日曜はダメよ Never On Sunday (1960)

It’s extraordinary! Where do you learn all those languages?… In bed.

日曜はダメよ(1960年)
Melina Mercouri – Never On Sunday (Piraeus Children) (Never On A Sunday – Original Film Soundtrack) – YouTube

Pote tin Kyriaki
映画「日曜はダメよ」の原題はギリシャ語で”Pote tin Kyriaki”というそうですが英語では”ネバー・オン・サンディ”です。 ギリシャ女優のMelina Mercouri(メリナ・メルクーリ)が主演してアメリカ人のJules Dassin(ジュールス・ダッシン)が監督及び出演したアメリカ・ギリシャ合作映画です。 ギリシャのPiraeus(ピレウス)という港町で堅物考古学者のHomer(ホーマー)氏と娼婦であるIlya(ヘブリュー語でエリアを意味するイリヤ)の恋物語(コメディ?)です。(ちなみにフランス語でil y aだとthere isの意味) そのはずでしたが、ホーマーがイリヤに娼婦をやめさせようとしたのに、いつのまにか取り巻きの連中と一緒に歌っていたというギリシャ版マイフェアレディにもちょっと似たようなお話です。(イリヤはレディにはならなかったですが)
ちなみにイリヤとホーマーと聞くと、「Odyssea(オデュッセイア)」と共に昔読んだことのあるHomeros(ホメロス)が書いたというギリシャの叙事詩の「Ilias(イリアス)」をイメージします。

「日曜はダメよ」は”日曜はだめよ”とか”日曜は駄目よ”などと表記されることもありますが、この映画のタイトルはギリシャ語で「Pott Tin Kyriaka」、イタリア語では「Mai Di Domenica」、フランス語では「Jamais Le Dimanche」だそうです。
映画の題名の意味は「Never The Sunday(日曜日はダメよ)」ですが、どうして「ダメ」なのかというと、娼婦のメルクーリは日曜日には客を取らないで、彼女を女神のように崇める造船所の荒くれ男達と酒場で楽しく騒ぐのです。 それにギリシャ古代劇も観賞。

古代ギリシャの研究のためにアメリカからギリシャの港町ピレウスにやってきた学者のホーマーは先ずは酒場の客となりますがギリシャ風に次々と酒を飲んではグラスを割って踊るヘベレケの男に度肝を抜かれます。 最後の瓶ごと一気飲みに感心して思わず拍手をすると男は怒って殴りかかってきたのでホーマーも男らしく闘います。 そんな時にこの酔いどれ男の知り合いのイリアが入って来て仲裁したので男とホーマーは仲直りしたのです。 この陽気な売春婦のイリアに魅せられたホーマーは興味(研究)の対象とするのです。 この後のイリアが仲間の男たちと歌い踊るシーンでは酒場の喧嘩で目の周りが黒くなったホーマーも花束を手に参加します。 このシーンで町を牛耳るボスの手下が贈り物を届けにやって来たのですが取り巻きの男たちに摘み出されてしまいます。
「売春婦で幸せなはずはない、イリアに教養を」と淑女に変身するように2週間の約束で全力投球します。 この時期にイリアが着ていたチャイナ風のパジャマや、煙草片手にベッドで”Ta paidia tou Peiraia”を歌う時に着ていたキモノ風のガウンが素敵です。
ある日外国の艦隊が入港した時は大喜びのイリアは縞のタンクトップで港の駆けつけます。 いや、そうしようと思ってドアを開けたらホーマーがかけたクラシックが聞こえてきたのです。 そんな時、仲間の売春婦からホーマーがボスの回し者だと吹き込まれてホーマーが誤解と訴えるのに耳を貸さず反旗を翻してします。 元々気楽な生活が性に合っているイリアでしたから理由が出来て好都合。 イリアは部屋を飛び出すと気勢を上げる水兵の群れにご挨拶。 仲間の男と指パッチンのギリシャ・ダンスを踊ってホーマーを愚弄します。 危うく冒頭のシーンと同じ喧嘩が起こりそうになった時、挑戦を受けて立ち一気飲みが始まり、飲む、グラスを割る、飲む、グラスを割る、そして踊るホーマー。 でんぐり返しもご披露。 もう破茶滅茶。 しかしイリアはトニオがお持ち帰り。
Melina Mercouri and Jules Dassin Dancing – YouTube
そして再び、日曜日はダメよ。 目的が頓挫したホーマーは一人寂しく船上の人となったのです。
それにしても裏切った夫イアソンへの復讐として母親メデイアが子供を殺すという古代ギリシアのEuripides(エウリピデス)が書いたギリシャ悲劇の「Medea(王女メディア)」を鑑賞した後に「子供を殺すなんて悪魔だ」と言うホーマーにイリアは「彼方は女を理解していない。 メディアは優しいのよ、誰も傷つけてなんかいない」と反論するのがユニークです。
「日曜はダメよ」ではメリナ・メルクーリが”Ta paidia tou Peiraia(”ピレウスの男たち”の意味)”と”Ein Schiff wird kommen(”船が来る”の意味)”を歌っています。
Melina Mercouri and Jules Dassin in Pote Tin Kyriaki – YouTube
Melina Mercouri sings Ta paidia tou Peiraia (Never on Sunday) – YouTube

