レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 Lemony Snicket’s a Series of Unfortunate Events (2004)

Mishaps. Mayhem. Misadventures. Oh joy.

Jim Carrey as Count Olaf

レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語(2004年)はBrad Silberling(ブラッド・シルバーリング)監督が児童文学のDaniel Handler(ダニエル・ハンドラー aka レモニー・スニケット)著「世にも不幸なできごと」シリーズの最初の「3作」を映画化した美しいファンタジーです。 世にも不幸せな物語のはじまりである「The Bad Beginning(最悪のはじまり)」、ヘビ博士が出てくる「The Reptile Room((爬虫類の部屋にきた))」、ヒルが出てくる「The Wide Window(大きな窓に気をつけろ)」からなっています。 主人公が「レモニー・スケット」ではありません。
☆日本でも「スポンジ・ボブ」などでお馴染みのNickelodeon Movies(ニコロデオン)が製作会社となっています。 ブラッド・シルバーリングといえば1995年の「Casper(キャスパー)」も監督しました。

レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語のあらすじ
「眼」が気になる映画「世にも不幸せな物語」の冒頭はオープニング・クレジットに陽気な音楽でゼリービンズ色の可愛いThe Littlest Elf(妖精/エルフ)や小鳥やシマリスやお花などのアニメーションで始まるから、ディズニー映画のハッピーエンド・ファンタジーみたいな「こびと物語」なのかと思うと残念ながら大間違い! これは偽の始まりで、すぐに一転して怪奇な暗色が垂れ込めて「とても不愉快な映画」とナレーションにあるように「Grimm Brothers’s Fairy Tales(グリム童話)」のようなシュールな残酷物語が展開するのです。 不幸を知らない人はそのまま観て下さい。 「楽しい物語がよければ他の映画館に行くがいい。」 と語るのはボードレール姉弟に身に起きた不幸な出来事を記録するレモニー・スニケット。
よく似た映画には「グラスハウス」があり、突然事故死した両親が残した大いなる遺産を受け継ぐ姉弟が成人するまで知り合いの夫婦に引き取られるが恐怖の日々を送るミステリーです。

大富豪の両親を持つボードレール家の子供たちとは、窮地に陥れば髪をリボンで結んで切り抜ける発明好きな14歳の長女がヴァイオレット、その弟で困った時には本で学んだことを役立てる読書家のクラウスは姉の実験台、そしてたった4本しか生えていない歯で何でも噛む末っ子の噛み付きサニーちゃんで、言葉はまだ話せないから会話は叫び声のみ、赤ちゃん語だから大人には理解不能です。(字幕で対応) 生後六週間目から兄のクラウスが投げたスピンドル(紡錘)を歯で受け止めるし、テーブルの端を鋭い歯で噛んでぶら下がって楽しんでいるし、缶詰まで開けるし、オラフの足も噛む。(危険なシーンは殆どCGI)

運用銀行の重役のポー氏が塩からビーチにやって来て、子供たちにとても不幸な出来事を知らせに来た。 豪華なボードレール邸が原因不明な火事で全焼し両親が亡くなったと。 孤児になったボードレール家の子供たちは屋敷の焼け跡でパパの机で小型望遠鏡を見つけた。 そして、両親の莫大な遺産を管理するポー氏の車で一番近い親戚だという同じ街にあるオラフ伯爵の屋敷に預けられる事に。(”近い”の意味違い) なんと職業は俳優だとか。 オラフ邸に着いてみれば、「以外に可愛らしいお家ね」とヴァイオレットが喜んだのもつかの間、そこは高等裁のストラウス女性判事さん宅でオラフ宅は向かいの不気味なお化け屋敷だった。(赤ちゃんサニーいわく、おんもで寝まちょ)
伯爵邸の扉のノッカーが魔法のよう。 一行が中に入れば、子供たちの後見人になろうとするオラフ伯爵がご挨拶しながら二階から降りてくる。 Hello, hello, hello. おフランスから田舎の労働者なまりまで多岐にわたるアクセントで話すオラフは子供たちの名前を憶えてないから手のひらに書いてある。(アンチョコ) そして、オラフがモンキーと呼ぶサニーちゃんは見た! サニーちゃんがオウム顔と言うオラフの足首に眼の刺青。 「バカみたいでちゅ」 オラフが子供たちに言った「なんでそんなに陰気なんだ」に「両親が死んだから」とクラウスが答える。 「お気の毒に」と言った後のオラフの台詞の後、続けて「待て、今の台詞をもう一度」は台本になかったジム・キャリーのアドリブだとか。

