♪ Jerry Goldsmith – Love Theme from Chinatown (Main Title) (1974) (Memorable Score) – Amazon.com (MP3 Download)
Roman Polanski’s Chinatown (1974)
「チャイナタウン」はRoman Polanski(ロマン・ポランスキー)が監督したフィルムノワールです。 フィルム・ノワールとはフランス語で”黒い映画”という意味ですが、1940年代後期から1950年代のハリウッド映画の中でも犯罪ものを指します。 1930年代のアメリカの恐慌時代に始まった道徳的には如何わしくてセクシーな刺激を強調したハードボイルド映画に端を発しているそうです。
アメリカでは種々の映画ランク付けでトップクラスに位置する作品でもあり、ポランスキー監督が最高の映画だと自負しているそうです。 「チャイナタウン」はハードボイルドな探偵映画なんですが、よくある宝石泥棒なんかじゃなくて、砂漠には不可欠な水の利権をめぐる犯罪的行為を描いていて、私立探偵の目を通した社会派映画ともいえるかもしれません。
Jack Nicholson as Gittes and Faye Dunaway as Evelyn
「チャイナタウン」の主役の探偵”Jake Gittes(ジェイク・ギテス)”を演じるのはまさに適役のJack Nicholson(ジャック・ニコルソン)で、謎を秘めたEvelyn Mulwray(エヴェリン・モゥレー)を演じたのは「Bonnie and Clyde(俺たちに明日はない)」から7年ぶりのFaye Dunaway(フェイ・ダナウエイ)です。 フェイ・ダナウエイは「ボニーとクライド」の印象が強烈だったので映画の最初にMrs. Evelyn Cross Mulwray(モゥレー夫人)として登場した時には目を疑いました。 「えっ、これがあのボニー?」 フェイ・ダナウエイのメイクはポランスキー監督の母親がしていたという第二次大戦前のファッションだったそうで、フェイ・ダナウエイは撮影中、細い三日月型の眉とくっきり山型の唇のメイクを保つために大変な労力を費やしたそうです。
そして驚くじゃありませんか、映画史上最悪の父親の一人と呼ばれるモゥレー夫人の父親(ノア・クロス氏)には1941年の「The Maltese Falcon(マルタの鷹)」以降Humphrey Bogart(ハンフリー・ボガート)の一連の作品を監督し脚本も手掛けたJohn Huston(ジョン・ヒューストン)なのです。 多くの女性と浮名を流したジャック・ニコルソンの一番長い交際相手は共演者のジョン・ヒューストンの娘で、The Addams Family(アダムス・ファミリー)のAnjelica Huston(アンジェリカ・ヒューストン)でした。
☆「チャイナタウン」のトレーラーはChinatown Original Trailer – VideoDetective
Chinatown Synopsis
「チャイナタウン」のあらすじ
「チャイナタウン」は砂漠の中の人工都市であるロスアンジェルスの開発に絡む腐敗を暴くロバート・タウンの三部作の第一部で、本作は1930年代を舞台に水道局の汚職を扱っています。 以下のストーリーには驚くべき結末も書かれていますから、これからビデオをご覧になる方は読まない方が楽しめます。
ロス市警に勤務していた元警官の”Jake Gittes(ジェイク・ギテス)”は現在は私立探偵です。 ハードボイルドなPhilip Marlowe(フィリップ・マーロー)みたいにロサンゼルス地方検察局に勤めていましたが、シガレットケースに入った煙草はキャメルではなく、さほどハンサムとも格好良いとも言えません。 フィリップ・マーローは口答えしてロス市警を首になりましたが、ジェイク・ギテスはチャイナタウンで捜査に首を突っ込み過ぎて失望することが多くうんざりしたので退職したのです。 しかし、私立探偵事務所に持ち込まれる事件は、しけた浮気調査がばかりだったのです。 ところが、ある日おかしなことが起こります。
ロス砂漠のダム建設に反対している水源電力局施設部長のHollis Mulwray(ホレス・モゥレー氏)の奥さんが探偵事務所を訪ねてモゥレー氏の浮気調査を依頼するのです。 仕事ですからジェイク・ギテスは引き受けてモゥレー氏を張り込むと、見つけました。 モゥレー氏がうら若い女性と会っている証拠写真を撮ったところ、それが新聞種になっているので仰天します。 ところがモゥレー氏を知る人々はモゥレー氏が家庭ひと筋の真面目人間だと証言します。 そこに現れたのがスキャンダルになったことに激怒しているモゥレー夫人、つまりエヴェリンさんです。 ところが浮気調査を依頼した夫人とは全くの別人だったのです。 そうこうするうちにモゥレー氏は貯水池調査中に落ちて死亡してしまうのです。 しかし奇妙にもモゥレー氏の肺からは真水ではなく海水が検出されたのです。
You’re a very nosy fellow, kitty cat. Huh?
