エイプリル・スティーヴンス April Stevens

The Tempos from Niagara Falls
「ニノ&エイプリル」はニューヨーク州ナイアガラに住むシシリー出身の家庭に生まれた姉弟デュオであるNino Tempo & April Stevensは、50年代から70年代にかけて何曲もチャート入りを果たしているのですが日本では余り知られていません。 後期にはテナーサックスの奏者としても知られる兄のNino Tempo(ニノ・テンポ)と妹のApril Stevens(エイプリル・スティーヴンス)はデュオとして、そして個人としても才能豊かなミュージシャンでスイング(スウィング・ジャズ)やポップスのスタンダード曲をセンチメンタルにカバーしたり、カントリーやR & Bまで幅広いジャンルで活躍してきました。 特に1963年のAtcoレコードからリリースして全米1位に輝いた”Deep Purple(夢のディープ・パープル)”や”Whispering”のヒットで一躍脚光を浴びました。 Deep Purple(ディープ・パープル)は1930年代に活躍したニューヨークの音楽家のPeter de Rose(ピーター・デロース)が1933年にピアノ・ソロとして作曲したのですが、Paul Whiteman(ポール・ホワイトマン)が初めてオーケストラで演奏した曲ですが1939年にMitchell Parish(ミッチェル・パリッシュ)が歌詞を付けてから広く知られるようになり、専属歌手だったBing Crosby(ビング・クロスビー)やSarah Vaughan(サラ・ヴォーン)といったヴォーカリストの他、Dean Martin(ディーン・マーティン)が歌いました。 ビッグバンド演奏ではDuke Ellington(デューク・エリントン)やGlenn Miller(グレン・ミラー)やArtie Shaw(アーティ・ショー)楽団の演奏から、ジャズピアノではArt Tatum(アート・テイタム)、そしてArt Pepper(アート・ペッパー)やChet Baker(チェット・ベイカー)などのジャズ・ミュージシャンの他にも、Cascading Strings(カスケイディング・ストリングス)で有名なイージーリスニング(軽音楽)のMantovani Orchestra(マントヴァーニ楽団)などが取り上げている人気のスタンダード曲です。
ニノ・テンポ & エイプリル・スティーヴンスが1974年にA & M からリリースした”Wake Up And Love Me”も人気がありました。

Nino Tempo
4歳でタレントスカウト番組で優勝したニノ・テンポは7歳にしてテレビでBenny Goodman(ベニー・グッドマン又はベニイ・グッドマン)楽団で歌ったそうです。 ニノ・テンポはグッドマンの影響で楽器は最初クラリネットを学びましたが13歳の時にテナー・サックスに替えたそうです。 歌手活動の他には、子役として映画に出演しており1956年のロックンロール映画「The Girl Can’t Help It(女はそれを我慢できない)」に自身の役で出演して自作の”Tempo’s tempo”を歌っている他、1958年にテレビシリーズのPeter Gunn(ピーターガン)にも出演したことがあるそうです。 ニノ・テンポのテナーサックス演奏で1990年代のアルバムにはエモーショナルな”This Masquerade”や”Always”などスタンダード・ジャズ全10曲を収録した「Nino Tempo: Tenor Saxophone」や、トランペッターのConte Candoli(コンテ・カンドリ)等とのカルテットで”Deep Purple”も収録したカリフォルニアでのジャム・セッションアルバム「Live at Cicada」があります。

April Stevens
一方、ニノ・テンポ(本名Antonino LoTempio)の妹のCarol LoTempio(カロル・ロテンピオ)は高校生の時にインディーズ(独立レーベル)のLaurel Recordsにスカウトされて、誕生月が四月だったことから本名のイタリア名からApril Stevens(エイプリル・スティーヴンス)というアメリカ風な芸名で”No No No Not That”をリリースしてヒットとなり、兄のニノ・テンポより一足お先に有名になりました。 その後メジャーなRCA Victor Recordsと契約し、1951年にコ-ル・ポーターのリバイバル曲”I’m in Love Again”がトップテン入りを果たしました。 同じくリバイバルソングの”Gimme a Little Kiss, Will Ya Huh?”とその後の”And So to Sleep Again”でチャート入りは終りました。
50年代のセクシー路線曲”Gimme A Little KIss Will Ya,Huh?”と”And So To Sleep Again”を収録した収録したというアルバム「Gimme a Little Kiss」は見つかりませんが”Gimme a Little Kiss, Will Ya Huh?”は「Music of My Life, Vol. 6: Golden Decade, 1951」又は「Golden Decade – Music Of My Life (Vol. 06)」に収録されています。
“Gimme A Little KIss Will Ya,Huh?”の試聴はApril Stevens – “Gimme A Little KIss Will Ya,Huh?” – Amazon.co.uk(試聴なし)

