唇によだれ L’Eau a la bouche (1959)

唇(くち)によだれ(1959年)
L’Eau à la Bouche par Jacques Doniol Valcroze avec Bernadette Lafont
邦題は「くちびるによだれ」ではなく「くちによだれ」と読ませるこのモノクロ映画は映画雑誌編集長だったJacques Doniol Valcroze(ジャック・ドニオル=ヴァルクローズ)の監督デビュー作品ですが、日本で公開された映画としては、この後1970年にMarie Dubois(マリー・デュボワ)主演の「La Maison des bories(風の季節)」だけでした。

「よだれ」そのものは仏語で”Bave”ですがこの映画タイトルのフランス語の意味は「唾が出るほど」で、イタリア語では”Le gattine”(子猫たち)で、英語では”The Water Spout”、潮吹き?噴水?、つまり「ヨダレ」です。 が、実際の英語のタイトルは「A Game for Six Lovers(6人の恋人たちの策略)」です。 「L’Eau à la bouche」という言葉はよだれが出そうに美味しい(欲しい)ものを表現します。(欲しくて涎が出る) えぇ、女性も。 「唇(くち)によだれ」
「唇によだれ」はこのような扇情的なタイトルで知られた幻の傑作で、遺産相続をめぐり他愛の無い嘘の積み重ねが織り成す三角関係のもつれを中心とした「輪舞」風な風刺ラブコメです。 モノクロですが当時の蓄音機やパリ・モードが色々見られて大変お洒落な作品です。 私には料理女の孫が着ている袖口に折り返しのあるワンピースが当時の子供ファッションとして記憶があります。
1959年の「彼奴を殺せ (きやつをけせ)」や1960年の「Le Saint mène la danse(聖者は踊る)」など、この当時は立て続けにフランス映画に出演していたフランソワーズ・ブリオン)が主役で登場しますが、当時ポール・ゲールと結婚(?)していたF.ブリオンは撮影後に監督のジャック・ドニオル=ヴァルクローズと結婚しました。

登場人物はお婆さまの遺産相続人であるFrançoise Brion(フランソワーズ・ブリオン又はフランソワーズ・ブリヨン)が演じるMiléna(ミレナ)と、「J’Irai Cracher Sur Vos Tom(墓にツバをかけろ)」のPaul Guers(ポール・ゲール)が演じるJean-Paul(ジャン=ポール)、そしてAlexandra Stewartが演じる妹のSéraphine(ニックネームがFifine)
ステファニーとパリに住んでいるファッション写真家はJacques Riberollesが演じるRobert(ロバート)と、公証人のGérard Barrayが演じるMiguel(ミゲル)
Bernadette Lafont(ベルナデット・ラフォン)が演じる女中のPrudence(プルーデンス、又はプリュダンス)と、使用人のMichel Galabruが演じるCésar(セザール)、そしてこんな縺れた恋愛ゲームとは関係ないがFlorence Loinodが演じる少女のFlorence(フローレンス)

「唇によだれ」のあらすじ
以下のあらすじは6人の男女がどう結ばれるかが書かれていますから、これからビデオをご覧になる方は読まない方が楽しめます。
映画はボンゴの響きでテーマ曲”L’eau a la bouche “(Amor Libre)が流れて、囲いの中で興奮している闘牛のブル(雄牛)の短い映像に続いて、ベルナデット・ラフォンが「ベー」と舌を出し、次々とキャストの紹介で始まります。
庭から少女フローレンスがヨーヨーをしながら誰もいないベランダを通って邸内に入ってくると、回想で、屋敷の中の人々がフィフィーヌを探しているシーンに変わる。 訳知り顔の少女は料理人の孫で休暇で遊びに来ているとか。
場面はミレナの独白、「消えたフィフィーヌはもしかしたら余りのショックで自殺するかもしれない。 ことの始まりは祖母のアンリエット夫人が1959年6月16日に死んで公証人のミゲル(ミシェル?)が相続人全員が揃えば祖母の遺言を開けることが出来ると言ったことから始まった。 城に住むミレナの他の二人の孫、つまりミレナのいとこのジャン・ポールとフィフィーヌだが1942年の家庭争議の後、ずっと行方知れずだったフィフィーヌをミゲルが探し始めて29日が経過した。 そのミゲルが従妹のフィフィーヌは旅行していたとミレナに電話をかけてきたその時、少女のフローレンスが新しい女中を連れてきた。 これがベルナデット・ラフォンが演じる女中のプリュダンスだが、女中を雇う事をまかされている使用人のセザールと早速やり合う。(これまではセザールの言いなりにならない女中は追い出されたし、結婚などせずに女を取っ替え引っ替えする女好き、つまりカサノバ)
ミゲル(ミシェル?)がミレナに報告したところによると、従兄のファッション写真家のジャン=ポールと妹のステファニー(フィフィーヌ)は金曜日に来るそうだ。 アルバムを出して子供の頃の写真を見るミレナ。

