アビエイター The Aviator (2004)

The Aviator DVD
Leonardo DiCaprio as Howard Hughes in The Aviator
アビエイター(2004年)

億万長者の飛行機野郎
1943年に話題騒然の西部劇「Outlaw(ならず者)」を製作したHoward Hughes(ハワード・ヒューズ)の伝説をMartin Scorsese(マーチン・スコセッシ)監督が映画化し、アカデミー賞最有力候補の総制作費1億ドル以上という大作です。 マーティン・スコセッシ(マーチン・スコセッシ)監督はRobert De Niro(ロバート・デ・ニーロ)がタクシー運転手役で主演しJodie Foster(ジョディ・フォスター)が12歳半の売春婦を演じた1976年の「Taxi Driver(タクシードライバー)」から一連のデ・ニーロ出演作品の監督を経て、「ラウンド・ミッドナイト」(1986年)や「ピアノ・ブルース」(2003年)などのジャズ音楽映画にも出演及び製作総指揮と関わってきましたが、アニメのシャーク・テイル(2004年)では、おしゃべりなフグのサイクスの声を担当するなどと多才です。 「アビエイター」の製作には1975年から放映されたTVシリーズの「Starsky and Hutch(刑事スタスキー&ハッチ)」や1984年の「Miami Vice(マイアミ・バイス)」シリーズを手掛けたMichael Mann(マイケル・マン)が名を連ねています。 ちなみに金遣いの荒いヒューズに苦労する会計士のノアを1994年の「The River Wild(激流)」に出演したチョイ悪顔のJohn C. Reilly(ジョン・C・ライリー)が演じていますが、この後にアニメの声を手がけ「Wreck-It Ralph(シュガー・ラッシュ)」ではヒーロー願望が強いゲームの悪役で大男のラルフを担当します。

かなり神経がやられている主人公のハワード・ヒューズは2001年に偽造小切手の天才転じてFBI勤務となる実話を元にした映画「Catch me if you can(キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン)」のLeonardo DiCaprio(レオナルド・ディカプリオ)が演じましたがビバリーヒルズの飛行機墜落シーンは圧巻です。木製巨大飛行機のSpruce Gooseが飛行成功した時も感動。 同性愛からロリコンとスキャンダラスな奇癖の持ち主でその屋敷まで創意工夫満載だったという美男俳優のErrol Flynn(エロール・フリン)役はJude Law(ジュード・ロウ)です。 スキャンダル誌の編集長のRoland Sweet(ローランド・ スウィート)役は「Spider-Man 2(スパイダーマン2)」でノーマン(グリーン・ゴブリン)を演じたWillem Dafoe(ウィレム・デフォー)です。

You feel like a little adventure?
飛行スタントマンを自ら演じることもあったハワード・ヒューズは、当時ヒューズと交流が有ったアカデミー主演女優賞受賞最多記録のハリウッド女優のKatharine Houghton Hepburn(キャサリン・ヘプバーン)」から『Do your worst, Mr. Hughes.(やってご覧なさいよ、私はどうってことないから!) 』と言われたほどの冒険好きでした。
ジョージ・キューカーが1935年に監督した「Sylvia Scarlett(男装)」で男装の麗人シルヴィア・スカーレットが素敵だったキャサリン・ヘップバーンは、本来はデカパイ・フェチのハワード・ヒューズが惹かれた唯一中性的な魅力の女性でしたが、これはキャサリン・ヘップバーンがあの有名な関係、つまり妻子持ちのSpencer Tracy(スペンサー・トレイシー)との道ならぬ恋以前のことでした。(とはいえ噂では双方共に同性愛者とか) 1942年に「Woman of the Year(女性No.1)」や日本未公開の「Keeper of the Flame(火の女)」で共演して交際を始めて以来、1945年の「Without Love」から何本もの作品でキャサリン・ヘップバーンが公私共に一緒だったスペンサー・トレーシーと27年間に渡り貫き通した不倫という形の愛はハリウッドでも認められています。 舞台出身だったキャサリン・ヘップバーンは「Madeleine(マデリーン 愛の旅路)」のDavid Lean(デヴィッド・リーン)が監督した1955年の「Summertime(旅情)」でアカデミー賞にノミネートされ、スペンサー・トレイシーと夫婦を演じた1967年の「Guess Who’s Coming to Dinner(招かれざる客)」や1968年の「The Lion in Winter(冬のライオン)」や1981年の「On Golden Pond(黄昏)」ではアカデミーの主演女優賞を受賞しています。 1969年には仏デザイナーのCoco Channel(ココ・シャネル)を描いたブロードウエィ・ミュージカル「Coco(ココ)」に出演して歌も歌った知的な演技派女優です。