Oh Do It Again I May Cry No No No No No But Do It Again… とMarilyn Monroe(マリリン・モンロー)が朝鮮戦争時代の1954年に歌ったGeorge Gershwin(ジョージ・ガーシュウィン又はジョージ・ガーシュイン)作曲の思わせぶりな歌”Do It Again(一時Kiss Me Againに変更)”というのがありますが、それに類似した曲で、エイプリル・スティーヴンスが50年代にSocietyレコードからリリースした最初のシングルの”Don’t Do It”は放送禁止を喰らったそうです。 ところがこのセクシーな歌はドイツ出身の編曲指揮者であり、1959年までRCA-VictorのディレクターだったHenri Rene(アンリ・レネ)の耳に止まり彼の楽団「Henri Rene & his Orchestra」で歌うことになりました。 エイプリル・スティーヴンスの歌は朝鮮戦争時代(1950 – 1953)に兵士達の間で大いに流行ったそうです。
アンリ・レネ楽団は50年代にアルバム「Miss Kitt, To You by Eartha Kitt」などのプロデュースも兼ねて、C’est Si BonやSanta Babyなどのセクシーな歌でお馴染みのEartha Kitt(アーサー・キット)のバックをShorty Rogers(ショーティー・ロジャース)楽団などと共に勤めていましたが、一番有名なのは1956年のHarry Belafonte(ハリー・ベラフォンテ)のCalypso(カリプソ)のLPリリースです。
April Stevens – Do It Again – Amazon.com (MP3 Download)
April Stevens- -Don’t Do It – YouTube

ニノ・テンポとエイプリル・スティーヴンスのオフィシャルサイトはThe Official Nino Tempo and April Stevens Web Site(サイトでピアノ鍵盤のメニューからPHPTOSを選ぶと二人の写真が見られます)

Deep Purple / Sing the Great Songs
ニノ・テンポとエイプリル・スティーヴンスの大ヒット曲の”Deep Purple”が収録されているアルバム
Deep PurpleDeep Purple/Sing the Great Songs


Carousel Dreams
人気のエイプリル・スティーヴンス単独名義のアルバム
Carousel Dreams by April StevensCarousel Dreams
ニノ・テンポがプロデュースしテナーサックスも吹いているアルバムの試聴はありませんが曲目リストが見られるCarousel Dreams – AllMusic.com

All Strung Out
☆White Whaleレーベルからリリースされたニノ・テンポとの1967年のヒットシングルの”All Strung Out”や”I Can’t Go On Living”が収録された”Varese Sarabande”の再リリース・アルバムは「All Strung Out」(試聴はAll Strung Out レコチョク

April Stevens Sings Teach Me Tiger!
Whoowhoowhoooowwhooooowwhoow…
私がエイプリル・スティーヴンスを知ったのはあるミスのためです。
ドイツのサイトで見つけた日本製のモンローのアルバムだとされている「Kiss Me Tiger – Marilyn Monroe 1926-1962」にもあるような間違いです。 何人かのモンロー・ファンはモンローの歌う”Teach Me Tiger”が見つからない!と探しているようですが見つかるわけはありません。 そんなものは存在しないのであります。 ついでにお知らせするとマリリン・モンローの歌うSanta Baby(サンタ・ベビー)も存在しません。 それはMadonna(マドンナ)あるいはCynthia Basinet(シンシア・バシネット)の間違いらしいです。(このミスについてはAudio-Visual Trivia内の「クリスマスソング集」)

