シルヴィア Sylvia (2003)

Sylvia (2003) DVD
Sylvia DVD
シルヴィア(2003年)

Life was too small to contain her…
女流監督のChristine Jeffs(クリスティン・ジェフズ)が描く女流詩人「Sylvia Plath(シルビア・プラス)」の伝記映画で、主人公のシルヴィアはGwyneth Paltrow(グウィネス・パルトロウ又はグイネス・パルトロー)が、後の詩人で英国の学生だったTed Hughes(テッド)は詩人にしてはマッチョなDaniel Craig(ダニエル・クレイグ)が演じています。 テッドに出合った時の自由奔放で快活なミディアム・ヘアーのシルヴィアから憔悴しきったシルヴィアまでの顔の表情の変化と共に長くなっていく髪型にもご注目あれ。 テッドとシルヴィアの全裸ラブシーンも話題になりました。
なんと映画でシルヴィアの母親”オーレリア・プラス”を演じているのがグウィネス・パルトロウの実の母親であるBlythe Danner(ブライス・ダナー)なんだそうです。 どうりで良く似ています。

シルヴィア・プラスは没後29年経ってThe Pulitzer Prizes(ピュリッツァー賞)を受賞したという伝説のアメリカ人の女流詩人です。 同じく詩人のTed Hughes(テッド・ヒューズ)との運命の恋と裏切り、型にはめられないシルヴィアの苦悶、自殺か事故かと未だ謎の30歳(1963年)での死を描いています。
映画「シルヴィア」は詩的に美しく、暗く、そして哀しい。 伝記なのか、メロドラマなのか? いづれにしても、ともかくグウィネス・パルトロウが美しい。 ですが、終盤のヌード・シーン(ベッドシーン)のため「R」指定です。(暗いけどちょっとネェ)
※ ピュリッツァー賞とは報道記事や文芸作品を対象とするアメリカの権威ある賞です。

ニュージーランドの監督”クリスティン・ジェフズ”はショートフィルムやコマーシャルを経て、2001年に長編映画「Rain」を監督しました。(酒に溺れて子供を蔑ろにしている夫婦、家族旅行の間に十代の娘が両親の危機を知るという内容)
クリスティン・ジェフズの「Rain」についてのインタビューはChristine Jeffs Rain Interview – BBC.co.uk(英語のサイト)

Sylvia Plath and Ted Hughes
以下のあらすじは驚くべき結末が書かれているのでまだビデオをご覧になってない方は読まない方が楽しめます。
アメリカの詩人シルヴィア・プラスの伝記映画はシルヴィアのナレーションで始まります。
マントを翻してシルヴィアが急いで行く先は奨学生として入学したCambridge(ケンブリッジ)大学。 そこにはビートニク詩人たちとも交際があるという大学院生のテッド・ヒューズが在籍しており、シルヴィアはたちまちテッドの詩に魅せられます。
場面変わってジャズに合わせて踊る学生たちのパーティ、そこに現れたシルヴィアは自分が気にいった詩を書いた人物と接近します。 それは風変わりなテッド、踊る二人はいい雰囲気になり意気投合して出合った4カ月後に結婚します。 結婚後にテッドの詩がニューヨークで評価されたため二人は渡米します。(アメリカ人のシルヴィアにとっては帰国) シルヴィアは詩人としてではなく、不本意ながら母校の女子大学(スミス・カレッジ)で教師として英語を教え始めるのですが、教員生活に疲れて詩の活動を続けようにも執筆の時間が取れずスランプにぶち当たります。 シルヴィアの内部に潜む精神的苦悩に気付いたテッドはそれを表現するようにアドバイスします。