場面変わって恋人たち、「遺産が手に入ったらどうするんだ?」とロベルトがフィフィーヌに問う。 フィフィーヌは「雄牛(ブル)を買うワ。ジャン・ポール(兄)とはPerpignan(ペルピニャン)で落ち会えばお城に連れていってくれるから。でも城には田舎のオールドミスみたいなミレナがいるから貴方と一緒には行かない方がいいと思う。」(本当はミレナが美人だから)
待ち合わせしたホテルにジャン・ポールは現れなかったとかで、フィフィーヌだけがタクシーで屋敷に到着する。

この後、フィフィーヌを追ってきたロベールが車で屋敷に到着、「僕は兄(フィフィーヌの)だと伝えて。」 これを早合点したプリュダンスからジャン・ポールが来たと知らされたミレナが階段を下りてきた。 「貴方がジャン・ポールなの?」 最後に会ったのはミレナが1歳の時だったから覚えてないのだと言う。 取り違えられて都合の良いロベールは訂正せずにジャン・ポールの父親の執事部屋に通された。 使用人のセザールが右手に支那部屋があり夕食は8時だと告げる。 フィフィーヌはロベールに「ここに来ては駄目と言ったのに。」と言うがロベールはあの後すぐにジャン・ポールから電話がきて月曜日じゃないと来れないと言っていたと言い訳する。 「女中が間違えただけだったけど君の従姉(ミレナ)も僕をジャン・ポールだと思ったのさ。」 「なんでそのままにしておくの?ミレナに本当のことを言うわよ。」と詰るフィフィーヌに何か企んでいる様子のロベールは「ひと晩だけ待ってくれ。」と頼む。 どうやら互いに束縛しない取り決めをしているフィフィーヌはロベールが美しいミレナに言い寄るのではないかと案じていた様子。 二人が階下に降りていくと公証人のミゲルが到着していた。

支那部屋に通されたフィフィーヌは古めかしい中国人形や仮面が飾られた部屋を抜け出て外ベランダからロベールの部屋に忍び込む。 支那部屋が怖いからとロベールと夜を共に過ごしたフィフィーヌ。 この後セザールに言われてロベールの部屋にお茶の盆を取りに来たプリュダンスがテーブルの上に置かれたロベールの身分証明書を見つけて誘惑でもしようというのか胸元にしまい込む。

さて、公証人のミゲルを中心にこの城で亡くなった祖母の3人の孫(相続人)がテーブルを囲み相続会議、先ずは1957年にしたためられた600万フランの遺言の条件を読み上げる。 遺産はたいしたことがないようで、城を売却すれば資産価値が下がるがミレナはこのまま城に済み続けるかどうかを決定するには月曜までの猶予があると言う。(もちろんこの時点ではジャンポールは到着しておらずロベールがちゃっかりと座っている)  ここでは「闘牛はあるの?」と聞くフィフィーヌにミゲルは同伴することを約束する。 一方ロベールはミレナと庭のプールを覗き込みながらフィフィーヌと闘牛の約束をしたミゲルがどんな人物かを聞く。 祖母は1942年の家族紛争以来フィフィーヌを死んだものと思っていて、子供はミゲルと私(ミレナ)だけだったと言うが。(私にはミゲルとミレナの相関図がいまいち掴めない) ある日突然ミゲルとミレナは目を合わせることすらしなくなったと話す。(ミゲルに言い寄られたシーンのフラッシュ) お悔やみの手紙に返信せねばと言うミレナにロベールは手伝いを申し出る。 屋上でステファニーはミゲルに現在の恋人ロベールがこのフィフィヌというニックネームを付けたことを話し、美しいミレナのことはどう思う?と尋ねる。 少女フォローレンスが塔の隙間の隠れ場所に潜んでいるのをフィフィーヌが見つけた時、ミゲルは庭でロベールと歩いているミレナを見た。