Teach me tiger how to kiss you.. wah wah wah wah wah…
エイプリル・スティーヴンスが歌ったセクシー路線の1959年のソロ・ヒットで”Teach Me Tiger!”という歌があります。 これはニノ・テンポとエイプリル・スティーヴンスが初期のセクシーなヒット曲”Don’t Do It”のノリで兄妹が共作したものでBillboardの100位以内に入りましたが、又しても禁止された曰くつきの歌です。(この兄妹はかなり茶目っ気があるようです)
※Tiger(タイガー)とは動物の虎のことですがマッチョマンや強靭な男を意味するらしくて、彼氏にタイガー!と呼びかけると喉をゴロゴロいわせて喜ぶようです。 Hugh Grant(ヒュー・グラント)が主演したRoman Polanski(ロマン・ポランスキー)が監督した1992年の「Bitter Moon(赤い航路)」でそんなシーンがありました。 女性ならCat(キャット)なんでしょうか。 ちなみに「赤い航路」で音楽を担当したのはギリシャのシンセな即興演奏が知られる音楽家のVangelis(ヴァンゲリス)が作曲した”Bitter Moon Suite(赤い航路のテーマ)が使用された以外にPeggy Lee(ペギー・リー)の”Fever”やCharles Trenet(シャルル・トレネ)の”La Mer”などでした。
☆マリリン・モンローの歌と間違えられるエイプリル・スティーヴンスの”Teach Me Tiger!”の歌詞はApril Stevens – Teach Me Tiger Lyrics – Lyricsmania.com

This is not that Marilyn Monroe, but it’s April Stevens!
Listenエイプリル・スティーヴンスのTeach Me Tiger!は1983年にChallenger(チャレンジャー)の宇宙飛行士が目覚まし代わりにこの曲を所望したところNASAが許可したそうです。  ☆下記にに宇宙関連のwfmuラジオのプレイリストがあります。
Playlist for The Eternal Now with Andy Ortmann – April 10, 2006
アルバム「Ultra-Lounge」から”Teach Me Tiger!”がワンクリックで聴けるPlaylist for 18 September 2002 | Don’t Turn Me In (右端の1:24:34(Pop-up)をクリック)

Marilyn Monroe – Do It Again ♪ ♪ ♪
マリリン・モンローの”Do It Again”は歌というより睦言のような曲ですが、歌の最後の可愛いクスクス笑いが聴きたいために購入してしまった私です。 そしてエイプリル・スティーヴンスの”Teach Me Tiger”もこんな笑い声が入っています。 そんなことから、私は”Teach Me Tiger!”を聴いてマリリン・モンローの歌だと思っていたのです。 海外でもそんなには知られていないこの曲についての間違いが指摘されているのを見つけました。 例えば”Marilyn Monroe’s ‘Teach me tiger'”といったようにソーシャル・ミュージック・プラットフォームのLast.fmでもこの歌をモンローだと思っているユーザーがいるようです。
※ちなみに、この”Teach Me Tiger”は1996年にイギリスのキャットフード会社のWhiskasのTVコマーシャルで使用されたんだそうです。

Teach Me Tiger
エイプリル・スティーヴンスの試聴ができるアルバム「Teach Me Tiger」は2009年販売のHarkit Records UKレーベルのCDです。
Teach Me Tiger by April StevensTeach Me Tiger
♪ 試聴はTeach Me Tiger – Disk Union
ちなみにDo It Againも収録されている1956年リリースのオリジナル盤Imperial LP 9118は現在売り切れで中古で1万円位の価格ですがなかなか見つかりません。
April Stevens: Teach Me Tiger – YouTube
Nino Tempo & April Stevens – Stasera No No No- YouTube

ページトップの画像はNino Tempo and April Stevens(ニノ・テンポとエイプリル・スティーヴンス)のアルバム「Sweet And Lovely」ですがこれにはアルバムのタイトル曲である”Sweet And Lovely”の他にエイプリル・スティーヴンスの”Teach Me Tiger!”も収録されています。 大ヒット曲の”Deep Purple”を始め、The Coldest Night Of The Year、Begin The Beguine、Stardust、Tea For Two、I Love How You Love Me、Why Don’t You Do Right?など主に60年代初期の曲が収録されています。
キャンディボックスのようなアルバム「50’s Golden Jukebox: Lover’s Lane」では、エイプリル・スティーヴンスの”Teach Me Tiger”の他、Les Baxter(レス・バクスター)楽団のTaboo(タブー)、ペギー・リーのフィーヴァー、Julie London(ジュリー・ロンドン)のGo Slowなどが収録されたムードのある選曲です。
試聴はありませんが曲目リストが見られる50’s Golden Jukebox: Lover’s Lane – AllMusic