「日曜はダメよ」でメリナ・メルクーリはカンヌ映画祭女優賞を受賞した他、Manus Hadjidaki(マノス・ハジダキス)作詞・作曲の映画と同名の主題歌「Never on Sunday(日曜はダメよ)」は1960年度の第33回アカデミー(オスカー)の歌曲賞(主題歌賞)を受賞しました。
当時アメリカではマンドリンに似たギリシャの民族楽器ブズーキを使用したエキゾチックな”日曜はダメよ”のテーマ曲をミュージシャンたちがこぞってカバーしましたが女性歌手だけでもEartha Kitt(アーサー・キット)、Julie London(ジュリー・ロンドン)、Eydie Gorme(イーディ・ゴーメ)、Connie Francis(コニー・フランシス)などのバージョンがありました。 私がラジオのヒットパレードで聞いたのはThe Chordettes(ザ・コーデッツ)のバージョンだったかもしれません。 日本では西田佐知子やザ・ピーナッツが流行りましたが、1990年には佐藤浩市が出演したキリン一番搾りの新登場篇で使用されたそうです。 ちなみに1974年の劇団四季ミュージカルが日生劇場で公演されましたが出演は「アプローズ」の越路吹雪と日下武史などでした。

Melina Mercouri sings Les Enfantes du Piree on Cine Chansons
フランス映画で使用されたシャンソンを集めたコンピレーション・アルバム「Cine Chansons」ではDalida(ダリダ)やDario Moreno(ダリオ・モレノ)なども歌っている”Les Enfantes du Piree”となっています。 1960年の7月にフランスのチャートで15週以上連続トップだったシングルで、映画のなかでメルクーリがギリシャ語で歌いチィター(チター)とアコーディオンのギリシャ風のエキゾチックな「日曜はダメよ」の主題歌が聴けるwfmuのラジオ・ショーのプレイリストPlaylist for Irwin – December 18, 2002(Pop‑up player! もしくはListen to this show (RealAudio)をクリックして出たリアルプレーやのクリップ・ポジション(再生バー)を22分55秒まで移動すると”Les Enfants du Pirée”というタイトルのメルクーリの主題歌が聴けます) この曲のタイトルは英語で”Piraeus Children”といいますがその”Piraeus(ピレウス)”とはギリシャ(アテネ)の港町の名前です。
英語では”Oh, you can kiss me on a Monday a Monday a Monday is very very good …”と歌われたNever On Sundayの歌詞はNever On Sunday Lyrics – STLyrics.com
※現在入手困難ですが別の「Cine Chansons」にはLilian Harvey(リリアン・ハーヴェイ)の”Serait-Ce Un Rave”、Jean Gabin(ジャン・ギャバン)のQuand On S’Promene(Quand on s’promene au bord de l’eau/水の畔を歩いてみれば)、Josephine Baker(ジョセフィン・ベイガーの”C’est”、Charles Trenet(シャルル・トレネ)の”La Route Enchantee”、Tino Rossi(ティノ・ロッシ)の”Tant Qu’Il Y Aura Des Etoiles”、Lys Gauty(リス・ゴーチ)の”A Paris, Dans Chaque Faubourg”、Mistinguett(ミスタンゲッツ)の”Paris” など全23曲を収録しています。

