ラヴェンダーの咲く庭で Ladies in Lavender (2004)

Daniel Bru¨hl as Andrea
Daniel Bruehl as the Violinman

ラヴェンダーの咲く庭で(2004年)
「ラヴェンダーの咲く庭で」で監督デビューするCharles Dance(チャールズ・ダンス)が悲しいまでに美しい老いらくの恋心を描いた高級英国仕立ての上品な映画です。
ラヴェンダーの香りに包まれて、淑女が二人、忘れていた恋の炎に戸惑いながら、切なくも美しい想いを秘めて、自分達の人生を見つめていくストーリーです。
そう、たいていの「老いらくの恋」というものは静かで無償の愛なのです。

Should her love to lay in lavender? Should let Mr. Right go?
That is the question.

1930年代の英国の美しい風景で有名なCornwall(コーンウォール)地方を舞台に、浜辺に打ち上げられた外国の若者が二人の老嬢を魅了するストーリーです。 原作は、かってはよく映画化された英国作家のWilliam J. Locke(ウィリアム・J・ロック)の”Faraway Stories”という短編小説の一遍です。 ☆ちなみにコーンウォールといえばアイルランド出身の作歌であるOscar Wilde(オスカー・ワイルド)が1980年代に書いた「The Selfish Giant(わがままな大男)が「The Happy Prince(幸福な王子)」と共に知られています。(ワイルド童話集のなかで私が好きな話しは「The Star-Child(星の子)」や「The Fisherman and his Soul(漁夫とその魂)」)

主演はイギリスの大物、オスカー女優のMaggie Smith(マギー・スミス)とJudi Dench(ジュディ・デンチ)が姉妹役で競演、そしてこの俗世から隔離されたような静かな桃源郷で暮らす二人の上品な老嬢の心をときめかせる異国のヴァイオリニスト役はドイツの若手俳優のDaniel Bruehl(ダニエル・ブリュール)です。
ずっと待ち焦がれていたMr. Right(白馬に乗った王子さま)がやっと現れたのです。 そう、若い男はどんなアンチエイジング化粧品より良く効く若返りの必要条件の一つです。
その「若い男」以外にも、この映画で美しいのは古典音楽と、時にはまるで絵画のようなコーンウォールの風景でしょう。 「ラヴェンダーの咲く庭で」を観た人はきっとコーンウォールを訪ねてみたくなるに違いありません。 英国コーンウォールを上品な淡いロマンスと美しいBGM付きでプロモートするご当地映画のようですね。 ちなみにアンドレアを演じたダスペイン出身の俳優のDaniel Bruhl(ダニエル・ブリュール)は2003年の東西ドイツの統一をテーマにした「Good Bye Lenin!(グッバイ、レーニン!)」や2004年の「Die fetten Jahre sind vorbei(ベルリン、僕らの革命)」で主演しています。

「ラヴェンダーの咲く庭で」の予告編はLadies in Lavender Trailer – VideoDetective

愛する人に届かぬ想いはシラノ・ド・ベルジュラックか、はたまたカジモドか。

Ladies in Lavender DVD
「ラヴェンダーの咲く庭で」の2006年リリースの日本語字幕版DVDで、特別版 (初回限定生産)にはスペシャルアロマパッケージがオマケらしいです。
Ladies in Lavender DVDLadies in Lavender
2006年発売のDVD(ASIN: B002D4DH56)もあり。

Judi Dench(ジュディ・デンチ)といえば、思い出すのはたった10分足らずの登場でオスカーを獲得(アカデミー助演女優賞)したShakespeare in Love(恋に落ちたシェークスピア)(1998年)、Chocolat(ショコラ)(2000年) 、最近では英国諜報員James Bond(ジェームス・ボンド)007シリーズの「Bond’s boss “M”」(MI-6)などなどです。 もっとも私がよく観た「007ジェームス・ボンド・シリーズ」は勿論、1960年代のSean Connery(ショーン・コネリー)です。
ジュディ・デンチは監督は「アイリス」のRichard Eyre(リチャード・エアー)が監督した2006年のイギリス映画「Notes on a Scandal(あるスキャンダルの覚え書き)」では主役の中学校の老教師のバーバラ・コヴェットを演じ、2004年の「The Aviator(アビエイター)」でKatharine Hepburn(キャサリン・ヘップバーン)を演じアカデミー助演女優賞を受賞したCate Blanchett(ケイト・ブランシェット)と共演します。
「007」の短いビデオクリップですがイギリス諜報局の”M”を演じたジュディ・デンチのインタビューと「ロビンソン・クルーソー」を演じたPierce Brosnan(ピアース・ブロスナン)版007シリーズ「Die Another Day(ダイアナザーデイ)」(2002年)からの抜粋が観られました。(007/ピアース・ブロスナン ブルーレイコレクション(4枚組) はASIN: B011QCTEPM) ピアース・ブロスナンはハンサムな顔だけなんて言われることがありますがジェームス・ボンド としては一番アクションが派手だったかも。(爆発シーン満載)
videoAnd Furthermore by Dame Judi Dench
英語版(ISBN-10: 0297859676)しか出ていませんが、20年以上もの間、イギリスで男性に与えられる騎士の女性版を授かりDame(デイム)という敬称をもって呼ばれてきました。 舞台や映画で50年以上のキャリアを誇るジュディ・デンチが75歳で執筆した自伝が2010年に出版されたそうです。

