サンセット77 77 Sunset Strip (1958)

サンセット77
1957年のパイロットだったという「Anything for Money」と、スチュアート・ベイリーが探偵役でエド・バーンズは異常者の役を演じた1958年の「サンセット77」第一話の「Girl on the Run」に続いて、1958年から1964年まで全206話をアメリカのABCテレビ局で放映されたモノクロの1時間サスペンス・ドラマです。 日本で昭和35年(1960年)から昭和38年(1963年)まで放映されたので毎回楽しみにしていました。 本国よりちょっと遅れて観ていた私は当時ペンパルクラブから紹介されたアメリカの文通相手と「サンセット77」や「Father Knows Best(パパは何でも知っている)」などのテレビ番組についても書いたことを覚えています。
毎回登場する美女と洗練された会話とゴージャスな雰囲気を漂わせた50年代のクールでヒップな「サンセット77」はその後の60年代の私立探偵シリーズの大流行を生みました。
☆「サンセット77」の各エピソードが見られる77 Sunset Strip (a Titles & Air Dates Guide) – Episode Guides
☆パイロット・フィルム(又はパイロット版)とはテレビ番組がシリーズ化される前に制作するお試し版のことだそうです。
Warner Brothers(ワーナーブラザーズ)の私立探偵ものとしては他に「Surfside 6(サーフサイド6)」と「Hawaiian Eye(ハワイアンアイ)」などがあります。(どちらも上記のEpisode Guidesで情報を探せます)
ハリウッドで映画音楽の編曲も手掛けたDon Ralke(ドン・ラルク)が率いるドン・ラルク楽団が演奏した「サンセット77」のテーマ曲をはじめ、いづれも「Peter Gunn(ピーターガン)」の前例に倣ってお洒落なジャズ調のテーマ曲を使用しています。 ドン・ラークはIrving Taylor(アーヴィング・テイラー)作曲の”Kookie, Lend Me Your Comb”をクーキー役で一躍アイドルとなったエド・バーンズと「ハワイアンアイ」のコニー・スティーヴンスとのデュエットで大ブレイクさせた立役者でもあったとか。

77 Sunset Stripサンセット77の中心的な登場人物は、元OSS(CIAと陸軍特殊部隊の前身である戦略事務局)の将校だった米東部名門校卒の私立探偵のStuart Bailey(ベイリー氏)、同じく私立探偵で元秘密捜査官だというハンサムなJeff Spencer(ジェフ)、ハードボイルドにコミック味を出すために探偵事務所のお隣のレストランDino’sの駐車場係りのGerald “Kookie” Kookson III(クーキー)や競馬情報屋のRoscoe(ロスコー)を加えました。 エド・バーンズが演じたクーキーという名前はお菓子のクッキーとはスペリングが違いますが、漫画の「Brondie(ブロンディ)」にはCookie(クッキー)という娘が登場します。
右の写真では右端がいつもカンカン帽(キャノチエ)をかぶって葉巻をくわえているロスコーです。(競馬情報屋?予想屋?ダフ屋?) 探偵ドラマのお約束ごと、彩りとしては「おフランス」というふれ込みの上品で美人な秘書兼電話交換手のJacqueline Beer(ジャクリーン・ビア又はジャクリーヌ・ベール)が演じるSuzanne Fabray(スザンヌ)です。
L.A.ハリウッドのサンセット通り77番地にあるHollywood PI’s(私立探偵事務所)のスチュアート・ベイリーとジェフ・スペンサーのお洒落なサスペンス・ドラマはまさに憧れのアメリカそのものでした。 真面目そうなベイリーさんとフラメンコギターの弾き語りもみせた芸達者なジェフはいい探偵コンビでした。
Roger Smith(Jeff Spencer) plays guitar and sings – YouTube

Sunset Stirip(サンセット通り)とはサンセット・ブールバードの3キロほどの街並みのことです。 Hollywood(ハリウッド)の映画産業の最盛期には撮影所からスター達が住むBeverly Hills(ビヴァリーヒルズ)とのちょうど中ほどにあるため、俳優たちの撮影所通いの折に立ち寄る洒落た店が多かったそうです。 サンセット・ブールバードといえばWilliam Holden(ウィリアム・ホールデン)が出演したBilly Wilder(ビリー・ワイルダー)監督の「Sunset Boulevard(サンセット大通り)」という映画がありました。

Edd “Kookie” Byrnes
“Kookie, Kookie, Lend Me Your Comb”
Edd Byrnes as Kookie
イカレタあんちゃん?
いえいえ、イカシタ50年代のリーゼント・ボーイです! バックはDuck’s ass(ダック・アース)か前髪はPompadour(ポンパドール)か?

