ジェリー・マリガン Gerry Mulligan

Gerry Mulligan (1927年-1996年)
テナーサックスやアルトサックスが花形のジャズ界ではバリトンサックス奏者は稀有な存在です。 1970年代までDuke Ellington’s band(エリントン楽団)に在籍していた黒人のスウィング・バリトン奏者のHarry Carney(ハリー・カーネイ)やビバップ・バリトン奏者のSerge Chaloff(セルジュ・シャロフ又はサージ・チャロフ)やハードバッパーのPepper Adams(ペッパー・アダムス)などがいるとはいえ、広く一般にも知られているのは50年ものキャリアを誇るジェリー・マリガンです。 ニューヨーク生まれのジェリー・マリガンは若い頃から作曲及び編曲を手掛け、ピアノも弾きこなし、バリトンといえばマリガンという位に唯一有名なサキソフォニストでした。 なんといってもMiles Davis(マイルス・デイヴィス)九重奏団の歴史的名盤といわれる1947年の「Birth of the Cool(クールの誕生)」に参加しており、その後の1952年にアメリカ西海岸でChet Baker(チェット・ベイカー)とピアノ抜きのコンボ(四重奏団)を結成しています。 ウエスト・コースト(西海岸)で一世を風靡し、クール・ジャズ(ウエスト・コースト・ジャズ)のリーダーとして君臨しました。

特に甘い歌声で女性陣をメロメロにさせたトランペット奏者のチェット・ベイカーとのコンボでは名盤を数多く残しています。 ジェリー・マリガンは1993年の日本来日公演を最後に1996年に68歳で亡くなっていますが愛用した金メッキのConnバリ・サックスは米国議会図書館に保管されているそうです。 ちなみに麻薬をホテルの部屋に残して落下事故で死亡したチェット・ベーカーは58歳でした。

1950年代の3大スウィングサキソフォニストはBen Webster(ベン・ウェブスター/テナー)、Coleman Hawkins(コ−ルマン・ホーキンス/テナー)そしてLester Young(レスター・ヤング/テナー)もしくはJohnny Hodges(ジョニー・ホッジス/アルト)だそうですが、その一人のDuke Ellington(デューク・エリントン)楽団時代の演奏が若きジェリー・マリガンに多大なる影響を与えたジョニー・ホッジスとのセッション盤が1960年の「Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges」です。
☆名盤「Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges」についてのBBCラジオの英語レビューはGerry Mulligan Meets Johnny Hodges – BBC Jazz Review
ジョニー・ホッジスの他にも、1959年の「Gerry Mulligan Meets Ben Webster」(ASIN: B0000047A9)や、1957年にピアニストのセロニアス・モンクを迎えた「Mulligan Meets Monk」(ASIN: B00004SYJU)や、1964年にバップ・トランペッターでフリューゲルホルン奏者のArt Farmer(アート・ファーマー)のアルバム「Meets Mulligan & Hall」(ASIN: B000001BSJ)にギタリストのJim Hall(ジム・ホール)と共にフィーチャーされているなど多くのミュージシャンとのセッション盤があります。

Listen近所に住む旧友だったセロニアス・モンクとの異例のセッションについて語るジェリーマリガンの肉声が聴けるThelonious Monk – JERU: IN THE WORDS of GERRY MULLIGAN(Listen to Audio: Audio Icon RealAudio – MP3をクリック、1980年のアルバム「Lonesome Boulevard」からGood Neighbor Theloniousのクリップも聴けます)
マイルス・デイヴィスについて語っているMiles Davis – JERU: IN THE WORDS of GERRY MULLIGAN

Original Gerry Mulligan
オリジナル・ジェリー・マリガン(Gerry Mulligan Quartet)
トップの画像は1952年録音のピアノレスのマリガン・カルテットの代表作「パシフィック・ジャズ」の2001年に日本でCD化されたアルバムです。 オリジナルは1952年のモノラル録音です。
♪ 試聴はGerry Mulligan Quartet, Vol. 1 – Mora.jp
日本語曲名での試聴はオリジナル・ジェリー・マリガン・カルテット – Tower.jp

50年代のL.A.にタイムスリップ!  1952年にBLUE NOTEからリリースされたアルバムで、若きジェリー・マリガンとチェット・ベイカーとのピアノなしのコンボはベースがCarson Smith(カールソン・スミス)などで、ドラムはChico Hamilton(チコ・ハミルトン/1年後はLarry Bunker(ラリー・バンカー))などです。 Bernie’s Tune、Walkin’ Shoes、Nights At The Turntable、Makin’ Whoopeeなどのスタンダードに定番の”My Funny Valentine”が収録されている1999年盤
The Best of the Gerry Mulligan Quartet with Chet BakerThe Best of the Gerry Mulligan Quartet with Chet Baker
♪ 試聴はBest Of Gerry Mulligan & Chet Baker – Mora.jp

