トロイ・ドナヒュー Troy Donahue

Parrish (VHS)    Rome Adventure (VHS)
Parrish - Troy Donahue Rome Adventure - Troy Donahue
Troy Donahue (1936-2001)

Troy Donahue
北欧系(スウェーデン)で金髪に青い目、191cmと背が高くおまけにハンサムでマッチョな”トロイ・ドナヒュー”はニューヨーク出身のお坊ちゃま俳優です。 実際の年齢よりずっと若く見える甘いマスクのドナヒューはWarner Brothers(ワーナー映画社)のドル箱スターでした。 引き締まったボディのトロイ・ドナヒューは当時流行のビーチムービーの花形となり、1950年代後期から1960年代前半には押しも押されぬティーンのアイドル・スターで、トロイ・ドナヒューの写真が載らない映画雑誌なんて無いくらい人気者でした。
コロンビア大学でジャーナリズムを勉強中にスカウトにされたというトロイ・ドナヒューのメジャーな映画デビューはドナヒューと同じ北欧系(デンマーク)のDouglas Sirk(ダグラス・サーク)監督の1958年の「The Tarnished Angels(翼に賭ける命)」ですが、同じくダグラス・サークが監督した1959年の「Imitation of Life(悲しみは空の彼方に)」にも出演しています。 この映画では主役級ではありませんでしたが平素は穏やかな好青年を演じるトロイ・ドナヒューが人種差別をする若者を演じています。 既にティーンアイドルだったサンドラ・ディーと共演した「Summer Place(避暑地の出来事)」によりトロイ・ドナヒューは一躍アイドルスターの座を獲得し、青春メロドラマのプリンスとなりました。 「悲しみは空の彼方に」では「避暑地の出来事」に続いてやはりサンドラ・ディーと共演しています。 ですがトロイ・ドナヒューは「恋愛専科」で共演したスザンヌ・プレシャットと結婚、サンディは19歳で「九月になれば」で共演したBobby Darin(ボビーダーリン)に見染められて結婚したのです。 「避暑地の出来事」の以降、暫くはトロイ・ドナヒューが主演で連続して青春メロドラマが作られましたが、ドナヒューの主なファンは当時大学生でしたから彼女らの成長とともに徐々に離れていき、その次の世代は時代の流れでもっと過激なロックスターに現を抜かすこととなります。 30歳にして早くも体形の崩れたトロイ・ドナヒューは次第に端役に甘んじ、1974年にはFrancis Ford Coppola( フランシス・フォード・コッポラ)監督の「The Godfather Part II(ゴッドファーザーPART II)」に端役で出演しましたが、その名はなんとMerle Johnson(マール・ジョンソン)、つまりトロイ・ドナヒューの本名でした。
そんなこんなで、アルコール依存とドラッグで身を滅ぼすことになり、一時はニューヨークでホームレスにまでなったと伝えられました。(法的資産凍結?) しかし90年代には再びB級映画に出演してなんとか持ち直したトロイ・ドナヒューでしたが、死因は心臓発作(心筋梗塞)で2001年に65歳で亡くなりました。 ちなみにサンドラ・ディーはボビー・ダーリン伝記映画「Beyond the Sea(ビヨンドtheシー)」の制作に協力した後、2005年に62歳で腎不全で亡くなっています。
☆マッチョなトロイ・ドナヒューの写真が見られるPhotos – Troy Donahue at Brian’s Drive in Theater