Joshua Bellところでこの映画のハンサムな若いヴァイオリニスト役の「ダニエル・ブリュール」が弾くバイオリンの名曲は、これまたハンサムなグラミー賞受賞者のJoshua Bell(ジョシュア・ベル)の演奏です。 世界的に有名な米国籍のバイオリニストの「ジョシュア・ベル」は1999年のMusic of the Heart(ミュージック・オブ・ハート)に自身の役で出演した他、1998年のThe Red Violin(レッド・バイオリン)、2001年のIris(アイリス)のサウンドトラックに収録されています。 「アイリス」では同じくジュディ・デンチが主演しています。

☆ジョシュア・ベルが演奏するドビュッシーの亜麻色の髪の乙女、ショパンの夜想曲、サン=サーンスの白鳥などのクラシック名曲集の超人気アルバムは「ロマンス・オブ・ザ・ヴァイオリン
※このアルバムでは上記の他にジョシュア・ベルがドヴォルザークのジプシーの歌、モンテヴェルディ、マスネのエレジー、シューマンの子供の情景などなどの全16曲を収録したクラシック音楽珠玉の名曲集です。
2006年にリリースされたジョシュア・ベルの「ヴォイス・オブ・ザ・ヴァイオリン」(ASIN: B000I6BLYK)も人気で試聴できます。(フィギュアスケートで使用される”鐘”で有名なSergei Rachmaninov(ラフマニノフ)作曲の”ヴォカリーズ 作品34-14″など全17曲を収録)
2007年にアルバム「debut」をリリースした全盲のピアニスト”辻井伸行”が演奏する「ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番(DVD付)」が2008年にリリースされています。 ”Ladies in Lavender”や”The Red Violin”や遺作となったショパンの美しいノクターン”Nocturne in C-sharp Minor(夜想曲 嬰ハ短調)”などの他全28曲を収録して2007年に発売の輸入盤2枚組CDは2008年発売の国内盤「ベスト・オブ・ジョシュア・ベル」(ASIN: B00122DV60)で試聴できますが、輸入盤は「Essential Joshua Bell」(ASIN: B000NDIAXI)

Joshua Bell plays “Fantasy for Violin and Orchestra” by Jean Claude Petite
Le Hussard Sur le Toit(プロヴァンスの恋)」のオリジナル・サウンドトラックの音楽を担当したJean-Claude Petit(ジャン・クロード・プティ)作曲の「Fantasia for Violin and Orchestra(ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア)」をヴァイオリニストのジョシュア・ベルが演奏しています。
ジョシュア・ベルが映画[「ラヴェンダーの咲く庭で」で演奏する曲目は”ファンタジー・フォー・バイオリン・アンド・オーケストラ”の他、ドビュッシーのLa fille aux cheveux de lin(The Girl with the Flaxen Hair/亜麻色の髪の乙女)などを美しく感動的に演奏します
サウンドトラックは皇室御前演奏も行うイギリスのNigel Hess(ナイジェル・ヘス)の美しい音楽ですが、バイオリニストのJoshua Bell(ジョシュア・ベル)のヴァイオリン演奏の(ヴァイオリンと管弦楽のためのファンタジア、又はバイオリンと管弦楽のためのファンタジー)」はサントラの4番を試聴
バイオリン・ソナタで有名なClaude Debussy(ドビュッシー)、バイオリニストの巨匠であるNiccolo Paganini(ニコロ・パガニーニ)、バイオリンの名曲「Zigeunerweisen(ツィゴイネルワイゼン)」で有名なPablo de Sarasate(サラサーテ)などのクラシック曲をN.ヘス指揮でRoyal Philharmonic Orchestraが演奏します。 ちなみにイギリスのクラシック界には超変わり種のNigel Kennedy(ナイジェル・ケネディ)というパンク・ファッションでジャズを奏でるヴァイオリニストがいます。

Ladies in LavenderLadies in Lavender [Original Motion Picture Soundtrack] ジョシュア・ベルが演奏するテーマ曲”Ladies in Lavender”から最後のトラック”The Carnival of Venice”まで美しいバイオリンの奏を堪能できます。
☆2005年リリースの国内盤は試聴ができる「ラヴェンダーの咲く庭で_
Claude Debussy (ドビュッシー)の亜麻色の髪の乙女は13番
サラサーテのIntroduction & Tarantella(序奏とタランテラ)は8番
パガニーニのヴェニスの謝肉祭は最後
Fantasy for Orchestra and pianofortr(管弦楽とピアノのための幻想曲)は4番
OlgaとTwo Sistersはナイジェル・ヘスのピアノ

