アール・フッカー Earl Hooker

Earl Hooker: The Master of The Wah-Wah
Jimi Hendrix(ジミー・ヘンドリックス)にも勝るといわれるギター職人のアール・フッカーは戦後のElmore James(エルモア・ジェームス)やHound Dog Taylor(ハウンド・ドッグ・テイラー)などが活躍するシカゴ・ブルース・シーンではピカイチのスライド・ギタリストでした。 スライド・ギターとはフレットを指で押さえる代わりにガラスや金属製のバーを弦の上で滑らせて弾く奏法でボトルネック奏法と同じことだそうです。 泣けるブルースにピッタリですね。
ミシシッピ生まれのアール・フッカーはシカゴに移り住んだ当時、スライドギターの名手と云われるRobert Nighthawk(ロバート・ナイトホーク)に師事(弟子入り)します。(ナイトホークの曲はSweet Black Angel or Black Angel Blues, Annie Lee Blues, Eli’s Place, Return Mail Blues , Annie Lee Bluesなど)

1949年にIke Turner(アイク・ターナー)のバンドに参加し南部を公演して回りましたが、1952年にはRockin Recordsで初吹き込みをするやいなや瞬く間にスパースターとなりました。 50年代、60年代と伝説のアール・フッカーのバンド”The Roadmasters”を率いてたいていは地方廻りをしていたそうです。 そんな時、よその楽団のアンプから部品など手当たりに失敬したとかいう逸話が残っているそうです。 ある時なんぞは出演したクラブのスピーカーをバンドのワゴン車に詰め込んでしまいバンド御一行様ごと留置場行きとなったとか。
そんなふうに手癖が悪かったにもかかわらず、アール・フッカーのロバート・ナイトホーク譲りのギタープレイはB.B.キングなど他のブルースマン達に絶賛されます。 ある晩のこと、クラブで演奏しているアール・フッカーをLittle Walter(リトル・ウォーター)と一緒に聞いていたB.B. King(B.B.キング)がBuddy Guy(バディ・ガイ)に「What would you give to be able to play like that?」と話したそうです。 百聞は一見にしかず。 アール・フッカーの生演奏はどんなレコードで聴いても比べものにならないと云われています。

FenderのStratocasterエレキギターをTweed Bassmanアンプに接続するなど、常に最新装置を取り入れるアール・フッカーをOtis Rush(オーティス・ラッシュ)、Magic Sam(マジック・サム)、Buddy Guy(バディ・ガイ)などが見習ったそうです。 Spring ReverbアンプでもTape Echo(エコーマシン)、Wah Wah Pedals(エフェクターペダル)やWネックギターだって売り出されるやいなや即刻アール・フッカーの装備に加えられました。 これらは支払った・・・んでしょうね。
そのWah Wah Pedals(ワウペダル)を使用した曲はWah Wah Blues! 収録されているアルバムは「Two Bugs And A Roach
♪ 試聴はEarl Hooker – Two Bugs And A Roach – Tower Records Music

アール・フッカーのギター演奏は”Blues in D Natural”! 注 Fletcher Henderson(フレッチャー・ヘンダーソン)の”D Natural Blues”ではありません。
アールフッカーの録音はマイナー・レーベルからの78回転と45回転のシングル版がほとんどでしたが、60年代後半にヨーロッパや北米などのファンの要望でLP版も録音するようになりました。 60年代のシカゴブルースのBig Moose Walker(ビッグ・ムース・ウォーカー)とのR & Bのヒット曲をインスト曲としてカバーしたレコーディングは注目に値するそうです。 ヴォーカル部分がアール・フッカーのスライドギターが取って代わるそうです。 Blue Guitar、Blues in D Natural、Off The Hook、How Long Can This Go Onはモダン・ブルースギターの代表曲と言えます。
How Long Can This Go On(MP3アルバムThe Essential Earl Hooker)

Bo Diddley(ボー・ディドリー)と一緒に街角で演奏したり、ブルースハープの名手のSonny Boy Williamson(サニー・ボーイ・ウィリアムソン)のラジオ番組である”King Biscuit Time”に出演したアールフッカーは1969年にはアメリカン・ブルース・フェスティバルの一環としてヨーロッパツアーに参加しましたが、そのわずか半年後に、長らく患っていた結核に大量の酒やドラッグ使用も加わったせいであろうか、惜しくも1970年に40歳の若さで亡くなりました。

ページトップのCD画像は1997年にリリースされた「Smooth Slidin’」で、Off The HookやTwo Bugs in a Rugなどの他にElmore JamesのDust My Broomなどの1961年から67年頃の録音のスライド演奏にボーカルを収録したアール・フッカーのレアものアルバムです。(入手困難かも) ただ聴いているだけでなく踊りだしたくなるような全18曲が収録されています。
♪ 試聴はSmooth Slidin’ – CDandLP

