ワンダ・ジャクソン Wanda Jackson

Right Or Wrong – LP (Capitol OLP 84 (JH-1011)
Right Or Wrong - LP

Wanda Jackson – Right Or Wrong – YouTube.com
Queen of Rockabilly: Wanda Jackson

Rare Female Rockabilly Singar: Wanda Jackson
ロカビリーを歌う女性歌手といえば、ワンダ・ジャクソン!
1937年にオクラホマで生まれたワンダ・ジャクソンはカントリーミュージック界出身の女性初のロックンローラーといわれていますが、特にパンチの効いた唱法で一時はロカビリー・ウーマンとして名を馳せ、独特のダイナミックな歌声でゴスペルからフォークソングやカントリー、そしてバラードまで幅広く歌いました。 飛行機事故により30歳で急逝したPatsy Cline(パッツィ・クライン)に似た歌い方ですがずっとダイナミック、細身の美人なのにハスキーというよりはぶっ潰れたガラガラ声がミスマッチでしたが、女にロックがやれるか?といった疑問に女だってやれることを見事証明してくれました。 このパッツィ・クラインを聴いて育ったのが今をときめくカントリー歌手のTaylor Swift(テイラー・スウィフト)です。
1954年のワンダの初レコーディングはデッカレコードからHank Thompson(ハンク・トンプソン)カントリーバンドと一緒に吹き込んだそうです。 1956年には独立してジーン・ヴィンセントと同じキャピタルに移籍してカントリーソングの”I Gotta Know”をリリースした後にロックンロールに転向し、1958年にはエルビス・プレスリーの”Party”のカバーで”Let’s Have a Party”をリリースしてナンバーワン・ヒットとなりました。 なんと、ワンダ・ジャクソンにロックンロール(ロカビリー)をすすめたのが当時交流のあったエルビス・プレスリーなんだそうで、ジャクソンはエルヴィスの”Hard Heated Woman”など何曲かをカバーしています。 エルヴィス抜きにしてはロカビリー・ウーマンは誕生しなかったでしょう。 ワンダ・ジャクソンは日本で1959年に来日記念公演をしていますが、日劇のウエスタン・カーニバルにも出演したそうです。(ジーン・ヴィンセントは1958年出演) ヨーロッパをはじめアジアまでエルビス・プレスリー、ジェリー・リー・ルイス、バディ・ホリーなどのロックンローラーと世界ツアーをしましたが、何人かのロカビリアン同様に本国アメリカでのワンダ・ジャクソンの人気は日本やイギリスほどではなかったともいわれています。 ロカビリー旋風も静まった1961年頃からは再びカントリー&ポップスに戻りました。 バラードの”Right Or Wrong(恋のためらい)”や1962年の”In The Middle Of A Heartache”などカントリーチャート入りした曲がたくさんありますが、1970年代にはゴスペルのアルバムもリリースしたそうです。 たった一つ、幅広いジャンルで活躍したワンダ・ジャクソンですが残念なことに自分で作った曲はなく、オリジナルを提供されたこともなく、ただただカントリーやロックの曲をカバーしたことです。 しかしアレンジャーが誰なのかは不明ですが、どんな曲でもワンダ・ジャクソンが歌うとオリジナルを凌ぐインパクトのある曲になるのです。 「こちとら、女ロッカーだぜい!」といった風情や、ややもすると下品な歌詞でも美貌のワンダ・ジャクソンが歌うと引き込まれてしまうのです。
☆ちなみにThe Queen of Rock & Roll(ロックンロールの女王)と呼ばれたのはハイヒールでトロンボーンを吹くジャケット画像で知られるLillian Briggs(リリアン・ブリッグス)で1955年に”I Want You to Be My Baby(恋人になって)”がヒットして10年ほど活躍しましたが、ロックの女王といえばPatti Smith(パティ・スミス)でしょうか。

Watch The rockabilly woman !
Wanda Jackson – I Gotta Know – YouTube
Wanda Jackson – Hard Heated Woman – YouTube
Wanda Jackson – Rock Your Baby 1958- YouTube
Wanda Jackson – Queen For A Day (1958) – YouTube
Wanda Jackson – Breathless – YouTube
Wanda Jackson – Sparklin’ Brown Eyes – YouTube
Wanda Jackson – Let’s Have a Party – YouTube
Wanda Jackson – Mean, Mean Man – YouTube