SurfSide 6 & Hawaiian Eye
1950年代後半から1960年代にかけてテレビで私立探偵シリーズが流行ったのですが、Warner Brothers(ワーナーブラザーズ)は何本もの人気シリーズをABCテレビに提供しました。 ホノルルを舞台にした「Hawaiian Eye(ハワイアンアイ)」に続いて若者に人気だったのがマイアミ・ビーチの私立探偵を描いた「SurfSide 6(Surfside Six/サーフサイド・シックス)」で、トロイ・ドナヒューが出演して1960年から1962年まで放映されました。 ハリウッドスターのゲスト出演が魅力のサンセット通り探偵事務所を舞台にした「77 Sunset Strip(サンセット77)」の人気にあやかって制作された「サーフサイド6」はハリウッドの探偵事務所ではなく波止場のクルーザーというのが斬新でした。 1960年から1062年にトロイ・ドナヒューがSandor “Sandy” Winfield II (サンディ)を演じ、Dave Thorne(デイヴ)役のLee Patterson(リー・パターソン)と共に人気でした。 「サーフサイド6」のダフネ役のDiane McBain(ダイアン・マクベイン)は1961年の映画「Parrish(二十歳の火遊び)」や1963年の騎兵隊とアパッチ・インディアンとの戦いを描いた「A Distant Trumpet(遠い喇叭)」でもドナヒューと共演しました。 60年代にはCMモデルをはじめTVドラマやエルヴィス・ガールと呼ばれた売れっ子のマクベインはいわゆるブロンド美人で、ワーナー映画ではGrace Kelly(グレース・ケリー)とまではいかないまでもポスト” Carroll Baker(キャロル・ベイカー)”だったのですが70年始めに結婚(2年)したので10年ほどでメジャーな映画女優活動は終わり引退同然でした。 ちょっとおすましの大変洗練された美貌の持ち主でしたが、今現在でもなお信じられないほ綺麗でエレガントなんだそうです。 ドナヒューは同じく1963年にトロイ・ドナヒューが軍曹を演じた「遠い喇叭」で共演した聡明そうな美人女優のSuzanne Pleshette(スザンヌ・プレシェット)の方と結婚しました。 サンドラ・ディーが1961年に「九月になれば」で共演したボビー・ダーリンと電撃結婚をした後のことでした。
美人といえばイングランド出身のRichard Greene(リチャード・グリーン)がロビンフッドを演じた1955年の「The Adventures of Robin Hood(ロビンフッドの冒険)」(CBS)でマリアン姫を演じたアイルランド系女優のPatricia Driscoll(パトリシア・ドリスコル)が1959年に「ハワイアン・アイ(Malihini Holiday)」でゲスト出演(リリアン役)したそうです。
「ハワイアンアイ」のテーマ曲が収録されているオリジナル・リリースが1960年のTVオリジナル・サウンドトラックはHawaiian Eye Soundtrack
♪ 試聴は「ハワイアンアイ」と「サンセット77」のカップリング「77 Sunset Strip & Hawaiian Eye – Qobuz.com
TV番組「サーフサイド6」で主演したトロイ・ドナヒューやダフネを演じたワーナー映画の星だったDiane McBain(ダイアン・マクベイン)などの写真が見られるSurfSide 6 Photos – Epguides.com

「サーフサイド6」と類似した私立探偵のTVシリーズである「ハワイアンアイ」は1959年から1963年まで放映されましたが、1959年というと丁度ハワイがアメリカの州となった時期だったのでお祝いムードも相まって結構人気がありました。(私的にはハワイが身売りするなんて!と) ホノルルが舞台となっていますがハリウッドで撮影された「サンセット77」のハワイ版です。 トロイ・ドナヒューは「サーフサイド6」の後の1962年から1年間を4シーズンのレギュラーメンバーとして出演しています。
ちなみにトロイ・ドナヒューは「サンセット77」にも駐車場係りのKookie(クーキー)の代役としてちょっと出演したこともあります。 なにしろ全部ワーナーの作品ですから「サンセット77」の出演者が「ハワイアン・アイ」にも顔を出しました。

「ハワイアン・アイ」のオリジナルメンバーの写真が見られるHawaiianEye – Epguides.com
「ハワイアンアイ」のブロンド美女は「Rowdies(ローハイド)」にもゲスト出演したことがあるConnie Stevens(コニー・スティーヴンス)です。 元々はティーン・アイドル歌手のコニー・スティーヴンスは「ハワイアンアイ」ではクラブの歌手”クリケット”役で毎回歌っていましたが、「サンセット77」で人気の駐車場係りのクーキーと”Kookie, Kookie, Lend Me Your Comb”なんていう曲をデュエットして大ヒットさせています。 コニー・スティーヴンスの可愛い歌声はElvis Presley(エルヴィス)もお気に入りだったそうです。 2001年の「Mulholland Dr.(マルホランド・ドライブ)」でオーディションのシーンで使用された”Sixteen Reasons”はコニーのオリジナルです。
コニー・スティーヴンスはエルヴィス・プレスリーだけでなくトロイ・ドナヒューとも友人関係が続きドナヒューが亡くなる前日にも見舞っていたとか。