腹黒い俳優のオラフは我が劇場と自称するボロ屋敷を見せてくれるが、自分が毎朝登って行くてっぺんにある塔には何があっても行くなと警告。 芝居一座の団員たちが稽古に集まればディナーを作らされる孤児たち。 鍋が見つからないからタン壷で茹でたパスタと乏しい食材で刺激的なプッタネスカ(娼婦風パスタ)を作る事に。 バカじゃないよ、オラフさん。
オラフが裁判で後見人として認められた帰り、子供たちが乗った自動車(ギア社製インペリアル・クラウン)のドアをロックして踏切の真ん中に止めるなんて! オラフは「最後のチャンス」という雑貨店に入り、様子を伺う。 Pennsylvania T-1型風の蒸気機関車が線路の向こうに見えた時、後部座席のボードに置かれた首振りエルフ人形が突然笑い出した。 ヴァイオレットはサニーちゃんに噛み切らせた人形の頭部を重りにしてシート内のスプリングと紐で力一杯投げ飛ばし、なんとか線路のポイントを切り替えて列車と車の激突を回避。(サニーちゃんもパチパチ!) そこにポール氏も到着、車内から投げキッスをするサニーを見たポール氏は赤ん坊に運転させるような後見人は失格だと言い、次に近い親戚に連れて行く。 モンティおじさんの家は苔生す木々に爬虫類の置物がある風変わりな庭がある蛇屋敷、パイソン(ニシキヘビ)を首に巻いた博士は明日は荷造りをしてペルーに行くと言います。 家の中で二首コブラや三つ目カエルやタンザニアの毒蛇を見せられた子供たちはモンゴメリー博士の腰にパパが持っていたと同じ望遠鏡があるのに気がついた。 それにかっては妻子がいたが火事で失ったという博士はパパとママが歌ってくれたスコットランド(イングランド)民謡の”Bonnie George Campbell”を歌ってくれた。 ペルーに渡った子供たちは優しい後見人と素敵な冒険をしました。 「おしまい。」
ところが、ところが、子供たちの災難はまだまだ続く、「世にも不幸せな物語」

そんな時、玄関のチャイムが鳴った。 キーン、コーン! モンゴメリー博士を訪ねてやって来たのはイタリア人のステファーノでグスタフの代わりに博士の研究助手を志願してきた。 子供たちはすぐに列車の最前部に括り付けたオラフ伯爵が目に浮かんだ。(オラフのお別れの言葉は「必ず見つけ出すゾ」) 顔は整形で変わってもチャと分かっているサニーちゃんはモンティおじさんに「信じちゃだめ!」と叫ぶ。(もちろんおじさんには理解できない) おじさんは赤と白のマダラのミルク・スネークをペチュニアと名付けてペットとして可愛がっている。 そこで子供たちはその無害の斑蛇(オダブツの蛇)を使って「ステファーノはニセ者」だと知らせる。 ところが博士はそのミルクヘビに噛まれて死んでしまう。 ともかく警察の調べではそうだったが、サニーちゃんが「アタチにまかせて。」と一人で蛇のところに歩いて行く。 姉と弟がオラフ(ステファーノ)に連れ去られそうになった時、突然サニーの悲鳴! 見ればサニーはとぐろを巻いた蛇と戯れて喜びの叫びを上げていた。 オラフは正体が警察にバレて追われる身に。

望遠鏡と二つの火事とメモ書きの名前の謎が気になる弟のクラウス。 ポー氏はモーターボートでな泣きべそ湖(Lake Lachrymose)を渡ってダモクレス波止場に上陸し、次の親戚の家に子供たちを連れて行く。 ジョセフィーンおばさん?、またもや子供たちの血縁ではない。 「この先、極めて危険」の看板があるように、湖にせり出した不気味な家。 顔を覗かせた恐がり屋で文法を愛するおばさんはハリケーン・ハーマンが襲ってきそうだから早く入って。 寒くても爆発すると怖いからヒーターはつけたことがない」とか「ドアノブは飛び散ると危ないから回さないで」などと言うのでサニーちゃんは「この人、おかちい」 レンジが燃え出すと怖いから寒くても冷たいスープ。 ジョセフィーンおばさんが見せたアルバムにはモンティおじさんやパパとママも一緒の写真があった。V.F.D. (Volunteer Fire Department – VFD国際秘密組織のメンバー) 旦那さんのアイクは火事ではなくて鋭い歯を持つヒルの毒で亡くなったとか。 理由なき恐怖の不動産屋(クレジットなしでジェーン・リンチ)が訪ねて来た。 とてつもなく大きな悲鳴を上げたおばさんを町に連れ出すとなんと、またもや船乗りに変装したオラフが現れた。 美貌を褒められ、文法にうるさいとこをアピールしたオラフに乗り気のおばさん、サニーちゃんは「おばさん、飢えてるの?」 「オラフだ!」とクラウスがド突いて倒れた船長はなんと木の義足だった。 挙げ句の果てにオラフもヒルに足を襲われた話しをしておばさんの同情を引く。 子供たちがおばさんの家に戻ると、遅過ぎたか! 断崖に面した窓ガラスが割れておばさんの姿が見えない。 遺書を残して飛び降り自殺したらしい。 間違いだらけの文法で書かれた遺書は暗合かもとクラウスが解読すると「どろどろ洞窟」となった。 おばさんは洞窟に隠れているのか。 そこに突然おばさんが恐れていたハリケーン・ハーマンが家を襲う。 おばさんが怖がってた通りにレンジは火を吹き、ドアノブはバーナーで焼かれて粉みじん、冷蔵庫も飛んできて崩壊する家から逃れた子供たちは自力でおばさんを探そうとボートで洞窟に入り探し出す。 火事に関係あるような眼のような謎の絵図をおばさんに見せて秘密を聞き出そうとするが、しゃべるとヒルに殺されると恐れ戦く。 あっちの方から飢えた大群のヒルが押し寄せてきてボートに突き刺さり沈んで行く。 ところが、子供たちが「助けて!」と叫ぶとヒルよりも気味が悪いオラフがボートで現れた。 おばさんは哀れにも湖の底に。 そこにポー氏が間に合った。 ポー氏がオラフに言うには子供たちにもしものことがあれば遺産は受け取れない、血縁以外は。 つまり結婚! 誰と?