Right Or Wrong – MONO 10″ LP Capitol OLP 84 (JH-1011) 33 RPM
ページトップの画像はタイトル曲の”Right Or Wrong”のようにワンダ・ジャクソンのバラード曲が半分を占める私の手持ちのCapitol 25cmLP(画像はクリックで拡大可)です。 ワンダ・ジャクソンはフリンジ付きのウエスタン風なステージ衣裳が多かったようですがこのアルバムを手にした時は正直言って下着姿なのかと思ってビックリしました。 コルセット・ドレスとでもいうのでしょうか。 この当時のWanda Jacksonはワンダ・ジャクスンと表記されていました。
日本で発売された東芝の赤盤LP「Right or Wrong – Capitol OLP 84」の収録曲は、Stupid Cupid(間抜けなキューピッド)、1961年のRight or Wrong(恋のためらい)、”Sticks and Stones(なにがなんでも)”、Slippin’ and Slidin’(スリッピン・アンド・スライディン)、Brown Eyed Handsome Man(イカシタあの子)、1961年のIn The Middle Of A Heartache(恋のハーフウェイ)、1961年のFunnel of Love(恋のとりこ)、Who Shot Sam(フー・ショット・サム)、エルビス・プレスリーのMy Baby Left Me(マイ・ベイビー・レフト・ミー)、Riot In Cell Block Number Nine(刑務所ロック)の全10曲です。
※赤盤とは1950年代後期から1970年代の中頃まで芝浦電気(東芝)で製造された帯電防止処理のアナログレコードで、15年くらいしか販売されていないのでレア盤となっています。

Stupid Cupid
ワンダ・ジャクソンが1961年に歌った「間抜けなキューピッド」はNeil Sedaka(ニール・セダカ)が友人であるHoward Greenfield(ハワード・グリーンフィールド)との初の共同作品で1958年にConnie Francis(コニーフランシス)に提供した曲だそうです。
Wanda Jackson – Stupid Cupid (Country – The Definitive Collection, Rock ‘N’ Roll Forever)
Riot In Cell Block Number Nine
Jerry Leiber & Mike Stoller(リーバー&ストーラー)の作ったRiot In Cell Block No. 9 (Cell Block #9)(第九監房の叛乱)を1958年にワンダ・ジャクソンがカバーしましたが、私の手持ちのLPでの当時の題名が「刑務所ロック」です。 この曲は1954年に”Riot in cell block # 9″としてドゥ・ワップ・グループのThe Coasters(コースターズ)、1962年にアウトローカントリーのジョニー・キャッシュが歌っています。

Right Or Wrong – STEREO 12inch(30cm) LP Capitol ST-1596
アメリカでは1961年にリリースされた同じアルバムカバー画像のオリジナル盤 Capitol ST-1596とは収録曲が違います。 中古で1万円くらいの値が付いているCapitol ST-1596 ステレオ12inch / 30cm LPレコードの収録曲はRight or Wrong (I’ll Be With You)、Why I’m Walkin’、So Soon、Last Letter、Sticks And 、Stupid Cupid、Brown Eyed Handsome Man、Who Shot Sam、My Baby Left Meです。 さらに同じカバー画像の「Right Or Wrong」で1962年のヒット曲”A Little Bitty Tear”が収録されたアルバムもあるとか。
収録曲が少々違いますが、2007年のCAPITOL NASHVILLE (NEW RELEASE)の「Right Or Wrong」があるようです。
ちなみに赤盤LPというと1960年にCapitolからリリースされた12曲収録のRockin’ With Wanda(Capitol T-1384)の国内盤もオークションなどでみつかるかもしれません。
♪ CAPITOL NASHVILLE (NEW RELEASE)の試聴はRight Or Wrong – レコチョク
Wanda Jackson – Right or Wrong (1961)- YouTube
Wanda Jackson – In The Middle Of A Heartache – YouTube
Wanda Jackson – Funnel of Love – YouTube

Fujiyama Mama
Capitol 7P – 73
Fujiyama Mama and No Wedding Bells For Joe私が持っているEPレコードはA面に「フジヤマ・ママ」でB面にNo Wedding Bells For Joe(哀れなジョー)を収録したEPレコードです。(東芝の赤盤だからか中古では5000円もするんだとか) 「哀れなジョー」はカントリー(ナッシュビル)の女性シンガーソングライターであったMarijohn Wilkin(マリジョン・ウィルキン)が1956年に作曲したものです。
アイリッシュ・カントリー系の大ヒット曲となった”The Long Black Veil”はジョニー・キャッシュも歌いました。
※B面が1956年にLittle Richard(リトル・リチャード)が発表したLong Tall Sally(のっぽのサリー)のカバーを収録しているEP盤はCR-1977だそうです。
ワンダ・ジャクソンの代表曲のひとつである”Fujiyama Mama”は2005年のジョニー・キャッシュの伝記映画「Walk the Line(ウォーク・ザ・ライン 君につづ く道)」のサウンドトラックで使用されています。
「フジヤマママ」は世界第二次大戦中にアメリカが日本の広島と長崎に落とした原子爆弾に絡んだ歌詞であるにも関わらず、被爆国の日本で大流行しました。
「広島や長崎にやったようにアンタをぶっ飛ばせるよ、アタイが一度爆発したら誰にも止められないよ、酒をがぶ飲み、ダイナマイトが煙草がわり、アンタのド頭をニトロでぶっ飛ばすよ!」といった物騒な歌詞ですが、「富士山、広島、長崎、酒」なんていう日本語が聞けて親しみを感じたのでしょうか。
「フジヤマママ」のオリジナルはジャンプ・ブルース歌手のAnnisteen Allen(アニスティーン・アレン)が1954年に録音しました。
☆I’ve been to Nagasaki, Hiroshima too …と歌われた「フジヤマママ」の歌詞はFujiyama Mama Lyrics – Genius.com
Wanda Jackson Fujiyama Mama 1957 – YouTube