50年代のロスアンジェルスを舞台にした犯罪映画「L.A. Confidential(L.A.コンフィデンシャル)」はJerry Goldsmith(ジェリー・ゴールドスミス)が音楽を手掛けましたがサウンドトラック「L. A. Confidential (1997 Film) 」(ASIN: B000003BLF)にはジョニー・マーサの”Ac-Cent-Tchu-Ate The Positive”やマリガン・カルテットの”Makin’ Whoopee”の他、女性をシビレさせたチェット・ベイカー(初期)のヴォーカルで”Look For The Silver Lining”などが収録されています。

1950年代の初めにジェリー・マリガンのコンボでオリジナルメンバーの一人だったドラムのチコ・ハミルトンといえばChamber Jazz(アドリブがメイン要素のアコースティック・ベースのコンボ)のパイオニアといわれます。 The Chico Hamilton Quintet(チコ・ハミルトン・クインテット)の演奏なら私が好きな曲は静かなイントロのドラムとフルートが秀逸な”Blue Sands(ブルー・サンズ)”です。 この曲ではJim Hall(ジム・ホール)のギターやTony Iommi(トニー・アイオミ)のフルートも聴けるのです。 チコ・ハミルトンの”Blue Sands”が収録されたアルバムはあっても試聴は滅多にありませんが、ウエストコースト派のミュージシャン達が集められたアルバムThe West Coast Jazz Box, an Anthology of California Jazz
♪ 試聴はThe West Coast Jazz Box – Archive.org(Blue SandsはDisc: 2の25番ですがドラムソロは聴けない)

Jazz Time: Olympia Nov 19 1960
Jazz Time: Olympia Nov 19 1960
Gerry Mulligan Plays Black Nightgown
♪ 試聴は類似したアルバムのLive At The Olympia – Paris 1960 Concert Jazz Band,Gerry Mulligan – レコチョク

メニューからVideosを選ぶとジェリー・マリガンのテレビショーが沢山見られるThe Official Gerry Mulligan Website

ジェリー・マリガンの映画出演
ジェリー・マリガンは一時アレンジャーとしても在籍していたWoody Herman(ウッディ・ハーマン)楽団でトロンボーン奏者だったFrank Rehak(フランク・リハク)などと共にセンセーショナルな映画に登場しています。 ジェリー・マリガンが演奏するシーンが随所に現れる1958年の映画「I Want to Live!(私は死にたくない)」のテーマ音楽はGerry Mulligan Jazz Comboの演奏です。  コンボのメンバーはジェリーマリガンの他、Art Farmer(trumpet)、Bud Shank(alto sax and flute)、Red Mitchell(bass)、Shelly Manne(drums)などです。
アルバム「At the Village Vanguard」(ASIN: B0000631D6)にも「私は死にたくない」のBlack Nightgownが収録されています。
Gerry Mulligan at the Village Vanguard – Black Nightgown – YouTube

上記の他に1959年に「Jazz On a Summer’s Day(真夏の夜のジャズ)」、1960年には「The Rat Race(ねずみの競争)」や、日本未公開でしたがヒロインのブラインド・デートのお相手役で1960年にVincente Minnell(ヴィンセント・ミネリ)監督の「Ella’s Blind Date(Bells Are Ringing)ベルズ・アー・リンギング」、「The Subterraneans(地下街の住人)」もあります。 又、2001年には写真家「ウィリアム(ビル)・クラクストン」の半生を綴るドキュメンタリー「Jazz Seen/カメラが聴いたジャズ」に大勢のジャズメンの一人として出演しています。 この他、出演ではありませんがジェリー・マリガンが唯一手がけた映画音楽で各種のホーンを演奏したといわれるサウンドトラックで、1977年にAlain Corneau(アラン・コルノー)監督のフランスのサスペンス映画「La menace(メナース)」があるそうです。 この映画は1976年の「Police Python 357(真夜中の刑事)」同様にYves Montand(イヴ・モンタン)が主演してなんだかなーのストーリー。 気の毒は熟年のもとカノだがその身投げが若い恋人の犯行と疑われモンタンが捜査を画策する。 ジェリー・マリガンが手掛けたというTheme from “La Menace”は1982年リリースのLPレコードの「La Minaccia(La Menace)」及びCDでは「Gerry Mulligan / Watching & Waiting」(ASIN: B00000JWE7)に収録されているそうです。
Watching & Waiting – Amazon.co.jp
♪ ジェリー・マリガンのバリトンが聴けない試聴は類似したOriginal soundtrack for la menace – CDandLP.jp

ジェリー・マリガンが参加した歴史的なアルバム
トランペット奏者のマイルス・デイヴィスはビバップの創始者ともいえるCharlie Parker(チャーリー・パーカー)に師事、その後アドリブからアレンジ重視の音楽を実践した1946年の「’Birth of the cool'(CP32-5181 EMI)」の2001年盤で、ジェリー・マリガンはJeruやVenus de Milo、そしてアレンジャーGil Evans(ギル・エヴァンス)はBoplicityとMoon Dreamsの編曲に関わり、ピアノはAl Haig(アル・ヘイグ)やMJQのJohn Lewis(ジョン・ルイス)、アルトサックスのLee Konitz(リー・コニッツ)、ドラムのMax Roach(マックス・ローチ)やKenny Clarke(ケニークラーク)、トロンボーンがJ.J. Johnson(ジェイ・ジェイ・ジョンソン)やKai Winding(カイ・ウィンディング)、その他チューバやベースなどの9重奏団によるクールなジャズ!
Birth of the CoolBirth of the Cool
♪ 試聴はBirth of the Cool – CDandLP.jp

