Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)が主演する「歌う大捜査線」はMel Gibson(メル・ギブソン)の製作によるKeith Gordon(キース・ゴードン)監督の2003年のミステリー・コメディです。 日本では劇場未公開ですが、1986年にイギリスで放映された合計6時間のテレビシリーズ「The Singing Detective」を2003年にリメイクしたハリウッド版です。 「The Singing Detective」はオリジナルと映画のリメイク共に脚本を担当しているDennis Potter(デニス・ポッター)の代表作とされています。
主人公の売れない探偵小説家で癇癪持ちのDan Dark(ダン・ダーク)を演じているのは女性に人気のハンサムなロバート・ダウニー・Jrです。 ダンは子供の頃に発病したという原因不明の皮膚病で顔や身体中がかさぶただらけになり、挙げ句に関節炎まで併発して長期療養を余儀なくされているせいで幻覚を見るようになります。(現実逃避)
ダンの書いたPhilip E. Marlow(私立探偵マーロー)が活躍するパルプ・フィクション(ハードボイルド小説)「The Singing Detective」では、50年代のロスアンジェルスで売春婦殺人事件を追うダン・ダークは昼は私立探偵、夜はナイトクラブの歌手です。
「歌う大捜査線」は観る人によっては(多分女性が)ロバート・ダウニー・JRの皮膚病メイクがリアルで気持ち悪過ぎるのとしょっぱなに英国紳士だと思っていたJeremy Northam(ジェレミー・ノーサム)のハードコアなファックシーンに仰天して観るのを止めてしまう方があるらしいです。 しかしこの映画のこういったシーンはコメディ又はパロディとして見れば問題はないでしょう。 か? オリジナルでは主人公が少年期に森の中で目撃したママと友達のパパの浮気現場のシーンがテレビドラマの割には過激です。 問題は原作でも読んで登場人物の相関図をよく把握していないとストーリーを理解出来ないことです。 映画のタイトルの「The Singing Detective」はダン・ダークの書いた本の題名となっています。
浮気しているのでは?とダンが疑っている元妻のニコーラをRobin Wright Penn(ロビン・ライト・ペン)が演じていますが3役も演じているそうなのでDVDを何度か観ても私は把握できません。 1994年の「Forrest Gump(フォレスト・ガンプ)」ではガンプの憧れのジェニー役だった元ショーン・ペン夫人のロビン・ライトが演じる妻はダンが書いた小説の映画化の脚本について話しているのです。
2005年には「Sin City(シン・シティ)」ではマーヴの保護観察官のルシールを演じるCarla Gugino(カーラ・グギノ、もしくはカーラ・グギーノ)は幼き日のダンの母親と売春婦の二役を演じます。 売春婦殺人事件の依頼人のMark Binney(マーク・ビニー)を演じているのが、1999年の「Gloria(グロリア)」で冷酷なギャングを演じたジェレミー・ノーサムです。 医師のメル・ギブソンなど何役か演じているそうですが不明です。 なにしろ過去、現在、妄想の世界でそれぞれの俳優が役を重ねているのです。 この映画を劇場で一度観ただけで理解出来るのは至難の技でしょう。 よって、私のレビューもオリジナルとリメイクが多少ごっちゃになっているかもしれません。 ちなみに入院中の幻覚というと美脚の舞踏家のAnn Reinking(アン・ラインキング)が”After You’ve Gone”や”There Will Be Some Changes Made”を歌い踊った1979年のミュージカル映画の「All That Jazz(オール・ザット・ジャズ)」がありました。(ブロードウェイ・ミュージカルで振付師で演出家のBob Fosse(ボブ・フォッシー)が監督した自伝的作品)
「歌う大捜査線」のあらすじ
How Much Is That Doggie in the Window?
映画は複雑なシーンの切り替わりでネタバレとまではいきません。
イルミネーションが輝くCafé Moonglow(ムーングロー)にThe Viscounts(ザ・ヴィスカウンツ)が演奏するHarlem Nocturne(ハーレムノクターン)で幕を開ける「歌う大捜査線」では、しょっぱなにマーロー(マーク・ビニー?)を付け狙う二人組みの殺し屋の相棒として出演しているAdrien Brody(エイドリアン・ブロディ)”の顔が見えます。 この二人組が作家のダンを追いかけるのは小説に登場している自分たちに名前が付けられていないからです。(ちんぴらその1&ちんぴらその2) Patti Page(パティ・ペイジ)が歌う”How Much Is That Doggie in the Window?”をバーの外で張り込んでいる車のラジオで聴いている殺し屋。 続いて店内、赤い唇に赤い爪でタバコを吸う売春婦(ダンの妻のニコラにそっくり)を向こうに見て、男(マーク・ビニー)と店のマスターの会話。 「飾り窓のあの女はいくらだ?」 病室で激痛をこらえている現実のダンが交差する。 ビニーと売春婦の交渉が成立、お持ち帰り決定、現実は「ワン!ワン!」と言っているダンは更に空想する。 お楽しみ中のビニーと元妻似の売春婦を後を追ってきた殺し屋が浴槽の栓をひねると女を奪って水に浸ける。 当然ビニーは女殺しを疑われるので真犯人を突き止めるようにダン探偵に依頼しに来ます。
溺死した女が交差したかと思うと、現実に戻り、Gene Vincent(ジーン・ヴィンセント)が歌う”Woman Love”に合わせて行進して来た回診の医師団の中に先ほどの溺死させられた売春婦の幻影を見たりと大変掴みにくいです。 オリジナルのテレビシリーズでもテームズ川から全裸女性の溺死体(自殺した母)を引き上げるシーンが何度も回想されますが、マーローは現実と小説の中や空想で関わった女たちの顔と置き換えるのでエピソードによって死体の女も橋から眺める人物も変わります。 回診の医師団が突如、Danny & The Juniors(ダニー&ザ・ジュニアーズ)の”At the Hop(踊りにいこうよ)”に合わせて踊りだすかと思えば、歌手のダニーの代わりにダンが口パクで歌っての淫らな狂宴ですから虚を付かれます。 このシーンのロバート・ダウニーが一番合っています。
