ジム・キャリーのディック&ジェーン 復讐は最高! Fun with Dick and Jane (2005)

みなさん、この二組のカップルは強盗です!
Jim Carrey and Téa Leoni   Warren Beatty and Faye Dunaway

ごく普通の夫婦に見えるディック & ジェーン
右はとても普通とはいえないボニー&クライド

ディック&ジェーン 復讐は最高!(2005年)
ジム・キャリーの超娯楽大作!
1977年の同名映画「Fun with Dick and Jane(おかしな泥棒ディック・アンド・ジェーン)」のリメイク版をDean Parisot(ディーン・パリソット)が監督し、ディックを”Jim Carrey(ジム・キャリー)”が、その妻ジェーンをTéa Leoni(ティア・レオーニ)が演じるBonnie and Clyde(俺たちに明日はない)になれなかった夫婦のコメディ映画です。 これは「トゥルーマン・ショー」ではありません!よって「オハヨウ! 会えない時のために、こんにちは、こんばんは。そしておやすみ」なんて言いません。「私の肉を食え」とも言いません。
五本の指に入るといわれる名優のAlec Baldwin(アレック・ボールドウィン)がディックが勤めていた会社の社長(ジャック)をコミカルに演じます。 このところセクシー俳優から脱皮するのかコメディづいたアレック・ボールドウィンはアニメ映画の「スポンジ・ボブ」や「マダガスカル2」などで声を担当する他、2009年の「It’s Complicated(恋するベーカリー)」でオールヌードまでご披露しています。 声といえば2017年のドリームワークスのアニメ「The Boss Baby(ボス・ベイビー)」では背広を着てボールドウィンばりの既知に飛んだアリエヘン!ボス・ベビー役で奮闘します。
ちなみにハワード・ヒューズの伝記映画「The Aviator(アビエイター)」ではディカプリオのライバルであるパンナム社社長役でした。

ベンツの新車に乗っているお隣さんを横目に旧型車で我慢して、アメリカ中流家庭の「上」を目指して頑張っていた夫婦です。 両親よりもメイドさんと一緒の方が多いから、変なスペイン語のアクセントでしゃべる一人息子あり。 そんなごく普通の夫婦が泥棒になってしまうこのクライム・コメディは、拝金拝物主義と自己中心主義を産んだ現代の豊かな物質文化を皮肉っているようです。

Jim Carrey’s Fun with Dick and Jane
以下の「ディック&ジェーン 復讐は最高!」のあらすじはネタバレも混じっているのでこれからビデオをご覧になる方は読まない方が楽しめます。
ずっとずっと昔、2000年頃のこと、ITメディア開発企業に務める働き者のディックは同じく同僚である働き者のジェーンと出会って結婚して子供(ビリー)ができました。 頑張ってるディックとジェーンの小奇麗な家にはスペイン語を話すメキシコ人のメイド(ブランカ)がいて、吠えるのが趣味だから電気ショックの首輪をプレゼントされたワン公のスポットもいましたとさ。 家のローンを抱えているディックはお隣さん(ジョン)の新車(最新型ベンツ)を横目にいつものマイカーに乗ってご出勤。 さて本日は本部長への昇進の日、社長のジャック氏(髭ズラのアレック・ボールドウィン)がいるてっぺんの51階に呼ばれたディックは期待いっぱいで空を飛べる気分です。 他の社員が次々と降りていくエレベーターで上階に行くたった一人となったディックはR. Kelly(R・ケリー)の”I Believe I Can Fly”なんぞを歌うほどルンルン気分でした。(ジム・キャリーは歌がお得意) ところがディックはとんだ勘違いをしていたのです。 そこにはジャック氏の姿はない上に上空を飛び去るヘリを目撃。 現れ出でたのは腹心の部下のフランク氏。 確かにディックは広報本部長への昇進を命じられたのです。 が、喜んでいいのか? メディア(コミニケーション)で自社の不祥事の後始末をするなんて! エンロンじゃないがディックが務める会社のトップが粉飾決算でトンズラしたから、中間管理職のディックがその窮地の矢面に立たされることとなった!ディックは生贄だ!わからにゃいー! 本当にジャック社長はディックの目の前で再びヘリに飛び乗った。筋が通ってない!(この時のBGMはDr. John(ドクター・ジョン)のブルースで”Right Place Wrong Time”) ディックの会社は倒産、残骸のようになった会社に残されたのは口止め料を貰って酒びたりとなったフランクだった。

