オーティス・ラッシュ  She’s a Good ‘Un by Otis Rush

Otis Rush: Real Chicago Sound (1934 – 2018)
オーティス・ラッシュは生けるブルース・レジェンド! モダン・ブルースの巨人! スローブルースの帝王!
これらの賛辞が贈られる50年代のシカゴ・ブルースのギタリストで、1956年に”I Can’t Quit You Baby”でデビューして以来、持ち前の才能と運とで、Right Place Wrong Time、Crosscut Saw、Keep On Lovin’ Me Babyなども含めて数多くのヒットを次々と生み出したオーティス・ラッシュです。
ですが私はちょっと前まで「オーティス」といえば1968年のヒット曲の”Sittin’ On The Dock of the Bay“のOtis Redding(オーティス・レディング)、”Feel So Bad”といえばElvis Presley(エルビス・プレスリー)のI Feel So Bad(1961年)だとばかり思っていた私です。

米国南部のミシシッピでの子供時代に自己流でギターを弾き始めたオーティス・ラッシュは1948年にシカゴにやって来て、南部のラジオで聞き知ったMuddy Waters(マディ・ウォーターズ)が出ているクラブを訪ねたのです。 オーティス・ラッシュの活動を知ったブルース・ミュージシャンでプロデューサーのWillie Dixon(ウィリー・ディクソン)が1956年にEli ToscanoのCobra Records(コブラ・レコード)と契約させ、最初に吹き込んだのが”I Can’t Quit You Baby”でBillboardのR & Bチャートで6位に輝きました。 マディ・ウォーターズの歌うHoochie Coochie Man(フーチー・クーチー・マン)などの曲を書いたことでも知られ、ベースギタリストでもあるウィリー・ディクソンのプロデュースは素晴らしく、当時は珍しかったマイナーキーでDouble Trouble、My Love Will Never Die、the 、Three Times a Fool、Keep on Loving Me Babyなどを演奏、又Ike Turner(アイク・ターナー)のコンボバンドともレコーディングしたのです。 ちなみにウィリー・ディクソンが1984年に設立してブルース大使を務めた「Blues Heaven Foundation」はブルース(ブルーズ)の伝統的な遺産や著作権を保護するものでしたがウィリー・ディクソンの妻であるMarie Dixon(マリ-・ディクソン)等の努力により1997年復旧したChess Records Studiosに移転したそうです。

オーティス・ラッシュはソウルとアーバンがミックスした時折裏声も使った歌と左手ギター奏法とが大変ユニークなブルースマンです。 Magic Sam(マジック・サム)やBuddy Guy(バディ・ガイ)などと共にシカゴのWest Side(ウェスト・サイド)スタイルの開拓者であり、エレキベースギターをバンドで使用した最初のミュージシャンともいわれます。 オーティス・ラッシュはジャズ・ギタリストのWes Montgomery(ウエス・モンゴメリー)とKenny Burrell(ケニー・バレル)のファンなので二人のリフも取り入れているそうです。

B.L.U.E.S. etc
ピアニストでもあるアイク・ターナーは、アイク & ティナ・ターナー全盛期以前にはメフィスのセッションバンドとして活動していました。 オーティス・ラッシュのコブラ録音でのDouble TroubleやAll Your Loveのギターを弾いていたそうです。 そのアイク・ターナーがなんと、セントルイス(ミズーリ州)時代には(アイクのムショ帰りの頃の90年代半ばのことか?)、オーティス・ラッシュのバンドのアンプ運びをやっていただとか、セカンド・ギターがニューロックで70年代に活躍したSteve Miller(スティーブ・ミラー)だっとか数々の逸話があるようです。 演奏後にスタッフにご祝儀を配る気前の良いオーティス・ラッシュはテンガロン・ハットがお似合いです! 爪楊枝を噛みながら、スロー・ブルースをかったるそうに演奏している姿はビッグ・ビル・ブルーンジーみたいねえ。
オーティス・ラッシュのアルバムが初めて日本で発売されたのが1969年の「Mourning In The Morning」で、初来日したのは1975年の3回目のブルース・ フェスティバルだそうです。 90年代の終わりまでシカゴのリンカーン・パーク辺りにある「B.L.U.E.S. etc」でよく演奏していたとか。 このブルースクラブのB.L.U.E.S. etcはその辺の観光客向けとは違ってシカゴブルースでも南部オリジナルをキープしていたそうですが、残念ながら現在は閉鎖されています。

