ボーン・アイデンティティー The Bourne Identity (2002)

The Bourne series by Robert Ludlum (1927 – 2001)
2002年の映画「ボーン・アイデンティティー」の原作はアメリカのスリラー作家であるRobert Ludlum(ロバート・ラドラム)が1980年に発表したベストセラー小説「The Bourne Identity(暗殺者)」で、三部作の第一作目です。 監督はDoug Liman(ダグ・リーマン)です。
ロバート・ラドラムの三部作の第二作目は「The Bourne Supremacy(殺戮のオデッセイ)」、第三作目は「The Bourne Ultimatum(最後の暗殺者)」で、それぞれ第二作目は2004年に「ボーン・スプレマシー」、第三作目は2007年に「ボーン・アルティメイタム」(最後通牒)としてPaul Greengrass(ポール・グリーングラス)監督で映画化され、特に第三作の「ボーン・アルティメイタム」は音響賞や編集賞など三つの2007年のアカデミー賞を受賞しています。

「ボーン・アイデンティティー」は記憶をなくしたCIA工作員が理由も分からずに襲撃され続けながらもアイデンティティー(身元)を取り戻そうと苦闘するアクション・ミステリです。 ジェイソン・ボーンがなぜ抹殺されなければならないのかは終盤まで全くわかりません。 ジェイソン・ボーンなど登場人物が見せるアクションシーンは迫力がありますがCGは使用せず、武器類も映画用の特別誂えではなく市場に出ている商品だそうです。
戦闘兵士といえば、ベトナム戦争を背景にして人間の尊厳を根底から覆す殺人マシーンの特訓を描いた1987年の作品としてはStanley Kubrick(スタンリー・キューブリック)監督の「Full Metal Jacket(フルメタル・ジャケット)」がありました。

「ボーン・アイデンティティー」の続編の「ボーン・スプレマシー」と「ボーン・アルティメイタム」同様に戦闘兵士として訓練された主人公のJason Bourne(ジェイソン・ボーン)にMatt Damon(マット・デイモン)、連れの女の”Marie Kreuz(マリー・クルーツ)にはドイツ女優のFranka Potente(フランカ・ポテンテ)です。 その他のキャストはThe Professor(教授)と呼ばれる異色な刺客にはClive Owen(クライヴ・オーウェン)、CIA幹部のAlexander Conklin(コンクリン)にはChris Cooper(クリス・クーパー)です。

記憶を失くした男: ジェイソン・ボーン
暴風雨の夜、マルセイユ沖で漁をしていたイタリア漁船の船員が荒波に漂う死体を発見し、引き上げるとその男は手には武器を握りしめ、身に付けている救命具を剥いでみると背中に2発の銃弾の跡が、そして尻の皮膚にはチューリヒの銀行口座が照明で浮かび上がるレーザー機器が埋められていたのです。 乗組員がお前は誰なんだ?と訊ねても、その男は「何も分からない」と答えるだけです。

一方、バージニアにあるCIA本部の幹部であるコンクリンのもとに「ミッションは失敗した」と報告が入ると、直ちに抹殺指令を下したのですが、そのコンクリンの手にはジェイソン・ボーンが乗った漁船の写真が握られているのです。