私立探偵事務所からちょっと離れた所にはJazzyなDino’s bar(ディノのレストラン)があります。 本名が”Dino Paul Crocetti”であるDean Martin(ディーン・マーチン)が経営するRat Pack(ラット・パック)風のたまり場です。
Kookie’s the Ginchiest and Hepcat!
Edd Byrnes(エド・バーンズ)が演じるGerald Lloyd Kookson, II aka Kookie(クーキー)はディノスの駐車場係りですが、この不良っぽさがティーンズに受けて本名がEdward Byrne Breitenbergerというエドは想像を絶する人気者となり、毎日10万通のファン・レターがスタジオに配達されたそうです。 映画「アメリカン・グラフィティ」でもお馴染みのフィフティーズ特有のホット・ロッド改造車、T-Bucket, “Cookie Car”(Ford Model Tに似せた)を愛車とし、ビートニク風に指をスナップさせたり、櫛で常に髪をなでつけている”クーキー”は一躍ティーンエイジャーのアイドルとなりました。 エド・バーンズが時の寵児となった当時は”クーキー”抜きのティーンズ雑誌なんて有り得ませんでした。 指パッチンとデングリ返し以外にはとりわけ演技や歌に才能があったようにはみえませんがともかくヒップ(かっこよかった)だったのでしょう。 胸のポケットにクーキー・コーム入りのジャンパーを買った人もいるかも。

クーキーのしゃべるBeatnik(ビートニク)の隠語(jive talking 又は hep talking)についてワーナー側が「Kookie Speak’ glossary(クーキー語解説集)」を作成したほどです。 例えば、green(緑)は米ドルグリーンバックのことで、クーキーがmaking the long greenと言えば「金を作る」とか、dark sevenは「ヒッデェ一週間」、piling up the Z’sは「寝ること」で”I’m piling on some Z’s”のように使ったり、That chick’s the ginchiestは「あの娘は最高にいかしてる」などなど。(上品とは言えません)
Kookie TalkKookie Talk from 77 Sunset Strip – Fifties Web
リアルタイムで観ていた私ですが、ともかくヒップだったのでしょうが エド・バーンズが演じたクーキーは隠語と指パッチン以外はビート風の雰囲気はなかったです。 が、ビートであろうとなかろうとともかく50年代の最高にいかしたアイドルの一人でファッションでもありました。 その点、その頃に放映されていた「The Many Loves of Dobie Gillis(ドビーの青春)」に出てくるBob Denver(ボブ・デンヴァー)が演じたMaynard G. Krebs(メイナード)は見た目がちょっと薄汚いですがテレビ史上初の本物のビートニクス役でした。1958年から放映されたクールな探偵テレビドラマの「ピーターガン」にもジャズ・ミュージシャンが関係する”Streetcar Jones”などにビートニクスの隠語(beatnik jargon)が出てきました。
☆ビートニクを描いた映画としては1960年の「The Subterraneans(地下街の住人)」

