刑事 Un maledetto Imbroglio (1959)

Un maledetto Imbroglio
Pietro Germi as Ciccio and Claudia Cardinale as Assuntina
ピエトロ・ジェルミの刑事(1959年)

「刑事」はPietro Germi(ピエトロ・ジェルミ)が監督、及び警部役で出演し、脚本も手掛けたイタリア映画初ともいわれるサスペンス・ドラマです。 当時の新進作家No1のCarlo Emilio Gadda(カルロ・エミリオ・ガッダ)が書いた1957年の小説「Quer pasticciaccio brutto de via Merulana(メルラーナ街の怪奇な惨劇)」を元にしています。 迷宮入りかと思われた二つの殺人事件を名刑事のイングラバロが鮮やかなお手並みで解決するという推理劇です。 このイングラバロ警視は取り調べでは立て板に水のことくしゃべりまくります。 ピエトロ・ジェルミは「刑事」でイタリア映画最高の栄誉といわれる「ローマ批評家最優秀監督賞」を受賞しました。 私の好きなイタリア映画「激しい季節」に出演したEleonora Rossi Drago(エレオノラ・ロッシ・ドラゴ)がカルディナーレが演じるアッスンタが女中をしているバンドゥッチ家のLiliana(リリアーナ)夫人を演じます。 殺人事件の容疑者としてカルディナーレの婚約者というディオメデが調べられます。 そうこうするうちに今度はリリアーナ夫人が夫の旅行中に惨殺されてしまうのです。
女中のアッスンタを演じたイタリア女優のClaudia Cardinale(クラウディア・カルディナーレ)も恋人のディオメデ役のNino Castelnuovo(ニーノ・カステルヌオーヴォ)もこの映画がデビュー作でした。 「刑事」の後、ニーノ・カステルヌオーヴォは1963年に「Les Parapluies de Cherbourg(シェルブールの雨傘)」と1966年に日本未公開の「Les Créatures」などCatherine Deneuve(カトリーヌ・ドヌーヴ)とファンタジックなミュージカル映画で共演したりとフランスやイタリアで活躍し、新しいところでは1996年にThe English Patient(イングリッシュ・ペイシェント)にイタリアの考古学者役で出演しています。
イタリア語ではUn maledetto Imbroglioという「刑事」の英語タイトルは「Ugly Mess」又は「The Facts of Murder」となっているそうです。
☆「刑事」のスチール写真が見られるイタリアのUn maledetto Imbroglio Photos – FILM.TV.IT
Dal testo allo schermo: Un maledetto imbroglio” a cura di Giovanna Taviani – YouTube

videoトレーラーではデビューとは思えないほどの演技力のクラウディア・カルディナーレとエレオノラ・ロッシ・ドラゴが観られます。イタリアの映画サイト「Trovacinema.it」で以前は「Un maledetto Imbroglio Trailer – TrovaCinema」でMULTIMEDIAからTrailer:Un maledetto Imbroglioの予告編が観られたのですが現在サイトがリニューアルされてリンク切れです。
Pietro Germi as Dottor Ingravallo learned the key copied – scene in Un maledetto Imbroglio

「刑事」では捜査を反らせるための偽装結婚も虚しく、恋人の形見となる新たな息吹を身体の中に感じながら(思い出しても目頭が熱くなる)連行されていく恋人のディオメデを必死に追いかける薄幸のAssuntina(アッスンタ)の叫び声!がアリダ・ケッリの歌声「アモーレ、アモーレ、アモーレ、アモレミオ」にかぶります。
Maledetto Imbroglio OPENING and ENDING scenes with Sinno Me Moro – YouTube
Pietro Germi and Claudia Cardinale in Un maledetto Imbroglio – YouTube

Pietro Germi
忘れられない1956年の「鉄道員」ではピエトロ・ジェルミが演じたのは特急列車の運転手でしたがその長女(ジュリア)役は1968年に「A Lovely Way to Die(ボディガード)」に出演したグラマー女優のSylva Koscina(シルヴァ・コシナ)でした。 サントラはカルロ・ルスティケリですがラストに流れた「急げ、マルコッチ!」の声入りの音楽も印象的でした。
保守的なシシリー島を舞台にピエトロ・ジェルミが監督した1963年の「Sedotta e abbandonata(誘惑されて棄てられて)」では美しいステファニア・サンドレッリが主演して、音楽は同じくカルロ・ルスティケリのサウンドトラックOST「Seduced and Abandoned」 (Sedotta e Abbandonata)(ASIN: B00061RZZ6)が1999年にイタリアのCAMからリリースされているようです。
試聴はSedotta E Abbandonata (Score) – AllMusic.com