漁船では漁の手伝いをするジェイソン・ボーンですが、船乗りがやるようなロープの結び方をどこで覚えたのか? フランス語をしゃべる。 ドイツ語もしゃべる。 色んな国の言葉をしゃべれる俺(ジェイソン・ボーン)っていったい何者なんだと暗中模索。 不意の襲撃にも対応できる優れた戦闘能力をもつことも判明。 港に着いた漁船から降りるジェイソン・ボーンはアイデンティティーを求めてスイスに向かうも、雪降る夜の公園のベンチで寝ていると警官からパスポートの提示を強制される。 すると反射的に凶暴とも思えるほどの闘争体制に入るジェイソン・ボーンでした。 チューリヒ銀行での貸し金庫番号もタッチスクリーンの手形もパスし、アイデンティティーの手がかりを求めていざ、金庫を開けてみるとパスポートが入っている。 そうか、俺はアメリカ人のジェイソン・ボーンなんだな。 住所はパリか。 しかし、上のケースの下には他の国々の札束と拳銃。 別人名義のパスポートが5通も。 いったい全体どれが俺なんだ。 ジョン・マイケル・ケーンか? しかしそんなジェイソン・ボーンを見ている男あり。 銀行から出た通りでも尾行されているようだ。 スイスのアメリカ大使館に逃げ込んで辛うじて無事かと思いきや、またしても銀行でのあの情報員の男の顔が見える。 領事館では金が無くてビザのトラブルとなり憤懣やるかたない様子の威勢のよい旅行客の女を見かけた。 さて、赤いリュックに札束を詰め込んだジェイソン・ボーンが銀行を出ようとすると当然、「手を上げろ!」と警備員に囲まれる。 ジェイソンには突発性の攻撃には迎え撃つ闘争体勢が整っている。 警備員を倒して逃げるジェイソン・ボーンは特別機動隊のようなスナイパー達にまで追われる。 やっとこさで逃げ延びて表に出ると先ほどの女が車に乗るところだった。 女が金が必要だと悟ったジェイソン・ボーンは取り引きをする。 車でパリまで乗せるたら2万ドルを渡す約束をして前金の1万ドルを支払う。 しかし何と恐ろしいことにこの車の所在もCIAに突き止められていたのだ。 CIAのコクリンはバルセロナの教授と呼ばれる刺客をはじめ世界中のエージェントにジェイソン・ボーンの抹殺指令を出す。(日没までにボーンを死体袋に入れろ!) ボーンと知り合った女はマリーといいヨーロッパの国々を渡り歩いているヒッピーのようなドイツ人だったが、そのマリーの身元も調べ上げられていた。

車の二人、ジェイソン・ボーンとマリーはわけも分からず取り合えずは逃げる。 2週間前に何が起こったのかが思い出せないと悩むジェイソン・ボーン。 2万ドル払ってマリーの車でパリの自分のらしいアパートに行くが、そこにもスナイパーの手が。 突然、窓ガラスが割れて小銃を構えた男が乱入。 これは怖い! その男を取り押さえ自分が何者かを聞きだそうとするも、大変よく訓練された刺客だったので口を割らずに窓から飛び降りてしまった。 その男は手にジェイソンとマリーの情報書類を持っていたのだ。 あまりのことに憔悴しきったマリーを抱えて急いでアパートを出るジェイソン・ボーン。

CIAからパリ市警に指名手配をされたジェイソン・ボーンはパトカーの警官を見つけて急発進で逃げる。 これに白バイも参加してのカーチェイスはすご過ぎ。 なんと階段を車で走り下り、何十衝突も起こしやっと逃げ延びた。 なんという運転能力なんだと感心するマリー。 車を捨てて、マリーは断髪して髪色も変える。 この時点で二人は恋人となった。
※ カーチェイスのシーンで流れた曲はイギリスのDJのPaul Oakenfold(ポール・オーケンフォールド)と作曲家のAndy Gray(アンディ・グレイ)が作った”Ready Steady Go”だそうですがサントラには収録されていないようです。
Paul Oakenfold – Ready Steady Go – YouTube

映画では冒頭のシーンで、「CIAに命を狙われた!内情を暴露してやる!」といきまいていたアフリカの独裁者で亡命したNykwana Wombosi(ウォンボシまたはウォンボージ)が再び登場。 CIAからのジェイソン・ボーンは死んだという報告を受けて自分を狙った奴の死を確認せんと死体置き場に行くが、「奴じゃない」 さて、暗殺未遂なんてなかったことにしたいCIA、コンクリンはどうする! こんどは教授と呼ばれる刺客に暗殺を命じ、ウォンボシを屋外から銃撃しジェイソン・ボーンが果たせなかった暗殺作戦の一大プロジェクトは完結。(CIAのコンクリンとアボットはボーンが任務を遂行したと判断) 次に教授は暗殺者養成作戦の敗者であるジェイソン・ボーンを狙う。