プリュダンスを説き伏せるのに手こずっているセザール、「俺と寝ないならクビだ。」と脅しをかける。 「前に言ったように私は処女なのよ。あんたはアタシの好みじゃないわ。この豚!」と罵るプリュダンス。
昨夜はセザールの訪問を拒否したプリュダンスが朝のお茶の盆を取り替えようと申し出る。 ジャン・ポール(実はロベール)への盆をプリュダンスが運び、セザールには自分が持っているフィフィーヌ用の盆を持たせる。 おかげで、予期してないフィフィーヌが半裸で身体を洗っている後ろ姿が拝めたセザール。 一方、プリュダンスはジャンポールの部屋に入って「ロベール様、お早うございます。」と挨拶してやる。 驚いて「誰に聞いた?」というロベールには「風邪の便りで。」と答えるしたたかさ。 自信たっぷりのロベールは「たった二日だけのことだ。君の沈黙を買おうじゃないか。何が望みだ?」とプリュダンスを引き寄せてキスするシーンが右下の画像です。
L'eau a la bouche

ベランダで日光浴をしているミゲル、ミレナ、ロベール(ジャンポールとして)、フィフィーナ。 セザールがものにしたくて「口によだれ」だと言うプリュダンスが昼食を知らせにやって来る。 ミレナはセザールに「あの娘(プリュダンス)にセクハラしないでよ。」と言う。 ロベールはこれまでのやり方を変えて、ひざまずいて愛を乞うのだとセザールにアドバイスする。 台所に戻ったセザールはプリュダンスの前に跪いてその通りやってみる。

ロマンチックな月夜の晩のダンスシーン、だがミレナはロベールと一線を超えようとはしない。 ミレナが真夜中にプールで全裸で泳ぐシーンにはアレンジしたテーマ曲の”L’eau a la bouche “の演奏が流れる。 この後、「待て、この売女め!」と追い回すセザールにエプロンも衣服もはぎ取られるプリュダンス。 「あれぇー、お代官さま」状態。(これがページトップの日本語字幕版DVDカバー画像) これを眺めて笑うロベールはセザールが剥ぎ取ったが階下に落としてしまったプリュダンスのブラジャーを拾い上げて手渡す時にロベールが言う。 「セザール、君は闘いに敗北したのだ。William of Orange(オラニエ公ウィレム、沈黙公)の言葉を知ってるかい? 目的を達成するのに待つことも勝つ必要もないって。」と言及するのですが私には歴史的な意味は分かりません。 しかし、この後セザールがプリュダンスの部屋に行くとなんとドアが開いていた。 オラニエ公の言葉を知らなかったプリュダンスでしたがようやくセザールを受け入れます。 このシーンではロベールを待つミレナの部屋の扉も半開きとなって明かりが漏れていた。 BGMは再びテーマ曲”L’eau a la bouche “のインスト。 このシーンがサントラの画像に使用されているようです。 ただしミレナはまだロベールをジャンポールだと思い込んでいる。 城に宿泊する最後の晩、三組のカップルが愛を交わします。 この辺りのシーンで、真夜中にオルガンの音が聞こえて怖がるフィフィーヌがロベールに調べに行って貰いますが、弾いていたのはミゲルで曲はBach(ヨハン・セバスチャン・バッハ)のJesus Joy of Man’s Desiring(主よ人の望みの喜びよ)でした。

さて夜が開けて月曜日となり、ミレナの部屋にお茶を運んできたプリュダンスはロベールが寝ているのを見ると例のIDカードをベッドに投げました。 ミレナはそれを見つけると自分のガウンのポケットにしまい込みます。 一方、ミゲルはフィフィーヌの部屋を出たところでミレナからロベールの身分証明書を見せられます。 着替えたロベールが庭で話すミレナとミゲルを見つけるシーンではトランペットの”Black March(黒のマーチ)”が流れます。

