スウィング・ジャズ Tuxedo Junction and The Swing Era

Swing Jazz
スウィングジャズ はお好き?
スイング・ジャズとは1930年代が全盛で1950年代の始め頃まで人気の有ったSwing music(スイング・ミュージック)又はBig Band jazz(ビッグバンド・ジャズ)と呼ばれる主にダンスホールで演奏されたノリノリの独特なジャズの演奏スタイルのことです。 30年代のアメリカの大恐慌を払拭せんとダンスの熱狂に伴いスウィングするダンスバンドが持てはやされました。 ラジオ・デイズのアメリカではクラブやダンスホールに行かれない一般の人々はこぞってラジオでこういったスイングの放送を聴いたようです。 それとレコードのリリースが拍車をかけてジャズの歴史の中では最も人気の有ったジャンルです。 スイングは本来ベースやドラム又はシンバルなどの強烈なリズム・セクションからなる比較的早いテンポの軽快な音楽でした。 Big Band jazzのビッグバンドとは普通10名以上のプレーヤーが集まって演奏されました。 1930年代にニューヨーク、シカゴで始まったニューオリンズジャズの小さな楽団では大規模なダンスホールで演奏するにはマイクやアンプなどの音響効果が不十分なため、もっと人数を増やしたビッグバンドとなった次第です。 このビッグバンドはこれまでの黒人音楽のデキシーランドジャズから白人のバンドリーダーが率いる楽団が白人のためのダンスホールで演奏するスウィングジャズなのですが、この後40年代からは再び黒人がメインで活躍するバップ(モダンジャズ)にバトンを渡すことになります。
村上春樹が書いた「意味がなければスイングはない」という本がありますが、スウィングの曲に”Don’t Mean A Thing If It Ain’t Got That Swing!”があります。 スウィングしなけりゃ意味がない!
Don’t Mean A Thing If It Ain’t Got That Swing! Doo wah doo wah doo wah doo wa…

“Tuxedo Junction”とは? タキシード・ジャンクションの意味は何でしょう? もっと下の方の「What is “Tuxedo Junction”?」をご覧下さい!

主なビッグバンドのリーダーはDuke EllingtonTommy DorseyBenny Goodman、Count Basie、Jimmie Lunceford、Artie Shaw、Cab Calloway、Benny Carter、Earl Hines、Chick Webb、そしてCharlie Barnetなどなどです。

日本限定盤のスウィング演奏集「5フィート・オブ・スウィング」ではBob Crosby(ボブ・クロスビー楽団)、Chick Webb(チック・ウェッブ・オーケストラ)やElla Fitzgerald(エラ・フィッツジェラルド)に加え、Dorsey Brothers(ドーシー兄弟楽団)が”EJ UKHNEM(Volga Boat Song /ヴォルガの舟歌)”を演奏するなど30年代の五つの人気のバンドを収録しています。

The Swing Era
The Complete Modernaires on Columbia, Vol. 1 (1945-1946)

The Swing Era
スイングしなけりゃ意味ないよ!

2000年秋からGeorge Spink氏が運営する私が大好きだったスイングのサイト”The Swing Era”が大変残念なことに2008年3月をもって閉鎖されました。(George Spink
メンバーには頻繁にメールを配信してくれたGeorge Spink氏に感謝。
上記の画像はそのサイトで見たModernaires(モダネアーズ)のレコード「The Complete Modernaires Vol 1」のジャケット画像です。 モダネアーズはグレン・ミラー楽団専属歌手のバック・コーラスを勤めたエレガントなボーカル・グループでロマンチックかつメランコリックなサウンドで当時人気を博しました。 グループは最初は男性ボーカルが3人だったが後に4人となり、Hal Dickinson(ハル・ディキンソン)の夫人となった美貌のPaula Kelly(ポーラ・ケリー)が1941年の半年間ほど参加しました。 ポーラ・ケリーはグレンミラー楽団が出演した1941年のミュージカル映画「Sun Valley Serenade(銀嶺セレナーデ)」に登場したので永遠の名声を手に入れました。 グレン・ミラーが第二次世界大戦に行った後は、ポーラ・ケリーがリードシンガーとなり1978年に引退するまでグループ活動をしています。
アルバム「The Complete Modernaires on Columbia, Vol. 1」にはThere, I’ve Said It Again、The Night is Young and You’re So Beautiful、Juke Box Saturday Night、Salute to Glenn Millerなど25曲を収録しています。 国内では「Vol. 1-Complete」(ASIN: B00006SM77) 試聴はThe Complete Modernaires on Columbia, Vol. 1 – AllMusic.com
☆George Spinkのサイト「The Swing Era」のトップ画像だったのはEdward Hopperが描いた”Nighthawks”でした。

George Spinkが運営していた私のお気に入りのスウィング・ウエブサイト”The Swing Era”やビッグバンドのサイトのTuxedo Junctionや1950年代のR & BのサイトのClub Alibiはもうありません。
Club Alibiの詳細
Tuxedo Junctionにアクセスしようとすると、以前はなかったへんてこりんなパスワード入力を強いられていたづらかと思ったのですが、後に判明しました。 私がGeorge Spink氏のメールを見過ごしていたからですが、アクセスが膨大でサーバーの容量を越えてしまうので制限しなくてはならないからだそうです。 2005年の11月には300万人目を記録しそうだと言っています。 メールには最初に入力する秘密のパスワードも記されていました!(追記: 2009年以降はリニューアルされたTuxedo Junctionでのパスワードは不要となりましたが現在は何もかも消滅してしまいました。 嗚呼、浦島太郎になった心境!