参考までに1969年の日本お目見えアルバム(Gambler’s Bluesが評判)
Mourning in the Morning
Mourning in the Morning by Otis Rush

Otis Rush – All Your Love (I Miss Loving) (Classic Cobra Recordings) – YouTube

このところ体調を崩していましたがやっと回復し始めたオーティス・ラッシュは2006年4月で71歳になるそうです。この後、惜しくもオーティス83歳の2018年に脳卒中起こして亡くなりました。
バンドで歌とギターを担当し、プロデュースも手掛けているオーティス・ラッシュの現在の奥さまである「Masaki Rush」(綺麗!)が2004年にご自宅で撮影したオーティス・ラッシュの写真とマサキ夫人と一緒の2005年の写真に加えてオーティスの挨拶文が見られるWe Love Otis Rush

She’s a good un, un-huh, and you can’t quit your baby! by Otis Rush

ブルースギタリスト「オーティス・ラッシュ」はパープル・ギターとA Good ‘Unがお好き!
私の好きなオーティス・ラッシュの曲にMy Baby (She’s a Good ‘Un)がありますが、1968年にリリースされた「This One’s a Good Un」というビンテージLP盤があります。
※「A Good ‘Un」ってどんな意味かって? Good ‘Un(goodun)とは、UNがヤツという意味だから、気が利く人とか役に立つ人などのことでしょうか。 ”good ‘un”は物憂げに”GOOD”と言うことらしいですが、イギリス北部のヨークシャ地方独特の言い回しという説もあります。 オーティス・ラッシュもきっと「お〜い、お茶!」と言う前にサットお茶を出すような女性がいいんでしょうね。
アルゼンチンのBotafogo Blues Band(ミゲル・ボタフォゴ・ブルースバンド)もカバーしています。
♪ Otis Rush – She’s a Good ‘Un (The Blues Collection)

ページトップの画像”The Otis Rush Collection”はCDでもDVDでもなく書籍(譜面)です。情報は無いのでオーティスの写真をご覧下さい。

Otis Rush Essential Collection

オーティス・ラッシュのアルバム
必聴!必携! オーティス・ラッシュの一枚!
ラッシュ自身が作ったDouble Trouble、It Takes Time、Three Times a Fool、Keep on Loving Me Baby、Percy Mayfield 作曲のShe’s a Good ‘Unの他、Sonny Boy Williamson IIのChecking on My Baby、Willie DixonのAll Your Love、I Can’t Quit You Baby、My Love Will Never Dieなどが収録されて Wooow!
Essential Collection: The Classic Cobra Recordings 1956-1958
試聴はEssential Collection: The Classic Cobra Recordings 1956-1958 – AllMusic.com
試聴の10番目はShe’s a Good ‘Un、5番のGroaning The Blues(Willie Dixon作曲)もいいかも。
冒頭で書いたFeel So Badは1969年のお目見えアルバム「Mourning in the Morning」に収録されていますが、1976年の輸入盤ライヴ・アルバム「All Your Love I Miss Loving: Live at the Wise Fools Pub Chicago」にも収録されています。(国産盤は「オール・ユア・ラヴ~激情ライヴ!1976」ASIN: B000BKJH8U)

最近聴いたオーティス・ラッシュの人気アルバムにはタイトル曲のRight Place, Wrong Time他、インストのI Wonder WhyやEasy Goも収録したアルバムは試聴可。
Right Place, Wrong Time

Slow Blues
スローブルースとは12/8 (6/8 ブルース 4 beats per measure with 3 subdivisions per beat)で演奏されるブルースだそうですが私には分かりません。 曲名としてならジャズのOscar Peterson(オスカー・ピーターソン)とCount Basie(カウント・ベイシー)やブルースのJimi Hendrix(ジミ・ヘンドリックス)とBB Kingや、James Cotton(ジェームス・コットン)が演奏する”Slow Blues”は聴いたことがありますが。 シカゴブルースのオーティス・ラッシュなら、Gambler’s Bluesを始めとし、1956年にR & Bヒットチャートに放ったI Can’t Quit You Babyがスローブルースの代表なのだとか。 アール・フッカーもスライドギターで演奏しているスローブルースとは何?
アール・フッカーのリフのwavは聴いたのですが。 クラッキングの無いスライドギターソロのこと? シカゴshufflesの後に続いた奏法?
シカゴ・ブルースのT・ボーン・ウォーカー←「ブルース」→カントリーブルースやトラディショナルからシカゴブルースのパイオニアとなったBig Bill Broonzy(ビッグ・ビル・ブルーンジー)→アーバンブルースのオーティス・ラッシュ(こんなんでどうでしょう?)

