Jean-Paul Belmondo as Michel and Jean Seberg as Patricia
À bout de souffle (1959年)
Nouvelle Vague: Jean Luc Godard’s À bout de souffle
英語のタイトルは「Breathless」という「勝手にしやがれ」はジャン=リュック・ゴダールが監督したフランス・ヌーベルヴァーグの代表作です。 ほんの数人であったNouvelle Vague(ヌーヴェル・ヴァーグ)仲間のFrancois Truffaut(フランソワ・トリュフォー)が原案を書き、ジャン=リュック・ゴダールが脚本を書いたとされています。 撮影が特筆に価する新人のカメラマンのRaoul Coutard(ラウール・クタール)でヌーヴェル・ヴァーグ特有の高感度フィルムを使用し殆どが隠し撮りだったとか。 大きなライトも銀板も使用しないドキュメンタリー風の映像が撮れるのですが隠し撮り用の車を押したと云われるゴダール監督以下スタッフも身体をはったヌーヴェル・ヴァーグでした。 当時では珍しい夜間でも照明なしに撮れるフィルムだったそうです。 ラウール・クタールは「勝手にしやがれ」の後すぐ1960年の「Tirez sur le pianiste(ピアニストを撃て)」や1961年の「Jules et Jim (突然炎のごと)く」などジャン=リュック・ゴダールやフランソワ・トリュフォー映画の撮影を担当し60年代のフランス映画界で活躍しました。
ジャン・リュック・ゴダール監督は当時人気のシャンソン歌手兼俳優のCharles Aznavour(シャルル・アズナブール)を主役のミッシェルにしたかったのですが、売れっ子のアズナブールがフランソワ・トリュフォー監督の「ピアニストを撃て」を選んだので、Jean Paul Belmondo(ジャン・ポール・ベルモンド)に白羽の矢がたったそうです。
☆ゴダールの「勝手にしやがれ」ではテンポを強調するためにジャンプ・カット手法が使われているのだそうです。
くわえ煙草でフェードラ帽子をかぶったアメリカ映画のギャング・スターのHumphrey Bogart(ハンフリー・ボガート/ボギー)に憧れるパリのチンピラ自動車泥棒「ミシェル」役のジャン=ポール・ベルモンドと、ジャーナリスト志望のニューヨークからの留学生「Patricia Franchini(パトリシア・フランキーニ)」を演じる「Jean Seberg(ジーン・セバーグ)」との会話を中心に展開します。
☆「勝手にしやがれ」でパトリシアを演じたジーン・セバーグの写真が見られるJean Seberg Gallery
アメリカかぶれかボギーが映画「マルタの鷹」で見せたようにベルモンドがトレードマークの唇をこするシーンに続いてセバーグと一緒に映画の説明をする「À bout de souffle(Breathless)」の英語字幕版トレーラーが観られるA Bout de Souffle Trailer – IMDb
A Bout de Souffle – YouTube
強烈なラスト・シーンでは、警官の銃弾に倒れ自分の手で目を閉じる時、ミシェルはこう言う。
「C’est vraiment DEGUEULASSE! (ホントむかつく、最低!)」 (degueulasseは嫌悪感を覚えるという意味)
☆Michel – C’est vraiment degueulasse
Patricia – Qu’est-ce qu’il a dit?
Inspecter – Il a dit tu es vraiment degueulasse.
Patricia – Qu’est-ce que c’est ‘degueulasse’?
À bout de souffle
「刑事さん、ミシェルはあの男でっせ」とチクるゴダール
Alfred Hitchcock(ヒッチコック)監督はカメオ出演で有名ですが、ジャン=リュック・ゴダールもご同様らしく「勝手にしやがれ」では監督自身が密告男の役で出演している他、評論家転じてヌーヴェルヴァーグ(新世代)の監督となったJean-Pierre Melville(ジャン=ピエール・メルヴィル)も作家(ジャーナリスト)のJean Parvulesco(ジャン・パルヴュレスコ)役で出演しています。
ジャン・ピエール・メルヴィルは、Alain Delon(アラン・ドロン)がアルコール依存症の元刑事役のイヴ・モンタンと共演した1970年の「Le Cercle rouge(仁義)」や、アラン・ドロンが炭鉱のカナリアのような役目を果たす小鳥と暮らす殺し屋を演じ、エロ可愛いCatherine Jourdan(カトリーヌ・ジュールダン)も出演した1967年の「Le Samouraï(サムライ)」などのフィルムノワール作品を監督しました。 「サムライ」では地下鉄を使っての追跡劇が緊迫感たっぷり!そしてラストが衝撃! かってアラン・ドロンは「サムライ」で共演した母親似のNathalie Delon(ナタリー・ドロン 旧姓はナタリー・バルテルミー)と結婚したことがあったのです。
Katte ni shiyagare!!!
