クラッシュ Crash (2004)

Crash
「クラッシュ」は2004年に「Million Dollar Baby(ミリオンダラー・ベイビー)」で脚本を手がけたカナダ人のTV製作者であるPaul Haggis(ポール・ハギス)の日本での監督デビュー作品となる映画です。 この映画で監督は「ミリオンダラー・ベイビー」の脚本からさらなる本物の高潔の証明に低予算で取り組み、感動的かつ人道的な手法で現代の大都会の構造を明確に述べている群像ドラマを制作しました。 昨今、ハリウッド娯楽大作映画が多いなかで、あえてアメリカ社会の問題点を大胆に提議している作品で、アメリカ社会の人種問題、貧富差、暴力、銃問題などに挑戦した社会派サスペンスです。 なので、インディペンデント映画の制作及び配給のLions Gate Films(ライオンズ・ゲート・フィルムズ)から配給され、2005年のインディペンデント・スピリット賞では、これまでとは顔つきも全く違って熱演したマット・ディロンが助演男優賞を受賞しています。
群衆劇スタイルの映画としては1993年にロバートアルトマンが監督した「Shortcuts(ショートカット)」や、Paul Thomas Anderson(ポール・トーマス・アンダーソン)監督が当時パートナーだった歌手のFiona Apple(フィオナ・アップル)に宛てたラブレター的な映画で1999年の「Magnolia(マグノリア)」などがありますがこれらをまとめたのがこの「クラッシュ」だともいえるでしょうか。

出演者はDon Cheadle(ドン・チードル)が不良の弟を持つグラハム刑事、Brendan Fraser(ブレンダン・フレイザー)が演じるリック検事の妻ジーンにSandra Bullock(サンドラ・ブロック)、Matt Dillon(マット・ディロン)が尿疾患を抱える父親の面倒を見ている人種差別主義の警官ライアン役、ライアンの相棒で正義感の強い紅顔の美青年、若い警官のトム・ハンセンを演じたRyan Phillippe(ライアン・フィリップ)が高潔の士であらんとする葛藤を好演して最も衝撃的なシーンが見られます。 リック検事を演じるブレンダン・フレイザーは2008年の「センター・オブ・ジ・アース」や「ハムナプトラ」シリーズで活躍した童顔マッチョですが2003年にHFPA会長にセクハラを受けて映画界が嫌になったとか。 さて、ジーンとリックの白人カップルが乗った車をカージャックした二人組みの自動車強盗の片割れ(アンソニー)を演じているのは髪型ですぐ分かるLudacris(リュダクリス)です。 以前からも映画出演をしている歌手のKathleen York(キャスリーン・ヨーク)もグラハム刑事と警官射殺事件を捜査する婦人警官役です。 そして同年2004年のレイ・チャールス伝記映画の「Ray(レイ)」でギタリストのGossie McKee(ゴッシー・マッキー)役を演じ、リュダクリスが人気ラッパー役で出演した2005年の「Hustle & Flow(ハッスル&フロー)」のDジェイ役でSundance Film Festival(サンダンス映画祭、インディペンデント映画祭)で観客賞を受賞したTerrence Howard(テレンス・ハワード)がTVプロデューサーのキャメロン役で、その妻のクリスティンをThandie Newton(タンディ・ニュートン)が演じています。(日本語吹き替え版ではサンディ・ニュートンと表記、サンキューかタンキューか)

「クラッシュ」のあらすじ
家族間のクラッシュ、人種間のクラッシュ、そして自動車のクラッシュ。 映画「クラッシュ」はMark Isham(マーク・アイシャム)の音楽でオープニング・クレジットが流れます。 冒頭は「町を歩けば他の人と身体がぶつかったりするがロス(ロサンゼルス)では触れ合いなんて皆無。なぜなら人々は車の中にいるから。 でも本当はみんな触れ合いたいのさ。」と高速道路での自動車事故(クラッシュ)で頭を打ったドン・チードルが演じるグラハム刑事(ドン・チードル)が相棒で恋人のプエルトリコ系の女刑事リア(エスポジト)につぶやく。 道路際のガキの死体遺棄事件を検証するグラハムはこの時点では被害者が誰かを知らない。
☆確か1995年のSFホラー「Species(スピーシーズ/種の起源)」でもNatasha Henstridge(ナターシャ・ヘンストリッジ)が演じる人造生命体シルが逃亡したのが人は誰も気にしない町、ロス・アンジェルスだった。(その名は天使の町)