American Folk Blues Festival

1962年~1966年にドイツで行われたブルース・フェスティバルのモノクロ映像でリージョン・フ!リーの2003年版DVDです。
American Folk Blues Festival 1962-1966 Vol.1
オーティス・ラッシュがI Can’t Quit You Babyを演奏、マディ・ウォーターズのGot My Mojo Workingではサニー・ボーイ・ウィリアムソンがハープを演奏、ボーナストラックには珍しいアール・フッカーの1969年のライヴ映像「Walking the Floor Over You/Off the Hook」が収録されている他、ブルースマンやBig Mama Thornton(ビッグ・ママ・ソーントン)などの女性ブルース歌手も多数出演しています。
Vol.2とVol.3もあります。

Devil’s Rejects
ついでといってはなんですが、2005年、Rob Zombie(ロブ・ゾンビ)監督の2作目のホラー映画となるDevil’s Rejects(デヴィルズ・レジェクツ)にオーティス・ラッシュが出演しました! なんてね、映画のシーンでで登場人物達が見ているテレビの中にです。 そのシーンは1962年のAmerican Folk Blues Festivalでオーティス・ラッシュがI Can’t Quit You Babyを歌っているビデオだそうです。 ロブ・ゾンビ監督は大のオーティス・ラッシュのファンなので、オーティスのビデオの映像はモチロン、登場人物に「オーティス」という名を付けてしまいました。 当然サウンドトラックにはオリジナルのコブラの音源が使用されているとか。
ロブ・ゾンビ監督の前身はヘヴィ・サイケデリック・ロックのホワイト・ゾンビでして、1999年に解散するまでのロッカー時代にはホラー映画趣味満載のライヴを行っていたそうです。 2007年のGrindhouse(グラインドハウス)でWerewolf Women of the S.S.を担当したロブ・ゾンビ監督は同年に「Halloween(ハロウィン)」がアメリカでは8月に公開されます。
台詞入りのサウンドトラックはHalloween Soundtrack
試聴はHalloween [2007 Original Soundtrack] – AllMusic.com

♪ Otis Rush – Looking Back

オーティス・ラッシュ  She’s a Good ‘Un by Otis Rush」への4件のフィードバック

  1. こんちは! 
    数年前のブルースカーニバルで、闘病中ながら来日してくれた彼のライヴを見たことがあります。早く回復してもらいたいものですね。 そうそう、やっぱコブラ時代のはかなり良いと思います。。。 DVD「American Folk Blues Festival」で見られるパフォーマンスはメチャ良いですよね!。。。 ところで、な、なんでスクリーミン・ジェイでシメるの!?(笑)

  2. koukinobaaba より:

    お待ちしておりました!ken- ?改名したの? ken-sannよね。 ギターマンのken-sannさん、冷たいですねぇ、こんなにロクロックビになるほど待っていたのに、「スローブルース」について何か教えて下さいよ。 でないと記事が完成しません。

  3. ゐ~、スローブルースですか?! すろ~なテンポのブルースでしょ。。。そのくらいしか分かりません。 と言うのも、僕はどちらかと言うとプレイヤー側の人間なんで、細かいジャンル分けとか、全く気にしてないんです。  だから「ジャンプ」「シティ」「アーバン」とか、果ては「オールド・ジャズ」までも「ブルースじゃん!」って具合で聞いてます。  明確なお答えが出来ずスイマセン。  ま、ゆっくりなブルースですよ、たぶん!そうしましょう・・・あはは!

  4. koukinobaaba より:

    「ken-sann」さん、目からウロコの回答をありがとうございます。 「スローだからスローブルース!」 ネット上のどこにも定義は見当たりませんでしたが、私はブルース初心者だし、楽器も演奏出来ないので、その言葉には何か特殊な意味があるのかと思いましたよ。 全部ひっくるめてブルースでいいのね! あっはっは

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