以前映画館で観た映画をビデオで観かえすと、たいていの場合は失望するのですが、「勝手にしやがれ」に関してはそんなところは1ヶ所も無いということはすごい!
ゴダールのアメリカ映画オマージュ
映画「勝手にしやがれ」のヒロインはアメリカ娘、ハンフリー・ボガートにあこがれてボギー・ソフトをかぶったベルモンドの不敬な態度や木で鼻をくくったような物言い、Gary Cooper(ゲイリー・クーパー)が主演した「Veracruz(ヴェラクルス)」やIda Lupino(アイダ・ルピノ)の「The Big Knife (悪徳)」など50年代の映画を監督したRobert Aldrich(ロバート・アルドリッチ)の映画ポスターや看板、キャデラックとDouglas Macarthur (マッカサー元帥)タイプの男など。 「kill Bill(キルビル)」でのQuentin Tarantino(クエンティン・タランティーノ)監督の世界が日本だったように、「勝手にしやがれ」は、アメリカおたくのゴダールが「ありがとよ!今度は使わせてもらうよ。パックリ!」っとばかりにオマージュ(Homage=捧げる敬意を表した作品でパクリとは違うらしいのですが……)
☆ ゴダールのアメリカB級映画とMonogram Pictures(モノグラム・ピクチャーズ映画会社)への想い
2011年のオスカー(アカデミー)名誉賞受賞に決定したが高齢を理由の一つに揚げて欠席の意向を示したジャン=リュック・ゴダールだがアメリカではゴダールの反ユダヤ主義問題が再浮上したのだとか。
☆映画の題名の「A Bout de Souffle」は「息切れして、力尽きて」という意味で、邦題の「勝手にしやがれ」は映画評論家で名翻訳者の秦早穂子氏の名訳。 英語版では「A Bout de Souffle!」を「Get stuffed! (“勝手にしろ!”とか”息が詰まった”)」とは言ってますが映画のタイトルは「Breathless(息切れした)」 ちなみに”Souffle”だけでは動詞のsouffler(息をする、吹く、膨らむ)の過去分詞だそうで、Soufflé(スフレ)というフワフワ焼き菓子の名前にもなっているそうです。
A Bout de Souffle Soundtrack
「勝手にしやがれ」のサントラはフランスの大物ジャズ・ピアニストであるMartial Solal(マーシャル・ソラル又はマルシャル・ソラール)が手掛けたテーマ曲を収録したサウンドトラック集です。(オリジナルは1961年でこのCDは2008年発売です)
A Bout de Souffle
♪ 試聴は類似したMartial Solal – A Bout de Souffle – Soundshelter
国内盤は勝手にしやがれ」オリジナル・サウンドトラック
ボーナス・トラックにピアノソロを加えた「勝手にしやがれ」の挿入曲の他、1962年にOrson Welles(オーソン・ウェルズ)が監督した「Le Procès(審判)」のテーマ、「Échappement libre(黄金の男/Jean Baker)」、1962年にEdouard Molinaro(エドゥアール・モリナロ)が監督してPascale Audret(パスカル・オードレ)が出演した「Les Ennemis(敵)」、Henri Verneuil(アンリ・ヴェルヌイユ)が監督してPascale Petit(パスカル・プティ)が出演した「D’une Nuit L’Affaire(艶(つや)ほくろ)」などの映画音楽です。
Bandes Originales des Films de Jean-Luc Godard
「勝手にしやがれ」や「気狂いピエロ」や「軽蔑」などのゴダール映画のサントラから抜粋した主題歌集がBMGビクターから「ジャン=リュック・ゴダール作品集」としてリリースされたそうですが1994年発売の国内盤「ジャン=リュック・ゴダール作品集」(ASIN: B00004VOQD)が見つかります。 ”デュオ”(勝手にしやがれ)、”私の運命線”(気狂いピエロ)、カミーユのテーマ(軽蔑)など19曲を収録しています。
類似したアルバムは「Jean-Luc Godard Histoire de Musique Soundtrack」(ASIN: B000PDZQW4)
ジャン・リック・ゴダール作品集
♪ 試聴はJean-Luc Godard : Histoire(s) de musique – muziekweb
上記のベルモンドとセバーグが共演した「勝手にしやがれ」のVHSビデオは1997年と 2001年に発売された原語版ですが現在入手困難で、2006年に発売された字幕版「勝手にしやがれ」のDVDも現在は入手困難。(中古でもヴィンテージ価格)
下記のDVD画像は「勝手にしやがれ デジタル・ニューマスター版」ですが、リンクは2010年発売の激安版になっています。
勝手にしやがれ [DVD]
Jean-Luc Godard DVD Collection
