シャルル・アズナヴール Charles Aznavour

Charles Aznavour (1924 – 2018)
シャルル・アズナヴールはMe Que Me Que(メケメケ)、Isabelle(イザベル)、La Bohème(ラ・ボエーム)、La mama(ラ・ママ)、Hier encore(帰り来ぬ青春)など数多くのヒット曲でお馴染みの「シャンソンの神様」と呼ばれるフランスを代表するシャンソ歌手の一人で、英語読みではチャールズ・アズナブールだそうです。 シャンソンとはイタリアのカンツォーネ同様に歌という意味ですがいわゆるフランスの歌謡曲と言っていいでしょう。 1960年にフランソワ・トリュフォー監督の「Tirez sur le pianiste(ピアニストを撃て)」に出演して脚光を浴びたあと、1962年には私の好きなFrancoise Arnoul(アルヌール)と共演した「Le diable et les dix commandements(フランス式十戒)」や、Hardy Grüger(Hardy Kruger/ハーディ・クリューガー)やLino Ventura(リノ・ヴァンチュラ)と共演した戦争映画のUn Taxi Pour Tobrouk(地獄の決死隊)などの他、60本もの映画に出演した俳優でもあります。

シャルル・アズナブールは1924年にパリ・サンジェルマン・デ・プレで生まれましたがアルメニア系で本名がヴァレンナーグ・アズナヴーリアンというそうです。 生活のために9歳から舞台に立ち、その時から芸名はシャルル・アズナブールです。 1946年に、フランスの有名なシャンソン歌手エディット・ピアフに認められて前座を務めて以来脚光を浴びるようになり、1957年には人気投票第1位に輝きました。 なぜかピアフとの関係には触れたがらないのだそうです。
※アトム・エゴヤン監督やアズナヴールの他にSylvie Vartan(シルヴィ・ヴァルタン)、父親がアルメニアからの移民だというCher(シェール)、Marie Laforêt(マリー・ラフォレ)、Gregory Peck(グレゴリー・ペック)なども祖先がそうなんでしょうか、アルメニア系だといわれています。

Autobiographie
Autobiographie CD1991年5月27日アズナブール67歳にして来日、新宿厚生年金ホールにてLast Concert Tour in Japan(最後の日本コンサート・ツアー)公演を行いました。 手品師のように操る例の白いハンカチも健在だったそうです。 Concerto Pour Une Voix(二人の天使)で知られたDanielle Licari(ダニエル・リカーリ)とのデュエットで手話を交えた”Mon Emouvant amour(声のない恋)”などが歌われました。 私の母もプロモーター側の「3日間、毎回違う曲」という謳い文句に釣られて数万円する3日通しチケットを購入しましたが、3日通して同じステージ内容だったためえらくご不満でした。(当たり前といえば当たり前) アズナヴールが「あったかいわ あなたのそばは…」と歌ったレアな”Je te réchaufferai(愛は燃えている)”は来日記念盤の「Charles Aznavour/La Bohème(シャルル・アズナブール/ボエーム)」(ASIN : B001CJJXJ2 など)に”Parce Que Tu Crois”と共に収録されています。(Je te réchaufferaiの試聴はアルバムCharles Aznavour 65 ASIN: B0045SQI3G) その後2003年に自作の新曲を収録したアルバム「Je Voyage(私は旅をする)」(ASIN: B0000T4U2K)をリリースし、80歳を迎えた2004年にも4月17日から5月17日までの一ヶ月間、Palais De Congres(パレ・デ・コングレ)で恒例のコンサートを開いたそうです。 驚くことに「最後の日本コンサート・ツアー」と銘打った1991年のコンサートから17年の2016年、92歳になったアズナブールが恐らく本当の「最後の日本ツアー」として来日するとは94歳で天に召された我が母もご存知あるめえ。 と思っていたら、2018年の来日コンサート(生誕94周年 特別記念 来日コンサート)をキャンセルしたアズナヴールはそのまま、私の母と同じ94歳で亡くなりました。
※「声のない恋」はアズナヴールの編曲や伴奏を手掛けたことのあるポール・モーリアとの共作で80年代初期のアルバム「Autobiographie(自叙伝)」などもに収録されています。
Autobiographieの試聴はAutobiographie – AllMusic.com(5番)