ニコルソンが調査のために立ち入り禁止区域に侵入しようとした時に呼び止めたのがロマン・ポランスキー監督がカメオ出演したヤクザ者ですが、これはジャック・ニコルソンが勧めたので監督は遊び心で出演したそうです。 「こん次は鼻をまるごと切って金魚の餌にしちまうぜ。」と、クンクン嗅ぎまわる探偵の鼻を切ったあのジャックナイフは本物ですが、手品のような仕掛けがしてあり一つ間違うと本当に危険なのでニコルソンの演技も緊迫感がありました。 このおかげで映画の殆どは鼻に傷のあるジェイク・ギテスです。
Ouch! Polanski cut Nicholson’s nose up – YouTube
ホームレスの男や依頼されてモゥレー夫人に化けたという女など事件と関係のある何人かが何者カの手により死んでいきます。 何とかモゥレー夫人に取り入ったジェイク・ギテスはモゥレー宅で事情を聞くことになります。 情事にもおよびます。 色々調べていくうちになんと老人ホームの入居者全員が水源電力局水を供給する予定の谷の土地を購入していたのです。
モゥレー夫人宅で夫人の飲み物はTom Collins(トム・コリンズ)でした。 それはベースにイギリス産のオールド・トム・ジンを使う18世紀始め頃からあるカクテルだそうです。 一般的なレシピはオールド・トム・ジン(甘口ジン)にレモンジュースとシロップ(砂糖)を入れて”シェイク”したらタンブラー(コリンズ・グラスとかゾンビ・グラスと呼ばれる細長いグラス)に注いでクラブソーダ(プレーン炭酸)を加えてかき回すそうです。 お飾りは爪楊枝に刺したレモンスライスとマラスキーノ・チェリーなどですが、ストローを添えて出されることが多いので女性向きの甘くてお洒落な飲み物らしいです。 ジンには甘くないドライジンと甘いトムジンがあるそうですがドライジンやスロー ジンなどを使用したジンフィズも似たレシピです。 ちなみにミント・ジュレップもコリンズ・グラスを使用します。
How to make Tom Collins – YouTube
モゥレー夫人宅で情事の余韻に浸っているところに無粋にも電話がかかってきて、夫人は慌てふためいて家を飛び出します。 ギテスが後を付けるとなんとモゥレー氏のあの若い愛人の家だったのです。 ギテスは事実を話せ!と夫人を何度もひっぱたきますがこれが迫真の演技ではなくて、フェイ・ダナウエイの要望で本気でぶったのだそうです。 すごく暴力的なシーンです。 夫人をぶん殴って真実を吐かせたギテス。 耳を疑う驚愕の一言! 南部もの映画のようでもありますが、ロスのチャイナタウンという町での普遍の正義の不在、この町で暮らす悲壮感、なんとおぞましい事実。 この後にさらなる惨劇が展開。 我らがヒーロー「ジェイク」はチャイナタウンでいったい何ができたのだろう、たださらなる無力感と絶望を確信したのです。
アメリカ映画では実父と娘の関係を取り入れている映画がまま存在しますが、Audio-Visual Trivia内には「Devil In A Blue Dress(青いドレスの女)」や「The Black Dahlia(ブラック・ダリア)」などがあります。
「誰かを守ろうとすると逆に傷つける結果となることが多い」と事件に首を突っ込みすぎていやになり退職したジェイク・ギテスだったのに。
怠け者の町、チャイナタウンでは怠慢が一番! 対中国マフィアに関しては理解するには言葉や人間関係が複雑だし、うっかりすると犯罪の防止が幇助になることも有り得るから、あまり首を突っ込まずに怠慢でいるのがベストなんだそうです。
” Forget it, Jake, it’s Chinatown.”