Blue Guitar by Earl Hooker
全盛期の名演奏のBlues In D NaturalやBlue GuitarやOff The Hookなど全29曲を収録した「Blue Guitar」CDジャケットの写真はGibson SG(ギブソン・ソリッド)らしきDouble Neck Guitar(ダブルネック・ギター)を抱えたアール・フッカーです。
Blue Guitar - Earl Hookerブルーギター~チーフ / エイジ / USAセッションズ 1960-1963
「Blues Guitar: The Chief and Age Sessions 1959-1963」の試聴はBlues Guitar – Amazon.com(Blues In D Naturalは6番、Blue Guitarは14番)
☆オリジナル録音が1969年の12曲入りアルバムの「Two Bugs & A Roach」には”Wah Wah Blues”、”weet Black Angel”、”Off The Hook”、”Anna Lee”が収録されています。
Earl Hooker Walking The Floor Over You 1969 – YouTube

1962~66年にドイツで行われたブルース・フェスティバルでの滅多にお眼にかかれないアール・フッカーのモノクロ映像でリージョン・フリーのビデオです。
American Folk Blues FestivalAmerican Folk Blues Festival 1962-1966 Vol.1
フォーク・フェスティバルのDVDは「American Folk Blues Festival 1962-1966 Vol.2 [DVD] [Import]」(ASIN: B0000AYL2N)もあります。
オーティス・ラッシュがI Can’t Quit You Babyを演奏、マディ・ウォーターズのGot My Mojo Workingではサニー・ボーイ・ウィリアムソンがブルースハープを演奏、ボーナストラックには珍しいアール・フッカーの1969年のライヴ映像”Walking the Floor Over You / Off the Hook”が収録されている他ブルースマンやBig Mama Thornton(ビッグ・ママ・ソーントン)などの女性ブルース歌手も多数出演しています。 ”Walking the Floor Over You”とは”君のことを思って部屋の中を檻の中のクマさんのように歩き回っている”という意味でしょうか。
アメリカン・フォーク・ブルース・フェスティヴァルのDVDにはVol.3(ASIN: B0002KP54E)もあります。
1969年のフォーク・フェスティバルでアール・フッカーが演奏したのは”Going Up And Down”
同じくフェスティバルに出演して”Hobo Blues”を演奏しているギタリストのJohn Lee Hooker(ジョン・リー・フッカー)はアール・フッカーの伯父にあたるそうです。 ジョン・リー・フッカーは”Boom Boom”の作曲で有名ですが、その代表曲ともなったBoom Boomは1998年のAdam Sandler(アダム・サンドラー)主演の映画「The Waterboy(ウォーターボーイ)」で使用されました。 1980年の「The Blues Brothers(ブルース・ブラザース)」でジョン・リーはストリート・スリム役でCab Calloway(キャブ・キャロウェイ)、James Brown(ジェームス・ブラウン)、Ray Charles(レイ・チャールズ)などと出演しています。 日本で60年代にザ・スパイダースのかまやつひろしがBoom boom boom boom ♪”とカバーしてヒットしました。

Sweet Black Angel
Sweet Black Angel - Earl Hookerアール・フッカーが亡くなる直前にIke Turner(アイク・ターナー)と共同プロデュースしたオリジナル録音は1957年という情報もみましたが、Thumb Recordsからリリースの11曲収録したLPアルバム「Sweet Black Angel」は1970年盤も1994年の再リリース盤(ASIN: B000002R3P)の試聴は今のところ見つかりません。 2017年のデジタルアルバム「Sweet Black Angel アール・フッカー」(ASIN: B07JH22S7R)で視聴できます。 収録曲目はアルバムタイトル曲のSweet Black Angelをはじめ、I Feel Good、Drivin’ Wheel、Country and Western、Boogie, Don’t Blot!、Catfish Blues、Crosscut Saw、Sweet Home Chicago、Mood、Funky Bluesなどです。

アール・フッカーが流行らせたというダブル・ネック・ギターは曲を続けて演奏するのに時間が無い場合使用すると聞いたので、てっきりコードの違う曲を続けて演奏するためにチューニング済みの2つのギターが合体したようなものだと思ったら、そうじゃなくて普通の6弦ネックと12弦のネックが一体になっていてサウンドの違いを得るために使用するのだそうです。

☆スライドギターについてはAudio-Visual Trivia 内のDave Hole(デイヴ・ホール)の記事にも記述があります。
アール・フッカーみたいにスライドギターを鳴らしてみようという方にはシンコーミュージック出版の「初心者スライドギター・ハンドブック」(ISBN-10: 4401141334)
まず最初にスライドギターを楽器屋さんで買いましょう!指に合うスライドバーも忘れずに!