☆ゴダール映画の日本語字幕DVDボックスセットには「ジャン=リュック・ゴダール DVD-BOX(4枚組)」(ASIN: B000BD67ZI)の他、「A bout de souffle(勝手にしやがれ) デジタル・リマスター版」「Le Petit Soldat(小さな兵隊) デジタル・リマスター版」「「Vivre Sa Vie(女と男のいる舗道)」「Pierrot Le Fou(気狂いピエロ)」を収録した4枚組DVDは「ジャン=リュック・ゴダール DVD-BOX PART2」(ASIN: B000F4LDCK)
Maruschka Detmers(マルーシュカ・デートメルス)が主演した「Prénom Carmen(カルメンという名の女)」、Anna Karina(アンナ・カリーナ)が主演した「Made in USA.(メイド・イン・USA)」、Laurent Terzieff(ローラン・テルジェフ)やNathalie Baye(ナタリー・バイ)が出演した「Détective(ゴダールの探偵)」の3作を収録した2006年リリースの3枚組DVDは「ジャン=リュック・ゴダール DVD-BOX PART3」(ASIN: B000H307HQ)
☆ 1983年にジャン=リュック・ゴダールが監督したボカシだらけの「カルメンという名の女」ではMaruschka Detmers(マルーシュカ・デートメルス)が女強盗のカルメンを演じていますが、ヒッチコック監督みたいにカメオ出演好きなゴダール監督がカルメンの伯父役で登場します。
Maruschka Detmers with Jean-Luc Godard in First Name Carmen – YouTube
ちょっとValerie Kaprisky(ヴァレリー・カプリスキー)似だが、もっとセクシーなマルーシュカ・デートメルスは1984年にJacques Doillon(ジャック・ドワイヨン)が監督した「La Pirate(ラ・ピラート)」でJane Birkin(ジェーン・バーキン)とレズビアンを演じたとか。
ジャン=リュック・ゴダール (1930 – 2022)
ヌーベルバーグといえば名が上がる映画制作者「ゴダール」は2022年に91歳の生涯を安楽死により閉じることを選択しました。
☆「勝手にしやがれ」の後のジャン=リュック・ゴダールの映画で私が劇場で観た記憶があるのはアンナ・カリーナ主演の1961年の「女は女である」と、Georges Delerue(ジョルジュ・ドルリュー)のテーマ曲が人気だった1962年の「女と男のいる舗道」、1962年の「Les sept péchés capitaux(新7つの大罪)」、ブリジッド・バルドーが主演した1963年の「軽蔑」、1965年の「気狂いピエロ」などでしたが、なんといっても「勝手にしやがれ」が最高です。 映画は爆発だっとばかりにヌーヴェルヴァーグの寵児となった型破りの映像作家たるジャン=リュック・ゴダールは91歳で亡くなりました。 A Bout de Souffle!
You leave me……Breathless!
(Richard Gere’s Breathless)
1983年にJim McBride(ジム・マクブライト)がオリジナルのゴダールとトリュフォーの脚本で「勝手にしやがれ」をリメイクしました。 ジャン・ポール・ベルモンドの役はハリウッドのセクシー男優だったリチャード・ギアでジーン・セバーグの役はフランスのセクシー女優であるヴァレリー・カプリスキーで、オリジナルよりずっとエロティックな「Breathless(ブレスレス)」です。 「火の玉ロック」のJerry Lee Lewis(ジェリー・リー・ルイス)が歌った”Breathless”と”High School Confidential”がサントラで使用されました。
「勝手にしやがれ」は名前は聞いていたけど、少し年配の人の時代ですね。アノ時代に観てないとTVで観ても、???でした。「ブレスレス」をNHKで先に見ちゃったけからか? 「黄金の男」はDVDもないようですね、高校時代に観て、始まりのテーマ音楽が、車(TR4)のオーディオに45RPMのドーナッツ盤をスロットインするところから始まることに驚いた覚えがあります。 当時のカーステレオは8トラックエンドレステープ、カセットはまだステレオではありませんでした。 レコードをスロットインするカーステレオは現物を見たことはありませんでした。
「勝手にしやがれ」を劇場で観た方は当時高校生以上だったでしょう。少し年配というより現在は既に年金受給者となっているはずです。ジャン=リュック・ゴダールの作品ですからアノ当事に観ても???でした。「気狂いピエロ」はもっと?????。
カーオーディオで使用されたドーナッツ盤(EP)は本来ジュークボックス用に製作されたシングルレコードだそうですが、ジュークは日本でも1950年代から1960年代には喫茶店やバーに置かれていました。1曲片面が10円で100円札が流通していた時代でした。(国鉄の初乗り運賃と封書の切手が10円、ジャズ喫茶の珈琲が100円の時代のこと)