トロイ・ドナヒューの出演映画
1957年 The Tarnished Angels(翼に賭ける命)
デンマーク出身のDouglas Sirk(ダグラス・サーク)が監督したトロイ・ドナヒューのデビュー作品で、 1956年の「「Written on the Wind(風と共に散る)」に続きRobert Stack(ロバート・スタック)とRock Hudson(ロック・ハドソン)が出演しています。 「翼に賭ける命」の原作は1931年に発表したSanctuary(サンクチュアリ)や1932年のLight in August(八月の光)でお馴染みのアメリカ南部ミシシッピの作家「William Faulkner(ウィリアム・フォークナー)」です。 1939年発表の「The Wild Palms(野生の棕櫚)」も一般に知られているフォークナーが、1935年にスタント飛行ショーの一座を描いた小説「Pylon(パイロン/空の誘惑)」で、唯一の想像上のYoknapatawpha County(分割の地を意味するヨクナパトーファ郡)を舞台にしていない作品だそうです。 それと同時に数々のメロドラマを監督したダグラス・サークの異例ともいえるお涙頂戴色が少ない作品でもあります。 ロック・ハドソンは飛行士野郎と美人妻との三角関係に巻き込まれていくレポーター役を演じました。 フランク・バーナムを演じたトロイ・ドナヒューはチョイ役だったようで情報が見つかりませんが、特筆すべきは特撮飛行スタントだそうです。 1946年の「The Big Sleep(三つ数えろ)」で眼鏡を外し髪を下ろしてボギーの目を見張らせ、「風と共に散る」ではアカデミー助演女優賞を受賞したDorothy Malone(ドロシー・マローン)はパラシュート演技を見せる飛行士(ロバート・スタック)の妻役です。 その後ドロシー・マローンは1961年の「The Last Sunset(ガン・ファイター)」では牧場主(ジョセフ・コットン)の妻を演じています。 「ガン・ファイター」はDimitri Tiomkin(ディミトリ・ティオムキン)作曲のテーマソング”Pretty Little Girl In The Yellow Dress(黄色いドレスの可愛い少女)”をお尋ね者を演じたKirk Douglas(カーク・ダグラス)本人が歌った映画です。

「The Tarnished Angels(翼に賭ける命)」の英語版VHS(ASIN: 6304021690)の他にブルーレイやDVDがあります。(VHSビデオのカバー画像はDorothy Malone、Robert Stack、Rock Hudson)
ドロシー・マローンがアカデミー助演女優賞を受賞し、Rock HudsonとLauren Bacallが共演したダグラス・サーク監督の1956年の「Written on the Wind(風と共に散る)」のサントラはVictor Youngs(ヴィクター・ヤング)作曲でSammy Cahn(サミー・カーン)作詞のタイトル曲”Written on the Wind”は「慕情」の主題歌でもお馴染みのThe Four Aces(フォー・エイセス)が歌いました。 ”Written on the Wind”が収録されているアルバムは「Written On The Wind / Four Girls In Town (Original Motion Picture Soundrack)」(ASIN: B0043FLDTK)

1959年 A Summer Place(避暑地の出来事)
1961年の「スーザンの恋」や「二十歳の火遊び」のDelmer Daves(デルマー・デイヴィス)が監督した青春メロドラマで、サンドラ・ディーと共演したトロイ・ドナヒューは1959年の有望若手男優賞を獲得し、ドナヒューの人気を決定付けました。 ですが役の上とはいえ、純情可憐なサーファー少女の「Gidget(ギジェット)」を演じたサンドラ・ディーを妊娠させた(劇中で)のでちょっと肩身が狭かったとか。
Troy Donahue and Sandra Dee in A Summer Place – YouTube

A Summer Place
Summer Place - Troy Donahue避暑地の出来事 VHS
上記の画像は1993年に発売された輸入版の「避暑地の出来事」VHSですがこちらも入手は困難です。(超ヴィンテージ価格なので500円DVDでも発売になればいいですね)
☆Max Steiner(マックス・スタイナー)が作曲した「避暑地の出来事」のテーマ曲の”A Summer Place(夏の日の恋)”は今はなきDeccaのOST(オリジナルサントラ)ではでHugo Winterhalter(ユーゴー・ウィンターハルター)の演奏ですが、Percy Faith(パーシー・フェイス楽団)のカバー演奏がBillboard Top 10 Singles (1960)のヒットパレードでは2月に第一位でした。 1997年のウルトラど迫力映画「Con Air(コン・エアー)」でこの穏やかなTheme from A Summer Placeが使用されましたが、飛行機から落とされた死体が道路を走る高齢者夫婦のベイジュ色のボルボに追突するという何とも場違いのシーンでした。(キーはボルボ) そして2002年にはテレビドラマの「Stephen King’s Rose Red(ローズレッド)」のオープニングとエンディングでもパーシー・フェイスのバージョンが使用されています。(キーは不明)
Theme From A Summer Place by Percy Faith (1960) – YouTube
※「避暑地の出来事」の詳細はAudio-Visual Trivia内のSandra Dee(サンドラ・ディー)