クリスマス間近の凍てつく夜の道路で何台もの車が衝突した昨日のこと、銃販売店での出来事。 店を荒されたアラブ系(実はペルシャ人もしくはイラン人)の小売店主のファハドが病院勤めの娘(ドリ)を伴って護身用の銃を買おうしているが買う買わないでもめている。(アラブ人とペルシャ人は言語が違うが外見は判別できない) すると人種差別からだろうか、店主がファハド父さんに難癖をつける時のセリフは911事件を指しているのだろうが驚いた。 「おい、オサマ(ビン・ラディン?)、聖戦の相談なんか後でしろ、お前の泥小屋にジェット機で突っ込むぞ!」と銃店主。 「侮辱したのか?」と怒る父さんに店主は銃は売らないから出てけと怒鳴る。 この後、金を返したくない店主に弾はどれにするかと問われた娘のドリが選んだのは赤い箱(これが空砲)。

お次はリュダクリスが演じるアンソニー(アフリカ系アメリカ人、黒人)が食堂で人種差別を受けたと相棒のピーターに憤懣をぶちまける。 怒りついでに、今すれ違ったリック(ブレンダン・フレイザー)地方検事とジーン(サンドラ・ブロック)の夫婦(白人)がアンソニーとピーターを見てビビって急に方向を替えたと怒り出す。 「俺たちがギャングにでも見えるか? 回りは白人だらけなのに何で俺たちビビらない? そうよ、銃を持ってるからよ!」とアンソニーとピーターの2人組はハイソな白人夫婦が乗った車をカージャックして逃走。 車に乗り込んだ途端にピーターはポケットからフィギュアを出してフロントに置いたがアンソニーが「ブードゥーのお守りなんかよせ!」と言う。 この自動車強盗事件は妻の人種差別をさらに強めることになる。

下記の画像はハリウッド署のウィリアム・ルイス警官(黒人)が非番のコンクリン刑事(白人)に撃たれて死亡した奇妙な事件を調べるグラハム刑事と相棒のリアとジョンソン夫人警官。 目撃者なし。

Race, Class, Life and Fate
Crash
Jennifer Esposito, Don Cheadle and Kathleen York in Crash

場面代わってリック地方検事の家、カージャックにあったから用心にとカギを付け替えているが、Michael Peña(マイケル・ペニャ)が演じるカギ屋のダニエル(プエルトリコなどのラテンアメリカ系か、ヒスパニック系)の外見が「スキンヘッドにバギーパンツ、刺青までしてギャングみたいで信用できないから、もう一度カギを替えて!」と神経質になったジーンがこれまた黒人にカージャックされたことがマスコミに知れるとまずいとイラつく夫と口論になる。
次はマットディロンが演じる人種差別主義の警官ジョン・ライアン(白人)が尿疾患の父親の入院で病院に電話した時に応対した女性責任者の名前を聞いて黒人差別発言をする。「アフリカ女か。」(恐らく父親が多数の黒人を雇用した結果事業が上手く行かずに悲惨な生活になったので黒人全体を憎むようになったのかも)
このライアン巡査のパトカーの助手席にはライアン・フィリップが演じる若いハンセン巡査(白人)。 ライアンは通り過ぎた車で怪しい振る舞いをしていたとしてテレンス・ハワードが演じるテレビプロデューサーのキャメロンとタンディ・ニュートンが演じるクリスティンの夫婦(黒人)を侮辱した挙げ句、妻には「公然猥褻罪で逮捕もできる、武器所持検査で女性の秘密の隠し場所を探る」と言って想像を絶する屈辱を与える。 たしかにハンセン巡査が言う通り二人は運転中に危険な行為をしていたしマジ切れした妻が警官に暴言を吐いたが、この事件は夫婦間にしこりを残すことになる。 その経緯を見て快く思わなかった正義感の強いハンセン巡査は上司(黒人)に人種偏見の相棒(ハンセン)を替えて欲しいと頼んだ結果、正統な理由が必要ということで納得はいかないけど自分のおならのせいにして一人で乗務することになった。(ハンセンの差別について報告書を出せば上司も立場が危うくなるとか)