驚くことなかれ、1987年には「Lethal Weapon (リーサル・ウェポン)」で自殺願望の敏腕刑事を熱演し、Jamie Lee Curtis(ジェイミー・リー・カーティス)と共演した1992年の「Forever Young(時を越えた告白)」ではハンサムな冷凍人間から浦島太郎的80歳の老人になった製作者のメル・ギブソンが今回は禿げ茶瓶のDr. Gibbon(ギボン医師とはMel Gibson→Gibbon)役で登場する他、2005年にTom Cruise (トム・クルーズ)と電撃結婚するKatie Holmes(ケイティ・ホームズ)は可愛い看護婦役で登場します。 ハゲチャビンといえば1998年の「Fear And Loathing In Las Vegas(ラスベガスをやっつけろ)」にジャーナリストのラウル・デューク役で本当に頭髪を剃ったJohnny Depp(ジョニー・デップ)の方がショックでした。
ロバート・ダウニー・ジュニアが演じる小説家のダン・ダークが1950年代のロサンゼルスを舞台に名探偵「Philip E. Marlow(フィリップ・マーロー)」になって50年代のロスアンジェルスの売春婦殺人事件を捜査するいう妄想が妄想を呼ぶようなストーリーで、現実と自分が書いた探偵小説の中で幻覚の悪夢と闘いますが時には架空の登場人物が現実の人物とからむので支離滅裂となります。 探偵小説の中の私立探偵マーローは夜はダンスバンドの歌手でもあるので音楽がふんだんに組み込まれていて、ミュージカルのような探偵物語となっています。
ちなみに、ダンは辛い現実から逃れるためだったようですが、実際に手術で強い麻酔をかけられると幻覚と現実を行き来するせん妄という症状が起こるそうです。
劇中で言われた50年代の売春婦殺人事件ってもしかして、「The Black Dahlia(ブラックダリア)」?
ちなみにRaymond Chandler(レイモンド・チャンドラー)の書いた有名な私立探偵シリーズの主人公はスペル違いのPhilip Marlowe(フィリップ・マーロウ)です。 このレイモンド・チャンドラーが1953年に書いた自伝的なハードボイルド小説「長いお別れ」(ISBN-10: 4150704511)に登場する探偵のPhilip Marlowe(フィリップ・マーロウ)を主人公にした小説は「 The Big Sleep(大いなる眠り)」をはじめ何作もありますが、映画では1946年の「三つ数えろ」でマーロウをボギーことHumphrey Bogart(ハンフリー・ボガート)が演じました。 1973年にレイモンド・チャンドラーと親しかったというRobert Altman(ロバート・アルトマン)が監督した「The Long Goodbye(ロング・グッドバイ)」も秀逸です。 「ロング・グッドバイ」ではElliott Gould(エリオット・グールド)のマーロウもさることながらDave Grusin TrioのJack Sheldon(ジャック・シェルドン)が歌う”テーマソング“がお洒落です。 映画にはArnold Schwarzenegger(アーノルド・シュワルツェネッガー)や「キル・ビル Vol.2」に出演したDavid Carradine(デヴィッド・キャラダイン)がカメオ出演しました。 1975年にはRobert Mitchum(ロバート・ミッチャム)がマーロウを演じた「Farewell, My Lovely(さらば愛しき女よ)」の原作がレイモンド・チャンドラーでしたが雰囲気は最高なんだとか。(ちょっと間延びしてるが)
☆レイモンド・チャンドラーのお洒落感覚を知るには出石 尚三 (著)の単行本で「フィリップ・マーロウのダンディズム」という書籍があります。(ISBN-10: 4777710084)
☆ ちなみにレイモンド・チャンドラーといえば「The Long Goodbye(長いお別れ)」の後半に探偵マーロウが発するセリフ「I suppose it’s a bit too early for a gimlet,…(ギムレットには早すぎる)」がお洒落とされています。 私はジンベースの辛口カクテル”ギムレット”を飲むと唇が痺れます。
病院のベッドから虚構の世界に、そして現実へと目まぐるしく展開するフィルム・ノワールな世界ではメル・ギブソンが演じる精神科医のギボンの他は誰一人として信頼できる人はいないのです。 カウンセリングでギボン医師はダンの皮膚病は精神的なもので幼少のトラウマを克服しないと癒されないと言うのです。(母と父親の仕事仲間を含む男たちが… Shagging)
ロバート・ダウニーJr.とは2000年の「Wonder Boys(ワンダー・ボーイズ)」で共演したことのあるケイティ・ホームズが演じる美人看護婦と仲間たちがピンクキャデラックのセクシーなお姉ちゃんになって、50年代のアカペラ4人グループのThe Chordettes(コーデッツ)のヒット曲”Mr.Sandman, Bring Me A Dream(ミスター・サンドマン)”を歌ったり、病室での医師団の検診がThe Delta Rhythm Boys(デルタ・リズム・ボーイズ)でお馴染みのDry Bones(Dem Bones/ドライボーンズ)を歌いだす幻想シーンなどあり、とうとう最後にはロバート・ダウニー・Jr自身も歌っています! なぜ探偵が”歌う”のか? これが謎を解くカギなのです。 ただ単に歌っているのではなく幼少時期のショッキングな経験から来る精神的ダメージ(トラウマ)により性的な欲望への嫌悪感の現れなのだそうです。 皮膚病に侵されてボロボロになり生え際も抜け上がったロバート・ダウニー・Jrは実に汚い! それに皮膚病で靴が履けないからゴム草履というのが何とも情けない。 幼少期に始まったというこの皮膚病はやはり母親の情事を知った(目撃した)ことでしょうか。 ギボン医師のセラピーが功をなし、最後は自分で自分に決着を付けます。