以下はGeorge Spinkからの2005年10月に開設した新しいサイト”The Palomar”のお知らせメールから抜粋です。
I removed “The Swing Era” because it duplicated so much of what I have on Tuxedo Junction. Instead, I built a new site featuring many big band radio broadcasts. It’s called “The Palomar” and is located at:
「The Palomar」(リンクは削除)
Stop by! I think you’ll like it!
2007年には「NEW! The Palomar」(こちらもリンクは削除しました)

Boop bop, Boop Bop Boop bop, Boop Bop Boop bop, Boop Bop Boop bop
ちなみに紹介するサイトのタイトルにある”Tuxedo Junction”とはスイングのスタンダードとなったGlenn Miller(グレン・ミラー)の代表曲の一つで1940年に吹き込まれ、In the MoodやMoonlight Serenadeと共に有名です。(ムーンライト・セレナーデはグレンミラー楽団と演奏したテナーサックス奏者のTex Beneke(テックス・ベネキー)が楽団のテーマ曲として使用したそうです) Way down south in Birmingham…と歌われるVocalese(ヴォーカリス)のManhattan Transferでも有名な歌詞はTuxedo Junction (Glenn Miller) – lyrics – Genius.com
だいたいの日本語訳は、「ポッポー、アラバマ州はバーミンガムのずっと南の郊外にあるジャズやブルースのクラブ、そこではみんなが一晩じゅうダンスする、そこが街のみんなが集まるところ、どの店でも着飾った人々が貴方にご挨拶」となっています。

Tuxedo Junction The Movie
グレン・ミラーの演奏で有名なTuxedo Junctionですが、オリジナルは30年代中頃から西部劇を数多く監督しているFrank McDonald(フランク・マクドナルド)の1941年のミュージカル「Tuxedo Junction(タキシード・ジャンクション)」というモノクロ映画だそうです。 この映画のテーマ音楽”Tuxedo Junction”の作曲はブルースのテナーサックス奏者Julian Dash(ジュリアン・ダッシュ)で、このTuxedo Junctionという曲は1953年の「The Glenn Miller Story(グレン・ミラー物語)」を始め1995年のケヴィン・ベーコンが主演した「Murder in the First(告発)」など何本かの映画で使用されています。 ちなみに2011年末の「第80回全日本フィギュアスケート選手権大会」で高山睦美選手のショート演技(SP)の音楽として使用されました。
ハーレムのサヴォイの人気トランペッターでバーミンガム出身のErskine Hawkins(アースキン・ホーキンス)が1939年の”Gin Mill Special”というレコードのB面用に地元の夜の社交場を記念して書いたそうですが、一説にはアルト奏者のWilliam Johnson(ウイリアム・ジョンソン)とテナー奏者のJulian Dash(ジュリアン・ダッシュ)との合作ともいわれています。 その後”Tuxedo Junction”はアースキン・ホーキンス楽団の十八番となっていたそうで、ホーキンスは故郷のバーミンガムを不朽のものにした”タキシードジャンクション”の歌詞を付けたそうです。
♪ Tuxedo Junction by Glenn Miller (The Best of 1938-1942)

Tuxedo Junction by Erskine Hawkins
ページトップのCD画像はオリジナルの”Tuxedo Junction”に歌詞をつけてバンドのテーマにしたアースキン・ホーキンスが演奏する”Tuxedo Junction”をはじめ、同じくアースキン・ホーキンスのオリジナルである” After Hours”や”Sweet Georgia Brown”など全24曲を収録したアルバムです。 トランペッターのソロも素晴らしいアースキン・ホーキンスが率いた楽団はスウィング時代に洒落た演奏でジャズのファンにもダンスホールの客にも大人気だったビッグバンドです。 ”Tippin’ In”は別にしても大ヒットこそ少なかったアースキン・ホーキンスですがこのアルバムでは1939年から1942年にニューヨークで1945年にシカゴで録音された魅惑的な24曲を網羅しています。 演奏メンバーはトランペットがアースキン・ホーキンスなど、アルトサックスがBobby Smith(ボビー・スミス)など、テナーサックスが”Tuxedo Junction”の共同作者でもあるJulian Dash(ジュリアン・ダッシュ)など、バリトンサックスがHeywood Henry(ヘイウッド・ヘンリー)、トロンボーンがRichard Harris(リチャード・ハリス)など、 1940年録音の”After Hours”が有名なピアノのAvery Parrish(エイヴェリー・パリッシュ)など、ギターがWilliam McLemore(ウィリアム・マクレモア)やLeroy Kirkland(リロイ・カークランド)、ベースがLeemie Stanfield(リーミー・スタンフィールド)、ドラムがKelly Martin(ケリー・マーティン)などです。 ※ピアニストのエイヴェリー・パリッシュが作った”After Hours”はジャズ・ピアニストのRay Bryant(レイ・ブライアント)も演奏しています。
♪ アースキン・ホーキンスが演奏する”Tuxedo Junction”の試聴はTuxedo Junction – Amazon.co.jp(MP3ダウンロード)