カギ屋のダニエル(ラテンアメリカ系)はペルシャ人の店で依頼されたカギの交換がドアが壊れていて出来ないというトラブルがあった後、帰宅してみると可愛い5歳の娘ララ(Ashlyn Sanchez)がお外の音が怖くてベッドの下に潜り込んでいるのを見つける。 ギャングなんかじゃなくて優しいダニエル父さんは娘をあやすために弾も通さない妖精の透明マントの話をして自分はもう要らないからと脱いで妖精を信じた娘に魔法のマントを着せてやる。

シーンは変わって、奪ったトラックでヒップホップ談義をしていたアンソニーとピーターのコンビが白いバンの側に立っていた中国人を轢いてしまいトラックの下から引きずり出すと救急病院の玄関に投げ捨てる。(ドサッと投げられたこの男は韓国人で後で出てくる密入国者の仲介又は人身売買用のトラックの持ち主であり、ライアン巡査が病院に電話したカフェにいた)
一方、パトロール中にハイウエイの追突事故で横転した車を見つけたライアン巡査はシートベルトが締まって逆さまのまま動けない女性(これがキャメロンの妻で黒人のクリスティン)を助け出そうとする。 しかし、クリスティンは過去のセクハラのことがあるから、「私を見て、安心して、落ち着いて」と言うライアンに「触らないで!あんたはイヤ!」と救助を拒絶する。 職務に忠実なライアンはクリスティンをなだめながらガソリンが漏れて爆発炎上寸前の火の車から脱出させる。 以前セクハラした黒人女性を白人のライアンが警官としての任務を遂行せんと自分の危険を顧みずして助け出すこの感動のシーンがビデオのカバー画像に使用されています。(命救ったから性的嫌がらせは帳消しかになるのか) 良くも悪くも人は状況次第、加害者にも被害者にも成り得る) 嫌な奴から一転して良い人に見えたライアン。 このシーンで流れた曲がバード・ヨーク(キャスリーン・ヨーク)の”In the Deep”だと思ったら違ってラストで流れた。

麻薬と金にまみれた麻薬捜査官ルイスの汚職事件、なんとスペアタイアに30万ドルの現金が。
「黒人の囚人が白人の8倍だが社会が悪いから」と言いながら結構黒人差別のフラナガン刑事(白人)はこの事件を機に過去に二度の黒人発砲事件を起こして起訴を免れてきたコンクリンを起訴したい意向だが、コカイン中毒だったルイス刑事の乗っていた他人名義のベンツから30万ドルの現金が隠されていたことを発見したグラハムは、コンクリンの行動に複雑な理由(必然性)があったのではと起訴することに躊躇する。(選挙に向けて差別と闘う検事像を強めるため次期の検事の主任調査官を黒人にしようとしているが、黒人の汚職刑事がいるんじゃマズイからか。 検事側がコンクリンにルイスを消すことを依頼したのか? 潔白なコンクリンに罪を着せるのか) しかし是が非でもコンクリンを起訴したいフラナガンは、グラハムに昇進を臭わせるがそれでも駄目なら最後の切り札、グラハム刑事の弟の逮捕を持ち出す。 ウィリアム・ルイス警官(黒人)を射殺したコンクリン刑事(白人で過去に2回の発砲事件あり)を起訴することと車の窃盗で終身刑という弟のピーターの件を取引することをグラハム刑事は承諾させられる。 「コンクリンの遺した過去の記録が全てをもの語っていた。」と検事に報告するグラハム。 これで弟は無事になるのか。いや、自分が。 Fucking black people, huh? …… Fucking white people.