連日の電話攻勢でやっと見つけた面接にもう入社決定の気分で出向くとあっちからもこっちからもリクルートスーツの志願者が殺到。元同僚も出し抜いて息急き切って目的地に到着すると、グァーン!既に長蛇の列。 そこにお偉いさんが通りすがってディックを見つけると部屋に連れていくと例の元会社の言い訳インタビューをおちょくられて社員も集まり大モて、「はい、チーズ代わりのわからなにゃいー!」で記念写真。 で、面接の話はどうなったの。
昇進を知ったディックは庭に芝生も敷きプール工事も着工、妻は素早く会社を止めて家庭に納まることになったっていうのに。 いくら解雇手当が出るったって、15年の本部長職を失い社会保障も消滅したディックは家を新築しちゃったからもちろん貯蓄なんてゼロ、財産は元の会社の紙切れ同然の株ばかり。元会社の倒産で地価が下がり家さえ売れない状況。 クビどころか会社が倒産して失業者となったディックと妻のジェーンはさて、どうする? 冗談にもジェーンに春を鬻ぐなんてこた言わないで、ディック。 ディック夫妻が極貧生活を送っているこの時に流れる曲はJohnny Cash(ジョニー・キャッシュ)が切々と歌う”Why Me Lord”です。 よその一流会社で管理職に就きたいが、なかなか見つからないとなると、とりあえずは元大会社のエクゼがメキシコ人のお手伝いさんの従兄弟と肉体労働をするっきゃない? 我勝ちの日雇い生活、この時の争いでトラックから落ちて口が切れて上手くしゃべれないディックは移民局の手入れで密入国者と間違われた。 財布を落としたディックは身元を証明するために、移民局の係員に自宅に電話をさせてと頼んだところ、ベルが鳴って電話を取ったのがスペイン訛りでしゃべる息子。 Hola!

ボトックスみたいな化粧品テストのモニター・アルバイトで口が腫れ上がったジェーンを見た腫れた口のディックはブっ千切れた、もうお遊びは終わり。 犯罪は貧困から。 そいで、ディックのお仕事初めはご近所さんから芝や植木を失敬する。 口が腫れ上がってチューも出来ない二人に赤封筒、銀行から邸宅の差し押さえの最終通告が届いた。 24時間以内に退去せねばならないディック、そこでお仕事は本格的に。 先ずは変装用サングラスの試着、息子の水鉄砲で武装。 運転手を買って出たジェーンを連れて手始めにコンビニ強盗。 「チョコを忘れずに盗ってきて、目撃者は全員消すのよ」と送り出すジェーン。 これは銃がポケットから出なくて1ドル29セントのフラッペを飲み逃げしただけであえなく撃沈。 次に真夜中のATMで金を引き出している男を狙ったところ、これがなんと元同僚。 こんな調子で失敗続きのディックとジェーンでしたが、初めて成功したのは「あなたは悪者にはなれない」とは言ったものの明日の強制退去を聞いてジェーンが手を貸したUVライト(ブラック・ライト)の店。(ジェーンの下着丸見えでしたがきっと私の持ってる紫外線LEDライトじゃっ見えない) さあ、この後は本格的、二人とも黒い目出帽をかぶって珈琲ショップ、コスプレでクリントン夫妻に変装して寿司屋を襲い、ソニー&シェールでカーディラーを襲う。 ご近所の高級ベンツを盗んだ二人はブルース・ブラザース姿で映画を地で行く。 ショッピング・モールのウィンドウに突っ込むわ、強盗に入った家の男にペットの電気ショック首輪を着けたり(”HELP!”と叫んでひどい目に合う)、と現代版ボニー&クライドは強盗三昧だったが最後のお仕事、銀行強盗で本物の覆面強盗とかち合わせ。 誰かと思いきや元同僚夫婦だったなんてことも。(考えることは皆同じ?)

ディックが勤めていた会社の崩壊に加担した社員たちが次々と起訴されていき、今度は広報担当だった自分の番だと知ったディックが大物が集う高級バーでビールをグラスにたった半分飲んだだけで酔っ払って演じた企業の操り人形パーフォーマンスが凄い。ウワーオ!
そこで飲んでいたのは相変わらず飲んだくれていたフランクで逃走を図るが、この後、最初からジャック社長が目論んだ詐欺だと事の全貌を暴露する。 「疚しさを取り除けば心は救われる」 フランクはディックと手を組み元社員たちの年金を取り戻してやることに! ジャックが銀行に預けている無記名債権4億ドルを分捕るという極めて危険な賭け。
こんな境遇に陥れたアイツに復讐! ジャックがその場しのぎに切った小切手のサインを盗用して債権を手に入れる算段。 そして決定的な報復に!広報担当にされたディックが以前に仕組まれた生中継のメディアの前でジャック社長は資産のうち総額4億ドル(400億円近い)の金を元社員の年金救済基金の費用に当てると発表する羽目に!(今度はクジラを救ってよ!)
幸せ一杯のディック一家のシーンで流れる曲はサム・クックが歌う”The Best Things in Life Are Free”でした。
ところで、誰がエンロンに就職することになったって?(新車を買ったあの人)