Claudia Cardinale
「刑事」で哀れなアッスンタを熱演した黒い目に黒い髪が特徴のクラウディア・カルディナーレはシシリア出身の両親を持つハスキーヴォイスの地中海美人です。 チュニジアでは端役で映画出演していましたが1958年に一家でイタリアに移り、翌年に「刑事」に出演してブレイクしました。
☆クラウディア・カルディナーレのダイナマイト・バディの写真が見られるClaudia Cardinale Photos – Lenin Imports

Sinnò me moro, la splendida canzone cantata da Alida Chelli

映画のオープニング・タイトルとラスト・シーンの他映画の全編を通して流れた「刑事」のテーマ曲でしたが、Alide Chelli(アリダ・ケッリ)が歌う主題歌の”Sinno Me Moro(死ぬほど愛して)”は1960年(昭和35年)のヒット曲でした。 この曲は、1956年の「Il Ferroviere(鉄道員)」と1957年の「L’uomo di paglia(わらの男)」でピエトロ・ジェルミ一監督と組んだ、映画音楽の巨匠でアリダケッリの父でもあるCarlo Rustichelli(カルロ・ルスティケッリ / 2004年逝去)の作曲です。(惜しくも2004年に亡くなりました) 1957年の「L’uomo di paglia(わらの男)」には、1962年にCatherine Spaak(カトリーヌ・スパーク)が主演した「La Voglia Matta(狂ったバカンス)」でデビューしたイタリア俳優のUgo Tognazzi(ウーゴ・トニャッツィ)夫人のFranca Bettoia(フランカ・ベットーヤ)がピエトロ・ジェルミが演じた妻子持ちの男の若い恋人役で出演しています。 作詞はなんと!既に三役をこなしているピエトロ・ジェルミと脚本家との合作だそうです。 この曲の歌のない”Sospetto(黒い影のテーマ)”は犯人に捜査の手が伸びる時には流れて緊張感を盛り上げました。 1965年にLouis de Funès(ルイ・ド・フュネス)が主演した映画「Le corniaud(大追跡)」にも出演したアリダ・ケッリが歌った「刑事」のテーマ曲のタイトルの”Sinno’ me moro”は方言の多いイタリア語のローマ地方の言葉(Roman)なのでイタリア語にすると”Se no muoio”になるんだとか。 意味は”otherwise I’ll die”だそうで日本語訳すると「貴方と一緒でないとわたしは死んでしまう」だそうです。 日本でも「アモーレ アモーレ アモーレ アモーレ ミオ やさし君に 抱かれるとき 悲しみ忘れ 愛の涙」と水野汀子が歌詞を付け、淡谷のり子がアルバム「ポピュラー楽曲集(ASIN: B0090S4EIC)」、岸洋子がアルバム「カンツォーネ(ASIN: B0007YVVHA)」などでカバーしています。
Amore amore amore amore mio
In braccio a te me scordo ogni dolore
Famme restà co’ te sinno me moro
Vojo restà co’ te sinnò me moro
大体の訳はMy love my love my love
In your arms I forget every sorrow
Let me stay with you otherwise I die (or I’ll die)
I want to stay with you otherwise I die

Alida Chelli sings Sinnò me moro
Amore,amore,amore,amore mio…
Claudia Cardinale
死ぬほど愛して
命ある限り貴方と共に
あなた あなた あなた 私の愛しいひと
あなたの腕の中ではどんな辛いことも忘れる
死ぬほど一緒にいたい
泣かないで、あなた、黙って私の胸にもたれて
苦しかったら言い難くても、言って、言ってね・・・とアリダ・ケッリが歌います。

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日本語字幕版ですがリンク先は共に超ヴィンテージ価格(現在価格は1万円代から2万円代なり)で全て入手困難ですからマーケットプレイスやオークションで探すしかありません。
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Sospetto e Tema dal film / Sinnò me moro
VICTOR ss-1219
Un maledetto Imbroglio Soundtrack私が所有しているサウンドトラックのEPレコードはA面が「刑事」の主題歌となっているアリダ・ケッリの「死ぬほど愛して」で、ラストシーンでのカルディナーレの必死の叫び声が入っています。 当然ながら現在は販売されていませんが、時々中古のオークションに出品されています。 B面は「刑事」のテーマ曲のSospetto e Tema dal film(黒い影のテーマ)です。
(画像は拡大可)
アリダ・ケッリの「死ぬほど愛して」が収録されているCDは60年代に日本で流行ったポップスのコンピレーションの「ベスト・オブ・S盤アワー60s」(新品だと1万円近いヴィンテージ価格だが人気あり)
価格は普通だが同じく日本での1955年から1958年のヒット曲のコンピレーション・アルバムCDは「続・僕たちの洋楽ヒットVol.1」や「S盤アワーVol.3」(ASIN: B00005EJ95)などがあります。
「死ぬほど愛して」が試聴できるカンツォーネのコンピレーションCDは「愛のカンツォーネ50

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