さて、場面代わって、確認せずにうっかりと黒人である演出家キャメロンの車を襲ってしまったアンソニーとピーター。 キャメロンの反撃にあった結果、アンソニーだけが車に乗り込んで逃亡しようとするが追いかけたハンセン巡査のパトカーに止められる。 この時、警官の「出てこい!」に対して車から降りたのはキャメロン。 この時点でキャメロンは殆ど人格が破壊されたようにやけっぱちで警官に向かって暴言を吐くが「ここで無駄死にしないように。」とハンセンは同僚の警官たちにキャメロンは友人だからと厳重注意で済ませるということにしてその場を救う。(ハンセンはライアン巡査が演出家夫妻に屈辱を与えた時に傍観していたからキャメロンを覚えていたからだが、キャメロンが去った後しばし物思いにふける。これで良かったのか) ちなみにポール・ハギスが脚本を手掛けた「父親たちの星条旗」でもネイティブインディアンの海兵隊員が差別を受けて暴れたことで警官に逮捕されそうになるのをライアン・フィリップがが止めるシーンがある。
この一部始終を見ていたのは車中に潜んだ懲りないカージャック常習犯のアンソニーだが、何かしらの感銘を与えたに違いない。 止めは別れ際に放った「お前は俺を困らせただけでなく自分をも貶めた。」というキャメロンの言葉。(キャメロンはこれまで築いてきた地位を保持するために常に白人迎合の立場だった)

場面はカギ屋のダニエルの家、以前襲撃を逃れるためにカギの取り替えを依頼したあのペルシャ(イラン)人のファハドがダニエルが交換しなかったからアラブ人と間違えられて店を襲撃されたと逆恨みし、調査員がドアを取り替えなかったファハアドに落ち度があるから保険は降りないと判定したので損害を要求しに銃を手にやって来た。 ファハドの銃が火を吹く瞬間にパパを助けようと家から駆け出した娘はパパに飛びつく。 娘は至近距離から背中を撃れた。 ダニエルも妻もファハドも観客も凍り付いた一瞬。 すると、「透明マントを着ているから私がパパを守ってあげるわ。」と娘が言ったのだ。 この感動のシーンがサントラのカバー画像。 魔法のマントを信じてパパを救ったダニエルの娘は将来、結婚してできた娘が5歳になったら透明マントを着せてやることでしょう。 終盤で銃を手にしたファハドが娘のドリに言った「フェリシテ 我が天使」 この言葉はドリに捧げたい。(ドリが購入した弾は空砲、撃ったらかなりの衝撃はある筈だが死には至らない)

演出家キャメロンの車に乗ったアンソニーと別々になった相棒のピーターは白人の町ロスを出るためにヒッチハイクしようと1時間道路に立ってようやくハンセンの車に拾われる。 自分は警官だからと恐れもなく黒人のピーターを乗せたハンセンだがなにげにピーターの服装をチェック、するとハンセンの車のフロントに置かれた像が自分と同じなので思わずピーターが笑ったらハンセンが怒り出した。 降りろ!と言われたピーターは笑った理由を教えようとズボンのポケットから聖クリストファーのお守り像を取り出そうとした。 その途端に、やはり信用ならない黒人だったとばかりにハンセンの銃が火を噴いた。 なんと高潔の士だった筈のハンセンはピーターを殺害しただけでなく誰も見てないことを確かめると車から死体を落として走り去ったのだ。(殺人なら正当防衛にしとけばいいのに余りの動揺に死体遺棄まで犯した) 良い人から一瞬にして悪い人になったハンセン、車は燃やした。(差別は嫌いだったのに最悪の逆転劇)
このシーンから冒頭のグラハム刑事の死体遺棄事件の調査場面に戻る。

ハンセンに撃たれて放置されたピーターが収容された病院ではグラハムの母親(注射器やスプーンが家にあったから麻薬中毒かも)は「前からあんなに探してくれと頼んでいたのにこんな姿になったのはお前のせいだ。」とグラハム刑事を非難し、ともかくピーターが帰って来たからもうお前は仕事に行けと言う。(この死体置き場からペルシャ人商店の娘のドリが出て来た) 何も変わることのないグラハム刑事の人生。 だが、弟の遺品となったお守り像を手掛かりに捜査を続ければ、何時かそれがハンセンに繋がるかもしれない。