Night Lights(1963/1965)
「ナイトライツ」はジャケットもロマンティックな都会の夜を思わせるBGMにぴったりのクラシック調(Chopin’s Prelude in E Minor)のアルバムです。
演奏はシクステットとクインテットですがビッグ・バンドを思わせるアレンジで、トランペットがArt Farmer(アート・ファーマー)、トロンボーンがBob Brookmeyer(ボブ・ブルックマイヤー)、ギターがJim Hall(ジム・ホール)、ベースはBill CrowでドラムはDave Baileyでオリジナルは1963年録音のロマンチックなNight Lightsです。 アルバムタイトルの曲”Night Lights”はマリガンのピアノです。
Night Lights Night Lights
国内盤は「ナイト・ライツ
1965年のバージョンも聞けるアルバムの試聴はナイト・ライツ +1 – Tower.jp

Pleyel Jazz Concert 1953 and Live In Amsterdam 1956
素晴らしい”My Funny Valentine”、”Love Me Or Leave Me”、”The Nearness Of You”などを収録したジェリー・マリガン「パリ・ライブ」アルバム
Pleyel Jazz ConcertPleyel Jazz Concert, Vol. 1
「Pleyel Jazz Concert, Vol. 2」もあります。
♪ 試聴はGerry Mulligan Pleyel Concert Vol.1 – Chartsinfrance.net
1954年のGerry Mulligan Quartetのパリ・ライヴ・アルバム「Pleyel Concert Vol. 1 」のメンバーはGerry Mulligan(Tenor Saxophone)、Bob Brookmeyer (Valve Trombone)、Red Mitchell (Bass)、Frank Isola (Drums)
他にも未発表だった1956年のアムステルダム・ライヴの「The Sextet Live in Amsterdam 1956」の国内盤でズート・シムズ、ボブ・ブルックマイヤー、ビル・クロウなどが参加した「セクステット・ライヴ・イン・アムステルダム1956」(ASIN: B004KODZMW)などもあります。
♪ 試聴はSextet Live In Amsterdam 1956 – HMV.co.jp

Bernie’s Tune: Gerry Mulligan in Paris
ジェリー・マリガンの代表曲には”Bernie’s Tune”が有名ですが、ジェリー・マリガンのオリジナルは1954年のLPライブ盤のCDD化で「Gerry Mulligan in Paris」の”Vol. 1″と”Vol. 2″のうち、”Vol. 1″には”Bernie’s Tune”が収録されています。
♪ 試聴は類似したGerry Mulligan Quartet Paris concert – CDandLP.jp
マリガン以外にも沢山のジャズメンが演奏した”Bernie’s Tune”は1952年にBernie Miller(バーニー・ミラー)が作曲したジャズのスタンダードです。 その後にThe Coasters(コースターズ)やElvis Presley (エルビス・プレスリー)などに曲を提供したヒットメイカーのソングライター・コンビであるJerry Leiber & Mike Stoller(リーバー&ストーラー)が歌詞をつけてMel Tormé(メル・トーメ)が1955年にアルバムに吹き込みました。(と言ってもワバダバダのスキャット)
Bernie’s Tune – Mel Tormé – YouTube

Gerry Mulligan/Astor Piazzolla (1974)
ジェリー・マリガンとタンゴの巨匠Astor Piazzolla(アストル・ピアソラ)の共演盤(ASIN: B000004CKD)が1974年にリリースされていますが入手困難です。 同じアルバムタイトルで1995年にリリースされたCDは中古で見つけられます。
1974年の有名な二人のサミット盤としては”Twenty Years Ago (Hace 20 Años)”や”Summit”などを収録した「Summit」(ASIN: B000007VRG)の他にも2003年にリリースされたCDの「Reunion Cumbre (Summit)」(ASIN: B0000AI0ON)もしくは”Cierra tus ojos y escucha (close your eyes and listen)
“Hace 20 Años (Twenty Years Ago)”などを収録した1995年のCD「Summit – Reunion Cumbre」(ASIN: B0000AI0ON)があります。
♪ 試聴はReunión Cumbre: Astor Piazzolla/Gerry Mulligan – Diskunion.net

Gerry Mulligan & His Orchestra
1963年にジェリー・マリガンのConcert Jazz Bandが解散して以来のビッグバンド(オーケストラ)との録音で1980年にDRGレコードからリリースしたLP「Walk on the Water」(ASIN: B000000PF5)ではマリガンがソプラノやアルトのサキソフォンを吹いています。 アルバムタイトル曲の”Walk on the Water”の他、参加しているピアニストのMitchell Forman(ミッシェル・フォアマン)が作曲した”Angelica”やスタンダード曲の”I’m Getting Sentimental over You”など全7曲をマリガンのアレンジで収録しています。
♪ 試聴はWalk on the Water – Fnac.com