Vintage Collections Series
Vintage Collections Series by Wanda Jacksonワンダ・ジャクソンの1956年から1961年のロカビリー時代から集められたデビュー曲のI Gotta Know、Riot in Cell Block #9、Fujiyama Mama、Let’s Have a Party など全20曲を収録しています。 このアルバムのでギターを演奏しているのはJoe Maphis(ジョー・メイフィス)、Buck Owens(バック・オーウェンズ)、Vernon Sandusky(ヴァーノン・サンダスキー)で、スチールはRalph Mooney(ラルフ・ムーニー)、ピアノがMerrill Moore(メリル・ムーア)とBig Al Downing(ビッグ・アルダウニング)だそうです。(ちなみに”Act Naturally”が人気のバック・オーウェンズは1957年の”Hot Dog”をタイトルとした10曲入りアルバムをリリースしています)
※同じタイトルで国内盤(ASIN: B00008EUL7)もあります。
ワンダ・ジャクソン初レコードとして1958年のCapitol録音がオリジナルの「Wanda Jackson」というタイトルのCD がありますが、知られている曲はLong Tall SallyとLet’s Have A Party以外はPatti Page(パティ・ペイジ)のヒット曲のLet Me Go, Loverのカバー曲くらいしか収録されていません。
ワンダ・ジャクソンは作曲者のOtis Blackwell(オーティス・ブラックウェル)よりジェリー・リー・ルイスで知られた”Breathless”もカバーしていますが、LPレコードでは「Wanda Jackson Rock n Roll Away Your Blue」又は「Rock ‘N’ Roll Away Your Blues」に収録されていました。 カセットでは”Stupid Cupid”や”Sweet Nothin’s”などと共に「Rock & Roll Away Your Blues」に収録されていたそうです。(現在はどちらも入手不可)

Ultimate Collection
Ultimate Collection by Wanda JacksonWillie Nelson(ウィリー・ネルソン)が作曲しパッツィ・クラインが歌ってヒットした”Crazy”のカバー、Hank Williams(ハンク・ウィリアムス)が作曲した”Jambalaya (On The Bayou)(ジャンバラヤ)、”The Violet and a Rose”などカントリーソング24曲を収録した試聴ができる2枚組みCDアルバムです。
このアルバムの17番目に収録されている”Jackson(ジャクソン)”は1969年にジョニー・キャッシュと妻のJune Carter(ジューン・カーター)や、1967年にはNancy Sinatra(ナンシー・シナトラ)とLee Hazlewood(リー・ヘイゼルウッド)のバージョンが有名ですが、ワンダ・ジャクソンはカントリー・ポップス出身でTVの刑事ドラマのテーマ音楽の作曲者であるMike Post(マイク・ポスト)とデ”ュエットしています。(Jackson by Wanda Jackson & Mike Post
19番目の”Singing The Blues”は1956年にGuy Mitchell(ガイ・ミッチェル)でヒットした曲ですが、1960年にはBill Haley & His Comets(ビル・ヘイリーとコメッツ)、1963年にはDean Martin(ディーン・マーチン)も歌っています。
試聴はUltimate Collection – レコチョク 6番目の”The Violet and a Rose”はカントリー歌手でソングライターのMel Tillis(メル・ティリス)の曲でメル自身が歌ってトップチャート入りしていますが1958年にワンダ・ジャクソンがカバーしました。