ベティ・ディビスやラナ・ターナーやジンジャー ・ロジャースなどなどハワード・ヒューズと関係のあった実在のハリウッド女優の中でKatharine Hepburn(キャサリン・ヘップバーン)を演じたのは演技派女優のCate Blanchett(ケイト・ブランシェット)で名演技でアカデミーの助演女優賞を獲得します。 一方、同じハワード・ヒューズと関係のあった実在のハリウッド女優のAva Gardner(エヴァ・ガードナー)」はJim McBride(ジム・マクブライド)監督の1994年のUncovered(レタッチ 裸の微笑)では未だ少女のようだったのに今ではセクシーとまで言われるイギリス人女優のKate Beckinsale(ケイト・ベッキンセイル又はケイト・ベッキンセール)が演じます。 Mickey Rooney(ミッキー・ルーニー)と離婚後にハワード・ヒューズを虜にし、ハンサムなミュージシャンのArtie Shaw(アーティ・ショウ)と再婚、そして「Show Boat(ショー・ボート)」の成功後にフランク・シナトラと結婚したという経歴を持つエヴァ・ガードナーの髪型ではありますが、「アビエイター」の前年に「Underworld(アンダーワールド)」で吸血鬼の処刑人セリーヌを演じたケイト・ベッキンセイルではちょっと華奢かと思ったが終盤、閉じこもりで獣じみたヒューを身繕いさせて来たる裁判に出廷できるまでにするシーンでは「ありかも」と変わってきた。

Ava Gardner
ハワード・ヒューを打ちのめすほどの気性を持ちハリウッド一の美女といわれたエヴァ・ガードナーはスイング王と呼ばれたアーティ・ショーとも結婚したことがありましたが、芸能界の大物であるフランク・シナトラとは不倫の挙句、3度目の結婚をするもすぐに破局した程激しい気性の持ち主でした。 そのせいでシナトラとは離婚しましたが、その後はハリウッドを離れてスペインやロンドンなどに住み、二度と結婚はしなかったそうです。 そのエヴァ・ガードナーと一番長く交際のあったハワード・ヒューズはどでかいダイヤモンドのエンゲージリングを贈ろうしたのですが「愛していないから」と断られたそうです。 エヴァ・ガードナーは富豪のハワード・ヒューズとの関係の他にも、出演した映画「陽はまた昇る」の原作者でキューバに住まう文豪のErnest Hemingway(ヘミングウエイ)と過ごしたり、50年代の終わりにキューバの英雄であるカストロと革命について語り合ったことがあるとか。 1990年に自伝として「Ava Gardner: “Love Is Nothing」(英語版)で夫達と恋人達について書いたものの発行を待たずして肺癌で亡くなりました。

The Aviator: Howard Hughes
Howard Hughes himself

遺産相続で大富豪となったハワード・ヒューズは米国実在の人物です。 若干16歳で莫大な遺産を受け継いだことから念願の映画製作に乗り出しました。 1920年代後期から映画製作に関わり、監督した映画はサイレントからトーキーになった1930年には当時18歳だった金髪グラマーの新人Jean Harlow(ジーン・ハーロー)をベティ・ブープ風の女役で起用し、一部着色した第一次大戦の空軍兵士をテーマにした戦争映画「Hell’s Angel(地獄の天使)」を完成させました。(複葉戦闘機の編隊からの爆弾投下シーンは東京大空襲を連想させるが英独空中戦は一見の価値あり) 以降、デカパイフェチの趣味がこうじてか、1940年代初めに監督した西部劇「The Outlaw(ならず者)」に起用したJane Russell(ジェーン・ラッセル)のようなグラマータイプの女優を数多く掘り出したそうです。 ビジネスマンであり、映画プロデューサーそして飛行士(The Aviator)の肩書きを持つ大富豪で、子供のように夢を追って波乱の人生を送ったそうです。 命知らずの飛行記録をいくつも樹立しましたがキャサリン・ヘプバーンとの決裂に始まり生きているのが不思議なくらいの墜落事故などから常軌を逸し始め、常用していた麻薬に溺れ、神経を病むようになり廃人同様な姿で南米で亡くなりました。 The way of the future…