1961年 Parrish(二十歳の火遊び)
ページトップの左の画像は「二十歳の火遊び」のVHSビデオですが現在は入手困難なため驚くほどのヴィンテージ価格です。(輸入版のDVDもあるが入手困難 ASIN: B01ABD3NHC)
トロイ・ドナヒューは「Hawaiian Eye(ハワイアンアイ)」で共演したコニー・スティーヴンスとのコンビで「二十歳の火遊び」に出演しています。 コニー・スティーヴンスは劇中でパリッシュを誘惑するルーシー役で私生児を身ごもった身持ちの悪い女です。 「サーフサイド6」のダイアンマクベインがトロイ・ドナヒューと一時的に恋に落ちる高慢ちきな農場の娘アリソン役で出演しています。 というか客寄せの花たちの一人でしょう。 というのも「二十歳の火遊び」は若者たちの恋物語ではなく、Mildred Savage(ミルドレッド・サベイジ)の1958年のベストセラー「Parrish」をデルマー・デイヴス監督が映画化した社会派のドラマなのです。 ちなみに私が初めて観たデルマー作品はジュリー・ロンドンが出演した1946年の「The Red House(赤い家)」でした。 ところで「Parrish」という英語の原題はClaudette Colbert(クローデット・コルベール)が演じるマクリーン婦人の息子のParrish McLean(パリッシュ・マクリーン)のことでこれをトロイ・ドナヒューが演じました。 1940年代の煙草畑を舞台にドロドロした紛争を通して若者の成長を描いています。 「二十歳の火遊び」の美しい音楽は「避暑地の出来事」に続いてMax Steiner(マックス・スタイナー)の作曲です。
Parrish Trailer – YouTube
1943年に「It Happened One Night(或る夜の出来事)」で美脚を見せるヒッチハイク・シーンが話題を呼んだクローデット・コルベール最後の映画出演でした。

1961年 Susan Slade(スーザンの恋)
「二十歳の火遊び」に続きトロイ・ドナヒューがコニー・スティーヴンスと共演した十代の妊娠を扱った青春物語で分別のある恋愛を説いているような映画です。 「スーザンの恋」でトロイ・ドナヒューはコニー・スティーヴンスが演じる”Susan Slade(スーザン・スレイド)”を愛する作家志望の青年役です。 スーザン・スレイドは行きずりの恋で妊娠した十代の娘で、相手の男の死亡を知り自殺を企てたところトロイ・ドナヒューに救われます。 生まれた子供を母親の子(つまりスーザン・スレイドの弟)として育てていましたが…赤ちゃんが火だるまになる映像が怖い!(人形か)
Susan Slade Trailer – Imdb.com
「スーザンの恋」は1959年の「A Summer Place(夏の日の恋)」の監督&音楽コンビが制作した映像と音楽が美しい作品です。 1947年にハードボイルドなHumphrey Bogart(ハンフリー・ボガート)主演の「The Petrified Forest(化石の森)」の脚本や「Dark Passage(潜行者)」を監督したデルマー・デイヴィスですが、トロイ・ドナヒューを主役に据えて「スーザンの恋」、同年に「二十歳の火遊び」と「恋愛専科」も監督しています。
サウンドトラックは見つかりませんが、「夏の日の恋」の作曲者であるMax Steiner(マックス・スタイナー)のロマンティックなストリングス音楽がこの映画でも評価されています。

1962年 Rome Adventure(恋愛専科)
ページトップの右の画像はロマンス風イタリア観光映画の「恋愛専科」の輸入版(原語)VHSビデオですが現在は入手困難です。
「恋愛専科」でトロイ・ドナヒューが共演したのは、ちょっぴりElizabeth Taylor(エリザベス・テイラー)似のSuzanne Pleshette(スザンヌ・プレシェット)でした。(プレシェットは2008年に呼吸器不全のため70歳で他界)
「恋愛専科」はプラトニックな恋愛をテーマにしたDelmer Daves(デルマー・ディヴィス)監督の青春映画です。(イタリア語のタイトルは”Gli amanti devono imparare”) Angie Dickinson(アンジー・ディキンソン)が演じるプレイガールにふられたトロイ・ドナヒューとロマンスを学びにイタリアにやって来たスザンヌ・プレシェットが60年代のローマの名所旧跡を当時人気だったスクーターで走り回ります。