カージャックは止めて見せ物みたいで嫌だからと乗らなかったバスに乗り込んだアンソニーはいつも盗品買いをしてくれる行きつけの修理工場に例のバンを運び込む。 事情を聞いた工場長はルミノール反応に言及し白いバンの買い取りを拒否したが、トラックに詰め込まれていた中国系(カンボジアかタイか東南アジアの難民か)の人々を一人頭500ドルで買ってやると言った。 人身売買すれば金になるアジア人たちをロスの中華街で解放しチャプスイ(中華八宝菜だが日本語吹き替え版では野菜スープ)を食うための40ドルまでくれてやったアンソニー。 良い人になったか。

事件現場でグラハムがピーターのお守り像を見つけるシーンやハンセン巡査に救われたキャメロンが肩に降りかかる灰を払うなど登場人物の一連のシーンが映される映画の終盤からエンディングクレジットで流れる曲はDVDではイギリスのロックバンドであるStereophonics(ステレオフォニックス)の”Maybe Tomorrow(メイビー・トゥモロー)”だったと思ったのですが、テレビ放映の日本語吹き替え版ではバード・ヨーク(キャスリーン・ヨーク)の”In the Deep”でした。
Bird York – In The Deep
問題を抱えた人々が人種差別に明け暮れ、毎日怒っている町、ロス。 エピソードが全て感動的な「クラッシュ」ではこんなにも広い町なのに人々がこんなにも繋がり合っている不思議が描かれる。 天使の羽衣もファンタジー、ロサンゼルスに雪が降るのもファンタジー。

「クラッシュ」では人種のるつぼ「ロサンゼルス」に住む大勢の人々が日々多すぎる程の波乱にとんだ出来事に関わって生きているように、この映画の登場人物達も又しかり。 全く違う世界に住むようにみえるこの映画の登場人物達が一つの交通事故死事件(クラッシュ)を突端として互いにクラッシュし、関わりあい、一日半(36時間)後にはその関連が明らかになります。 つまり、大都市における或る人達による相互関連性の一日半の実況中継です。 あえてクラッシュする? 何のために? 触れ合いたいから。

天使の羽マントを着ているから透明人間? でも子供は信じます。 実際に過去に、風呂敷をマントにして空中を飛べると思い込んだ”パーマン”もいましたし、「アタシ人魚になるの」と川で流されてしまった女の子がいたのも私は忘れられません。 子供のロマンは時として死につながるのです。 天使は人間ではありえません! 映画では弾が空砲だったので大事には至りませんでしたが、その瞬間、全ての観客は凍り付いたに違い有りません。 このシーンが「クラッシュ」のサントラ画像となっています。

アメリカでは2005年5月に一部公開されましたが、日本公開は2006年2月が予定されています。
アメリカにおける2005年5月現在の「クラッシュ」の興業成績は5位にランクされています。 ちなみにトップはジェーン・フォンダの復帰が話題の嫁姑コメディ「Monster-in-Law(ウエディング宣言)」です。(興業成績って 何?何!)

Paul Haggis
「クラッシュ」の後のポール・ハギス監督はClint Eastwood(クリント・イーストウッド)が監督した2004年の「Million Dollar Baby(ミリオンダラー・ベイビー)」や2006年の「Letters from Iwo Jima(硫黄島からの手紙)」、ライアン・フィリップが出演した「Flags of our Fathers(父親たちの星条旗)」などで制作や脚本に携わり、2007年には「Men in Black(メン・イン・ブラック)」のTommy Lee Jones(トミー・リー・ジョーンズ)が出演する「In the Valley of Elah(告発のとき)」を監督しますが、「007(ゼロゼロセヴン)」シリーズの脚本としてはDaniel Craig(ダニエル・クレイグ)がボンドを演じ悪役にデンマーク出身のMads Mikkelsen(マッツ・ミケルセン)でエヴァ・グリーンと組んだ2006年の「Casino Royale(007/カジノ・ロワイヤル)」とウクライナ女優のOlga Kurylenko(オルガ・キュリレンコ)と組んだ2008年の「Quantum Of Solace(007/慰めの報酬)」があります。