J.J. Gittes and L.A. Trilogy by Robert Towne
「チャイナタウン」の脚本を手掛けたRobert Towne(ロバート・タウン)は探偵役は俳優のジャック・ニコルソンを想定してをストーリーを書き上げたそうで、ポランスキー監督にはロバート・タウンとジャック・ニコルソンの方から「チャイナタウン」の映画化の話が持ち込まれたそうです。 ロバート・タウンは「チャイナタウン」では1974年のアカデミー賞ではノミネートでしたが、ゴールデン・グローブでは脚本賞を受賞しました。
チャイナタウンの脚本を手掛けたロバート・タウンの脚本デビュー映画はアメリカの作家のEdgar Allan Poe(エドガー・アラン・ポー)の小説をもとにした1964年のホラーでVincent Price(ヴィンセント・プライス)が主演したRoger Corman(ロジャー・コーマン)監督の「The Tomb of Ligeia(黒猫の棲む館)」だそうです。 未見ですがこの「黒猫の棲む館」は1973年にMartin Scorsese(マーティン・スコセッシ)監督が「Mean Streets(ミーン・ストリート)」で映画のシーンを取り入れているそうです。 同じくポーの原作でヴィンセント・プライス主演の1960年の映画でHouse of Usher(アッシャー家の惨劇)、1962年のTales of Terror(黒猫の怨霊)、そして現在でも伝染病を題材にした映画のトップ・テンに数えられるという1964年のThe Masque of the Red Death(赤死病の仮面)などはジャック・ニコルソンを発掘したといわれるホラー映画のロジャー・コーマン監督の作品です。(エンディング・クレジットのアニメが秀逸) 撮影は後に監督となるイギリス人のNicolas Roeg(ニコラス・ローグ)です。 ちなみに「赤死病の仮面」には60年代に活躍した小人俳優のスキップ・マーチンが仮想舞踏会のゴリラ使いとして出演していますが、もし小人コンテストがあるなら声良し顔良しのマーチンが一番でしょう。
ロジャー・コーマンが1993年に製作したという怪獣映画に「Carnosaur(恐竜カルノザウルス)」があります。
「黒猫の棲む館」で脚本デビューしたロバート・タウンが関与した次の脚本が一躍有名になった1967年の「Bonnie and Clyde(ボニーとクライド/俺たちに明日はない)でした。 「俺たちに明日はない」はArthur Penn(アーサー・ペン)が監督しハンサムなWarren Beatty(ウォーレン・ベイティ又はウォーレン・ビーティ)が主演していましたが、当時の女性たちはフェイ・ダナウェイが演じたボニー・パーカーの1930年代ファッションに憧れて劇場に観に行きました。 そして本格的なロバート・タウンの脚本が「チャイナタウン」ですが、フェイ・ダナウエイは主要な出演作品の2本とも銃撃されて死亡しています。 銃撃されていない作品としては1971年のRené Clément(ルネ・クレマン)監督のスパイ映画「La maison sous les arbres(The Deadly Trap/パリは霧にぬれて)」のジル役でした。(サウンドトラックをGilbert Bécaud(ジルベール・ベコー)が手掛けた映画のテーマ曲が日本ではClaude Ciari(クロード・チアリ)のバージョンでもヒット) その後フェイ・ダナウエイはハリウッドの大女優であったJoan Crawford(ジョーン・クロフォード)の狂った私生活を暴いた1981年の「Mommie Dearest(愛と憎しみの伝説)」で往年の女優を怪演しています。 「愛と憎しみの伝説」の監督は1968年に不条理映画の「The Swimmer(泳ぐひと)」や「Last Summer(去年の夏)」を監督したFrank Perry(フランク・ペリー)です。
「チャイナタウン」の続編で16年後の1990年の「The Two Jakes(黄昏のチャイナタウン)」も脚本を手掛けているロバート・タウンの映画としては「俺たちに明日はない」のウォーレン・ベイティが主演した1975年の「Shampoo(シャンプー)」までしか私には記憶にありませんが、ロバート・タウンが脚本を手掛けた1990年の「Days of Thunder(デイズ・オブ・サンダー)」や1993年の「The Firm(ザ・ファーム/法律事務所)」に主演したTom Cruise(トム・クルーズ)と知り合いになり、1996年の「Mission: Impossible(ミッション:インポッシブル)」などのMIシリーズも手掛けています。