「恋愛専科」のちょっとあらすじ
大学図書館の司書をつとめるスザンヌ・プレシェットがロマンス小説「Lovers Must Learn」(1932 Irving Fineman)を生徒に貸し出したことを大学当局に咎められるシーンで始まります。(アーヴィング・ファインマンとデルマー・デイヴィスが脚本を手掛けた) スザンヌは恋愛のメッカ!イタリアに修行に出かけようと即決心し”アリベデルチ!”とオールドミス先生一同に挨拶すると両親等に見送られてイタリア旅客船の船上の人となります。 偶然乗り合わせた母の友達の息子と隣のイタリア人を取り違えたことから話は展開します。 もっともニューヨークの港を出たところではママからの電報で間違いだと気付き無事二人で窓から自由の女神像を見ました。 ひょんなことからスザンヌ・プレシェットと知り合ったロマンスグレー(中年紳士のロッサノ・ブラッツィ)が母の友人の息子も誘ってのドライブで名所巡りの後、豪邸に招待されます。(このプレイボーイは何者?) この時2階からけたたましく駆け下りてきたのがトロイ・ドナヒューが演じる金髪に赤いセーターの大柄なアメリカ青年でした。 元カノにふられていらついていたトロイ・ドナヒューは最初はスザンヌのイタリア語の勉強にもうるさいと怒鳴り込んだのですが、邸宅のディナーの席で隣り合わせになったことからじきに親しくなってジャズクラブに行ったり大きなむく犬のいる本屋の帰りに二人で赤いスクーターから観光バスに乗り換えてイタリア名所巡りを堪能しました。 ところが、その後に問題が起きます。 トロイ・ドナヒューにセクシーな年上のガールフレンドがいたことを知りショックを受けたスザンヌ・プレシェットはイタリア風恋愛テクニックを学ぼうと一度はスザンヌに言い寄ってきたロマンスグレーのもとを訪れますがプレイガールなんかにならないようにと諭されてしまいます。 傷心のスザンヌ・プレシェットはアメリカへと戻ったのですが港にはなんとイタリアにいるはずのトロイ・ドナヒューが待っていたのです。 「恋愛選科」はかなり冗長な映画ですがともかく観光バス旅行の後のリフトで上った山頂でも”アルディラ”が流れ、サン・ピエトロ寺院、水道橋、円形劇場コロッセオ、トレビの泉、ネプチューンの噴水やムーア人の噴水(Fontana del Moro)、ダビデ像のあるアカデミア美術館や伝統芸の旗回し、ピサの斜塔などなどイタリア観光が楽しめます。
中年のプレイボーイを演じたのは一世を風靡したイタリア人の歌手で映画俳優のRossano Brazzi(ロッサノ・ブラッツィ)です。 1958年の「South Pacific(南太平洋)」では”Some Enchanted Evening(魅惑の宵)”を歌ったイタリアの歌手で俳優としても有名です。 ロッサノ・ブラッツィは1955年の「Summertime(旅情)」ではA.Icini(アレッサンドロ・イチーニ)が作曲してイタリア語の歌詞をPinchi(ピンチ)が英語の歌詞を”Ebb Tide(ひき潮)”で有名なCarl Sigman(カール・.シグマン)が書いた有名な”Summertime In Venice(ベニスの夏の日)”を歌っています。(サマータイム・イン・ヴェニスのイタリア語のタイトルは”Tempo d’estate”) サントラの指揮はDino Olivieri(ディノ・オリヴィエリ)です。