Matt Dillon
人種差別意識の高い白人警官のライアンを演じたマット・ディロンは私が初めてすごいと感じた俳優です。 憎たらしいほどいやらしい白人を演じた「クラッシュ」以前にも沢山の出演映画を観て来ましたがこれほどにアクの強い役柄は珍しく、たいていは気弱だったりちょっと抜けている不良青年役が多かったりコメディ調だったりしました。 私が初めてマットを観たのはRonnie Self(ロニー・セルフ)が歌ったテーマ曲が好きだった1987年の「The Big Town(ビッグタウン)」でDiane Lane(ダイアン・レイン)が演じるストリッパーにメロメロになるギャンブラー役を演じていました。 マットは何作もの映画で恋人役としてダイアン・レインと共演していますがダイアンがターザンと結婚していたので浮いた噂はありませんでした。 Dale Hawkins(ディル・ホーキンス)のSusie Q(スージー・キュー)がサントラに使用された1995年の「To Die For(誘う女)」ではNicole Kidman(ニコール・キッドマン)が演じる妻にメロメロで結婚後に殺害されるちょっとワイルドな夫役でした。 コメディではCameron Diaz(キャメロン・ディアス)にメロメロになる1998年の「There’s Something About Mary(メリーに首ったけ)」がありますが、ロリータ3Pはあれども誰にもメロメロにならなずIQ200にしてやられる1998年の犯罪映画「Wild Things(ワイルドシングス)」を挟んで、2001年の「ジュエルに気をつけろ!」ではLiv Tyler(リヴ・タイラー)にメロメロになりました。

Thandie Newton
マット・ディロンと一緒の写真が「クラッシュ」の映画ポスターやDVDカバー画像なったタンディ・ニュートンはキャメロンの妻を演じて2005年に英国アカデミー(British Academy of Film and Television Arts)で助演女優賞を受賞したザンビア出身の女優です。 1998年にBernardo Bertolucci(ベルナルド・ベルトルッチ)が監督した「Besieged(シャンドライの恋)」や2000年の「Mission: Impossible II(M:I-2/ミッション インポッシブル2)」に出演しているタンディ・ニュートンは、「クラッシュ」の後2006年には「The Pursuit of Happynes(幸せのちから)」でWill Smith(ウィル・スミス)と夫婦役を演じ、2007年にEddie Murphy(エディ・マーフィー)の特殊メイク映画「Norbit(マッド・ファット・ワイフ)」でノービッツの憧れの君を演じ、2010年にはBrad Anderson(ブラッド・アンダーソン)が監督する意味不明のSFサスペンス「Vanishing on 7th Street (リセット)」に赤ちゃんが消えたローズマリー役で出演します。

Sandra Bullock
私がSandy(サンドラ・ブロック)を初めて見たのがSylvester Stallone(シルヴェスター・スタローン)が主演した1993年の「Demolition Man(デモリションマン)」のLt. Lenina Huxley(ハックスリー警部補)役でしたが、冷凍刑務所から解凍されたデモリッションマンが気になってあまり記憶に無いのです。 「デモリションマン」の後も1994年にKeanu Reeves(キアヌ・リーブス)やDennis Hopper(デニス・ホッパー)と共演した「Speed(スピード)」のようなアクション映画や「While You Were Sleeping(あなたが寝てる間に)」などのロマコメ映画の花となりました。 素晴らしかったのはメキシコ出身のAlfonso Cuaron(アルフォンソ・キュアロン)が2013年に監督してサンドラが宇宙飛行士を演じた「ゼロ・グラビティ」でしたが、面白かったのはサンドラがコンピューターのデバッガー(プログラムの修正)を演じた1995年の「ザ・インターネット」でした。 さて、サンディは花だけじゃありません。 鼻です。 テレビのシットコムで鍛えたコメディのセンスも抜群で「Stolen hearts 又はTwo If by Sea(恋する泥棒)」や、鼻をフガフガ鳴らす「Miss Congeniality(デンジャラス ビューティー)」シリーズにも出演してそのコミカルな魅力を存分に発揮し、なおかつセクシーでスタイルの良いサンディです。 一時スランプ期間があったそうですがJean Cabot(ジーン)を演じた「クラッシュ」により再浮上、2006年のカポーティ映画「Infamous」に小説家のネル・ハーパー・リー役で出演する他、2009年の「The Blind Side(しあわせの隠れ場所)」では第82回アカデミー賞の主演女優賞を獲得したと同時になんと「All About Steve(ウルトラ I LOVE YOU!)」でラジー賞も頂戴しましたが、2010年にはアメリカ映画俳優組合(SAG)賞を受賞することになりました。 「しあわせの隠れ場所」でオスカーにエントリーしたサンディはレッドカーペットのドレス饗宴では前回第81回アカデミーに「The Devil Wears Prada(プラダを着た悪魔)」でノミネートされたAnne Hathaway(アン・ハサウェイ)にも負けないほどの美しさで輝いています。(アン・ハサウェイはアルマーニの白いドレス)