オラフ伯爵一座の即興劇「すてきな結婚」 客の中に評論家として出演しているDustin Hoffman(ダスティン・ホフマン)が劇中でオラフが飛行機で現れた時に「以外と金をかけてるな」とか「ヴァイオレットがオラフに相応しくない」などと言う。 劇中で14歳のヴァイオレットと結婚式を挙げるというオラフにクラウスが判事がいなけりゃ無効だと反撃。 ところがオラフはストラウス判事を紹介する。(初めてオラフの家を訪ねた時に会った女性) 絶対に「誓います」は言わないというヴァイオレットに「アレを見よ!」とオラフ。 屋敷の塔の上から吊り下げられた檻にサニーちゃんが。 子供たちの窮地。 クラウスは何か手があるはずだと頭をひねり破れコウモリを投げて塔に登りサニーを中にいれ、鍵の在処を聞くサニーは「おめめ」 なんと謎の絵図の目がそこにあった。 火事のもと。 クラウスを襲ったオラフの手下は塔にぶる下がる羽目に。 それを見たオラフは劇を中止、ヴァイオレットはオラフの悪巧みをバラす。 それを聞いたポー氏はオラフを悪魔呼ばわり、観衆は騒然とする。 クラウスは目玉を操作して月の光を待ち、オラフが振りかざす結婚証明書を燃やしてしまう。 逮捕されたオラフは数えきれない罪状により終身刑? その前に子供たちが味わった苦しみを体験して貰いましょう。
最後にポー氏に火事で全焼した廃墟に連れていかれた子供たちにヨーロッパを旅していたと思った両親が送った迷子の手紙(漂流郵便物)が配達されます。 そこにはどんな時も必ず切り抜ける手があると知っている子供たちがこれまで体験してきた危険な旅、「世にも不幸せな物語」の意味が記されていて、以外な物が同封されていました。
エンド・ロールでアニメーションを手掛けたのは「Madagascar: Escape 2 Africa(マダガスカル2)」でもエンディング・ロールを担当したニューヨーク出身の映像ディレクターであるJamie Caliri(ジェイミー・カリリ)と彼のスタッフです。 眼(目玉)をテーマにした美しい影絵風(切り絵)の人形劇でオラフに翻弄される子供たちの冒険を描き、これだけでも素晴らしい映像です。(子供たちが乗る飛行船にはVFDの文字が見える。 映画の全編がこんな影絵だったらどうだったでしょう)
Lemony Snicket’s a Series of Unfortunate Events Ending Title by Jamie Caliri – YouTube

アメリカのオフィシャル・サイト「Countolaf.com」は現在予告編が観られません。
Lemony Snicket’s a Series of Unfortunate Events Trailer – apple.com
アメリカでは2004年のクリスマス前に公開されましたが日本ではゴールデン・ウィークの2005年5月3日です。
Count olaf first appearance – YouTube