Al di là by Emilio Pericoli
「恋愛専科」ではカンツォーネの”Al di là(アルディラ)”が何度も流れます。 最初は二人がロッジで物売りから買ってしまった蜀台を手に訪れたJazz Jointクラブのシーンです。 プロシュートや白ワインを注文した後に、カンツォーネ歌手のEmilio Pericoli(エミリオ・ペリコーリ)がAl Di Là(アルディラ)を歌ってロマンティックなムードを高め、トロイ・ドナヒューがスザンヌの手を握りながら歌の意味を教えます。 この後にもAl(アル)役で特別出演のAl Hirt(アル・ハート)が陽気な”アルディラ”を吹きますが、アルが二人に紹介したガーターベルトにナイフを挿したセクシー美女がアルの恋人らしくアルの演奏中に浮気したので乱闘が始まってしまいます。そこで蝋燭立てを手に二人は慌てて店を出て馬車で邸宅に戻ることに。
※ “アルディラ”を演奏したアル・ハートはニューオリンズ出身のジャズ・トランペッターで一番人気の”Green Hornet(グリーン・ホーネット)”のテーマで知られています。米空軍楽隊で演奏した後にTommy and Jimmy Dorseys(ドーシー兄弟)やBenny Goodman(ベニー・グッドマン又はベニイ・グッドマン)と共演し、ニューオリンズに戻って自分のバンド「アルハート楽団」を結成したそうです。 日本でもヒットした有名な曲はAllen Toussaint(アレン・トゥーサン)が作曲した1964年の”Java(ジャワの夜は更けて)!”
注! ”A Taste of Honey”のHerb Alpert(ハーブ・アルパート&ザ・ティファナ・ブラス)ではありません。
ところで、ロッサノ・ブラッツィの代名詞ともなった”ロマンスグレー”とは昭和29年(1954年)の飯沢匡の同名小説のタイトルからでリッチでエレガントなオジサマを指すそうです。(飯沢匡は昭和初期に黒柳徹子も出演した連続ラジオドラマ「ヤン坊ニン坊トン坊」の作者)
Rome Adventure Trailer – YouTube

「恋愛専科」でトロイ・ドナヒューの年上の恋人を演じたアンジー・ディキンソンは男女問わず好かれるお洒落な都会派タイプの女優で50年代にフットボール選手と結婚離婚後、1980年まで音楽関係のBurt Bacharach(バート・バカラック)の3人目の妻となりましたがFrank Sinatra(フランク・シナトラ)との長期に渡る断続的な関係も有名です。 キング・オブ・カウボーイと呼ばれたRoy Rogers(ロイ・ロジャース)が1944年の同名映画で歌った”The Yellow Rose of Texas(テキサスの黄色いバラ)”のテーマ曲が使用された1955年のHarold D. Schuster(ハロルド・シュスター)監督の「The Return of Jack Slade(拳銃稼業)」や1960年にシナトラが主演した「Ocean’s Eleven(オーシャンと十一人の仲間)」などたくさんの映画に出演していますが、私は1980年にBrian De Palma(ブライアン・デ・パルマ)が監督した「Dressed to Kill(殺しのドレス)」が印象に残ります。

Listen「恋愛選科」のサウンドトラックにある”アルディラ”は「恋愛専科」の前年の1961年度サンレモ音楽祭で第一位を獲得したエミリオ・ペリコーリの大ヒット曲です。
“Al di là”のイタリア語の意味は「Beyond the Beyond(~の向こう)」で「世界の彼方」とかいう意味もありそうです。
国内盤のVHSは「恋愛専科」(ASIN: B00005HCFR)ですが輸入版(リージョン1)のDVD「Rome Adventure/ [DVD] [Import]」(ASIN: B01MQHLCNA)もあります。

エミリオ・ペリコーリのアルディラを収録した輸入盤アルバムは「Emilio Pericoli, El Triunfador De San Remo, Al Di La – Il Mondo – Arrivederci」(ASIN: B000002F89)や、カンツォーネのコンピレーションCD「愛のカンツォーネ50」があります。
♪ 試聴は愛のカンツォーネ50 – Tower.jp
☆Al di la del bene piu prezioso…と歌われるAl Di La(アルディラ)の歌詞はSONG LYRICS.com – Emilio Pericoli Al Di La (Italian) Lyrics