The Wind Band Music of Nigel Hess
ナイジェル・ヘス作曲の吹奏楽曲「East Coast Pictures(イーストコーストの風景)」からの3曲「New YorkとCatskillsとShelter Islandsがあり、2004年6月の来日公演、所沢市民文化センターミューズ(アークホール)でも演奏されたようです。 ☆今のところCDはどこにも見つかりませんが、ナイジェル・ヘス作曲のEast Coast Pictures, for bandを収録したCDならあります。
Hess: Winds of PowerHess: Winds of Power, etc.
East Coast Pictures : I Shelter Island、East Coast Pictures : Ii The Catskills、East Coast Pictures : Iii New Yorkなど「The Winds Of Power」の全曲試聴はHess: Winds of Power, etc. – Amazon.com

「ラヴェンダーの咲く庭で」の原作 (原語版書籍) ペーパーバックには「Faraway Stories BOOK」があります。 William J. Locke(ウィリアム・J・ロック )は英国植民地時代のBarbados(バルバドス)で1863年に生まれ、1930年にパリで亡くなりました。 1915年から執筆を始め、1918年の「Stella Maris(闇に住む女)」など、当時はいくつかの作品が舞台や映画で取り上げられましたが、1936年の「The Beloved Vagabond(シュヴァリエの放蕩児)」以降は今回の映画化までほとんど話題に登ることはなかったそうです。。 もはや忘れ去られたかと思いきや、この短編小説「ラヴェンダーの咲く庭で」が偶然にチャールズ・ダンス監督の眼に留まり映画化の運びとなりました。

ウィリアム・J・ロックの作品は殆どお伽噺話し(フェアリー・テール)めいています。

☆2005年5月、この映画に酷似した実話が話題になりました。 もっとも、この人はピアニストということでした。 英国BBCの記事は”No leads in ‘Piano Man’ mystery”

Charles Dance
「ラヴェンダーの咲く庭で」を監督した
チャールズ・ダンスはミュージカルから1980年代には映画俳優になり1987年の「Good morning Babilonia(グッドモーニング・バビロン!)」で注目を浴びました。 日本未公開でしたが1994年の「China Moon(チャイナ・ムーン)」のような悪役を演じることが多かったようです。 「ラヴェンダーの咲く庭で」で監督及び脚本を手掛け製作に名を連ねた後はふたたび俳優として活躍しています。

lavenderlavenderlavenderlavenderlavender

Lavender(ラヴェンダー)は「イングリッシュ・ラヴェンダー」をはじめ色々な種類があり、もともとは地中海沿岸地方に産するシソ科のハーブですが、英国コーンウォール地方では一般にSea lavender(スターチ)と呼ばれる紫色の花が多く観られ、照りつける太陽の下の輝ける宝石のようです。 そういえば、1944年にIngrid Bergman(イングリッド・バーグマン)が主演したサスペンス映画「Gaslight(ガス燈)」でロンドンの街を”ラヴェンダー”と売り歩くラヴェンダー売りの映像が挟まれていました。
ラヴェンダーはアロマテラピーにおいてはリラクゼーションの効果があり、古くは古代ローマ時代に入浴に使われた他、香水の原料は勿論、リネン・シーツの香りづけや殺菌として用いられていました。(ただし、アレルギー反応を起こすこともあるので要注意)

「ラヴェンダー」の言葉に含まれる意味ですが、「to lay in lavender」とか「to up in lavender」は大切にしまっておくという意味があるそうです。 「laid out in lavender」はその昔、死者の死臭を覆うためにラヴェンダーや他の香りの強いハーブなど撒き散らしたことから、「最も可能性のある状況を考慮して何かをあらわにする」というような意味になるとか(HELP!英語の達人に聴こう)・・・又、俗っぽい意味では「同性愛」の意味合いもあるようです。
ラヴェンダーを使った「恋のお呪い」(同じ呪術ですがノロイではなくてオマジナイ)があるそうです。
おまじないに必要な小物は、ピンクの蝋燭と針、バニラオイル一瓶とラヴェンダーひとつまみ、そして鏡・・・? 素敵な恋は見つかるでしょうか

ラヴェンダーの咲く庭で Ladies in Lavender (2004)」への2件のフィードバック

  1. こんにちは♪
    先日、渋谷のル・シネマに行ったら、平日にも関わらず、ラヴェンダー待ちのおばさま方がすごかったですーー。午後の回は、売切れで、5時からの回しかチケットがなかったようですーーー。
    ちなみにワタシは、当初の予定通り「ベルリン僕らの革命」をみてきました。
    そんなに並ばれると映画、気になるんですよねーーー。

  2. koukinobaaba より:

    chandelier さん、”ダニエル・ブリュール”君、売れてますねえ。 「ベルリン,僕らの革命」の前のエントリーに”萬珍楼”の名が・・・食べたい~! 最近行ったのは神戸の元町・中華街のほうですが、今年も行く予定です。

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