Crash (2004) DVD
☆ページトップの画像は2005年の「Crash」の輸入版(英語)DVDです。
下記の画像は2006年7月に発売されたDVDですが、他にも2007年発売の「クラッシュ ディレクターズカット・エディション [DVD] 」(ASIN: B000KRMSPI)や2012年発売の廉価ブルーレイ版(ASIN: B006IW5ES2)もあります。 たいていのDVDカバー画像には マット・ディロンとタンディ・ニュートンの自動車事故救出シーンが使用されています。
crash dvdクラッシュ DVD


Crash Soundtrack
この映画の音楽はマーク・アイシャムです。 80年代~90年代半ばにはニューエイジミュージシャンとして活動し、1990年にはグラミー賞を受賞しているマーク・アイシャムの映画音楽デビューは1983年の「Mrs. Soffel(燃えつきるまで)」で、その後はロバート・アルトマンやロバート・レッドフォードなどの映画音楽も手掛けました。 1988年の「The Moderns(モダーンズ)」ではLA映画批評家協会最優秀オリジナル作曲賞を受賞しています。(タイトル曲の”Modernes”他Les ModernesやCale Selavy’など全12曲を収録したMark Isham & Charlelie Coutureのサントラ「The Moderns」は現在ビンテージ価格でオークション以外は入手不可)

1992年の「二十日鼠と人間」や「リバー・ランズ・スルー・イット」同様にエモーショナルなマーク・アイシャムの「クラッシュ」のサウンドトラックCDです。
Crash [Original Soundtrack]Crash [Original Soundtrack]
♪ 試聴はCrash Soundtrack – Tower.jp
Bird YorkでもSave MeやKelly JonesバージョンのMaybe Tomorrowなどが収録されているサントラで映画から着想を得た「Crash: Music From Inspired By Crash」(ASIN: B0009NCPUQ)もあるのでマーク・アイシャムのスコア盤と間違えないように。
婦人警官役で出演もしているキャスリーン・ヨーク(歌手としてはBird York)はスコア盤サントラで14番の”In the Deep”を歌っています。
Moot Davis ~ Whiskey Town – YouTube
Shani – El lamar de pasion – YouTube

Audio-Visual Trivia内のマーク・アイシャムが音楽を担当した音楽
1992年の「Of Mice And Men(二十日鼠と人間)」
1998年の「From the Earth to the Moon(人類、月に立つ)」
1997年の「Kiss the Girls(コレクター)」
2005年の「In Her Shoes(イン・ハー・シューズ)」
2006年の「The Black Dahlia(ブラック・ダリア)」

Audio-Visual Trivia内でドン・チードルの出演映画
1995年の「青いドレスの女
2001年の「ソードフィッシュ
「オーシャンズ11」(2001年) と「オーシャンズ12」(2004年)
2004年の「ホテル・ルワンダ
2010年の「アイアンマン 2