ある日街角でテッドが以前家に訪ねて来たあの若い女学生と話している場面に遭遇したことからシルヴィアはテッドとその女性との浮気を疑い出すようになり、狂気の妄想が次第に二人の仲を裂いていきます。 これというのも詩人として評判が上がったテッドに対する嫉妬もあるのかもしれません。
心機一転するためにロンドンに帰ったテッドは文学界での活動も順調に行き、シルヴィアは女児フリーダを出産しました。(産んだ後なのにシルヴィアのお腹が大きいまま) 12人の子供を産んだ与謝野晶子ならともかく、赤ん坊が泣いていては詩など書けないでしょう。
夫婦はデヴォンへ引っ越すことになるのでロンドンのアパートの借り手を捜します。 その時に知り合ったのがシルヴィアの詩のファンだといいうアッシアとデイヴィッドのカップルでした。 デヴォンに行って1962年にはテッドとシルヴィアには2人目の子供(男児)が産まれたのですが、文学界で名を挙げ始めたテッドに今度は本当に愛人が出来てしまうのです。 それがデヴォンにも遊びに来たあのアッシアでした。 嫉妬の鬼、まるで怨霊。 テッドの浮気は元々気分障害だったシルヴィアの精神状態を以前にも増して異常に悪化させることになります。 ところが皮肉にも子供たちとロンドンに戻ったシルヴィアが苦悩のなかから生み出した作品にはこれまで経験した辛さが反映して今までになく評価を高めたのです。
Daddy, daddy, you bastard, I’m through.

We’re not even two people. Even before we met, we were just these two halves, walking around with big gaping holes in the shape like the other person. And when we found each other we were finally whole. And then it was as if we couldn’t stand being happy so we ripped ourselves in half again.
子供たちの世話も出来ず眠るために薬も必要となったほど精神状態が著しく悪化した1963年のある夜、精一杯お洒落をしたシルヴィアは藁をも縋る思いでアッシアと同居していたテッドを呼び寄せ夫婦関係の修復を申し出るのです。 満たされた一夜を共に過ごしたと思い、「私を愛しているなら彼女とは別れて。」と言うシルヴィアになんとテッドはアッシアが妊娠したことを告げたのでした。 「もう、ダメ。。。」 窮地に陥ったシルヴィアは子供たちの食事を整えると毛布をかけてやり窓をちょっと開けた。 台所に戻るとドアに目張りをしてガス・オーブンに頭を置いて自殺を図り、30年の短い生涯を閉じるのだった。 1963年2月11日。 そして、シルヴィアがあんなに手に入れたかったもの、”名声”を得たのは奇妙な死を遂げた後のことでした。 Ariel シルヴィアの死後にテッドが見つけて1966年に出版した遺稿、20世紀に最も賞賛されて広く読まれた詩集。
Stasis in darkness.
Then the substanceless blue
Pour of tor and distances…

Birthday Letters
テッドはシルヴィアの死後35年間の沈黙を破り、ガンで亡くなる数週間前の1998年に二人の関係を率直に記した88編の詩選集「Birthday Letters」を公表しそれはテッドの死後数ヵ月して出版されました。 それによればシルヴィアと結婚中に何度か不貞を働き、シルヴィアの死後に作品のいくつかを破棄したという事実はテッドをケダモノ呼ばわりしシルヴィアを犠牲者とみなしたフェミニズム批評がみられたとか。

videoSylvia (2003) Trailer – YouTube
2003年10月にアメリカで公開され、日本では2004年12月に公開です。

The night is only a sort of carbon paper…で始まるシルヴィア・プラスの詩
Insomniac(不眠症患者)
夜空はただカーボン紙のように
あお黒い 深く突いた句読点の星座は
光を浴びて 次から次へと覗き穴になる・・・
1961年に発表されたInsomniacの全文はInsomniac – A Poem by Sylvia Plath – AmericanPoems.com
女流詩人のシルヴィア・プラスのバイオグラフィはBiography of Sylvia Plath – AmericanPoems.com(共に英語)

2004年12月下旬出版の詩人”シルヴィア・プラス”の生涯
Sylvia Plath BiographySylvia Plath: A Biography (Greenwood Biographies)


ページトップの画像は輸入版「Sylvia」のDVD(英語)ですが、こちらは2005年発売の「シルヴィア」日本語字幕DVDです。
Sylvia DVDシルヴィア
海外版(英語)VHSビデオの「Sylvia / (Full Slip)」もあります。
☆上記の書籍とは別にシルヴィア・プラス著の自伝的小説「ベル・ジャー」 (Modern&Classic) (単行本)が青柳 祐美子訳で出版されています。(1974年「自殺志願」角川書店の新訳本)