Kookie’s Comb
櫛がトレードマークのクーキーについてですが、「サンセット77」のパイロット版だった「Conflict(Girl on the Run)」でエド・バーンズが演じた変質者で殺人鬼のCharles Mansonが獲物(犠牲者)を待つ間じゅう、神経質に髪を櫛で撫で付けていたのです。 物語の結末は、このとてつもなく非道な殺人犯はガス室送りになる予定でした。 が、なんと!試写会でエド・バーンズが好評だったので、制作側はこのキャラのエド・バーンズを「サンセット77」のレギュラーにすることを決めたそうです。 よって急遽、ベイリーさんから「試写会で人気のあった「クーキー」を番組に迎えることになりました。彼の刑務所送りのことは忘れましょう。」と声明があり、第二話から”クーキーと櫛”が登場することになったのです。 クシが取り持つ縁で、殺人鬼からコメディ調の駐車場係りに昇進(?)、そしてティーンズ(ガールズ)が追っかけたアイドルの”クーキー”が出来上がったのです。 もっとも、やることったら、ほとんどは腰を突き出して櫛で髪をなでつけていることが多かったですね。  それでも充分に人気者の役割は果たしています。
ちなみにエド・バーンズが「サンセット77」用の「Girl on the Run」に出演する前、日本未公開でしたが青春映画「Life Begins at 17」にJim Barker役を演じるなどテレビ映画をふくめてに1958年にはは8本位出演しています。

Kookie, Kookie, Lend Me Your Comb
クーキー、クーキー、貴方の櫛を貸して!
1958年にConnie Stevens(コニー・スティーヴンス)とデュエットした大ヒット曲「Kookie, Kookie, Lend Me Your Comb(クーキー・クーキー)」は第二話で流されました。 Mack David(マック・デヴィッド)とJerry Livingston(ジェリー・リヴィングストン)が作った「サンセット77」のテーマ曲にもドン・ラルクが関与しているそうです。 このヒット曲が”サンセット77″を最初の放映年度のNielsen(米国TV視聴率調査のニールセン)で6位にランク入りさせ、当時は二流だったABCテレビ局をメジャーにしたそうです。
I’ve got smog in my noggin ever since you made the scene.
歌といえるかどうか、可愛いコニー・スティーヴンスのキャラクターで救われている”Kookie, Kookie, Lend Me Your Comb”は純情可憐なコニーの歌にバックで不良青年風のエド・バーンズが指パッチン!とクーキー語を連発。この”Kookie Kookie Lend Me Your Comb”は著作権の問題で最近はネット上ではすぐに削除されています。
勢いというのはすごいもので、1961年のTV特番では恐れ多くも大物歌手のMel Torme(メル・トーメ)、Jo Stafford(ジョー・スタッフォード)、Rosemary Clooney(ローズマリー・クルーニー)等と歌うクーキーの映像が観られます。
Edd ‘Kookie’ Byrnes Siings with Great Singers on County Fair (1961) – YouTube
ダンスといえるかどうかは疑問のあるところですが、ちょっと当時最新のマンボステップも取り入れたようなジルバ、フィフティーズではクールだった”クーキー”をともかくご覧遊ばせ。 クーキー得意のデングリ返しが見られます。

人気者になったエド・バーンズは当然のこと、契約更新時に「もっとイイ役と出演料アップ!」とダダをこねたので一時は「サーフサイド6」で主演していたTroy Donahue(トロイ・ドナヒュー)が駐車場係りを引き受けたそうです。 結局はエド・バーンズの要求が通りドナヒューはおん出されました。 で、エドは第三シーズンでは駐車場係りから探偵事務所のメンバーに昇進もして、駐車場係りにはRobert Logan(ロバート・ローガン)が演じるもっとヘンチクリンな言葉をしゃべるJ.R. Hale(ヘイル)君に代わりました。 その後もEdward Byrne(エド・バーンズ)のビジネスの腕前は評判になっているとか、「幸せになるための27のドレス」に出演した俳優で本名がEdward Fitzgerald Burnsで通称Edward Burns(エドワード・バーンズ)を訴えて名前を変更させようとしたとか。 そんなクーキーは2020年2月に87歳で永眠しました。

☆60年代のスラングについては60’s Slang – Cougartown

Roy Huggins
1955年からワーナーのプロデューサーとなり、テレビ界では最も多作を誇ったRoy Huggins(ロイ・ハギンス)が制作した「サンセット77」は1959年度優秀活劇シリーズとして「ルック賞」を受賞しています。 ロイ・ハギンスは後に「Maverick(マーヴェリック)」や「The Fugitive(逃亡者)」など多くのヒット作を制作しています。