The Two Jakes
ロバート・タウンの三部作の2番目としては、ジャック・ニコルソンが望んで監督及び主演した続編で1990年の「The Two Jakes(黄昏のチャイナタウン)」でもジャック・ニコルソンが一作目同様にジェイク・ギテスを演じて今す。 他にはチャック・ニューティ弁護士にはフランシス・フォード・コッポラが監督した1982年の「One from the Heart(ワン・フロム・ザ・ハート)」でハンク役を演じたFrederic Forrest(フレデリック・フォレスト)です。
ロマン・ポランスキーたってのキャスティングで出演したのですが、本作で口論のあげくロマン・ポランスキー監督に髪の毛を引っこ抜かれたフェイ・ダナウエイは出演していません。 代わりの美女は「China Moon(チャイナ・ムーン)」で魔性の女を演じたセクシーなMadeleine Stowe(マデリーン・ストー)です。 続編はテーマが”水道”でなく1940年代に舞台を移して”ガス”です。 ロバート・タウンのLAシリーズ三部作”J.J. Gittes and L.A.”の最後は1940年代後期を舞台にしたCloverleaf”と呼ばれる大都市の巨大な高速道路ジャンクションについてですが映画は制作されていません。
The Two Jakes (1990) Trailer – YouTube
China Moon
※ところで映画の舞台がロスアンゼルスのチャイナタウンとなっているので中国人も登場します。 冒頭のジェイク・ギテス探偵のジョークに中国式倦怠期回避方法というのあり、それにには月(ムーン)が絡んでいるのです。 夫婦生活(情事)の疲れには月を見上げてリフレッシュ(浮気))したら再び開始するというものです。 私が以前に書いた記事にマデリーン・ストーが出演したChina Moon(チャイナ・ムーン)という映画がありますが、”中国と月”がこの映画とも関連がありやなしや。
Chinatown in Los Angeles
映画の舞台となったロスアンジェルスのチャイナタウンですが、北カリフォルニア州の大都市であるロスアンジェルスにはアジア系のLittle Tokyo(リトル東京)という日本人街やコリアタウンの他にもメキシコ街などがあるそうです。 アメリカのチャイナタウンといえば一番大きいのは1920年代から中国系マフィアが牛耳って売春、麻薬、ギャンブルの悪の巣窟となった歴史がある南カリフォルニア・サンフランシスコの中華街や、ニューヨークのマンハッタン島やクイーンズが有名です。
Roman Polanski: Wanted and Desired
ユダヤ系ポーランド人でフランスの監督であるロマン・ポランスキーが主演もした1967年の「Dance of the Vampires(吸血鬼)」で共演した後に結婚したアメリカ女優のSharon Tate(シャロン・テート)の死後にアメリカを去ったポランスキーをアメリカに連れ戻したのがこの「チャイナタウン」です。 シャロン・テート事件当時(事件の数ヶ月前)にアメリカで公開されたポランスキー監督の1968年の悪魔祓いと赤ちゃんに関連したサイコホラー(オカルト)映画の「Rosemary’s Baby(ローズマリーの赤ちゃん)」が何か関係しているのか」と思ってしまったほど薄気味の悪いニュースでしたが、日本公開当時に若者はこぞって劇場に観に行ったほど話題性のある映画でした。 取り沙汰されたようにポランスキー監督が事件を予知したなんてことはないでしょうが、映画の冒頭に流れるMia Farrow(ミア・ファロー)の”Lullaby(♪ラララ…)”から不吉な雰囲気が漂っていました。 愛する夫は…? 生まれた赤ちゃんが…! 「The Stepford Wives(ステップフォードの妻たち)」よりも身の毛もよだつ「ローズマリーの赤ちゃん」はIra Levin(アイラ・レヴィン)が1967年に書いた推理小説の映画化です。 アイラ・レヴィンはMatt Dillon(マット・ディロン)が妻の妹を殺す役を演じた1991年の「A Kiss Before Dying(死の接吻)」やSharon Stone(シャロン・ストーン)が連続殺人に巻き込まれる1993年の「Sliver(硝子の塔)」 などのスリラーの原作者です。
私が初めて観たロマン・ポランスキー監督の映画はCatherine Deneuve(カトリーヌ・ドヌーブ)が主演した「Repulsion(反発)」でした。 当時はポランスキー監督の映画というよりも美しいフランス女優のカトリーヌ・ドヌーブを見に行ったのでした。