1956年リリースの「Terre nouvelle」以外のレコードジャケットで見る限り、結構若い頃からアズナブールは髪は薄く、しわが多くて下がったモシャモシャ眉毛とお世辞にもハンサムとはいえず、風采のあがらない身長160センチほどの小男です。 ところがところがこの哀しみを秘めた瞳で、女に捨てられた未練を哀れっぽく歌いあげるとこのシャンソン歌手は、とてもセクシーなのです。 ちょうどSerge Gainsbourg(セルジュ・ゲンズブール)がそのセクシーさで美女連をメロメロにさせてしまうように。 ビブラートのかかった独特の唱法で、聴く人をドラマの主人公にしてしまう点では何やら日本の演歌歌手にも通ずるところありですね。 フランス人特有ともいべき表情豊かな手の動きがいっそうシャンソンを引き立てます。 こんな手を持ったアズナブールが舞台を離れてすることとは・・・なんと!手料理なんだそうです。 ゲンズブールが15歳のFrance Gall(フランス・ギャル)に”Poupée de cire, Poupée de son(夢みるシャンソン人形)”を提供してコラボしましたがアズナブールもモロッコ出身のDanièle Vidal(ダニエル・ビダル)をスカウトしたそうで、”Aime ceux qui t’aiment(天使のらくがき)”でデビューしたビダルもギャルも当時日本で人気がありました。
Thalassothèpapie(タラソテラピー)
2004年に80歳になったアズナブールが若々しく見える秘訣は最近はまっている海洋療法だそうです。 アズナブールは若い時から関節炎とリウマチに悩まされていたので、おじいさんの気分だったのが、お陰でよくなったそうです。 フランスではリハビリや身体の新陳代謝を促す療法に、海水が盛んに使われているそうです。

シャルル・アズナブールの出演映画は数多くありますが、1959年、B.B.と結婚したことがあるJacques Charrier(ジャック・シャリエ)主演のLes Dagueurs(今晩おひま?)とか、ゴダール監督のA bout de souffle(勝手にしやがれ)を蹴って出演したFrançois Truffaut(フランソワ・トリュフォー)監督のTirez sur le pianiste(Shoot the Piano Player)、邦題は「ピアニストを撃て」ではアズナブールがカフェのピアノ弾きを演じました。(アズナブールの映画はShoot the Piano Player、西部劇ではPlease do not shoot the pianist. He is doing his best.、エルトン・ジョンの歌はDon’t Shoot Me, I’m Only the Piano Player.)
1963年にSylvie Vartan(シルヴィー・ヴァルタン)を観に劇場に行った「Cherchez l’idole(アイドルを探せ)」にも出演しています。
そして、2002年の「秘密のかけら」を手がけたAtom Egoyan(アトム・エゴヤン)監督のArarat(アララトの聖母)では主人公の映画監督役を演じました。(注:聖書ではノアの箱船が漂着したのがアララト山であると記述)
歴史の古い国ですが多くの異民族の侵入を受けてきた悲劇のアルメニア共和国ですが、トルコ政府は否定しているものの、1915年のトルコよるアララト聖山におけるアルメニア人大虐殺の史実に基づき、アルメニア人のアトム・エゴヤン監督がアルメニア人俳優のアズナブールを起用して自己を体現した映画です。
※ 参考は2007年4月明石書店から出版された「中島偉晴」著の単行本「アルメニア人ジェノサイド―民族4000年の歴史と文化
アルメニア近現代史の専門家という吉村貴之著単行本「アルメニア近現代史―民族自決の果てに (ユーラシア・ブックレット) 」(ISBN-10: 4885958776)には11世紀以降の世界各地への民族離散と、現代の独立に至るまでの苦難の歴史を記しています。 映画ではあまり描かれないこのアルメニア人大虐殺は2016年にChristian Bale(クリスチャン・ベイルもしくはクリスチャン・ベール)が出演する「The Promise(ザ・プロミス)」でトルコのホロコーストとして取り上げられます。

☆シャルル・アズナブールのオフィシャル・サイトはCharles Aznavour Official Site (右のプレーヤーで”La Bohème”など14曲が試聴できますが、ページ下では1959年の”A propos de pommier”やキャピトル・レコードでの録音風景などのビデオが観られます)
左上にメニューがあります。 出演映画やレコードなどの他、JUKE-BOXでは短いですがシャルル・アズナブールの15曲の試聴が出来ます。
☆シャルル・アズナブールのフランス語の歌詞はCharles Aznavour Lyrics – LyricsMania.com

Charles Aznavour – Venecia sin tí (en España) 1965 – YouTube
Charles Aznavour – La Boheme 1965 – YouTube
Charles Aznavour – Le Temps 1966 – YouTube
Charles Aznavour – Paris au mois d’août 1966 – YouTube
Charles Aznavour Tout s’en Va 1968 – YouTube
Charles Aznavour – Hier encore – YouTube
Charles Aznavour – Désormais (1968) YouTube
Charles Aznavour – She – YouTube