「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」での主人公というべき憎まれ役のCount Olaf(オラフ伯爵)役は「The Mask(マスク)」で主演したJim Carrey(ジム・キャリー)で、3時間もかけた原作の挿し絵そっくりな特殊メイクが見ものです。
アルフィー」などで色男を演じるJude Law(ジュード・ロウ)がこの映画の語り手としての原作者であるダニエル・ハンドラー(aka Lemony Snicket(レモニー・スニケット))の声を担当しますがシルエットの登場でも美しい。 その他、「プラダを着た悪魔」で怖い編集長を演じたMeryl Streep(メリル・ストリープ)がジョセフィン叔母さん役で出演しています。 そうそうオラフ伯爵がヴァイオレットとの劇仕立ての結婚式でThe Critic(劇の批評家)を演じたダスティン・ホフマンのカメオ出演に気が付きましたか? それとJennifer Coolidge(ジェニファー・クーリッジ)と共に一座のWhite Faced Woman(列席者の白い顔の女)の役でちょいと出演したJane Adams(ジェーン・アダムス)は1998年の「You’ve Got Mail(ユー・ガット・メール)」にシドニー役でもカメオ出演していました。
ジュード・ロウが出演する♪って目を凝らして見ても駄目ですよ。 ジュード・ロウは作者であるレモニー・スニケットの声を担当しているのでシルエット(影)だけです。

「世にも不幸せな物語」は家が全焼して孤児となった3人の子供たちが遺産を狙う親戚オラフ伯爵の陰謀に力を合わせて応戦するお話です。
末っ子の「かみつきSunny(サニー・ボードレール)」役の双子ちゃん「Kara Hoffman(カラ・ホフマン)とShelby Hoffman(シェルビー・ホフマン)」がかってのテレビ・シリーズ「フルハウス」でミシェルを交互に演じていた「ひとりっ娘2」のオルセン姉妹みたいに可愛いですね。(しゃべっている時は顔の下半分はCGIですが、時々眠り込んでしまい身代わりも使われたり撮影がストップしたりしたとか) ちなみにホフマン姉妹とダスティン・ホフマンは姓が同じだけで全くの他人だそうです。

The Littlest Elf by Smith & Foulkes

「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」では可愛いSmith & Foulkes(Nexus Digital Studios(ネクサス))制作のCGIですが60年代のコマ撮り漫画に見せかけた「The Littlest Elf(妖精)」のアニメが最初に観られますし、影絵風アニメを使ったエンディング・タイトルではそのオルゴール風なテーマ曲が流れます。 エンデイング・ロール(配役キャストが表示されるテロップ)まで楽しめるので物語が終わっても席を立たないでね。

「The Littlest Elf – Nexus」では現在The Littlest Elfが観られません。
Nexus(ネクサス)プロダクションのサイトでは仕様が変更されてすっごいグラフィック・ノベル(劇画)調CMの「MURPHY’s」(1997年10月放映のMURPHY’S IRISH STOUT(アイルランド・マーフィーズ・ビール)のCMでタイトルはLast Orders(ラストサムライならぬ、サムライとビール)などの以前のファイルは何も観られません。

Smith & Foulkesは活動的なアニメ制作で知られ、現在ロンドンのNexasを代表するAdam FoulkesとAlan Smithの英国人グループで、2004年の「Thunderbirds」のタイトル・クレジットやホンダのシリーズ「Grrr」でブレイクしました。

2005年発売の国内版DVDの「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」は現在入手困難もしくは割高になっているためリンク先は2014年販売の廉価版になっています。
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語 スペシャル・エディション


レモニー・スニケットの書籍特集
The Bad Beginning(最悪のはじまり)
The Reptile Room(爬虫類の部屋にきた)
The Wide Window(大きな窓に気をつけろ)

書籍には日本語版の単行本セットの「世にも不幸なできごと (1)(2)(3) 3巻 箱入りセット」や、映画に取り上げられた3作入りハードカバー本の「A Series of Unfortunate Events: The Bad Beginning/the Reptile Room/the Wide Window」などが発売されています。
「海賊」になりたかったというイラストレーターのBrett Helquist(ブレット・ヘルキスト)」の挿絵が素晴らしい!
The Trouble Begins: A Box of Unfortunate Events, Books 1-3 (The Bad Beginning; The Reptile Room; The Wide Window)(英語版ハードカバー)

「アメリカン・ビューティ」で御馴染みのThomas Newman(トーマス・ニューマン)作曲の美しい「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」のサウンドトラックCD
Lemony Snicket’s A Series of Unfortunate Events [Original Motion Picture Soundtrack]
♪ 試聴はできますが、現在は入手困難となりました。

Grimms’ Fairy Tales by the Brothers Grimm
☆ヤコブ・L・C・グリムとウィルヘルム・C・グリムのグリム兄弟が編纂したドイツのメルヘン「白雪姫」、「眠り姫」、「赤ずきん」、「シンデレラ」、「ヘンゼルとグレーテル」など子供向けにしては残酷だと云われるグリム童話ですが英語版が読める「Grimm’s Fairy Tales – Carnegie Mellon University(挿絵なし)」