☆ Film noir(フィルム・ノワール)とはフランス語で”黒い(暗い)映画”という意味ですが、1940年代後期から1950年代のハリウッド映画の中でも犯罪ものを指すそうです。 1930年代のアメリカの恐慌時代に始まった道徳的に曖昧でセクシーな刺激を強調したハードボイルド映画に端を発しているのだとか。
アメリカでは2003年に公開されましたが、日本では劇場未公開です。 強烈なラヴシーンや暴力シーンによりR(成人)指定となっています。
「歌う大捜査線」のトレーラー
The Singing Detective Trailer – VideoDetective
The Singing Detective Trailer – YouTube
Robert Downey Jr. in The Singing Detective – YouTube
Robert Downey Jr.
ロバート・ダウニー・ジュニアは1994年にメーキャップ・アーティストを演じたRobert Altman(ロバート・アルトマン)監督の群衆劇「Short Cuts(ショート・カッツ)」や1998年の「U.S. Marshals(追跡者)」に出演した後、1997年から放映され日本でも2001年から始った海外テレビドラマ「Ally McBeal(アリー my Love)」でレギュラーとなり大人気でした。 ところが2000年から2001年にかけてアリーの本命の”Larry Paul (ラリー・ポール)”で出演したロバート・ダウニー・Jrが突然2度ほど消え失せた時、私生活での事情を知らなかった私は「いったいどうなってるの?」と不審に思いました。それが今じゃアイアンマン! シャーロック・ホームズ!
Robert Downey Jr. in Ally Mc Beal Barry White Dance – YouTube
「歌う大捜査線」で歌ったロバート・ダウニー・Jrは50年代末期のサンフランシスコを舞台にした1994年の「Heart and Souls(愛が微笑む時)」でも歌っています。 霊となったKyra Sedgwick(キーラ・セジウィック)とTom Sizemore(トム・サイズモア)などと共演した「愛が微笑む時」では「ジュエルに気をつけろ!」や「アダムス・ファミリー」のMarc Shaiman(マーク・シェイマン)が音楽を担当し、霊に取り付かれた男を演じて4人の霊たちとラストの”Walk Like A Man”を合唱しています。
Norman Jewison(ノーマン・ジュイソン)監督の1994年の「Only You(オンリー・ユー)」ではロバート・ダウニー・ジュニアは情熱的な若者役でファンタジックなロマコメに出演していました。 真実の愛を求めてイタリアに赴く夢見る乙女は「Alfie (2004)(アルフィー)」でシングルマザーを演じたのMarisa Tomei(マリサ・トメイ)で、サントラにはLouis Armstrong(ルイ・アームストロング)の”Only You (And You Alone)”が使用されています。 1989年に「True Believer(トゥルー・ビリーヴァー/はぐれ弁護士の執念)」でJames Woods(ジェームズ・ウッズ)が演じる弁護士の助手として活躍したロバート・ダウニー・Jrでしたが、妄想で探偵になってしまう「歌う大捜査線」はまさに低迷期のロバート・ダウニー・Jrを盛り上げる映画のようです。 2006年にはロバート・ダウニー・Jrは皮膚病ではなく多毛症で全身毛むくじゃらになります。 Steven Shainberg(スティーヴン・シャインバーグ)が監督した実話の映画化で、Nicole Kidman(ニコール・キッドマン)が演じる刺激を求めるカメラマンの助手が恋に落ちる謎のカツラ屋をロバート・ダウニー・Jrが演じています。 この「Fur – An Imaginary Portrait of Diane Arbus(毛皮のエロス ダイアン・アーバス 幻想のポートレイト)」や、David Fincher(デヴィッド・フィンチャー)監督のサスペンス映画「Zodiac(ゾディアック)」には2005年の「Just Like Heaven(恋人はゴースト)」のMark Ruffalo(マーク・ラファロ)も出演します。 その他にはFred Macmurray(フレッド・マクマレイ)が1959年に主演したディズニーのホーム・コメディ「ボクはむく犬」のリメイクで2006年の「The Shaggy Dog(シャギー・ドッグ)」 にDr. Kozak(コザク医師)役で出演している他、Richard Linklater(リチャード・リンクレイター)監督及び脚本で話題の2006年実写風SFアクション・アニメ「A Scanner Darkly(スキャナー・ダークリー)」にJames Barris役で出演します。 この映画にはKeanu Reeves(キアヌ・リーヴス)やWinona Ryder(ウイノナ・ライダー)も出演しています。
2008年のBen Stiller(ベン・ステラー)監督及び主演の「Tropic Thunder(トロピック・サンダー/史上最低の作戦)」ではなんと黒人のKirk Lazarus(カーク)役を演じるそうです。