フィフィーヌも又、ミレナに会いに行くロベールを見ます。 ミレナはロベールにプリュダンスが置いていった身分証明署を差し出しますが、ロベールは動じません。 「メロドラマによくあるでしょ、そう、僕は君が思っていた人間じゃないんだ。僕はジャンポールの仕事仲間。」 「そういえば、フィフィーヌは貴方のことを話してたわ。つまり貴方はフィフィーヌの恋人ってわけね。弄ばないでよ。」「そうだったけど今は君のものさ。本当に愛しているのは君だけ。こうなったのも君のせいだ。一目惚れしちゃったんだから。」 「貴方は下品な道化よ。これをフィフィーヌが承知しているなんて驚いたわ。フィフイーヌが恋したミゲルはドンファンなのよ。」 「それは交換条件さ、俺がフィフィーヌの恋人ってことがバレたらフィフィーヌはミゲルをものに出来なかっただろう。それに、ジャンポールはもうじき到着するよ。」 そこにフィフィーヌが盗み聞きしようと忍んでやって来て話の内容にショックを受けて駆け出す。 それに気がついたロベールとミレナはフィフィーヌを追いかける。 使用人にもフィフィーヌの兄(ジャン・ポール)が到着する前に探し出すように指図するが、フィフィーヌは自殺するかもしれないと不安になるミレナ。 「もしものことがあれば貴方(ロベール)を許さないわ。」とミレナ。 「フィフィーヌ、フィフィーヌ」と探しまわるロベールの後ろ姿にヨーヨーをするフロレンスの後ろ姿が重なる。 「私たち四人の馬鹿げた恋愛遊戯だったわ。自由をとっ違えたのだわ。」とミレナ。
屋上から探していたプリュダンスが車が来るのを見つけた。 ジャン・ポールだ。 ミゲルが出迎えてフィフィーヌが行方不明だと告げる。 フィフィーヌは過去に自殺未遂を起こしているのだった。 地下室は? そうだ、プール! 私は温室をもう一度見てくるわ。とミレナがその場を去った後、そこに佇んでいたフロレンスにジャンポールが聞いた。 「もしきみが僕の妹がどこにいるか知っていたら連れて来ておくれ。」 少女は塔への階段をどんどん上って行き、複雑に上下する屋根の階段を通って、かって自分がいた塔の隠れ場所に行く。 フィフィーヌにジャンポールが来たたことを知らせ手を手を引いて一緒に降りて来た。 フィフィーヌはジャンポールの胸に飛び込む。 「お前は隠れん坊でもしてたのかね。ゲームには必ず敗者がいるもんだよ。」
嘘がバレたロベールだが一件落着後にミレナと決裂せず、「事件解決後の最初の一服は実に美味い。」などとタバコを二人で分け合ってその場を去っていく。 ヨーヨーで遊びながら庭に出て行くフロレンスの後ろ姿にセルジュ・ゲンズブールの歌う”L’eau a la bouche”が流れ、映画の冒頭では誰もいなかったベランダにミレナとロベールの寄り添う後ろ姿が見える。
Ecoute ma voix écoute ma prière
Ecoute mon cœur qui bat laisse-toi faire
Je t’en pris ne sois pas farouche
Quand me viens l’eau à la bouche …..