シャンソン歌手のシャルル・アズナブールは映画に劣らず勿論シャンソン・アルバムも数多くリリースしています。 アマゾンだけでも100枚以上もありますから色々と試聴してみて下さい。

シャルル・アズナブールが1963年に作詞作曲した”Bon anniversaries(素晴らしい結婚記念日)”やレアもののReste(レステ)などを収録した2枚組みの輸入盤CD(2000年発売)
Aznavour 2000Aznavour 2000: Live Au Palais Congres
類似したアルバムの「Ses Plus Grands Sucess」もあります。

シャルル・アズナブールはAnna Karina(アンナ・カリーナ)とJean Paul Belmondo(ジャン=ポール・ベルモンド)が主演した1961年のゴダールの「Une femme est une femme(女は女である)」は音楽が重要な要素を占めていますが挿入歌で女と男の風刺の効いた掛け合い”Tu t’laisses aller(あきれたあんた)”を歌っています。 「女は女である」のサントラは見つかりませんがアズナヴールのアルバム「Je M’Voyais Deja」に”あきれたあんた”が収録されています。
試聴はJe M’Voyais Deja – Amazon.com(Tu T’Laisses Allerは6番)

奇跡が起こったようなラストシーンでは観客を泣かせた1999年の「Notting Hill(ノッティングヒルの恋人)」はJulia Roberts(ジュリア・ロバーツ)とHugh Grant(ヒュー・グラント)が共演していますが、アズナヴールの”She”が映画のオープニング・シーンで流れます。 シャルル・アズナブールが英語で”美しいひと、夢のようなひと、ぜったいに忘れられない”と歌う映画主題歌の”She”はフランス語の原曲タイトルを”Tous Les Visages De L’Amour(忘れじのおもかげ)」といい、”Hier Encore”などシャルル・アズナブールとのコラボで有名な南ア生まれのジャーナリストで作詞家のHerbert Kretzmer(ハーバート・クレッツマー)の作詞だそうです。 「ノッティングヒルの恋人」のサウンドトラックではアズナヴールのようにビブラートが’特異’の英国ミュージシャンのElvis Costello(エルビス・コステロ)がエンディングの「She」を歌っています。
Elvis Costello – She in Notting Hill – YouTube

Charles Aznavour Best
アルバムに収録されている”She”は映画で使用されたのと同じものですが試聴が無いCDの「Jazznavour」もあります。
Greateset Hits For Japan by Charles Aznavourグレイテスト・ヒッツ・フォー・ジャパン
リンク先でも全曲試聴できますが、She(”シー(忘れじのおもかげ)”はスイングしているバージョンで映画ではもっとスロー。
“She”の試聴は下から4番目のJazznavour – Amazon.com
“She (Tous Les Visages de l’Amour)”はシャルル・アズナブールが英語で20曲を歌っているベスト盤アルバム「She: The Best of Charles Aznavour (20 Great Songs in English)」にも収録されています。
She-Tous Les Visages De L’Amourの歌詞
シャルル・アズナブールの歌詞はTous Les Visages De L’Amour – Lyrics-Copy.com

Me Que Me Que: Charles Aznavour
Me Que Me Queはジルベール・ベコー作曲でシャルル・アズナブール作詞の曲です。 仏語で”Mais qu’est-ce que c’est?”のことですが意味は「それがどうしたっていうのさ」
Charles Aznavour - Me Que Me QueJezebel(2004年盤)
1996年初リリースの「Jezebel」もありますが、アルバム「Me Que Me Que」には試聴がありません。
日本ではメケメケの試聴が見つからなかったので、素晴らしいドイツのMe Que Me Que – Musicline.deで1番を試聴!
※「メケメケ」についてはAudio-Visual Trivia のMe Que Me Que
ちなみにジルベール・ベコー作曲でシャルル・アズナブール作詞の曲には1963年のシャンソンで”Je t’attends(ジュタトン、君を待つ)”があります。
Charles Aznavour – Je t’attends – YouTube