Jules Dassin
「日曜はダメよ」ではアメリカからやって来たホーマーは夢破れてアメリカに帰りましたが、アメリカからやって来たジュールス・ダッシンはアメリカに帰りませんでした。
1950年にRichard Widmark(リチャード・ウィドマーク)が主演した「Night and the City(街の野獣)」を撮った後、アメリカ映画界の赤狩りから逃れてヨーロッパに渡ったジュールス・ダッシン監督は1955年にフランスでフレンチ・ノワールの名作と呼ばれる「Du rififi chez les hommes(男の争)」と メリナ・メルクーリも出演した1957年の「Celui qui doit mourir(宿命)」を監督し、イタリアでメリナ・メルクーリも出演したGina Lollobrigida(ジーナ・ロロブリジーダ)主演の「掟」を撮った後にギリシャで「日曜はダメよ」を監督しました。 この映画のテーマにはそんな事情も込められているようです。 ギリシャに落ち着いたジュールス・ダッシン監督は「日曜はダメよ」の後もフェードラ帽子で名高い舞台の映画化でメリナ・メルクーリを主役にして1962年の「Phaedra(フェードラ/死んでもいい)」や、1964年の「Topkapi(トプカピ)」などを監督しました。 1965年の犯罪コメディ「A Man Could Get Killed(ダイヤモンド作戦)」はダッシンではなく1970年の「クリスマス・キャロル」のRonald Neame(ロナルド・ニーム)が監督し、James Garner(ジェームズ・ガーナー)やSandra Dee(サンドラ・ディー)と共演しています。 ちなみにジェームズ・ガーナーが人違いされる犯罪映画にDelbert Mann(デルバート・マン)が監督した1968年の「The Pink Jungle(ダイヤモンド強奪作戦)」があります。
ジュールス・ダッシンとメリナ・メルクーリは1966年に結婚していますが子供はありませんでした。 メリナ・メルクーリは惜しくも、1994年に68歳で亡くなりましたが、タバコによる肺がんのようです。
※ちなみに1970年代に活躍したシャンソン歌手で名曲「Les Champs-Elysées”(おお、シャンゼリゼ)を歌って知られているJoe Dassin(ジョー・ダッサン)はジュールス・ダッシン監督の先妻の息子だそうですが1980年に亡くなっています。

ジュールス・ダッシン監督はひとしきりギリシャで活動した後、1965年にメリナ・メルクーリも出演するアメリカとの合作映画を何本か監督しています。 1969年に幻の映画となった黒人パワーを扱った「Up Tight! 」があります。 時の情勢不安からかお蔵入りとなったそうです。
☆詳しくはAudio-Visual Trivia内のジュールス・ダッシンの公民権運動映画 Up Tight! (1968)

Don Costa CD

Never On Sunday: Original MGM Motion Picture Soundtrack [Enhanced CD]
Don Costa(ドン・コスタ)演奏の「日曜はダメよ」を収録したCDです。
♪ ドン・コスタのNever On Sundayが聴けるDon Costa – Never On Sunday (45 RPM) – YouTube

Never On Sunday DVD

日曜はダメよ [DVD]
2009年にリリースされた「日曜はダメよ」の日本語字幕付きDVD(白黒)は現在入手困難となったのでリンクは2013年の日本語字幕版となっています。
下記の画像は輸入版の原語のVHSビデオ「Never on Sunday(日曜はダメよ)」です。(新品だとビンデージ価格の1万円)
VHSでも「日曜はダメよ」の方はもっとヴィンテージ価格!(中古でも現在は最高16,600円)ですが、1990年に発売された日本語字幕版も見つかります。(ASIN: B0000650Y7)
Never on Sunday

Never on Sunday VHS
Melina Mercouri (1920 – 1994)
Master Serie
Master Serie

メリナ・メルクーリの出演映画の日本公開は少ないですが、フランスでのTVシリーズで人気がありましたのでフランスでもフランス語の歌のLPを出しています。
ギリシャの歌手としても名高いメリナ・メルクーリは「日曜はダメよ」以外にも映画「死んでもいい」ではフェードラのテーマ”Phaedra”を歌い、「トプカピ」でも歌っていますが殆どの歌はギリシャ語ですから日本やアメリカでは殆ど見つかりません。 ギリシャではいまだにLPがリリースされているようです。