Bernadette Lafont
メイド役で出演しているベルナデット・ラフォンは、1958年にFrançois Truffaut(フランソワ・トリュフォー)の1958年の短編映画「Les Mistons(あこがれ)」でデビューしたフランスの人気女優で、1959年にJean Paul Belmondo(ジャン・ポール・ベルモンド)やAntonella Lualdi(アントネラ・ルアルディ又はアントネッラ・ルアルディ)と「A Double Tour(二重の鍵)」にも出演しています。 トリュフォー監督はベルナデット・ラフォンが気に入ったのか「あこがれ」への出演を強く望んだそうです。 何が原因かは不明ですが「あこがれ」に夫婦で出演していたベルナデット・ラフォンとGérard Blain(ジェラール・ブラン)は離婚してしまったそうです。 1950年代にEstella Blain(エステラ・ブラン)とも結婚したことがある甘いマスクのジェラール・ブランは1945年にマルセル・カルネ監督の「Les Enfants du paradis(天井桟敷の人々)」でクレジットなしですがメジャーデビューして以来、ブリアリと共演したClaude Chabrol(クロード・シャブロル)監督の1957年の「Le Beau Serge(美しきセルジュ)」や1959年の「Les Cousins(いとこ同志)」などヌーヴェルヴァーグ映画などにも出演して2000年に70歳で亡くなりました。 「Les Yeux sans visage(顔のない眼)」のJuliette Mayniel(ジュリエット・メニエル)がシャルルの好きな女性フロランス役で、後にシャブロル監督と結婚するStéphane Audran(ステファーヌ・オードラン)もチラリと出演した「いとこ同志」では映画音楽がDanielle Darrieux(ダニエル・ダリュー)主演の「Retour A L’Aube(暁に帰る)」で知られたポール・ミスラキで、パリで受験する真面目なシャルル(ブラン)が遊び人のポール(ブリアリ)と伯父の留守宅に同居する田舎と都会の学生生活を描くシニカルなヌーヴェルヴァーグの代表作の一つです。 母親と約束した猛勉強で試験に合格が失敗するわ彼女は寝取られるわで絶望するシャルルの確率が6分の1、ポールが撃つ確率は6分の5という6連発銃のロシアン・ルーレット遊びが哀しいエンディングでした。(銃の持ち主のポールは弾を込めていないと思っていたのでこんな結末に) Henri Decaë(アンリ・ドカエ)の撮影でブランとメニエルの夜のシーンが美しい。
ちなみに第二次世界大戦中にヴィシー政権下のフランスで作られた名作の「天井桟敷の人々」は劇中劇が素晴らしいのですが、1975年のTheodoros Angelopoulos(テオ・アンゲロプロス)が監督したギリシャ映画で原題は”O Thiassos”という「The Travelling Players(旅芸人の記録)」も軍事政権下の劇中劇で描かれる映画なんだそうです。(未見) 「天井桟敷の人々 第一部:犯罪大通り 第二部:白い男」でギャランス(ガランス)を演じたArletty(アルレッティ)のインドのサリー風にベッドカバーをまとった姿や白い像姿が得も言われぬほどの美しさでした。
ベルナデット・ラフォンは1966年にもジャン・ポール・ベルモンドとLe Voleur(パリの大泥棒)で共演し、1984年にはEmmanuelle(エマニエル夫人)で有名なJust Jaeckin(ジュスト・ジャカン)監督がJohn Willie(ジョン・ウィリー)原作のコミックを映画化した「The Perils of Gwendoline in the Land of the Yik-Yak”(ゴールド・パピヨン)」ではアマゾネス風女王さまの役に挑戦しました。

ベルナデット・ラフォンが「あこがれ」同様にベルナデット・ラフォンの夫だったジェラール・ブランとフランソワーズ・ブリヨンと「 Beau Serge(美しきセルジュ)」で共演しました。
☆私の好きなベルナデット・ラフォンの写真はBernadette Lafont Photo

L’eau a la bouche 夏の男女6人恋物語!
長い夏の夜、南フランスの広大な古屋敷(城)で遺産相続会議をめぐる三組の若い男女の浮世離れした猥らでアンニュイな恋愛遊戯が二日間に渡って繰り広げられます。
この映画で一番に言及すべきはSerge Gainsbourg(セルジュ・ゲンズブール)の自作自演のテーマ曲である”L’eau à la bouche“です。 公開当時はセルジュ・ガンズブールとも表記されましたが、この映画が公開された当時はセルジュ・ガンブールだと思いました。 後の1965年にFrance Gall(フランス・ギャル)が歌った”Poupée de cire, poupée de son(夢見るシャンソン人形)の作詞・作曲で有名になったセルジュ・ゲンズブールの映画音楽制作デビュー作品としても貴重な作品です。(ゲンズブールは歌だけで画面に登場しません)

