ユマ・サーマンとメリル・ストリープのラブコメ Prime (2005)

2000年に「Boiler Room(マネー・ゲーム)」を監督したユダヤ人のBen Younger(ベン・ヤンガー)が「マネー・ゲーム」同様に脚本も手掛けたロマンティック・コメディーです。 最初のエネルギッシュな作品だった「マネー・ゲーム」のように過激ではありません。

映画のタイトルとなっている”プライム”とは最盛期とか青春という意味だそうですが、人気女優のUma Thurman(ユマ・サーマン、もしくはウマ・サーマン)と大御所のMeryl Streep(メリル・ストリープ)が共演します。 ユマ・サーマンの若いボーイフレンド役は27歳のBryan Greenberg(ブライアン・グリーンバーグ)です。 お姉さま方を相手に大抜擢のブライアン・グリーンバーグ、TVではアイドルですが、映画での「期待される若い芸術家」という設定のように、将来有望な俳優となるでしょうか。 こうご期待!
他に印象的な出演者というとラフィーの豪華マンションの守衛を演じたTV界で活躍するまん丸お目々のGil Deebleがとっても可愛い。

ニューヨークのマンハッタンで始まった恋、自分は離婚したばかりだしかなり年上だしと、新しいボーイフレンドのDave(デイヴ)からの求愛に戸惑うラフィーは、メリル・ストリープが演じるセラピストのLisa Metzger(リサ・メッツガー)に相談します。 問題はラフィーの年齢がだいぶ上というだけではなく、デイヴの家は「ユダヤ人以外のお付き合いは認めない!」と、ちょっとオーバーなお堅いユダヤ人家族の典型をなのです。(これって差別にはならないのね、ふんふん) さて、ラフィーの相談を受けたセラピストのリサは二人の恋にGOサインを出します。 ところがなんと!偶然にラフィーの相手が自分の息子と知ってからは「さぁ、大変!」と大慌てするといったストーリーです。 演技派大女優のメリル・ストリープがこれでもか!っとユダヤっぽさを強調します。 なんたってずんぐりむっくり体型の中年もしくは初老の母親でおよそファッショナブルとは無縁。(首からジャラジャラ下げたでかいビーズ玉以外は)

「プライム」のあらすじ
年の差なんてなんのその、真夏のひまわりのごとく輝けるユマ・サーマン
ニューヨークを舞台にした映画「プライム」ではバツイチでちょっと年増のマンハッタンに住む高級ファッション関係のキャリアウーマンである37歳のRafi(ラフィー)を35歳のユマ・サーマンが演じます。 女優志願でも女闘志でもなくゴク普通の女性はユマ・サーマンにとっては珍しい役どころです。(年増がテーマでなければ) 友達のランダール等とグリニッチ・ヴィレッジの映画館”Cinema Village”でミケランジェロ・アントニオーニ祭りと称したアントニオーニ監督の二本立て映画を観に行ったラフィーは新進画家のデイヴに出会います。 ☆こんな映画? 違う! 1966年の「Blow-up(欲望)」
23歳という大学を出たばかりの若い男の子に求愛されて戸惑っていたラフィーはセラピストに相談すると、親身になって話をきいてくれるリサはゴーサインを出した。 イケ、イケ! その後も二人の問題として14歳という年齢差に加えてクリスチャンとユダヤ教という宗教の違い、豪華マンションに住む自立したキャリアウーマンとおばあちゃんとおじいちゃんも一緒の大所帯の一員というデイヴとのお互いの生活環境の違いとか、伝統を守るお固いデイヴの母上との対応に取り組む悩みなどを逐一報告しているとリサは気がついた。 まさか!とラフィーの彼というのが自分の一人息子だと分かったのだ。 それからは話を聞いても上の空、水をガブ飲みするばかり。 ラフィーを見る目は姑のそれ。 リサ自身もこのままラフィーのカウンセリングを続けるかどうかを自分のセラピストに相談する始末。 とうとうラフィーのデート相手は自分の息子だと言ってしまった。 気まずいラフィーとリサだったが、デイヴの両親と祖父母と妹との食事会はなんとかクリア。(このシーンでデイヴはユダヤの伝統であるキパ(Kippah)をかぶっています) しかしラフィーがデイヴと会うのを拒んだ夜、ラフィーの仕事仲間のモデルに誘われてデイヴは自分のアパートで目を覚ました。 これがラフィーに知れたからもう駄目! 完全にお別れとなった。 それから1年後の雪の降る日、初めてデートしたマンハッタンのIl Bucoという酒場になにげなく入ってしまったデイヴはラフィーの姿を見つけてあわてて飛び出した。 でも店の窓まで戻ると霜で曇ったガラスを手でふいてラフィーを見た。 気がついたラフィーも窓の外のデイヴを見た。 ふたりは意味ありげな微笑みをかわした。 これで半年に渡る恋は終わった。 このシーンで流れた”I Wish You Love”が効果的。
この映画はヒロインのラフィーが既に一度結婚に失敗しているので早く赤ちゃんが欲しいと思っているから、単に年齢に開きがあるとか宗教の違う者同士のロマンスコメディというよりは人生の伴侶は激しく燃える愛だけでは決められないという切ない内容なのです。 コメディの定番としてはパイ投げ! デイヴは別れたガールフレンドにパイを投げに行くという友達のモリス(Jon Abrahams肯んじる)の赤いChryslerに同乗していくシーンがありましたが最後の方では逆にモリスの顔が真っ白に。