Scooter Movies
60年代に始まったロンドンのモッズ文化の若者もしかり、終戦後の1950年代からイタリアで流行った乗り物はスクーター! 1953年の「Roman Holiday(ローマの休日)」ではAudrey Hepburn(オードリー・ヘプバーン)とGregory Peck(グレゴリー・ペック)がローマの街を走り、1961年の「Come September(九月になれば)」ではRock Hudson(ロックハドソン)とGina Lollobrigida(ジーナ・ロロブリジーダ)、そしてボビー・ダーリンとサンドラ・ディーがスクーターのツアーリング。 1960年のイタリア映画「La Dolce Vita(甘い生活)」でのMarcello Mastroianni(マルチェロ・マストロヤンニ)も乗っていました。 パリでも1958年にPascale Petit(パスカル・プティ)が演じた私の好きな「Les Tricheurs(危険な曲り角)」のミックも、1958年の「En cas de malheur(可愛い悪魔)」ではJean Gabin(ジャン・ギャバン)とBrigitte Bardot(ブリジッド・バルドー)も乗っていました。 70年代の中頃に天下のソフィア・ローレンがラッタッターッとホンダ・ロードパルという500ccスクーター(原付バイク?)のコマーシャルでお茶の間に登場しました。 そういえば日本では「隠密剣士」の大瀬康一が主演した昭和30年代のテレビのヒーローだった月よりの使者「月光仮面」や、次に現れたウーヤーターッの「少年ジェット」もスクーターでした。

Suzanne Pleshette
トロイ・ドナヒューは1962年に「恋愛専科」に続きスザンヌ・プレシェットとは1963年の「A Distant Trumpet(遠い喇叭)」でも共演して結婚しましたが、撮影後には性(格)の不一致からか?半年ほどで離婚しました。 とはいえトロイ・ドナヒューは最低でも4度ほど結婚しているそうですし、晩年にゲイ説を否定しています。 晩年に肺がんと闘ったスザンヌ・プレシェットは2008年に亡くなりましたが、子供時代からブロードウェイなどの芝居に参加していた頃、Jerry Lewis(ジェリー・ルイス)の目に止まって1958年にFrank Tashlin(フランク・タシュリン)監督の「The Geisha Boy(底抜け慰問屋行ったり来たり)」に軍曹役でデビューしました。
そのスザンヌ・プレシェットは1963年にAlfred Hitchcock(ヒッチコック)監督の「The Birds(鳥)」で鳥に目玉をえぐられる教師役を演じた後、1965年に「A Rage to Live(生きる情熱)」で恋多き富豪の娘役で主演し、1970年代にテレビの「Bob Newhart Show(ボブ・ニューハート・ショー)」に5年間出演していて2007年のショーの同窓会には肺がんに侵されながらも車椅子で出演したそうです。(2008年に70歳で他界)

1963年 Palm Springs Weekend(パームスプリングの週末)
トロイ・ドナヒューが1961年の「スーザンの恋」に続いて「ハワイアンアイ」コンビのコニー・スティーヴンスと共演した青春ドラマです。 27歳のトロイ・ドナヒューが大学のバスケ選手を演じ、当時25歳のコニー・スティーヴンスが高校生を演じた、イースター休暇をパームスプリングで過ごす若者たちのハッピーな映画です。
1960年代のTV西部劇シリーズの「Bronco(ブロンコ)」(意味は荒馬)や、1962年にGeorge Cukor(ジョージ・キューカー)が監督でEfrem Zimbalist Jr.(エフレム・ジンバリスト・ジュニア)主演の「The Chapman Report(チャップマン報告)」に出演したTy Hardin(タイ・ハーディン)も出演しています。
Palm Springs Weekend Trailer – YouTube

英語版のPalm Springs Weekend(パームスプリングの週末)DVD(リージョン2) 注、下記の画像はVHSです。
Palm Springs Weekend with Troy DonahuePalm Springs Weekend DVD

 

☆ 映画「パームスプリングの週末」の主題歌はトロイ・ドナヒューの歌手デビューともなった当時流行りのツイスト曲、”Live Young(恋のパームスプリングス)”です。
日本人だけに受けたらしく海外では見つかりませんが、”Palm Springs Weekend(恋のパームスプリング / LIVE YOUNG)”が収録されている2006年リリースの国内盤は「Glory of Radio Days, Vol. 2 栄光のラジオ・デイズ・ヒッツ VOL.2」(GLORY OF RADIO DAYS HITS UNIVERSAL MUSIC VOL.2)
収録曲は1950年代後半から1960年代にかけてのヒット曲がズラリ! Johnny Hallyday(ジョニー・アリディ)の”Douce Violence(甘い暴力)”、Sophia Loren(ソフィア・ローレン)の”Mambo Bacan(マンボ・バカン)”、Connie Francis(コニー・フランシス)の”Pretty Little Baby(かわいいベイビー)”、Michel Polnareff(ミッシェル・ポルナレフ)の”Tout Tout Pour Ma Cherie(シェリーに口づけ)”、14歳のイギリス人歌手のHelen Shapiro(ヘレン・シャピロ)が歌った1961年の”Don’t Treat Me Like a Child(子供じゃないの)”などのポップスを収録しています。
他に”恋のパームスプリングス”が収録されているのは「OLDIES The Best(オールディーズ~ザ・ベスト~)」(ASIN: B00006JLKL)や「Hollywood Movie Stars Sing」があり、カスケーズの” Rhythm Of The Rain(悲しき雨音)”やドン・ラルク楽団の”サンセット77″など20曲が収録されています。
♪ ”Live Young”の試聴はHollywood Movie Stars Sing – レコチョク