Queen of Rockabilly
wanda_queen.jpg2000年に発売されたワンダ・ジャクソンのベスト盤で、デビュー曲の”I Gotta Know”の他、知られている曲としてはMean Mean Man、Fujiyama Mama、Let’s Have a Party、Money Honey、Long Tall Sally、Hot Dog! That Made Him Mad、Money Honey、Who Shot Sam?など全30曲を収録しています。 トラックリストの25番目にある”Fallin'”は「間抜けなキューピッド」に続くニール・セダカがコニー・フランシスに提供した曲です。 私が持っているワンダ・ジャクソンのLPに「間抜けなキューピッド」は収録されていたので、当時はニール・セダカのEPレコードを買いました。
試聴はQueen of Rockabilly – ReggaeRecord.com

Heart Trouble
John Woolerがプロデュースした2003年のカリフォルニアのステーキハウス・スタジオでのライヴ録音の2008年盤です。 ワンダ・ジャクソンがなんと66歳の時というのだから驚きますが、共演者は49歳のElvis Costello(エルヴィス・コステロ)、53歳の女ロカビリー歌手のRosie Flores(ロジー・フロレス)、44歳のギタリストのSmokey Hormel(スモーキー・ホーメル)、48歳のギタリストのDave Alvin(デイヴ・アルヴィン)、51歳のベースのLarry Taylor(ラリー・テイラー)、ドラムがStephen Hodges(スティーブン・ホッジス)などで、懐かしいロカビリーの16曲を収録したアルバムです。
♪ 試聴はHeart Trouble – Airplaydirect.com

The Party Ain’t Over
Wanda Jackson’s 1st studio album in eight years by produced by Jack White

2011年に74歳となったロカビリーの女王がなんと新アルバムをリリース! プロデュースしたのがギタリストとしても一押しのジャック・ホワイトです。 ロカビリーおばあちゃんの健闘を称えます。
The Andrews Sisters(アンドリュース・シスターズ)でお馴染みの”Rum and Coca-Cola”や”Teach Me Tonight”などスタンダードな11曲を収録したアルバムの試聴はThe Party Ain’t Over – レコチョク
Wanda Jackson: Rockabilly Queen Prolongs Her Party – NewYorkTimes.com

Country Music & Rockabilly
カントリー界で1950年代にロカビリーを歌った歌手たちといえば!
“Lonesome Train”のJohhny Burnette(ジョニー・バーネット)
“Maybelline”のMarty Robbins(マーティ・ロビンス)
“The Woman I Need”のJohnny Horton(ジョニー・ホートン)
“Rockabilly Blues”のJohnny Cash(ジョニー・キャッシュ)
Jerry Lee Lewis(ジェリー・リー・ルイス)
Charlie Feathers(チャーリー・フェザース)
Elvis Presley (エルビス・プレスリー)
Eddie Cochran(エディ・コクラン)
“Love Me”のBuddy Holly(バディ・ホリー)
“Matchbox”のCarl Perkins(カール・パーキンス)
“Ooby Dooby”のRoy Orbison(ロイ・オービソン)
Gene Vincent(ジーン・ヴィンセント)はワンダ・ジャクソンが一緒にレコーディングしたこともある。
“Mama’s Little Baby”のJunior Thompson(ジュニア・トンプソン)は私には馴染みがありませんが男性歌手はたくさんいて数え切れません。

では、女性歌手はどうかというと、ワンダ・ジャクソン以外には日本では知られていません。 強いて名をあげるなら、私は知りませんがステージでエルヴィスのようなダンスをすることから”女エルヴィス(The Female Elvis: Complete Recordings 1956-60)”と呼ばれて女性歌手として初めてロックを吹き込んだJanis Martin(ジャニス・マーティン)や、ワンダ・ジャクソンのお子さま版のようなBrenda Lee(ブレンダ・リー)などごく少数ですから、ロカビリーという音楽ジャンルはカントリー畑出身の白人男性歌手で占められていたようです。 なんといってもこの後に来るロックンロールのルーツといわれるカントリーミュージック、ヒルビリー、ロカビリー界には黒人アーティストは滅多にはいない、いや皆無といってよいでしょう。 次のロックンロール時代に白人と黒人の音楽がジャストミートしたといわれています。 白人青年たちの理由なき反抗のロカビリー音楽は実に短い期間で終わりになりました。 ロカビリーウーマンのワンダ・ジャクソンのファッションというとフリルのスカートなんかではなく、スパゲティ・ストラップ付きのシンプルなボデコンタイプの細身のドレスでカントリー特有のフリンジをふんだんに取り入れたステージ衣裳が多かったようでしたが、エルビス・プレスリーも革ジャン同様にフリフリのフリンジをよく着ていました。

Listen to Back to the Country! – BSR 88.1 FM
インターネットラジオでオールディズのカントリー音楽を流すプログラム「Back to the Country」は現在消滅の模様。
キャンパス・ネット・ラジオ BSR : 88.1 FM について