電話をかけまわってやっとジョン・マイケル・ケーンの情報を掴んだものの、既に死体となっているということでその死体を確認にジェイソン・ボーンも死体安置所に行くが、なんとその死体はウォンボシが見た後には消え去っていた。

Treadstone Assassins
ウォンボシの死のニュースから自分が殺し屋だと悟ったジェイソン・ボーンはマリーをマリーの子供持ちの義弟イーモンの家に送って行くがそこにも追っ手が。 ウォンボシを仕留めたあの教授が狙撃用ライフル(遠距離射撃)を構えて家の外に来ている。 スナイパーから引き離すために自ら外に出るジェイソン・ボーン。 この攻防が深い。 背の高い草の生い茂る野原、ジェイソン・ボーンはわざとショットガンをぶっ放して鳥を飛ばす。 一斉に飛び立った鳥は人間の居ない方向へと飛び去った。 つまり逆側には教授が潜んでいるということになる。 スナイパー・ライフルから接近戦のハンドガンに持ち替えた教授を仕留めたジェイソン・ボーンは瀕死の教授からヒントを得て、コンクリンから全貌を明かされ、やっと自分のアイデンティティーを理解することができた。 なぜ自分が追われていたのかも。 全ての刺客をかたずけたジェイソン・ボーンでしたが、お次はコンクリンの番、失敗など許されないトレッドストーン(CIAの暗殺者養成作戦)におけるコンクリンの失態を糾弾していたCIA副長官のWard Abbott(アボット)から使わされたであろう刺客(教受)に抹殺され、CIAセンターでは「終わった」とPC機器の電源を切るのでした。 しかしトレッドストーンに組み込まれたCIA工作員のジェイソン・ボーンはなぜ記憶を消されたのか。 何故、暗殺者になったのか。 謎を解く続編に乞うご期待! トレッドストーンがさらにアップグレードされブラックファイヤー作戦となる続々編に乞うご期待! 暗殺対象の選定方法の疑問からCIA内部での造反の動きが現れる。
教訓: 暗殺者に人間らしき情は無用。 単に組織の戦闘兵士(殺人マシン)であるべし。 さらに人間ではなく消耗品の武器であるべし。

さて、ラストシーンはわけも分からないまま戦い続けたジェイソン・ボーンへのご褒美です。 活劇からちょっと違和感のあるメロドラマへ。 恋人同士が離れ離れになって男がラストシーンで開店準備をする彼女のところに現れる、こんなエンディングを古い映画で観たような。 どの映画だったかは思い出せない。

Matt Damon
1989年のSaving Private Ryan(プライベート・ライアン)ではTom Hanks(トム・ハンクス)ばかり気になっていて救出される二等兵のライアンには目がいきませんでしたが、私がマット・デイモンを初めて意識して観たのが1999年の「リプリー」なのですが、Julia Roberts(ジュリア・ロバーツ)が主演した1988年のMystic Pizza(ミスティック・ピザ)でチラリとデビューしています。 マット・デイモンが繊細な、しかし強かなゲイの役を好演した映画「The Talented Mr. Ripley(リプリー)」は1960年にAlain Delon(アラン・ドロン)が主演した「Plein Soleil (太陽がいっぱい)」のリメイクです。 マット・デイモンが劇中で切なく歌ったChet Baker(チェット・ベーカー)の”My Funny Valentine”が忘れられません。 ちなみにマット・デイモンの身長はGeorge Clooney(ジョージ・クルーニー)やBrad Pitt(ブラッド・ピット)よりほんのちょっと
低い1m80cm(5’9″ – 5’10″)くらいだそうです。

Franka Potente
「ボーン・アイデンティティー」と「ボーン・スプレマシー」でマリーを演じたフランカ・ポテンテは1998年の「Run Lola Run(ラン・ローラ・ラン)」で初めて観ました。 フランカ・ポテンテが演じたマリー・クルーツが後ろを向いた時に見えた赤い髪のメッシュが”走る、走る赤毛のローラ”の名残のようでした。 が、ラン・ローラ・ランほどはインパクトが無い!