1967年 Come Spy With Me
最後に、カリブ海のジャマイカを舞台にトロイ・ドナヒューがスキューバ・ダイバー向けチャーター・ボートの持ち主ピート・バーカーを主演した日本未公開のアクション・スパイ映画は「Come Spy With Me(カム・スパイ・ウィズ・ミー)」ですが、シルエットを使ったオープニング以外はどえらい酷評を受けたそうです。 スパイに誘拐されるサマンサを撮影当時数年間ドナヒューと結婚していたValerie Allen(ヴァレリー・アレン)が演じています。(ドナヒューがスザンヌ・プレシェットと離婚した後のこと) 1966年から放映開始したTVシリーズのミステリー映画「Dark Shadows(暗黒の影)」に殺し屋”Roger Collins”役を演じたLouis Edmonds(ルイス・エドモンズ)やStar Trek(スタートレック)にSmith(Yeoman Jones)として出演したAndrea Dromm(アンドレア・ドローム)が出演しています。 ”暗黒の影”のテーマ曲はRobert Cobert(ロバート・コバート)が作曲したそうですがMotown(モータウン)のSmokey Robinson(スモーキー・ロビソン)がテーマを歌っているサントラが人気だとか。
映画のオープニングでダンスのシルエットに流れるSmokey Robinson & The Miracles(スモーキー・ロビソンとミラクルズ)の”Come Spy With Me”は「The 35th Anniversary Collection」に収録されています。
♪ 試聴はThe 35th Anniversary Collection – Mora.jp
「Come Spy With Me」の映画情報や写真やポスターが見られるCome Spy With Me – Big Lou with Troy Donahue – DarkShadowsOnline.com

トロイ・ドナヒュー Troy Donahue」への6件のフィードバック

  1. 田園調布のプレスリー より:

    「アルディラ」を探していて到着しました。ここ以外にはなく、ありがとうございました。
    とてもお詳しいのでびっくりいたしました。
    コニーは可愛くて、昔の頃が何でも良かったですね。
    又寄らせて頂きます。

  2. koukinobaaba より:

    お役にたって嬉しいです。
    私は詳しいのではなく、知りたいことを探してメモしているだけですが、それが趣味なので楽しく記事にしています。
    「田舎のプレスリー」より

  3. 田園調布のプレスリー より:

    こうやって見て行くと昔のWBはある種非常に大衆向けだった訳で、逆に言うと大衆にかなり迎合していたのですが、今では巨大産業に。企業が大衆と一緒になって成長して行く代名詞のような気がします。MGM、パラマウント、コロンビア、UAの歴史が知りたくなりました。確かUAはどこかと一緒になり現在のUPI?。大体、築地の旧東劇、松竹セントラルで公開されたのはUA製で大作ばかりであったような。とても懐かしく時の流れを感じます。

  4. koukinobaaba より:

    私も時の流れを十分過ぎるほどに感じています。
    東銀座に松竹セントラルなどの映画館にはシネマスコープになった頃に先生方の引率でMGMのベンハーや十戒などを観に行きました。
    昨日のことのように思い出されます。(うそです)

  5. DCP より:

    サーフサイドやハワイアンのWBのヒットにあやかってかFOXがFOLLOW THE SUNってやりませんでしたか?。
    何か目玉になるスターがいなかったのかと曖昧な記憶です。

  6. koukinobaaba より:

    ご指摘の番組は日本には情報がありませんが1961年のTVシリーズのFollow the Sunです。 ハワイを舞台にフリーランスのジャーナリストを主人公にしたドラマだそうです。レギュラー陣は日本では全く知られていませんが、「逃亡者」のデヴィッド・ジャンセンや「0011ナポレオン・ソロ」シリーズのロバート・ヴォーンが出演しているとか。

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