ロシア系ユダヤ人で1987年に「Rented Lips(ハリウッド行進曲/私をスタジオに連れてって)」など1960年代から監督し、俳優としても出演している喜劇映画界のRobert Downey Sr.(ロバート・ダウニー)が父親であるからかロバート・ダウニー・ジュニアも喜劇好きのようで、父親の監督した1997年の映画で、2005年からTVドラマの「Grey’s Anatomy(グレイズ・アナトミー)」シリーズでデレクを演じて女性の憧れの的となったPatrick Dempsey(パトリック・デンプシー)も出演した「Hugo Pool (ヒューゴ・プール)」などに出演しています。 1992年のRichard Attenborough(リチャード・アッテンボロー)監督の 「Chaplin(チャーリー)」で、1910年代のサイレント映画時代に「The Gold Rush(黄金狂時代)」や1947年の「Monsieur Verdoux(チャップリンの殺人狂時代)」など一連のコメディ作品で大活躍した喜劇王のCharles Chaplin(チャーリー・チャップリン)の生涯を一人で演じて大奮闘しました。 多数の作品に出演しているにもかかわらず1996年に麻薬所持で逮捕された後も何度か繰り返し、2000年から2001年にかけて海外テレビシリーズのALLY McBEAL(アリー・myラブ/第4シーズン)でアリーの恋人で出演している最中に突如消え去りました。 逮捕、服役後、ダウニーにかかる高額の保険料をメルが引き受けたこの「歌う大捜査線」が復帰作ともいえます。
1980年代の中頃には、ロバート・ダウニーの酒と麻薬問題を知らなかった19歳のSarah Jessica Parker(サラ・ジェシカ・パーカー)とも親密な交際があったそうですがサラは去ってしまいました。 刑期を終えリハビリで真っサラになったロバート・ダウニーは2003年の世にも忌まわしい「Gothika(ゴシカ)」の製作を担当した共同プロデューサーのSusan Levin(スーザン・レヴィン)との長い春を終えてこの度再婚するそうです。 スーザン・レヴィン(Susan Downey)はプロデューサーとして2007年のサスペンス映画「The Brave One(ブレイブ ワン)」、「The Invasion(インベージョン)」、「The Reaping(リーピング)」の制作を手掛ける他、2008年も3本の新作を制作中だそうです。
☆ ロバート・ダウニー Jr.の写真が見られるRobert Downey Jr. Photos – IMDb
Adrien Brody
「歌う大捜査線」であまり出演場面がなかったエイドリアン・ブロディですが、1999年にSummer of Sam(サマー・オブ・サム)や2002年にRoman Polanski(ロマン・ポランスキー)の「戦場のThe Pinasist(ピアニスト)」ではアカデミーの主演男優賞を受賞した名優で、2008年のCadillac Records(キャデラック・レコード ~音楽でアメリカを変えた人々の物語~)ではシカゴのブルース・レーベル(チェス・レコード)を立ち上げたポーランド系ユダヤ人のLeonard Chess(レナード・チェス)を演じます。 「歌う大捜査線」の後は年1本の作品に出演していましたが2010年にはなんと3本の映画に出演し、2010年に予定されているMichael Greenspan(マイケル・グリーンスパン)が監督する「Wrecked(エイドリアン・ブロディ エスケイプ)」では自動車事故で谷底に落ちた車の中で気が付いた時に記憶を失ったことを知る男のミステリーです。 カーラジオで銀行強盗のニュースを聞いたからもしかして自分が犯人じゃないかと不安に思いつつ脚は折れ顔は傷だらけの男のサバイバルやいかに。 続けて2011年にウディ・アレンが監督する「Midnight in Paris(ミッドナイト・イン・パリ)」では作家を夢見るオーウェン・ウィルソンが真夜中に幻想のパリで出会うサルバドール・ダリをエイドリアンが演じています。
「歌う大捜査線」では禿げ茶瓶の精神科医を演じたメル・ギブソンの助け舟が功を奏してロバート・ダウニーJRは低迷期を脱出し2000年以降押しも押されぬ大スターとなりました。 メル・ギブソンといえば「歌う大捜査線」の24年前、1979年のアクション豪映画「Mad Max(マッドマックス)」での復讐に燃えた警官のマックス・ロカタンスキーはクールでした。(クレイジーかも) ですが私は1997年にメルが元特殊部隊の工作員を演じてジュリア・ロバーツと共演した「Conspiracy Theory(陰謀のセオリー)」が好みです。<br>さて、一方アカデミー受賞監督のメル・ギブソンはこの後に製作及び監督したキリスト残酷物語「The Passion of the Christ(パッション )」の宗教論争やら私生活のゴタゴタなどもあり低迷状態となりましたが、2010年には「捜査線」に類似したタイトルの映画「Edge of Darkness(復讐捜査線)」で10年ぶりに主演します。 「歌う大捜査線」でお世話になったダウニー・ジュニアはこのメルの低迷期にお返しとして好意的なコメントをしています。 ちなみに「パッション」で提督ピラトの妻クラウディアを演じたClaudia Gerini(クラウディア・ジェリーニ)は2015年のイタリアの不倫映画「L’esigenza di unirmi ogni volta con te(熟れたアモーレ)」でMarco Bocci(マルコ・ボッチ)と共演しています。 マルコは2012年のテレビドラマ「Le mille e una notte(アラビアン・ナイト) 」でアラジンを演じました。
DVDのタイトルは日本で大ヒットした織田裕二主演の刑事ドラマ「踊る大捜査線」にあやかってなのか、「歌う大捜査線」という邦題になったのでしょう。 1991年にはJackie Chan(ジャッキー・チェン)が主演した「Island of Fire」が「炎の大捜査線」となりましたが、過去にも1960年代にSidney Poitier(シドニー・ポワチエ)のThe OrganizationやIn The Heat Of The Nightが「夜の大捜査線」、1976年のコメディ「Crime Busters」が「笑う大捜査線」となったこともあります。 「ナポレオン・ダイナマイト」のDVDタイトルが「電車男」のヒットにあやかってか「バス男」になったことを考えれば、かなりシャレたタイトルです。
The Singing Detective DVD
ページトップの画像は2004年リリースの輸入版DVDです。 ”リージョン1″なので一般のDVDプレーヤーでは再生できませんが、コンピュータ付属のプレーヤーではリージョンを変更すれば観られます。(4度まで変更可)