Efrem Zimbalist, Jr.
私立探偵「ベイリー氏」役のEfrem Zimbalist Jnr.(エフレム・ジンバリスト・ジュニア)は音楽一家に育った舞台出身の俳優です。 1957年から始まったJames Garner(ジェームズ・ガーナー)主演のテレビ西部劇シリーズのMaverick(マーベリック)でDandy Jim Buckleyとしても出演していたエフレム・ジンバリスト・ジュニアは1958年に始まった「サンセット77」終了後の1965年から「The F.B.I.」でアースキン捜査官を演じてテレビ界では人気でしたが、映画出演で有名なのは1967年にサスペンス「Wait Until Dark(暗くなるまで待って)」でAudrey Hepburn(オードリー・ヘプバーン)夫のサム役でしょう。
☆一方、ジェフ・スペンサー探偵を演じたハンサムなロジャー・スミスは”バイ・バイ・バーディ”のAnn-Margret(アン=マーグレット)と二度目の結婚をしました。 健康上の問題で俳優業は長くはありませんでしたが元は歌手だったので1959年にLP「Beach Romance」を出しています。

77 Sunset Strip Soundtrack
ページトップの画像はWarren Barker(ウォーレン・バーカー)の音楽で「77 Sunset Strip」のサウンドトラックです。 最初にリンクしていた輸入盤は入手不可となりましたので現在のリンクは国内盤の「サンセット77(オリジナル・サウンドトラック) 」になっています。
全曲試聴は77 Sunset Strip Soundtrack – Amazon.com

77 Sunset Strip – Theme Song
Seventy Seven Sunset Strip ♪♪
Seventy Seven Sunset Strip ♪♪
Seventy Seven Sunset Strip ♪♪
The street that wears a fancy label
That’s glorified in song and fable.
The most exciting people pass you by
Including a private eye.
Seventy Seven Sunset Strip ♪♪の歌詞の続きは77 Sunset Strip Lyrics – stlyrics.com

Kookie: Star of “77 Sunset Strip”
Kookie: Star of 77 Sunset StripKookie: Star of “77 Sunset Strip” CD
試聴はEdd “Kookie” Byrnes – Kookie: Star Of “77 Sunset Strip” (Original Album Plus Bonus Tracks 1959) – Amazon.co.jp
チャチャやブギのリズムを取り入れてドン・ラークがアレンジしたアルバム「Kookie: Star Of “77 Sunset Strip”」では、歌というよりもクーキー語で語るような曲が多く、全くのところ歌は専門ではなかったエド・バーンズのアルバムをおすすめしているわけではありませんが、とにもかくにもフィフティーズ(60’s)のアイドルの一人だったクーキーをヨイショするような歌です。 Kookie, Kookie (Lend Me Your Comb)やI Don’t Dig You, Kookieなどはコニー・スティーヴンスとデュエットです。

サンセット77 77 Sunset Strip (1958)」への4件のフィードバック

  1. DCP より:

    koukinobaabaさん
    実に参考になりました。有難うございます。懐かしくてもう涙が出そうですよ。「めまい」のところで、ヒッチコックがGOOD EVENING(夜中に見るとドキッとします。笑)と言ったように、ここでもいきなり指パッチンが聞こえて来そうです。
    コニーのsixteen reasonsを聴きました。甘ったれた可愛い曲ですね。
    それにしてもドナヒューの亡くなる前までいたなんてとても友達思いの義理堅い人なんで感動します。改めてファンになりましたよ。

  2. koukinobaaba より:

    ご指摘の通りで、ページを開くとすぐ音がするのは考え物です。自分でギョっとしてしまうので腹が立ち、かなり削除し、長い音声はプレーヤーに変えました。

  3. Mr VAN より:

    まさかこんなページがあるなんて驚きと懐かしさでーーー。ローハイドやコンバットは再放送してくれるけど当時の現代劇は風俗等が違いすぎてなかなか機会がないですね。

  4. koukinobaaba より:

    「Mr VAN 」さんが懐かしいとおっしゃるなら私と年代が同じなんでしょうか。
    あの頃は毎日のようにアメリカのTVドラマが放映されていましたね。ピーターガンやドビーの青春の記事もあるのでご覧下さい。

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