2002年にはユダヤ系のアメリカ俳優であるAdrien Brody(エイドリアン・ブロディ)がアカデミーの主演男優賞を受賞した「The Pianist(戦場のピアニスト)」で監督賞を受賞した鬼才のロマン・ポランスキー監督ですが、1977年にアメリカで起こした性犯罪事件では有罪判決のまま米国から逃亡したままなので、この「チャイナタウン」がアメリカでの最後のポランスキー作品となっています。 ヨーロッパに戻ったポランスキーはイギリス作家のThomas Hardy(トーマス・ハーディ)の小説「Tess of the d’Urbervilles(ダーバヴィル家のテス)」を元に妻の面影漂うNastassja Kinski(ナスターシャ・キンスキー)が主演した美しくも哀しい1979年のロマンス映画で妻シャロン・テートに捧げた「Tess(テス)」を監督しました。(ラストシーンでの偉大なる古代の遺跡と云われるストーン・ヘンジの日の出が象徴的) 「テス」のアカデミー賞の監督賞ノミネートに出席できなかったポランスキーでしたが、アメリカでの事件では1978年に逮捕状が出ましたが32年後の2009年にスイスにてとうとう身柄拘束されたそうです。 インディペンデント映画祭として知られる Sundance Film Festival(サンダンス映画祭)では2008年にその事件を追ったドキュメンタリー映画「Roman Polanski: Wanted and Desired」がプレミア上映されるそうです。
☆Roman Polanski Interview – YouTube
☆Marcello Mastroianni(マルチェロ・マストロヤンニ)を主役にした1970年の「Giochi particolari aka Le Voyeur (特別な遊び~揺れる女)」に続き1972年には意味不明の夢の変態コメディ映画「Che?(ポランスキーの 欲望の館)」を監督したロマン・ポランスキーの「反発」などの作品についてもっと詳しくはHot’n Cool – Roman Polanski
☆1992年に監督した「赤い航路」についてはAudio-Visual Trivia内の赤い航路 Bitter Moon
Jack Nicholson
「チャイナタウン」に続いて1974年(1975)にMichelangelo Antonioni(ミケランジェロ・アントニオーニ)が監督した「Professione: reporter(さすらいの二人)」(The Passenger)で死亡した武器商人の人生を生きてみたジャーナリスト役を演じたジャック・ニコルソンはBlue Velvet(ブルー・ベルベット)のDennis Hopper(デニス・ホッパー)が主演及び監督した1969年の「Easy Rider(イージー・ライダー)」では”ニックニックニック!”が印象的な酒飲み弁護士を演じてアカデミー助演男優賞に輝きました。Nic! Nic! Nic! 「チャイナタウン」では主演男優賞にノミネートされていますが、The Strange Love of Martha Ivers(呪いの血)でデビューしてTown Without Pity(非情の町)に主演したKirk Douglas(カーク・ダグラス)の念願だった1976年の「One Flew Over The Cuckoo’s Nest(カッコーの巣の上で)」の映画化ではアカデミー主演男優賞を受賞しています。 ニコルソンのインパクトのある顔立ちを含めて強烈な個性はデビュー当時に出演したロジャー・コーマン監督の「Little Shop of Horrors(リトル・ショップ・オブ・ホラーズ)」や1963年に主演した「The Terror(古城の亡霊)」から変っていません。 型破りな演技派の俳優として評価が高いニコルソンの2007年の出演作品で「The Bucket List(最高の人生の見つけ方)」では死ぬまでに10のやり残したことをリストにして実行する末期ガン患者役を好演しています。 リストの中でもこれは難しいとされていた”世界一の美女にキスをする”もやり遂げたシーンとニコルソンの秘書トマスを演じたSean Hayesのキャラが印象的です。 さて、ニコルソンは上記のホラー映画以外では1946年の「The Postman Always Rings Twice(郵便配達は二度ベルを鳴らす)」の1981年リメイク版と、ジャック・ニコルソンがゴールデングローブ主演男優賞を受賞した2002年の「About Schmidt(アバウト・シュミット)」、そして最近ではニコルソンが変なセラピストを演じた2003年の「Anger Management(N.Y.式ハッピー・セラピー)」くらいです。 