2005年からやっと発売の「歌う大捜査線」DVD! 下記は2007年版日本語字幕DVD
歌う大捜査線
The Original Singing Detective
英国製オリジナルの「The Singing Detective」はJon Amiel(ジョン・アミエル)が監督しました。 2003年の「シルヴィア」や2005年の「ライフ・アクアティック」などに出演し、2004年の「Harry Potter and the Prisoner of Azkaban(ハリー・ポッターとアズカバンの囚人)」以降ホグワーツ魔法魔術学校の校長のアルバス・ダンブルドアを演じた英国俳優のMichael Gambon(マイケル・ガンボン)が主人公を演じます。 ミステリ作家のPhilip Marlow(フィリップ・マーロー)は少年時代から発病した25年間来の皮膚病が悪化し関節痛も併発して身動きできず今は入院治療を受けています。 空想ではダンスホールで歌う口ひげを生やした探偵のマーローを演じます。 最終エピソードでマーローは手にペンを括り付けて文字を書きますが、これは原作者であるデニス・ポッターが患ったもっと重症な皮膚病の体験を取り入れたそうです。 出演者にはなんと2004年の「Vera Drake(ヴェラ・ドレイク)」でアカデミーの主演女優賞にノミネートされたImelda Staunton(イメルダ・スタウントン)が看護婦役で出演して挿入曲の”Dry Bones”ではサレコウベ(ドクロ)を叩いて歌い踊っています。 マーローの妻を演じたJanet Suzman(ジャネット・サズマン)がインパクトあります。 マーローが悪者に仕立て上げたマーク・ビニーとはマーローが幼き日に目撃した母の浮気相手のレイモンド(ミステリー作家と同名のマーローの父親の友人)の子供です。 子供時代のダンは邪悪な復讐として厳格な先生にクラスメイトのマーク・ビニーが怒られるようにと嘘をつきました。 なぜならビニーの父親がダンの母親と浮気したからです。 キャラクターでわけが分からない(ミステリアスな)のが殺し屋風の二人の男達でマーローの探偵小説に登場するのに名前すらないので作者に理由を聞こうと追いかけているのだとか。 ナチスが台頭していた戦時下のロンドンでのマーローの母親の生活にも描写があるのですがいまいち関連性が分かりません。
音楽としては、シリーズ1で第2話のHeatでダンスホールの”Laguna”でステッキを手にカンカン帽と白いスーツのマイケル・ガンボンが”Cruising Down the River”(二度目はPaul Rich and Lou Preager’s Orchestraの音声に口パク)を、そして4話のCluesで”I Get Along Without You Very Well”(音声は Sam Browne)と”Ac-Cent-Tchu-Ate the Positive”(音声はBing Crosby and The Andrews Sisters)、5話ではパラソルを持った笑える”The Umbrella Man”(Sammy Kaye楽団に口パク)などを歌います。 この他にはラスト・エピソードの子供時代の回想シーンで使用された”Ray Noble(レイ・ノウブル)楽団の専属歌手だったAl Bowlly(アル・ボウリィ)が歌う”The Very Thought of You”や、同じくボウリィが第二次世界大戦中にナチスのプロパガンダに利用されたという”Bei Mir Bist du Schön”をMaurice Winnick and His Orchestra(モーリス・ウィニック楽団)をバックに歌うレコードが蓄音機で回り、使用された挿入曲の殆どは”Blues in the night”をはじめBing Crosby(ビング・クロスビー)のナンバーなどで高齢者も演奏するスウィング・ジャズです。 不気味だったのはマーローが子供の頃汽車の窓から見た線路際の畑に立っていた白塗り顔の案山子が”After You’ve Gone”を歌ったのですが、病室のマーローの枕元にまでやってきたシーンでした。 アル・ボウリィの”The Very Thought of You”もいいですが、私の好きなThe Ink Spots(インク・スポッツ)は3話で”Do I Worry?”が使用されていて、6話ではマーローのカウンセリングの後にギボン医師がマーローに車椅子を降りて歩くように言った感動的なシーンで二人が口パクで歌うのはインク・スポッツとElla Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)の”Into Each Life Some Rain Must Fall”です。 これまでと違って軽快な”Puttin On The Ritz”がニコルとビニーがダンスに興じている所にマーローが上がって行く空想シーンで流れます。 回復したマーローのベッドに殺し屋風謎の男二人がやって来てマーローを拷問しますが、そこに歌う探偵が現れてからの銃撃戦がすごい。 ですがベッドで身動き出来ないマーローは歌う探偵に額を打ち抜かれてしまいます。 このように全体に大人の雰囲気(ある意味で陰鬱)があるオリジナルの舞台は当然霧のロンドンです。 主人公のPhilip Marlow(フィリップ・マーロー)という名前はレイモンド・チャンドラーの探偵小説に登場する有名な探偵のPhilip Malowe(フィリップ・マーロウ)をもじっているとか。 Be-Bop-A-Lula…
Michael Gambon (1940 – 2023)