映画「唇によだれ」の音楽指揮は1959年の「J’Irai Cracher Sur Vos Tom(墓にツバをかけろ)」のテーマ曲である”Blues de Memphis(褐色のブルース )”で一躍有名になったAlain Goraguer(アラン・ゴラゲール)とセルジュ・ゲンズブールのコンビです。 黒い雄牛の登場するオープニングに流れるゲンズブールの歌う同名テーマ曲L’eau a la boucheは、ビートニクなボンゴの響きで始まり、これまでにない斬新な音楽です。 映画のエンディングではBlack March Blues(黒のマーチ)が流れます。 最近のレビューでは”L’eau a la bouche”はサンバという説明も見られますが、私の手持ちのレコードの説明ではCha-Cha-Chaとなっています。 ゲンズブールはThelonious Monk(セロニアス・モンク)、マイルス・デイヴィスディジー・ガレスピーなどのファンでゲンズブールの作曲でもジャズを取り入れています。 この時期には、キューバのマンボやチャチャチャなどラテン(南米)のエスニック音楽をフランスに紹介する試みをしていて、ラテン・パーカッションをフランスで最初に取り入れたミュージシャンだそうです。 翌年1960年の映画「Les Loups Dans La Bergerie(山小舎の狼)」でもボンゴ入り「Cha-cha du loup(オオカミのチャチャチャ)」という曲も歌っています。 サンバもチャチャも共に4分の2拍子ですが、サンバはブラジルでチャチャチャはキューバの音楽です。 当時はチャチャチャが流行っていて、1961年の映画「ロリータ」のサントラにも入っています。

L’eau a la bouche per Serge Gainsbourg
PHILIPS 45rpm mono FL-1002
L'eau a la bouche Soundtrack私が初めてセルジュ・ゲンズブールを知ったのがこの「唇によだれ(くちによだれ)」でした。 私が所有するサントラはアラン・ゴラゲール楽団の演奏で「Black March(黒のマーチ)」とゴラゲール楽団をバックにセルジュ・ゲンズブールが歌うテーマ曲の「L’eau a la bBouche(唇によだれ)」が収録されたフィリップ・レコードEP盤ですが、ギューギュー詰めにしてあったのと裏に解説が印刷された一枚袋だったせいでレコードの丸い跡がついてしまっています。 このジャケット画像は”Judith”と”Angoisse”を加えた4曲入りのフランス盤と同じです。 日本で発売された45回転レコードは中古レコードのオークッションで1万円ほどの値が付けられることもあります。(ヴィクター盤「唇によだれ」(FL-1002)は中古で3000円くらい) 当時のレコードではセルジュ・ゲンズブールをセルジュ・ガンブールと表記しています。
(画像はクリックで拡大可)
L’eau a la bouche (from “L’eau a la bouche) (avec Alain Goraguer et son orchestre) – Amazon.co.jp (MP3 Download)
☆”Ecoute ma voix écoute ma priére …”とセルジュ・ゲンズブールが歌う「唇によだれ」のフランス語歌詞はL’eau a la bouche Lyrics – Paroles.net

Couleur Café
チャチャチャか?サンバか? セルジュ・ゲンズブールの<唇によだれ>が収録されているアルバム「Couleur Café(珈琲色)」は1958年~1964年にレコーディングされた曲だそうです。
Couleur CafeCouleur Cafe
試聴はCouleur Cafe – CD Universe(唇によだれは6番)
Serge Gainsbourg – Couleur café – YouTube

「唇によだれ」と共にゲンズブールとブリジッド・バルドー、ジェーン・バーキンやカトリーヌ・ドヌーヴとのデュエット曲が収録されている2枚組CDです。
Gainsbourg Forever - Leau a la boucheゲンスブール・フォーエヴァー
試聴はGainsbourg…Forever – CD Universe(L’ Eau À la Boucheは2番)

L’Eau a la bouche DVD
ページトップの画像は2005年に発売になった日本語字幕版のDVDですぐに入手困難となりましたが在庫がある時もあり。(現在の価格は5000円ほど)
L'eau a la bouche VHS唇によだれの字幕版VHS(ASIN: B00005G0P8)
私がアメリカのAmazon.comで購入したDVDは上記と同じですがモノクロのカバー画像でフランス語版(ASIN: B007HBYA1U)のリージョンフリーで、現在は入手困難です。(現在の価格は$39.80、日本円で4000円ほど)

☆ジャック・ドニオル・ヴァルクローズ監督は1951年創刊のフランスの映画評論誌「Cahiers du Cinema(カイエ・デュ・シネマ)」の編集長だったそうで、この映画雑誌からヌーベル・バーグが生まれたと云われています。