Gabriel Yared – Sylvia: Original Motion Picture Soundtrack
映画「シルヴィア」の音楽は「リプリー」(1999年)や「Shall we ダンス?」(2004年)のGabriel Yared(ガブリエル・ヤーレ、もしくはガブリエル・ヤレド)です。 サウンドトラックでは二人の出会いから死への誘惑にかられるシルヴィアの心の内をストーリーを追って、ピアノとストリングスで美しく、そして悲劇的に表現しています。
Sylvia SoundtrackSylvia [Original Motion Picture Soundtrack]
♪ 試聴はSylvia Original Motion Picture Soundtrack レコチョク

Audio-Visual Trivia内でグウィネス・パルトロウが出演する映画
グウィネス・パルトロウとジュード・ロウとマット・ディモンが共演する「リプリー」(1999年)
グウィネス・パルトロウとダニエル・クレイグが出演する「Infamous
グウィネス・パルトロウとロバート・ダウニー・ジュニアが共演する「アイアンマン


Sylvia Ashton- Warner
Eleanor David as Sylvia Ashton
Sylvia(1985年)

もう一人のシルビア
Sylvia Ashton- Warner(シルビア・アッシュトン・ワーナー)という女性の教育者が存在します。 Michael Firth(マイケル・ファース)監督が1985年にシルビア・アッシュトン・ワーナーの生涯を美しいPuhoi(プホイ村)を舞台に描いた作品です。 プホイとはマオリ語で「湧き水」を意味します。 1940年代にニュージーランドのMaori(マオリ族)の子供たちに教育を始めたシルビア・アッシュトン・ワーナーを英国の女優「Eleanor David(エレノア又はエリナー・デイヴィッド)」が演じます。

videoマイケル・ファース監督の「Sylvia(シルビア)」のトレーラーはSylvia (1984) Trailer – YouTube
※ダイアナ妃の結婚式で歌ったオペラ歌手のKiri te Kanawa(キリ・テ・カナワ)はマオリの出身だそうでマオリの歌を吹き込んでいます。

もう一つの映画「Sylvia(シルビア)」は1965年にGordon Douglas(ゴードン・ダグラス)監督の映画があって、「Baby Doll(ベビイドール)」でセンセーショナルなデビューをしたCarroll Baker(キャロル・ベイカー)が若い女流詩人のシルビアを演じています。 共演は「Route 66(ルート66)」に出演していたギリシャ出身で歌の上手い魅力的なGeorge Maharis(ジョージ・マハリス)、1960年の「オーシャンと十一人の仲間」のPeter Lawford(ピーター・ローフォード)、「The Hitch-Hiker(ヒッチ・ハイカー)」のEdmond O’Brien(エドモンド・オブライエン)、「All The King’s Men(オール・ザ・キングスメン)」のJoanne Dru(ジョーン・ドルー)などです。 大富豪が花嫁に選んだ女流詩人のシルビアを念のためと私立探偵に身元調査を命じたら、全てが理想的な女性のはずがなんと驚愕の過去が・・・! おまけに探偵は調査を進めていくうちにシルビアの虜に! 「シルビア」の音楽はDavid Raksin(デヴィッド・ラクシン)でオープニングにPaul Anka(ポール・アンカ)が歌う”Sylvia“が流れますがポール・アンカは挿入歌の”Love and Learn”もレコーディングしました。
ついでながら、ゴードン・ダグラス監督の作品というとFrank Sinatra(フランク・シナトラ)と超セクシーなグラマー女優のRaquel Welch(ラクエル・ウェルチ)が出演したミステリックな1968年の「Lady in Cement(セメントの女)」を思い浮かべます。 2023年に82歳で亡くなったウエルチですがビキニ姿やヌードの写真はあれども生涯通して全裸写真は撮らなかったそうです。