicada(セミ)とかCricket(コオロギ)となっているので迷いましたが、仏原語では羽をすりあわせて鳴くと書かれていましたからコオロギでしょう。 ちなみにセミも羽をお腹にこすりつけて音を出すそうですが場面は夜なのでセミではないでしょう。 コオロギなどは前脚の脛節付け根近くに鼓膜があるそうです。 万葉集などの古典文学で謳われているコオロギはキリギリスとなっているとか。 一方、仏語の書籍ではパパの若い愛人のエルザがスタジオに住んでいると書かれているのでアトリエか?と戸惑いましたが、スタジオとはワンルーム・マンションのことらしくエルザはお金持ちではないという表現なのでしょう。
Bonjour tristesse 悲しみよこんにちは (新潮文庫)
上記の画像はフランス語版ペーパーバックのBonjour tristesse [French] Francoise Sagan (Paperback)になっていますがリンクは入手可能な新潮文庫の日本語版「悲しみよこんにちは」です。 この他にも沢山の書籍があり、1955年に発売された日本語に翻訳された文庫本の「悲しみよこんにちは」(ISBN-10: 4102118284)や、中身が覗けるマスマーケット原語版のフランス語の「Bonjour Tristesse」(ISBN-10: 2266195581)もあります。 ちなみに同じく1961年に「Goodbye Again(さよならをもう一度)」として映画化されたサガンの小説「Aimez-Vous Brahms?(ブラームスはお好き?)」のフランス語版もあります。(ISBN-10: 2266192264)

Audio-Visual Trivia内でジーン・セバーグが出演する映画は勝手にしやがれ

悲しみよこんにちは Bonjour tristesse (1958)」への2件のフィードバック

  1. デボラ・カーは合計6回アカデミー賞にノミネートされています。
    私はファンなんですが。

  2. koukinobaaba より:

    alex99さん、コメント有難うございます。 デボラ・カーはノミネートだけでなく受賞すべきですよね。 媚びがゼンゼン無くて堂々たる女優です。 イギリス英語が印象的です。 デボラ・カーがバレリーナだったことはつい最近知りました。

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