video「アビエイター」の予告編
The Aviator Trailer – Tribute.ca
Aviator Trailer – YouTube

脚本は、元劇作家で、最近ハリウッドでも有数の大作映画を続けて手がけている新人のJohn Logan(ジョン・ローガン)です。 Orson Welles(オーソン・ウェルズ)と代表作のCitizen Kane(市民ケーン)を崇拝していることで知られているそうです。 又、既にGolden Globe(ゴールデン・グローブ)にノミネートされている彼の脚本が、果たして「単独飛行」なのかどうかが話題になっていましたが、1月16日、脚本賞受賞が発表されました。 他には作品賞とディカプリオが主演男優賞を受賞しました。
1993年にLasse Hallström(ラッセ・ハルストレム)監督のWhat’s Eating Gilbert Grape(ギルバート・グレイプ)ではJohnny Depp(ジョニー・デップ)の弟役で注目を集め、1995年にTotal Eclipse(太陽と月に背いて)では美貌の詩人Arthur Rimbaud(ランボー)を好演したレオナルド・ディカプリオは、1997年にJames Cameron(ジェームズ・キャメロン)監督のアカデミー受賞作品の「Titanic(タイタニック)」でCeline Dion(セリーヌ・ディオン)が歌う主題歌の”My Heart Will Go On”と共に爆発的な人気を獲得し、「レオ様」という呼称が定着しました。 そして今作の「アビエイター」では大人も大人、ハリウッドの大立者で飛行家のハワード・ヒューズを演ずるに至ったのです。 この後のレオナルド・ディカプリオ主演のMartin Scorsese(マーティン・スコセッシ)監督の作品としては、2006年にアカデミー賞の監督賞を初は受賞したサスペンス映画の「The Departed(ディパーテッド)」があります。

Cate Blanchett
「アビエイター」ではまるで似てはいなかったけれどキャサリン・ヘプバーンを演じたケイト・ブランシェットは舞台経験もあるオーストラリアの女優で、1998年の「Elizabeth(エリザベス)」で主演していきなりゴールデングローブ賞を受賞した他、1999年に「The Talented Mr. Ripley(リプリー)」、続いて「Pushing Tin(狂っちゃいないぜ)」で「Being John Malkovich(マルコヴィッチの穴)」のJohn Cusack(ジョン・キューザック)と 奇人才人のBilly Bob Thornton(ビリー・ボブ・ソーントン)と共演しています。 そのビリー・ボブ・ソーントンとは2001年の「Bandits(バンディッツ)」でも共演しましたがこの時のケイト役が最高でした。 2011年には「Hanna(ハンナ)」では元CIAの父親に刺客として育てられ殺人兵器になった少女に命を狙われるCIAエージェントのマリッサを演じます。
Cate Blanchett with HERO in Bandits – YouTube
Audio-Visual Trivia 内のケイト・ブランシェットの出演映画
1999年のThe Talented Mr. Ripley  リプリー
2005年のThe Life Aquatic with Steve Zissou  ライフ・アクアティック
Hot’n Cool内のバンディッツ Bandits

The Aviator DVD
ページトップの画像は輸入(英語)版の「The Aviator」ですが、こちらは2005年発売の国内版DVDです。
The Aviator DVDアビエイター プレミアム・エディション
日本語字幕版のDVDには2007年に発売された「アビエイター 2枚組」や、2005年発売の「アビエイター 通常版」があります。