予告編が観られたSony Picturesでの「復讐は最高!」のオフィシャル・サイトは現在消滅しましたが、ジム・キャリーの<ディック・アンド・ジェーン>の特大ポスターが見られるFun With Dick & Jane (2005) movie Poster – The IMP


「ディック & ジェーン 復讐は最高!」は日本では2005年12月に公開です。
銀行強盗夫婦といえば1972年にSteve McQueen(スティーヴ・マックィーン)とAli MacGraw(アリ・マッグロー)のカップルがギャングを皆殺しにして幸せになる「The Getaway(ゲッタウェイ)」がありますが、同じく1967年に壮絶な死を遂げるハードボイルドな強盗カップルのBonnie and Clyde(ボニーとクライド/俺たちに明日はない )」のボニー & クライドと比べてみましょう。 「ゲッタウェイ」の予告編が観られるThe Getaway Trailer – Videodetective
「俺たちに明日はない」の予告編が観られるBonnie and Clyde Trailer – Videodetective

「ディック・アンド・ジェーン」を監督したディーン・パリソットは 1999年の「スター・トレック」のSFパロディ「Galaxy Quest(ギャラクシー・クエスト)」で2000年のアカデミーSF部門の監督賞にノミネートされ、ヨーロッパ映画祭における数々のSF賞を受賞しています。

アメリカでは2005年10月から公開されている「Fun with Dick and Jane」はかなり人気がありますが、もしも、撮影当時に「In Her Shoes(イン・ハー・シューズ)」に出演していたCameron Diaz(キャメロン・ディアス)のスケジュールが合って「ディック&ジェーン」に出演していれば、キャメロン・ディアスのデビュー作品「マスク」と同様ジム・キャリーと共演が実現したはずでした。
ジム・キャリーはこの後、2007年に公開の意表をついたサスペンス「The Number 23(ザ・ナンバー23)」に出演し、David Fincher(デヴィッド・フィンチャー)監督の2006年の「Zodiac(ゾディアック)」みたいに陰気で誇大妄想的な映画では徹底的にシリアスな役に取り組みます。怖そう! この「8mm」を監督するのは1999年の猟奇サスペンス「8MM(8mm)」や2004年の「The Phantom of the Opera(オペラ座の怪人)」と同じくJoel Schumacher(ジョエル・シューマカー)です。
そして2009年にはEwan McGregor(ユアン・マクレガー)がフィリップ・モリスを演じる実話を元にして映画化した「I Love You Phillip Morris(フィリップ、きみを愛してる!)」で熱いキスシーンを演じてゲイに挑戦し、子供たちには「A Christmas Carol(Disney’sクリスマス・キャロル)」では強欲なスクルージ爺さんを演じて教訓を与えます。 ちなみに「フィリップ、きみを愛してる!」でゲイを演じるユアン・マクレガーは1996年に「The Pillow Book(ピーター・グリーナウェイの枕草子)」のJerome(ジェローム)役で緒形拳と共演しました。(ヒロインの父親とホモ関係にある男の愛人役、つまりゲイ)

Téa Leoni
父親がヨーロッパ系だという青い目のティア・レオーニは1995年のアクション映画「Bad Boys(バッド・ボーイズ)で人気が出た女優で(本当にすごい!)、1998年の地球滅亡をテーマにした「Deep Impact(ディープ・インパクト)」では感動的なジャーナリスト役で涙を誘いました。 2004年の「Spanglish(スパングリッシュ)」の後にこの「ディック&ジェーン 復讐は最高」に出演しています。 2000年の「The Family Man(天使のくれた時間)」ではシャワールームのガラス越しとはいえオールヌードで踊ってびっくり!(吹替えでした) 「ディック&ジェーン」の後は日本未公開ですが2007年の「You Kill Me」でBen Kingsley(ベン・キングズレー)が演じるアルコール依存症で本業はニューヨーク・マフィアの殺し屋、バイトは死化粧師という50歳代のフランクに惚れられる、いや、惚れるローレル役を演じます。 おなじく本未公開ですが2008年の「Ghost Town(オー!マイ・ゴースト)」では不慮の事故で死んだ男の妻グウェン役で出演し、2009年の「The Smell of Success(Manure)」では亡き父の会社を継ぐローズマリー役で優秀セールスマン役のBilly Bob Thornton(ビリー・ボブ・ソーントン)と共演するそうです。

Fun with Dick and Jane DVD
2006年発売の「復讐は最高!」字幕版DVD
ディック & ジェーン
DVDのカバー画像でディックが駆け出しているのは大手の面接試験に向かう元同僚たちを出し抜くため。(?)