ラブシーンでのあまりの熱演に思わず目を逸らせた「郵便配達は二度ベルを鳴らす」も悲惨なラストシーンでニコルソンと共に泣けませんでしたし、ハリウッド映画史上もっとも困惑させるヌード・シーンと言われるKathy Bates(キャシー・ベイツ)との混浴シーンに度肝を抜かれた「アバウト・シュミット」はさほど感情移入出来なくてエンディングもぐっときませんでした。 2006年にはマーティン・スコセッシが監督した「The Departed(ディパーテッド)」でLeonardo DiCaprio(レオナルド・ディカプリオ)やMatt Damon(マット・デイモン)やアレック・ボールドウィンと共演してボストン南部のマフィアの親分を演じています。 ニコルソンの出演作品はこれまでラストで友情から窒息死させられる壮絶な「カッコーの巣の上で」や「チャイナタウン」以外は気に入った映画は特にありませんでしたが、これから観ようと思うのはニコルソンのコメディで1987年にニコルソンが悪魔を演じ3人の熟女と共演した「The Witches of Eastwick(イーストウィックの魔女たち)」と2003年の「Something’s Gotta Give(恋愛適齢期)」です。 1980年にこちらも鬼才のStanley Kubrick(スタンリー・キューブリック)が監督した原作とは違うバージョンの「The Shining(シャイニング)」ではありません。 そう、ホラーといえばオリジナルはMichael Keaton(マイケル・キートン)が主演した1989年のダークヒーロー映画「Batman(バットマン)」でニコルソンの口裂けジョーカーも怖い! 「バットマン」シリーズの続編は続々で2008年にChristian Bale(クリスチャン・ベイル)がバットマンを演じた「The Dark Knight(ダークナイト)」ではジョーカーがヒース・レジャー。
Chinatown DVD
画像は2007年にリリースされた”Chinatown”の輸入版(Region 1)のDVDです。
Chinatown
国内版で入手出来るDVDにはチャイナタウン 製作25周年記念版などがあります。
Chinatown Book
Robert Towne(著)のシナリオは英語版ですが人気のあるペーパーバックです。
Chinatown (Faber Reel Classics)
書籍カバーに使用された画像はヤクザに扮したロマン・ポランスキー監督がジャック・ニコルソンが演じる私立探偵のジェイク・ギテスの鼻をナイフで切る場面です。 アウチッ!
※Chinatown and the Last Detail: Two Screenplays (Paperback)も出版されています。
Chinatown Soundtrack
ページトップのCD画像は音楽をJerry Goldsmith(ジェリー・ゴールドスミス)が手掛けた「チャイナタウン」のサウンドトラックです。 このサントラCD画像は色味は少々違いますが、有名な「チャイナタウン」の映画ポスターをアレンジして使用しています。 サントラ下のリンクはアメリカのアマゾンにあるMP3のメインタイトルです。
オリジナルではありませんが、日本のアマゾンではサントラを沢山アレンジしているスイス出身のジャズ系音楽家であるDominik Hauser(ドミニク・ハウザー)のMP3アルバム(ASIN: B003IV9C5M)でEnd Title Theme from “Chinatown”(エンド・タイトル)が試聴できます。 他のMP3アルバムには「Coppers, Private Eyes and Super Spies – Themes from Classic Police, Secret Agent and Detective Dramas」(ASIN: B009JNPHHA)があり、ジェリー・ゴールドスミス作曲のテーマ曲をドミニク・ハウザーがルイジアナ出身のジャズ・トロンボーン奏者のRoy Wiegand(ロイ・ウィーガンド)をフィーチャーしています。
☆現在ではもう入手不可能なオリジナル映画ポスターの画像が見られるChinatown Poster – MoviePosters.com
Jerry Goldsmith