David Cronenberg’s Crash
ポール・ハギス監督の「クラッシュ」と同名の映画には1996年のDavid Cronenberg(デヴィッド・クローネンバーグ)が監督した「Crash(クラッシュ)」があります。 上海生まれのイギリス人SF作家のJames Graham Ballard(J.G.バラード)が1973年に書いた「Crash」を映画化したクローネンバーグ監督の「Crash(クラッシュ)」は1996年のカンヌ国際映画祭では審査員特別賞を受賞した問題作で、異常なエクスタシーを追求するエロティック映画です。
ちなみに2004年に第一話では中年ながら熱演のPetra Morzé (ペトラ・モルゼ、もしくはペトラ・モルツェ)と Andreas Patton(アンドレアス・パットン)が出演してウィーンでの交通事故により歪んだ3人の人生模様を描いた「Antares(3つの不倫)」というオーストリア映画があります。
特殊メイクがすごく、冒頭から超能力で頭がぶっ飛ぶ1981年のSFホラー映画「Scanners(スキャナーズ)」シリーズが人気だったデヴィッド・クローネンバーグが監督した「クラッシュ」の主演は1989年の「Sex, Lies, and Videotape(セックスと嘘とビデオテープ)」に出演してカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞を受賞したJames Spader(ジェームズ・スペイダー)と2004年の「ママの遺したラヴソング」でGeorgianna(ジョージアナ)を演じた超セクシーでインテリなカナダ人女優のDeborah Kara Unger(デボラ・アンガー)が事故に遭った夫と共にエクスタシーを求めて事故を再現しようとする妖艶なキャスリン(妻)役で出演し全裸シーンもご披露。 その他には、「The L Word(Lの世界)」に出演したこれまたセクシーなRosanna Arquette(ロザンナ・アークェット)も金属足のガブリエル役で出演しています。 快楽目的で追突されたら迷惑千万この上なし。
ちなみにジェームズ・スペイダーはテネシーの法律家のW.N. Bilboを演じてSteven Spielberg(スティーヴン・スピルバーグ)が監督した2012年の「Lincoln(リンカーン)」で大統領夫妻役のDaniel Day-Lewis(ダニエル・デイ=ルイス)と1964年の「Places in the Heart(プレイス・イン・ザ・ハート)」のSally Field(サリー・フィールド)や共和党急進派の指導者のサディウス・スティーヴンズを演じるTommy Lee Jones(トミー・リー・ジョーンズ)などと共演します。
一方、デヴィッド・クローネンバーグ監督はDon DeLillo(ドン・デリーロ)の原作をもとにして2012年に映画化した「Cosmopolis(コズモポリス)」が8月にアメリカで公開されますが、「Harry Potter (ハリー・ポッター)」シリーズで魔法使いのセドリック・ディゴリーを演じたRobert Pattinson(ロバート・パティンソン)とJuliette Binoche(ジュリエット・ビノシュ)とPaul Giamatti(ポール・ジアマッティ)が共演します。 ネズミの死骸はともかくこの奇々怪々な「コズモポリス」は2012年で最も興味のある映画に選ばれたそうです。 映画では仕事への情熱のために関係を拒む妻の代わりに他の女と関係を持つ大富豪をボブ・パティンソンが演じますが、主人公がリムジンで床屋に行く途中で交通渋滞に巻き込まれ、色んな人と遭遇し運命に立ち向かう(いや、破滅に向かう)ストーリーだそうです。 カンヌ映画祭ではボブ・パティンソンと数年来の恋人だという22歳のKristen Stewart(クリステン・スチュワート)が主演した2012年の「Snow White and The Huntsman(スノーホワイト)」の40代の監督(Rupert Sanders)との不倫疑惑が話題となりました。 ちなみにクリステンは2002年に「パニック・ルーム」でジョディ・フォスターが演じるメグの娘サラ役でしたが「スノーホワイト」で姫を助ける猟師エリック(”マイティ・ソー”のクリス・ヘムズワース)の亡き妻の名前がサラでした。
1996年の「素顔のままで」や2004年の「アビエイター」でも音楽を手掛けたHoward Shore(ハワード・ショア)のサウンドトラックは「Crash Soundtrack」(ASIN: B0000015M1)