1960年代の若い頃はビックリするほど美形だったアイルランド出身のマイケル・ガンボンは2003年「Sylvia(シルヴィア)」や2005年の「The Life Aquatic With Steve Zissou(ライフ・アクアティック)」などに出演し、イギリス映画では2002年の「Ali G Indahouse(アリ・G)」に出演する他、「Harry Potter(ハリー・ポッター)」シリーズでのダンブルドア役の他には英米合作アニメの「Fantastic Mr. Fox(ファンタスティック Mr.FOX)」などで声も担当しています。 2005年には「ライフ・アクアティック」でプロデューサーのオセアリー・ドラコーリアスを演じた他、2007年のイギリスTVドラマ「Joe’s Palace」などテレビ出演も多いですが、2012年に72歳のマイケル・ガンボンはDustin Hoffman(ダスティン・ホフマン)監督の「Quartet(カルテット!人生のオペラハウス)」で引退したオペラ歌手たちのコンサートを監督する偏屈な老人役で出演しましたが2023年82歳の時、肺炎で亡くなりました。
The nightclub ” Skinskapes”, I’ve Got You Under My Skin, …The Original Singing Detective Box set DVD
下記のDVD画像はマイケル・ガンボンが主演したオリジナル「The Singing Detective」の2003年の3枚組DVD(ASIN: B00007HGIJ)です。 2004年リリースの輸入版(英語)3枚Box setは”Region 1”なので日本ではプレーヤーによっては観られません。
The Singing Detective (1986)
“The Singing Detective”, Season 1 consist of 6 episodes: Skin, Heat, Lovely Days, Clues, Pitter Patter, and Who Done It.
The Singing Detective (original TV series 1989) – YouTube
♪ Main Theme “Peg O’ My Heart” by Max Harris & His Novelty Trio played during The Singing Detective opening & closing credit (TV mini series) – YouTube
The Singing Detective Book by Dennis Potter
テレビ版でこの本は皮膚病患者のマーローが書いた探偵小説として、マーローとギボン医師とのカウンセリングシーンや、マーローと同室の若い患者の愛読書として、そしてマーローの版権(脚本)を我が者にしようと企む(とマーローが思い込む)Finney(フィニー又はマーク・ビニー) ビニー(マーローの少年時期にその子の父親が自分の母親の浮気相手だからと復讐してやったクラスメイト)と元妻のニコラのシーンにも登場します。 デニス・ポッターの小説は現在英語版しかありませんが、このペーパーバックを読んでからの方が映画が分かり易いそうです。
The Singing Detective (ISBN-10: 0571145906)
Gene Vincent’s Music in “The Singing Detective”
ミュージカル仕立ての「歌う大捜査線」の音楽として、オリジナルでは40年代頃のスイング・ジャズですが、リメイクでは50年代のロックンロールやポップスがいっぱいです。 マイケル・ガンボンがフィリップ・マーローを演じたオリジナルのTVシリーズでは皮膚病のマーローが妻のニコールと再出発をほのめかす空想シーンで”Be-Bop-A-Lula…”と口ずさむからでしょうか、ロバート・ダウニー・ジュニアのリメイク版「歌う大捜査線」では1956年に”Be-Bop-A-Lula”が大ヒットしたロカビリアンのGene Vincent(ジーン・ヴィンセント)の音楽を使用しています。 この映画「歌う大捜査線」はSundance Film FestivalやThe Toronto Film Festivalで好評を博したそうです。
まずオープニングはこのページ最後にも記述してありますが、キース・ゴードン監督の要望で、ゴードン監督が1983年に主演したJohn Carpenter(ジョン・カーペンター)監督の「Christine(クリスティーン)」でも使用されたThe Viscounts(ザ・ヴィスカウンツ)のHarlem Nocturne(ハーレムノクターン)です。 ザ・ヴィスカウンツのハーレムノクターンは映画の中頃に探偵小説の中でベティ(ダンの母そっくり)がヤクザに撃たれるフィルムノワール的なシーンでも流れます。
The Viscounts – Harlem Nocturne – YouTube
そしてエンドロールでロバート・ダウニー・Jrが歌うのはロカビリーのGene Vincent(ジーン・ヴィンセント)が歌った「In My Dreams」ですから聞き比べてみて下さい。 ジーン・ヴィンセントの曲はバラードのIn My DreamsとImportant WordsそしてロカビリーのWoman Love全部で3曲収録されています。 ロバート・ダウニー・ジュニアが映画の中で歌っているThe Coasters(コースターズ)が」1959年にヒットさせた”Poison Ivy(毒ある蔦)”もサウンドトラックに収録されています。 他にはJohnnie Ray(ジョニー・レイ)のJust Walking in the Rain(雨に歌えば)、Bobby HelmsのJingle Bell Rock、Conway TwittyのIt’s Only Make Believe、Danny & The JuniorsのAt the Hop、1959年にチャートインしたザ・ヴィスカウンツのエロティックなサウンドのハーレムノクターン、Bill Putnam(ビル・パトナム)の多重録音技術(ダブル・ヴォーカル)で有名なTennessee Waltz(テネシー・ワルツ)のPatti Page(パティ・ペイジ)が歌う”How Much Is That Doggie in the Window(ワン・ワン・ワルツ)”です。
The Singing Detective Soundtrack
これらの懐かしい50年代の曲の数々を収録した2003年発売の「歌う大捜査線」のオールディズ・サウンドトラックですが現在はヴィンテージ価格!