ページトップのCD「Chansons, D’amour」はアズナブールの代表曲を収録したCDです。※同じ番号の商品でもAmazon.com(https://www.amazon.com/Chansons-Damour-Charles-Aznavour/dp/B0009B0GT0)やAllMusic.com(https://www.allmusic.com/album/chansons-damour-mw0000703590)やSpotfy(https://open.spotify.com/album/7DxWGOZHfcdIJkhWEsEp9H)などにあるアルバムでは曲目が違います。
以下は日本盤の曲目リスト
1.酔いしれて J’Ai Bu
2.僕の肩でお泣き Viens Pleurer Au Creux De Mon Epaule
3.青春という宝 Sa jeunesse
4.愛のあとで Apres L’amour
5.希望に満ちて Je m’voyais deja
6.遠い想い出 Non,je n’ai rien oublie
7.それがわかれば Il faut savoir
8.帰り来ぬ青春 Hier Encore
9.八月のパリ Paris Au Mois D’aout
10.ラ・ボエーム La Boheme(Bohemia)
11.愛のために死す Mourir d’aimer
12.昔かたぎの恋 Les Plaisirs Demodes
13.人々の言うように Comme ils disent
14.想い出をみつめて Mes emmerdes
15.自叙伝 Autobiographie
16.声のない恋 Mon Emouvant amour(デュエット:ダニエル・リカーリ)
17.●キスしておくれ (原題不明)
18.●想い出のシャンソン (原題不明)
19.●きみと私 (原題不明)
20.あなたの目よりも青く(デュエット:エディット・ピアフ) Plus bleu que tes yeux(en duo avec Edith Piaf)

シャルル・アズナブールのアルバム”20 Super Sucessos”にはLa Boheme、Et Pourtant、Emmenez-moi(世界の果てに)、、Que C´est Triste Venise (How sad Venice can be)、Yesterday When I Was Young、Je M´voyais Déja、Il Faut Savoir、Les Comediens、Qui?、For Me Formidable 、La Mamma、Trousse Chemise、Le Temps 、The Old Fashioned Way 、She、A Contre L´amour、Happy Anniversary 、Lets Turn Out the Light 、To Die of Love、How Sad Venise Can Beが収録されています。 ちなみに歌詞が「ダンス、(Dans le bruit familier de la boîte à la mode …)」で始まる”The Old Fashioned Way”は1973年に作った曲で”Les plaisirs démodé(昔かたぎの恋)”の英語バージョンです。
Charles Aznavour – Emmenez-moi (1967?) – YouTube

シャルル・アズナブールの”La Terre Meurt”が収録されているのはアルバム「Colore Ma Vie」ですが試聴はColore Ma Vie von Charles Aznavour – Amazon.com(1番)

♪ Charles Aznavour – Que C’Est Triste Venice (20 Super Sucessos)

アズナブールが作曲し、Yves Bernard(イヴ・ベルナール)が「恋は一日のように過ぎて行く…」とが詩を付けた”L’ Amour C’Est Comme un Jour(恋は一日のように)”は1995年にリリースされたアルバム「20 Chansons d’Or」(ASIN: B00000DXKE)や2014年販売の4枚組の「90e Anniversaire – Best Of」(ASIN: B00K6FSYT8)などに収録されています。

シャルル・アズナヴール Charles Aznavour」への6件のフィードバック

  1. またも、なつかしの渋い人物を選択されていますね~
    シャンソンはあまり聞く機会がなかったんですが、フランソワーズ・アルディを聞いてましたよ。アズナブール同様、彼女も映画界で女優として活躍していた時期がありましたよね。

  2. koukinobaaba より:

    anupamさん、今晩は! フランソワーズ・アルディとはマニアックですね。 可愛かったですが。 スエーデンの城はモニカ・ヴィッティが出た映画ですが未見です。 観たいです。 
    一日じゅうスパム・コメントと格闘して今日は疲れた!

  3. 9月22日にサントリーホールで市村正親のワン・アクターズショー『ペールギュントの旅』を観てきました。全編アズナブールの曲で構成されていました。ペール・ギュントとなぜかアズナブールがぴったり合い、また、50歳を過ぎた市村正親が見事に歌い上げていました。

  4. koukinobaaba より:

    ミミ Paquetさん、素敵なミュージカルを観ていらしたのですね。 80歳のアズナヴールですが、日本の方が演じるのは大変なことだと思います。 市村正親さんはミュージカル歴が長いですね。 20年程前に「ウエストサイド物語」を観たのですが出演してたような・・・たぶん。

  5. ラガー より:

    はじめまして。失礼します。
    すばらしいホームページですね。勉強になります。
    少し質問してもよろしいでしょうか?
    小男のSerge Gainsbourg(セルジュ・ゲンズブール)と書いていますが、セルジュ・ゲンズブールは身長179センチですが小さいでしょうか?

  6. koukinobaaba より:

    超セクシーで女性にもてもてのセルジュ・ゲンズブールをオーバーに体系(身長)と比較してみただけです。海外では190センチ代の男性も多いとはいえ、確かにシャルル・アズナヴールの160センチと同列に扱うのはちょっと乱暴だったようです。

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