The Aviator Soundtrack
「アビエイター」の映画音楽は「The Lord of the Rings(ロード・オブ・ザ・リング)」シリーズを手がけたHoward Shore(ハワード・ショア)ですが、Django Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)の I Can’t Give You Anything But Love 、Harry James(ハリー・ジェームス)のBack Beat Boogie、Glenn Miller(グレン・ミラー)のMoonlight Serenade、Benny Goodman(ベニー・グッドマン)のMoonglow、The Ink Spots(インクスポッツ)のDo I Worry?、”Some of These Days”は収録されていませんがBing Crosby(ビング・クロスビー)のThanksなど垂涎のレトロな曲や、カナダのシンガーソングライターであるRufus Wainwright(ルーファス・ウェインライト)父子の曲も収録したサウンド・トラックが話題です。 エヴァ・ガードナーと結婚歴があるArtie Shaw(アーティ・ショー)の”Nightmare”はケイト(キャサリン)と別れ嫉妬に狂うハワードが思い出を断ち切るかのように室内で大量のシャツから着てるものまで脱いで燃やすシーンや盗聴器がバレてエヴァに罵られ殴られて家を出てくるシーンやFBIの家宅捜査などかなり長く使用されていますが曲のタイトルの意味がが夢魔というのでハワードの精神面を表してなんとも不気味な雰囲気です。(メラメラ)
私が歌声をLionel Hampton(ライオネル・ハンプトン)かと思ってしまった”I Can’t Give You Anything But Love”のヴォーカルはDjango Reinhardt & the Quintet of the Hot Club of FranceのFreddy Taylor(フレディ・テイラー)なんだそうです。 サントラでは”Où es-tu mon amour ?”も使用されたフレディ・テイラーは30年代にハーレムのコットンクラブから出たダンサー及びコミカルなボードビリアンらしく1937年頃はヨーロッパ(パリ)でも活動したようですが、どうしてFreddie Taylor & The Quintet Of The Hot Club Of Franceじゃないんでしょうかね。 フレディ・テイラーが歌う”I Can’t Give You Anything But Love”が収録されているのはジプシーギタリストのジャンゴ・ラインハルトとヴァイオリン奏者のStephane Grappelli(ステファン・グラッペリ)のアルバム「Django Reinhardt & Stephane Grappelli」です。
“I Can’t Give You Anything But Love”の他にBenny GoodmanのMoonglow、Artie Shaw & his OrchestraのNightmare、The Ink SpotsのDo I Worry?、Harry James & his OrchestraのBack Beat Boogie、Glenn Miller & his OrchestraのMoonlight Serenadeなどです。
Django Reinhardt with Freddy Taylor – Nagasaki – YouTube

I’ll Build A Stairway To Paradise – Rufus Wainwright – YouTube
Thanks – Bing Crosby – YouTube
Moonglow – Benny Goodman – YouTube
Nightmare – Artie Shaw – YouTube
Do I Worry? – The Ink Spots – YouTube

Back Beat Boogie – Harry James & His Orchestra – YouTube
Moonlight Serenade – Glenn Miller & His Orchestra – YouTube

映画で使用された曲が収録されているOSTです。
The Aviator Original SoundtrackThe Aviator

Howard Shore(ハワード・ショア)のオリジナル・スコア(作曲)の映画音楽のサントラです。
The Aviator Original Score SoundtrackThe Aviator (Original Score)

Errol Flynn
1949年の「Adventures of DonJuan(ドン・ファンの冒険)」などに出演したハリウッドきっての奇癖の美男俳優「Errol Flynn(エロール・フリン)」は1938年の「The Adventures of Robin Hood(ロビンフッドの冒険)」と「Four’s a Crowd(結婚スクラム)」をはじめ、1939年の「The Private Lives of Elizabeth and Essex(女王エリザベス)」と「Dodge City(無法者の群)」、1940年の「Santa Fe Trail(カンサス騎兵隊)」、1941年の「They Died with Their Boots On(壮烈第七騎兵隊)」で共演したOlivia de Havilland(オリビア・デ・ハビランド又はオリヴィア・デ・ハヴィランド)に失恋して生活が乱れたと云われていますが、自宅豪邸に招いた客の寝室を天井裏から覗く趣味があったという噂が流れましたが本当なんですかね。
Humphrey Bogart(ハンフリー・ボガート)も出演している1940年の「Virginia City(ヴァジニアの血闘)」や、まさに適役の「Adventures of Don Juan(ドン・ファンの冒険)」などで主演した冒険好きのエロール・フリンはハリウッド俳優陣に人気があった革命のヒーロー”Fidel Castro(フィデル・カストロ)”を訪ねてキューバに渡り、カストロの取り巻き連中の一人だったそうで、当時カストロの愛人だったというドイツ人の美女スパイのMarita Lorenz(マリタ・ロレンツ)にも会ったのだとか。
伝説のニュージーランド・タスマニア出身の俳優「エロール・フリン」の自伝と称される原語版書籍(英語)

My Wicked, Wicked Ways

1985年に「My Wicked, Wicked Ways: The Legend of Errol Flynn」がテレビドラマ化されています。 フリンの役は1988年の「Earth Star Voyager(スペース・ボイジャー)」で主演したカナダ人俳優のDuncan Regehr(ダンカン・レガー)で、フリンのモテぶりや飲酒癖、無名時代に年上の仏女優Lili Damita(リリー・ダミタ)に死ぬと脅されての最初の結婚、戦争時代や上手いこと無罪を勝ち取ったロリータ裁判など武勇伝の数々を映像化してあります。