The Singing Detective
サントラ曲目
“At the Hop” Written by John Madara, David White and Artie Singer – Performed by Danny & The Juniors
“Flip Flop and Fly” Written by Charles Calhoun and Lou Willie Turner – Performed by Big Joe Turner
“Harlem Nocturne” Written by Earle Hagen – Performed by The Viscounts
“How Much Is That Doggie in the Window Written by Bob Merrill – Performed by Patti Page
“Important Words” Written by Gene Vincent and “Tex” Davis – Performed by Gene Vincent
“In My Dreams” Written by Bernice Bedwell – Performed by Gene Vincent
“It’s All In The Game” Written by Chester G. Dawes and Carl Sigman – Performed by Tommy Edwards
“It’s Only Make Believe” Written by Conway Twitty and Jack Nance – Performed by Conway Twitty
“Just Walking In The Rain” Written by Johnny Bragg and Robert Riley – Performed by Johnny Ray
“Mr. Sandman” Written by Pat Ballard – Performed by The Chordettes
“My Special Angel” Written by Jimmy Duncan – Performed by Bobby Helms
“Poison Ivy” Written by Jerry Leiber and Mike Stoller – Performed by The Coasters
“Three Steps To Heaven” Written by Bob Cochran and Eddie Cochran – Performed by Eddie Cochran
“When” Written by Paul Evans and Jack Reardon – Performed by The Kalin Twins
“Woman Love” Written by Jack Rhodes – Performed by Gene Vincent
試聴はありませんが曲目リストが見られるThe Singing Detective Soundtrack – AllMusic.com
「歌う大捜査線」のサントラには日本ではタモリ・クラブのテーマ曲として知られている”At the Hop(Do The Bop)”が収録されています。 1957年にDanny and the Juniors(ダニー・アンド・ジュニアーズ)で7週連続トップの大ヒットとなりましたが、Flash Cadillac & the Continental Kids(フラッシュ・キャデラック&コントネンタル・キッズ)のカバーで1973年の「American Graffiti(アメリカン・グラフィティ)」で使用されました。 バップやカリプソやチキンなどダンスを羅列した歌詞と曲は1957年に”Be My Girl”がチャート入りしたJohn Madara(ジョン・マダラ)とDave White(デイブ・ホワイト)のコンビと、ジョン・マダラが歌ったヒット曲の”Be My Girl”の作者でフィラデルフィアのボーカル・コーチのArtie Singer(アーチー・シンガー)との共同作品だそうです。 ジョン・マダラは1950年代や1960年代にフィラデルフィアのDanny and the Juniors(ダニー&ジュニアーズ)や男性ロックデュオのDaryl Hall and John Oates(ダリルホール & ジョンオーツ)のプロデュースを手掛けたフィラデルフィアの出身のミュージシャンです。 フィラデルフィアには当時ドゥーワップ・ヴォーカルグループのThe Spaniels(ザ・スパニエルズ)やThe Clovers(クローヴァーズ)とか、グラマーなSylva Koscina(シルヴァ・コシナ)が出演した「A Lovely Way to Die(ボディガード)」はKenyon Hopkins(ケニヨン・ホプキンス)が音楽を担当しましたがテーマ曲を歌ったJackie Wilson(ジャキー・ウィルソン)などの人気ボーカリストがゴチャゴチャといたそうです。
☆1957年にチャートインしたBobby HelmsのJingle Bell RockについてはAudio-Visual Trivia内の「クリスマス・ソング集」
Iron Man (2008)
さて、ここでRobert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・ジュニア)の最新情報”!
2008年9月に公開の「Iron Man(アイアンマン)」が大ヒットの兆し。 ロバート・ダウニー・ジュニアが主演でTony Stark(トニー)時々Iron Man(アイアンマン)を演じ、共演はTerrence Howard(テレンス・ハワード)とGwyneth Paltrow(グウィネス・パルトロー)とJeff Bridges(ジェフ・ブリッジス)など大者揃い、監督はJon Favreau(ジョン・ファヴロー)というSFバイオレンス的スーパー・ヒーロー映画です。 装着!