☆ついでというにはもったいないのですが、CDの「Ultra Lounge」シリーズの異色ともいえるほどお洒落なHenri Rene(アンリ・レネ)が演奏するアルバム「Ultra-Lounge, Vol. 10: A Bachelor in Paris」は素晴らしく素敵です! ”I Love Paris”、”April In Paris”、”C’est Si Bon”とパリにちなんだ選曲でスウィングしているアルバムですが、Sidney Bechet(シドニー・ベシェ)が作曲した”Petite Fleur(プティット・フルール)”はレネ風アレンジの素晴らしい小粋な曲で聴き逃せません。
Henri René – Petite Fleur (A Bachelor in Paris) – YouTube

Audio-Visual Trivia内の関連記事
ニノ・テンポが子供時代にテレビ・ショーで一緒に出演したベニー・グッドマンについてはテディ・ウィルソン
エイプリル・スティーヴンスやマリリン・モンローの”Do It Again”を作曲したジョージ・ガーシュインについては巴里のアメリカ人

エイプリル・スティーヴンス April Stevens」への7件のフィードバック

  1. はじめまして。
    マリリンが歌っていると信じていたサンタベイビーがマドンナだったとは初めて知りました。
    ここに来なければずっと間違えていたと思うと大変ためになるサイトです。

  2. koukinobaaba より:

    「ジバゴ」さん、こんにちは!私も聞いた話ですが、よく間違われるそうです。セクシーだとモンローだということになってしまうのでしょうか。
    音楽記事は少ないですが、エキサイトブログ「Hot’n Cool」の方も宜しくお願い致します。

  3. ごぶさたしています。お元気ですか?
    今月からブログを始めました。昨日、April Stevensについて記事を書きました。この記事も参照しましたのでトラックバックをしようとしたのですが、うまくいかなかったみたいです。仕方ないのでコメントでお知らせします。覗いて見てください。では。

  4. koukinobaaba より:

    「まじろ」さん、ブログ開設と伺って大変嬉しいです。音楽に含蓄のある方なので素晴らしいブログになると期待しております。50年代や60年代のポップスなら、「まじろさんのブログ」!となるように、どうぞ、ゆっくりと息の長いサイトに育てて下さいませ。
    「ヒットしなかったけれど、ちょっといい曲」というブログタイトルがユーモラスでありシニカルでもあります。
    トラックバックの件は私にも理由が分かりませんがもう一度トライしてみて頂けますでしょうか。お願い致します。
    ちなみに私も「「ヒットしなかったけれど、ちょっといい曲」にコメントしたのですが反映しませんでした。

  5. April Stevens “Teach Me Tiger” 1959

    オールディーズ・ファンの間ではけっこう有名な曲。お色気ソングとして面白がられるんだろうけど、ポップスとしてもよく出来た曲だと思うんだが…。 この曲と出会…

  6. 昨夜は出かけてしまったもんで、返事が遅れてすみません。
    先ほどもトラックバックを試みましたが、「送信失敗」とか「不明」とか表示され、やはりうまくいきません。
    ちょっと調べてみたのですが、、記事に「言及リンク」がないときは受けつかないというブログもあるということなので、それに引っかかった可能性もあります。
    今回は諦めますが、記事にリンクを貼るような文章構成も検討してみます。
    なお、コメントの件ですが、こちらのブログもすぐ反映しない設定にしておりますのでご理解ください。
    ま、お互いあまり一般受けしないテーマを扱っていて、あまり訪問者数も伸びないかもしれませんが、すこしずつ、コツコツとやっていくことにしましょう(笑)。
    今後ともよろしくお願いします。

  7. koukinobaaba より:

    「まじろ」さんもスパム防止設定をされているのですね。
    先ほどトラックバックを受信したので公開にしておきました。
    昨今は記事内に「言及リンク」がないときは受けつけない設定にしているブログが多くてトラバを送るのも容易ではありませんが、その割にスパムが多いのでうんざりします。良心的なブロガーが大迷惑ですね。
    レアものを記事にしていて楽しいことは、ごく稀ですがその記事にアクセスがあることです。まさに同胞を得た感がありますよ。

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