作曲家のジェリー・ゴールドスミスは1960年にニコルソンが出演した映画「Studs Lonigan(青春のさまよえる時)」で初めて音楽を担当して以来、1973年の「Papillon(パピヨン)」の”Free as the Wind”など1950年代から2000年代まで様々な映画のサウンドトラックに携わってきました。 ジェリー・ゴールドスミス音楽の代表的な映画には1963年の「Lilies of the Field(野のユリ)」、1976年の「The Cassandra Crossing(カサンドラ・クロス)」、1979年の「Star Trek: The Motion Picture(スター・トレック)」、1992年の「Basic Instinct(氷の微笑)」、1993年にNicole Kidman(ニコール・キッドマン)が主演した「Malice(冷たい月を抱く女)」、そして1997年の「L.A.Confidential(L.A.コンフィデンシャル)」などがあり、SFや西部劇からミステリーまでと幅広いジャンルの音楽を手掛けています。 ゴールドスミスが手がけた西部劇のサントラといえば1970年にJason Robards(ジェイソン・ロバーズ)が主人公のケーブル・ホーグを演じた「The Ballad of Cable Hogue(砂漠の流れ者)」でRichard Gillisが歌ったのテーマソング”Tomorrow is the Song I Sing”などを作曲しています。
Uan Rasey
オープニングとエンディングのクレジットに流れる”Love Theme From Chinatown(愛のテーマ)”は美しい旋律ながら不安を煽るようでもあり、悲しみをも表現したやるせないメロディですが、その荘厳とも退廃的ともいえるテーマ曲で心に残るスリリングなトランペット演奏はハリウッドのスタジオ・ミュージシャンであったカナダ出身のUan Rasey(ユアン・レイシー)だそうです。 ユアン・レイシーはウェストコーストのジャンプブルースでも活躍したトランペッターですが、ハリウッドMGMの黄金時代にはGene Kelly(ジーン・ケリー)主演のミュージカル映画の”An American in Paris(巴里のアメリカ人)”や”‘Singing in the Rain(雨に歌えば)”、Leslie Caron(レスリー・キャロン)主演の”‘Gigi”、Natalie Wood(ナタリー・ウッド)主演の”West Side Story(ウエスト・サイド物語)”や”My Fair Lady(マイ・フェア・レディ)”などのサウンドトラックを手掛けているそうです。
Goldsmith’s “Love Theme”on Opening Credits of Chinatown” with Uan Rasey – YouTube
Easy Living
映画「チャイナタウン」で使用された”Easy Living”は1937年に50曲ものヒット映画音楽を放った作曲家のRalph Rainger(ラルフ・レインジャー)と作詞家のLeo Robin(レオ・ロビン)のコンビによって書かれたもので、1937年の映画「Easy Living(街は春風)」の主題歌です。 1947年のBillie Holiday(ビリー・ホリデイ)の歌で有名ですが、1937年だとTeddy Wilson And His Orchestra(テディ・ウィルソン)の演奏があります。
Way You Look Tonight
ジェイク・ギテス探偵がモゥレーの事務所に探りを入れる時に吹いた口笛は”Way You Look Tonight(今宵の君は)”は”Smoke Gets In Your Eyes(煙が目にしみる)”で知られれるJerome Kern(ジェローム・カーン)が作曲し、Dorothy Fields(ドロシー・フィールズ)作詞の1936年のFred Astaire(フレッド・アステア)とGinger Rogers(ジンジャー・ロジャース)が出演したミュージカル映画「Swing Time(有頂天時代)」でフレッド・アステアが歌いオスカーを受賞した曲です。 ラジオ番組のThe Fred Astaire Hour(フレッド・アステア・アワー)に出演したり、フレッド・アステアのバックをつとめたミュージシャンのJohnny Green And His Orchesra(ジョニー・グリーン)が1936年に録音しています。 ”Easy Living”と”Way You Look Tonight”は共にサウンドトラックでは歌ではなくジェリー・ゴールドスミスの音楽です。 ☆ちなみに”Smoke Gets In Your Eyes”はヴァイオリン奏者のStéphane Grappelli(ステファン・グラッペリ)が1987年のアルバム「Grappelli Plays Jerome Kern」(試聴はASIN: B00005GSYJ)に収録しています。
I Can’t Get Started by Bunny Berigan & His Orchestra