元々政治家の家系のメリナ・メルクーリは、その後政治に傾倒していきます。 60年代に起こった軍事政権に反発し、1974年に保守派のカラマンスリ政権になるまで国籍を剥奪されていました。 政権交代後の1981年にはギリシャの文化科学大臣を務めたりして政界で活躍しました。 1982年に大英博物館に対するアテネ・パルテノン神殿の彫刻群のギリシャ返還とエジプトのスフィンクスのヒゲ返せ!」の要求運動が有名です。

大英博物館に対する返還要求について
エジプト政府は大英博物館に返還を求めているのは、1801年にフランス軍が、英国とオスマン帝国の連合軍に敗れ、アレキサンダー条約によりロゼッタ・ストーンは英国に接収された「ロゼッタ・ストーン」と「スフィンクスの髭」です。

The Rosetta Stone(ロゼッタ・ストーン)
古代エジプトの神聖文字(ヒエログリフ、象形文字の一種)、デモティック(民衆文字)、ギリシャ文字の三種類が刻み込まれており、1798年のナポレオンによるエジプト遠征のときに支配下の一軍人が、ナイル河口西岸の商業地ロゼッタで砦を築く作業中に偶然発見し、その後、多くの学者が解読に挑戦しました。

The Great Sphinx’s beard (スフィンクスの顎ヒゲ)
4500年間ギザの砂漠に座り続ける守護神で、カフラー王が顔は自分に似せ身体はライオンの形に作ったと言われるが返還を求められても大英博物館ではなかなか見つからなかった。というのもなんと、ドア止めに使用していたんですと!

日曜はダメよ Never On Sunday (1960)」への10件のフィードバック

  1. より:

    はじめまして TBさせていただきました
    とても素敵なブログですね
    一映画ファンとして感動しました

  2. koukinobaaba より:

    蒼 さん、気に入って頂けて光栄です。 ヘタのなんとかで、稚拙ではありますが楽しんで書いています。

  3. アナログオーディオと音楽★NetThePopブログ より:

    日曜はダメよ/オリジナルサウンドトラック

    廃盤希求リスト5
    Never on Sunday/OriginalSoundTrack
    最近、映画館で映画を見ていない。と言うか昨年市街地の映画館…

  4. fkpopjp より:

    このブログを自分のブログのお気に入りに加えたいと思うのですがトップページのアドレスをコピペしてもエラーが出てしまいます。RSS(XML)アドレスってなんなのでしょうか?
    ちなみに「Syndicate this site (XML)]をクリックしても良くわかりません。ブログ初心者なのでお教え下さい。

  5. koukinobaaba より:

    fkpopjpさん、回答が遅くなって申し訳ありませんでした。 私のブログをお気に入りに入れるにはトップページのアドレスでは駄目です。 トップページ右下の「Syndicate this site (XML)」を右クリックしてプロパティを見ると出ているアドレスを入れて下さい。これです→
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  6. お気に入り登録の件、了解しました。早速試してみたら成功です。ありがとうございました。

  7. Audio1: 2. Melina Mercouri : Les bateaux de Samos

    Madame Fataleのコメント:昔詩の朗読のバックによく使った大好きな曲。Madame Fatale推薦の参考ペイジ:参照:Correspondan…

  8. 日曜はダメよ

    この映画のテーマソングがとても有名である。
    映画を初めて見たのが何時だったのか全く覚えていない。公開されたのが1960年なのだから私の生まれた年である。…

  9. 来光堂 より:

    管理人様
    お蔭様で、愉しむことができました。
    <追伸>
    「※日本では1990年に”日曜はダメよ”のテーマ曲が佐藤浩一が(略)」
    →〇「~佐藤浩市」

  10. koukinobaaba より:

    来光堂さん、ご指摘ありがとうございました。実在の人名は間違ってはならないと重々気をつけていたのですが。さっそく「浩市」に書き直します。

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