Chris Cooper
クリス・クーパーは1999年のAmerican Beauty(アメリカン・ビューティー)でゲイであることを隠した海兵隊のフィッツ大佐役で出演した後に「ボーン・アイデンティティー」でCIA幹部のコンクリンを演じましたが、次作の「ボーン・スプレマシー」では回想場面の声だけの出演です。 2005年の「Capote(カポーティ)」では捜査官のAlvin Dewey(アルヴィン・デューイ)を演じ、Ryan Phillippe(ライアン・フィリップ)が主演した2007年の「Breach(アメリカを売った男)」ではFBI捜査官のRobert Hanssen(ロバート・ハンセン)を演じています。

Clive Owen
ヒットマン(教授)を演じたクライヴ・オーウェンはこの後、2004年に「Closer(クローサー)」で若いストリッパーに夢中になる医師のラリー、2005年に「Sin City(シン・シティ)」では整形手術で逃げ延びようとする殺人犯人のDwight(ドワイト)を演じた他、2006年の「The Pink Panther (2006)(ピンクパンサー)」にもエージェントとして派手にカメオ出演しています。

The Bourne Identity DVD
Bourne Identity DVDボーン・アイデンティティー (ユニバーサル・ザ・ベスト第8弾)
DVDでは2007年発売の「ボーン・アイデンティティー (ユニバーサル・ザ・ベスト第8弾)」は入手困難となったので2012年の商品にリンクしています。 2005年の「ボーン・アイデンティティー スペシャル・エディション」(ASIN: B0006JJW4K)や「ボーン・アイデンティティー Blu-ray」(ASIN: B006QJT0LY)やVHS(ASIN ‏ : ‎ B000077VT7)もリリースされています。

Bourne Identity Soundtrack
ページトップの画像は2002年に発売された輸入盤の「ボーン・アイデンティティー」のサウンドトラックですが、2005年に発売された国内盤の「オリジナル・サウンドトラック「ボーン・アイデンティティー」」(ASIN: B000J3FEBS)では日本語の曲目(タイトル名)が見られます。
サントラの試聴はBourne Identity Soundtrack – Amazon.com
サウンドトラックはJohn Powell(ジョン・パウエル)作曲のストリーにそった曲ですが、映画で挿入された曲では「Shall We Dance?(シャル・ウィ・ダンス?)」でも使用されたGotan Project(ゴタン・プロジェクト)の”Santa Maria (del Buen Ayre)”や「Un homme et une femme(男と女)」のテーマ曲で有名なNicole Croisille(ニコール・クロアジール)が歌う”Qu’est-ce Qui Passe Dans Mon Coeur”、及びエンディング・クレジットではエレクトロニカ・ミュージックのアーティストであるMoby(モービー)の”Extreme Ways(エクストリーム・ウェイズ)”が使用されましたが共に収録されていません。
“Extreme ways are back again…”と歌われるモービーの”エクストリーム・ウェイズ”の歌詞はMoby Extreme Ways Lyrics – Genius.com

Moby – Extreme Ways – YouTube
Gotan Project – Santa Maria – YouTube

The Bourne Supremacy
☆日本では2005年に公開されたジェイソン・ボーンがもっと優位に闘う続編「The Bourne Supremacy – Audio-Visual Trivia (ボーン・スプレマシー)」

ボーン・アイデンティティー The Bourne Identity (2002)」への2件のフィードバック

  1. ほんとに面白いですな~このシリーズは。
    普通1から2へ、2から3へ、で失速していくことが多いシリーズものなのに、この3部作はどんどんすごくなりました。
    もともとしっかりした原作があったからなんですね。(ヒットしたからまたやってみよ~~のシリーズとは違うところかな)
    あまりにもめまぐるしいので、こうしてストーリーを読ませていただいていると結構忘れていたりする・・また見てみよ~と思いました

  2. koukinobaaba より:

    原作が3部作なので続編、続々編ともにストーリーに一貫性がありますが映画はどんどん過激になっていくようです。アイデンティティーを求めて闘うボーンが安らぎを見出したマリーとの生活は続編ではどうなるか。乞うご期待!

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