舞台を1930年代に設定した映画「チャイナタウン」で挿入歌として使用された”I Can’t Get Started With You(言い出しかねて)”は1936年に作曲はロシア出身のピアニストのVernon Duke(ヴァーノン・デューク)、作詞はIra Gershwin(アイラ・ガージュイン)のコンビで、ミュージカルの”Ziegfeld Follies of 1936″でコメディアンのBob Hope(ボブ・ホープ)とEve Arden(イヴ・アーデン)が歌った甘い恋の歌です。 ちなみにボブ・ホープの大ヒット曲である1938年の”Thanks for the Memory”は前述のRobin & Rainger(ロビンとレインジャー)コンビの作品です。 Lionel Hampton(ライオネル・ハンプトン)が1939年、Roy Eldridge(ロイ・エルドリッジ)が1944年、Artie Shaw(アーティ・ショー)が1945年、Dizzy Gillespie(ディジー・ガレスピー)が1948年、Erroll Garner(エロール・ガーナー)が1951年、Coleman Hawkins(コールマン・ホーキンス)は1952年に吹き込みましたが、歌では1938年にBillie Holiday(ビリー・ホリデイ)が録音しています。 たった数分ですが、映画で使用された”I Can’t Get Started”はBunny Berigan And His Orchestra(バニー・ベリガン楽団)がRCAではなくて1937年にVICTORで吹き込んだバージョンでしょうか、この曲はバニー・ベリガンが楽団のテーマ曲として使用しました。 歌っているのはスウィング時代のジャズ・トランペッターのバニー・ベリガンですが、アルコールとの闘いで30歳代で亡くなったそうです。 バニー・ベリガンの歌とトランペット演奏の”I Can’t Get Started”はTommy Dorsey(トミー・ドーシー楽団)時代のトランペットソロの”Marie”と並び代表曲となっています。 こんなハンサムなトランペッターにロマンティックな”I Can’t Get Started”を歌われてはとろけてしまいそうです。
Bunny Berigan sings Until Today with His Orchestra (1936) – YouTube
追記: ブログ「もっとボーカル!」のアンクルポップ氏の説明によると上記のバニー・ベリガンの”I Can’t Get Started”は作曲がバーノン・デュークで作詞がアイラ・ガーシュウィンで、昔は「立ち去りかねて」という邦題が付いていたのだそうです。
Jazz in Film
映画のサントラではなくジャズメンによる映画音楽集のアルバムがあります。 演奏はトランペットがTerence Blanchard、テナーサックスがJoe Henderson(ジョー・ヘンダーソン)、以下アルトサックスのDonald Harrison、トロンボーンのSteve Turre、ピアノがKenny Kirkland、ベースがReginald Veal、ドラムがCarl Allenなど。 ニューオリンズ出身の若手ジャズトランペット奏者であるTerence Blanchard(テレンス・ブランチャード)名義で1999年にリリースされたフィルム・ノワール特集ともいえる「ジャズ・イン・フィルム」(ASIN: B0000561Y7)には「チャイナタウンのテーマ」の他に1951年の「A Streetcar Named Desire(欲望という名の電車)」、1960年の「The Subterraneans(地下街の人々)」、1959年にDuke Ellington(デューク・エリントン)が音楽を担当した「Anatomy of a Murder(或る殺人)」、1955年の「The Man with the Golden Arm(黄金の腕)」などの映画音楽全9曲を収録しています。
鼻を切るシーン、あいたった~
って見ていないですけどね。
いつか見たいかなと思いつつ、未見のままなんすよ。
ポランスキー監督作は「反撥」「ローズマリーの赤ちゃん」「吸血鬼」かな、見たのは。
どれも「えぐい」後味を残す作品でしたが・・
最近作はまったくもって興味をもてないので。
anupamさんもご覧になっていなかったのですか。私もこの記事を書く前にTSUTAYAでレンタルしました。「反発」も「ローズマリー」もぞっとしましたが、こちらは違った意味でぞっとします。ロマン・ポランスキー作品のなかでは一番私向けのようです。