Keith Gordon in Christine (1983) by John Carpenter
Stephen King(スティーヴン・キング)の小説をジョン・カーペンターが映画化した「クリスティーン」では「歌う大捜査線」を監督したキース・ゴードンが主人公のアーニーを演じましたが、本当の主人公はクリスティーンでしょう。 いや、アーニーとクリスティーンのロマンスかも。 英語では船や自動車は女性名詞だから女性名なのでしょう。 クリスティーンはファム・ファタール(魔性の女)なのか、アーニーはまるで女性の身体を愛でるようにボディに触れています。 ちなみにヒッチコックばりに自分の映画化作品にカメオ出演するというスティーヴン・キングは夫妻で「クリスティーン」にもカメオ出演しているそうです。(どのシーンか不明、通行人か観客か?)
1957年に自動車の町デトロイトで完成した58年型の赤いプリマスは因縁曰く付きの車でしたが、1972年にカリフォルニアで高校生のアーニーがボンコツとなったその20年前のアンティークな車に一目惚れしたでした。(クリスティーンにとっても運命の人) その中古車をクリスティーンと呼ぶ老人のルベーから買ったアーニーは心を込めて手入れして奇麗に磨き上げました。 相談も無しにと母親は激怒、家には置かせないと言うのでアーニーは修理工場に持ち込み、工場主のウィルと廃車の部品を使う代わりに雑用をするという取引をした。 デニスがルベー爺さんに詳しく聞いたところ、本当のところはクリスティーンに魅せられた弟が子供も妻も死んだのでその車を手放したのに戻ってきたんだとか。 その弟は排気ガスを引き込んで自殺したとか。
学校の花形デニスが出場しているアメフトの試合に整備してピカピカになったクリスティーンで乗り付けた。 学校で一番の美人といるアーニーに気を取られたデニスは激突して危うく下半身不随になるとこだった。 ちなみにデニスの吹き替えはフランスでは「私生活のない女」のLambert Wilson(ランベール・ウィルソン)だそうです。 Wow!
この時、独り立ちしているように見えたアーニーは親は子供を束縛して殺そうとしているなどと言うようになった。 以前飛び出しナイフでアーニーを脅したバディ、ムーチー、ヴァンデンバーグという不良たちが修理工場に置いてあるクリスティーンを襲撃、ハンマーで叩きのめし、フロントグラスは粉みじん、ボンネットはボコボコ、シートはメッタ切り。 すると勝っ手にカーラジオが鳴りだした。 Little Richard(リトル・リチャード)の”Keep A-Knockin’ ムーチーはこれも叩き壊し、ダッシュボードに糞まで垂れた。
この後、ガールフレンドを連れたアーニーは車の中に置いてきた財布を取りに修理工場に入って見るも無惨なクリスティーンを見て唖然として声も出ない。 クリスティーンに嫉妬したガールフレンドや車を家に置かせなかった親に噛み付くほど凶暴になったアーニー。 修理工場でアーニーは絶対に負けないで修理すると誓った。 出ました!エロいハーレムノクターン
OK, Show Me ….. Harlem Nocturne
ここからクリスティーンの復讐が始まる。 行動を起こす前のヘッドライトの明かりは尋常じゃない! 形状記憶効果か、その自己復元力が恐ろしい。 まず手始めは太っちょのムーチー君から、曲は50年代中期の一発屋の一人でThurston Harris(サーストン・ハリス)の”Little Bitty Pretty One” 狭い場所に逃げ込んでも安心できない! クリスティーンは目的を果たすまで車体を破損しても突き進む。 最後に親分格のバディは火だるまのクリスティーンに轢かれて炎上。 いや、最後はおまけみたいだが、焼け焦げで帰って来たクリスティーンを調べようとした工場主のウィルさんが前方にせり出た運転席で挟まれた、ショットガンを助手席に置いて。 その時もカーラジオが鳴った。 曲はLarry Williams(ラリー・ウィリアムス)の”Bony Moronie” いや、まだまだ、アーニーを心配するあまりクリスティーンを破壊しようとクリスティーンのボンネットに「今夜、工場で」と刻んだデニスは事件のため警察が封鎖した工場にアーニーのガールフレンドと共に入り込む。 しかし彼女を襲おうとしたアーニーは事務所に激突し死亡。 またもやカーラジオが鳴る。 曲はロシアンルーレットで死んだとも伝えられたJohnny Ace(ジョニー・エース)のバラードで”Pledging My Love” ブルドーザーで潰してもクリスティーンは復元、しかし最後にはくず鉄廃棄物として圧縮されとうとうスクラップ。 これで安心? 不気味に流れる曲はラストの廃棄物処理場でカメオ出演したGeorge Thorogood(ジョージ・ソログッド)の”Bad To The Bone” 骨の髄まで邪悪なクリスティーンだよ。
☆スティーヴン・キングの原作を映画化といえば「クリスティーン」の前には「キャリー (1976)」や「シャイニング (1980)」、後には評価の高い「スタンド・バイ・ミー (1986)」、「ミザリー (1990)」、「ショーシャンクの空に (1994)」、「グリーンマイル (1999)」など怖い怖い話題作がたくさんたくさんあります。
Ritchie Valens(リッチー・ヴァレンス)の”Come On, Let’s Go”で始まる「クリスティーン」のサウンドトラックには50年代のロックンロールがたくさん使用され、ハーレムノクターンの他にThe Rolling Stones(ローリング・ストーン)の”Beast Of Burden”、Buddy Holly(バディ・ホリー)の”Not Fade Away”、Danny and the Juniors(ダニー&ザ・ジュニアーズ)の”Rock And Roll Is Here To Stay”などなど。