自己チュウか同情か、利己的か愛他的か、悩むラフィー。 ですが、ユマ・サーマンの輝くばかりの美しさでは年上の悩みなんていわれても、ねえ。 どのシーンもラフィーの仕事がファッション関係という役柄なのでユマの服装は超お洒落で若い! ただし、初めてデイヴからの電話を受けるシーンは風呂上がりの白いバスローブに頭にも白いタオルを巻いていましたが、こうなるとお年が出ます。 映画で使用された衣装はGiorgio Armani(アルマーニ)も協力したとか。
こんなコメディがちょっと前にもありました。 もっとも、ジェーン・フォンダとジェニファー・ロペスの「Monster-in-Law(ウエディング宣言)」の場合は歳相応のカップルでしたが嫁姑の闘いが描かれます。

日本人の私にはユダヤ訛りだのよく使われるユダヤ・ジョークなんてのはよく分かりませんが、Crimes And Misdemeanors(重罪と軽罪)で描かれたウディ・アレンのユダヤ哲学よりは緩やかなんだそうです。
「キル・ビル」と「永遠(とわ)に美しく」の対決に・・・ Mazel tov! good luck!לחיים!

映画「Prime」の写真が沢山見られるPrime Photos – FILM.TV.IT
アメリカでは2005年10月28日に公開されましたが日本公開は未定です。 かなりあからさまな表現があり、最初は成人映画指定でしたが陳情によりなんとかPG13になったんだとか。
Uma Thurman R& Meryl Streep in Prime – YouTube

☆2005年にピューリッツァー賞やトニー賞を獲得したPatrick Shanley(ジョン・パトリック・シャンレー)のブロードウエイの舞台劇「Doubt(ダウト 疑いをめぐる寓話)」を2008年にジョン・パトリック・シャンレー自身が監督して映画化した「Doubt(ダウト ~あるカトリック学校で~)」(ASIN ‏ : ‎ B004XBOGC0)に主演します。
この後メリル・ストリープはWhere the Truth Lies(秘密のかけら)のColin Firth(コリン・ファース)や「The Tailor of Panama(テイラー・オブ・パナマ)」のPierce Brosnan(ピアース・ブロスナン)も出演する2008年のミュージカル・コメディ映画の「Mamma Mia!(マンマ・ミーア!)」(信じられない!)(ASIN ‏ : ‎ B0026O1JD0)に出演します。 「マンマ・ミーア!」はアメリカでは2008年7月に公開ですが、日本は2009年1月公開だそうです。 アンビリーヴァブル!

Prime DVD and VHS
Prime (Widescreen Edition)
Prime DVD
May-December Affair In Manhattan!
現在hDVD(ASIN: B00005JOI9 ASIN: B000CS45TW ASIN: B000GG4NP6)などがもう販売されていないのでリンクはVHSになっていますが、なんと現在はヴィンテージ価格の一万五千円。

Prime Soundtrack
日本未公開ですが怖い映画が多いカナダ出身のRyan Shore(ライアン・ショア)が音楽を手がけた2005年リリースの「Prime」の”サウンドトラックです。
Prime SoundtrackPrime
♪ 試聴はPrime Soundtrack – CDandLP.jp

70年代のミュージシャン、リミックスやヒップホップの曲に混じってジャズのスタンダードも収録されています。 試聴2番は、Duke Ellington(デューク・エリントン)作曲の”In A Sentimental Mood”をJohn Coltrane(ジョン・コルトレーン)と共に演奏しています。
試聴の5番のIrving Berlin(アーヴィング・ バーリン)作曲の”Isn’t This A Lovely Day”は、最近スタンダードを歌って話題となり、クリント・イーストウッドもファンだというStacey Kent(ステイシー・ケント)のヴォーカルです。
11番は、ジャズ歌手Chris Connor(クリス・コナー)が1963年に歌った英語バージョンの”I Wish You Love(Que reste-t-il re nos amours?)”をRachael Yamagata(レイチェル・ヤマガタ)が歌います。
I Wish You Love in “Prime” – YouTube

Yiddish in “Prime”
☆「a dank(ありがとう)」などのドイツ語が基礎となっているYiddish(イーディッシュ又はイディッシュ)はアメリカ映画にはよく出てきます。
Selected Yiddish Words and Phrases
※映画「プライム」に出てくるユダヤ語の単語の例としては①NOSH: eat、a snack(食べる、スナック) “Don’t nosh over the console…you’ll spill crumbs into the faders!”、②TUCHIS: [tuk-is] rear end, butt(ケツ) “Aligning that old multitrack was always big pain in the tuchis!”

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