Tuxedo Junction by Quincy Jones Mercury MS-78
Tuxedo Junction Quincy Jones私が1960年代に購入したQuincy Jones and His Orchestra(クインシー・ジョーンズ楽団)が演奏する”Tuxedo Junction(タキシード・ジャンクション)”はB面がThe Syncopated Clock(おしゃれ時計)というEP盤で1957年頃にオリジナルがリリースされたようです。 ワアワア・ミュートのトロンボーンとミュート・トランペットが効いたモダンなアレンジです。(昔はワウワウのことをワアワアと表現したのです) それらに加えてテナーサックスやバリトンとブラスの豪勢な演奏です。 B面は1946年にゴールドディスク賞を受賞した”The Symcopated Clock”で、Blue Tango(ブルータンゴ)で知られたハーヴァード大出身のLeroy Anderson(ルロイ・アンダーソン)が作曲した最初のヒット曲です。 クインシー・ジョーンズ楽団の演奏ではドラムのリムやウッドブロックを叩いたりして時計のチクタクを表現した面白いアレンジとなっています。
クインシー・ジョーンズはシカゴ出身の黒人ジャズマンで現在はアレンジャーとして有名です。 1950年代初頭にLionel Hampton(ライオネル・ハンプトン)楽団に参加した後、1956年にはDizzy Gillespie(ガレスピー)楽団に参加し、モダンジャズ界でも一目置かれる存在となりました。
R & Bテナーマンのジュリアン・ダッシュは”Tuxedo Junction”の実際の作曲者でトランペット奏者のErskine Hawkins(アースキン・ホーキンス)のスイング・アルバムThe Complete: 1938-1939Count Basie Orc.(カウント・ベイシー楽団)の専属歌手だったジミー・ラッシングの67年のGee, Baby, Ain’t I Good to You
♪ Tuxedo Junction – Erskine Hawkins

What is “Tuxedo Junction”?
☆タキシード・ジャンクションとは? 果たして”タキシード・ジャンクション”の意味は何でしょう。 「ジャンクション」は一般に高速道路の分岐点を指しますが、人々の集まる場所又は河などの合流点の意味もあるそうです。 その昔、戦前のこと、正確には1920年代から1940年代にかけて、黒人奴隷の多かったアラバマ州のバーミンガムという所に一晩中踊れるナイトクラブやバーやジュークボックスや店舗が並んだ通りがあり、黒人の社交場としての中心地だったそうです。 Tuxedo Junctionという名はその通りにあった洋服屋から取られたようです。 パーティ好きな人々は仕事着のまま路面電車(streetcar)に乗ってやって来てTuxedo Junctionでタキシードを借りて正装してからクラブに入ったそうです。 車社会のアメリカで電車? そうです、ニューヨークの地下鉄の例もありますが「A Streetcar Named Desire(欲望という名の電車)」でも記述されているように、電車は低所得者の足なのです。 それで2本の路面電車の合流地点でもあるこの西バーミンガムの場所の名が”タキシード・ジャンクション”と呼ばれたそうですよ。 ”タキシード・ジャンクション”の名が広まるとf労働者だけでなく遠くからもダンスや音楽を楽しみに黒人たちが集まったそうです。 人種差別の激しかった奴隷解放以後は黒人にとって唯一の利用できる娯楽施設がある場所だったのでした。 そして”タキシード・ジャンクション”から多くのミュージシャンが巣立っていったそうです。
バーミンガムは1960年代にはマーティン・ルーサー・キング牧師が率いる人権隔離政策廃止のデモ隊の終結地点として有名になり、その後の1964年に公民権法が成立したのでした。

Joe Garland(ジョー・ガーランド)作曲ですがグレン・ミラーの演奏で1940年に初めてチャート入りした”In the Mood(イン・ザ・ムード)”にも歌詞があります。 The Andrews Sisters(アンドリュース・シスターズ)などが、Who’s the lovin’ daddy with the beautiful eyes…と歌ったAndy Razaf(アンディ・ラザフ)の歌詞はIn the Mood Lyrics – LyricsDepot.com