Fun with Dick and Jane Soundtrack
ジム・キャリーの「ディック & ジェーン」の音楽は「The Devil Wears Prada(プラダを着た悪魔)」と同じくTheodore Shapiro(テオドール・シャピロ又はセオドア・シャピロ)です。 ユーモアとサスペンスを織り込み、ギターやファンキーなオルガンをフィーチャーして60年代や70年代の探偵ドラマ風なポップ音楽ですがちょっとラテン調のI.N.S.! なども収録しています。
映画では挿入歌としてJohnny Cash(ジョニー・キャッシュ)の Why Me Lord、Dr. John(ドクター・ジョン)のRight Place, Wrong Time、Cypress Hill(サイプレス・ヒル)のInsane in the brain、Devo(ディーヴォ)のUncontrollable Urge、Money Mark(マニー・マーク)のInsects Are All Around Us、Rancid(ランシド)のTime Bomb、Darude(ダルード)の Sandstorm 2006、Sublime(サブライム)のWhat I Got、Sade(シャーデー)の Smooth operatorなどジャンルはカントリー、ブルース、ロック、ジャズからヒップホップまでと多岐に渡っています。 テオドール・シャピロの音楽を収録した2006年発売の「ディック&ジェーン 復讐は最高!」のサウンドトラックです。 セオドア・シャピロのサントラには上記のリストにあるマニー・マークのInsects Are All Around Us以外は歌の得意なジム・キャリーのレパートリーやラストで使用されたサム・クックの”The Best Things in Life Are Free”などは収録されていません。
Fun with Dick & Jane [Original Motion Picture Soundtrack]
セオドラ・シャピロ作曲のサントラの試聴はFun with Dick and Jane – CD Universe

上記にもリストがありますが、ブルースやロックが多い映画の挿入曲にはI Believe I Can Fly(by Frank Vardaros)、Smooth Operator(by Sade)、Right Place Wrong Time(by Dr. John)、What I Got(by Sublime)、Sandstorm2006(by Darude)、Why Me Lord(by Johnny Cash)、Time Bomb(by Rancid)、Insects Are All Around Us(by Money Mark)、Uncontrollable Urge(by Devo)、Insane in the Brain(by Cypress Hill)、Alive & Amplified(by The Mooney Suzuki)、Mighty Day(by Bessemer Sunset Four)、The Best Things in Life Are Free(by Sam Cooke)などです。
☆全曲試聴ができるFun with Dick and Jane Music – TuneFind
※ちなみに”The Best Things in Life Are Free”はSam Cooke(サム・クック)のアルバム「Sam Cooke at the Copa」に収録されています。

Audio-Visual Trivia内のジム・キャリーの映画
マスク
レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語


Original “Fun with Dick and Jane” (1977)Original “Fun with Dick and Jane” (1977)
おかしな泥棒ディック & ジェーン(1977)

George Segal and Jane Fonda in Original “Fun with Dick and Jane”

おかしな泥棒ディック & ジェーン
ジム・キャリーの「ディック & ジェーン 復讐は最高!」のオリジナルは1977年の「Fun with Dick and Jane(おかしな泥棒ディック&ジェーン)」です。 Gerald Gaiser(ゲルト・ガイザー)の小説を1977年にTed Kotcheff(テッド・コッチェフ)監督が映画化したお洒落なコメディで、ディックにはGeorge Segal(ジョージ・シーガル)、ジェーンを「Monster-in-Law(結婚宣言)」で2005年にカムバックしたJane Fonda(ジェーン・フォンダ)が演じています。
快適な中流生活を楽しんでいた若夫婦がまさに邸宅にプールを作った途端、ご主人のディックが突如会社を首になってしまいます。 家のローンは莫大だし、明日まで待てない!っと生活に困った夫婦が考えついたのが・・・武装強盗! がっついた自己チュウ夫婦の”ディック・アンド・ジェーン”が繰り広げる奇妙奇天烈なストーリーです。

ジェーン・フォンダが主演したオリジナル「おかしな泥棒ディック & ジェーン」のVHS
Fun With Dick & Jane (1977)